「手取り20万」は日本全国の収入平均をやや下回る水準の収入です。
しかし、「手取り20万」と聞いても、その実際の生活レベルは中々想像つかない方が多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では「手取り20万」の方の家賃などの生活水準、そして収入を上げるための方法について解説していきたいと思います!
手取り20万の額面年収は?
「手取り20万」の方の額面年収はおおよそ288万円となります。
額面年収と手取り年収の金額差は控除額や手当等の関係上、個人によって異なります。しかし、一般に手取り年収の目安は額面年収の75~85%ほどであると言われています。
また、「手取り20万」は一般に「手取り月収が20万円であること」を指しています。
そのため、手取り月収が20万円である時(=「手取り20万」)、
額面月収は20万円÷0.85=約24万円
額面年収は約24万円×12ヶ月=288万円
と推定できます。
ただし、この金額は会社から毎月支給される基本給をもとにしており、ボーナス(賞与)が含まれていません。そして、会社から支給されるボーナスは夏と冬の年2回、それぞれ月給の1〜2ヶ月分の金額が支給されることが一般的です。
そのため、年2回、月給2ヶ月分がボーナスとして支給されると仮定した場合、
「手取り20万」の方の額面年収は約288万円+約24万円×2ヶ月×2回=384万円
となります。
このように、「手取り20万円」と言っても、ボーナスの支給額・支給回数や控除額によって額面年収が異なることにも注意しましょう。
手取りと額面の相違点
「手取り」と「額面」の相違点は税金などの金額が差し引かれているか否かです。
「額面」とは「会社から労働者に支給される金額」を指します。会社から支給されるお金には、基本給に加え、資格手当・通勤手当・残業手当・家賃手当などの手当が存在します。そして、「額面」はこれらの会社から労働者への支給額の総額となります。
一方、「手取り」とは「労働者の手元に残る金額」を指します。会社から支給される全ての金額、つまり「額面」からは所得税・住民税などの税金、厚生年金などの年金、健康保険・雇用保険などの保険の料金が「控除額」として、毎月差し引かれています。「手取り」とは、「額面」からこうした「控除額」を差し引いた金額であり、実際に個人が日常生活で自由に使える金額となります。
尚、これらの手当や控除額は労働者の家族構成などによっても異なり、個人によって異なることも押さえておきましょう。
手取りと額面の確認方法
「手取り」と「額面」は給与明細や求人募集で確認することができます。
まず、「手取り」は給与明細の「差引支給額」に記載されています。
一方、「額面」は給与明細の「総支給金額」に記載されています。
さらに、求人募集に掲載されている給与は一般的に「額面」です。そのため、転職などの際には求人募集の給与が「額面」であることに注意しましょう。
アルバイトと正社員の「手取り20万」の違い
アルバイトと正社員では同じ「手取り20万」でも、正社員の方が実際に使える金額は大きくなります。
これには大きく二つの理由があります。
第一に、アルバイトと比較して、正社員にはより大きな金額のボーナスが存在するからです。
実際に、先述したように正社員の場合、夏と冬の計2回、月給の2ヶ月分ほどが支給されます。「手取り20万」の場合には、年間で約96万円ほどがボーナスとして追加で支給されることになります。一方、アルバイトの場合にはボーナスは基本的にない、あるいはあったとしても少額です。一般に、アルバイトのボーナスの相場は2万円〜3万円であると言われます。この金額は正社員の場合の約96万円という金額と比較すれば、極めて大きい収入の差を生じさせるものです。もちろん、正社員の間でもボーナスの多少はありますが、それでもアルバイトと正社員のボーナスの金額差は極めて大きいものであると言えます。
第二に、アルバイトの場合には社会保険料を自己負担しなくてはならないからです。
正社員の場合、社会保険料は、会社がその費用を半分負担してくれます。また、正社員の場合、社会保険への加入が義務となります。そして、「額面」の金額から社会保険料が既に差し引かれた状態で、給与は労働者の手元に支給されます。このため、正社員の場合には社会保険料の自己負担分が軽減されるの加え、既に社会保険料が差し引かれた状態で「手取り20万」であると言えます。
一方、アルバイトの場合、個人経営や個人事業主などが雇用主であると社会保険に加入していない場合も多く、国民年金保険や国民健康保険に自己負担で加入する必要があります。そして、「手取り20万」の中からこれらの費用として月々約数万円ずつ支払いをしなくてはいけません。このため、アルバイトでは「手取り20万」からさらに保険料の自己負担分を差し引くと、実際に使える金額は相対的に少なくなってしまうと言えます。
手取り20万の給与水準
「手取り20万」は年収約300万円弱〜約400万円弱であり、これは全体の平均よりもやや下の水準、性別では、男性の平均給与よりやや下の水準、女性の平均給与とほぼ同程度の水準となっています。
2020(令和2)年の国税庁の「民間給与実態統計調査」によれば、日本全国の年間での平均給与は以下の表のようになっています。
年齢層 | 男性(万円) | 女性(万円) | 計(万円) |
20~24歳 | 270 | 242 | 260 |
25~29歳 | 393 | 362 | 319 |
30〜34歳 | 458 | 309 | 400 |
全体平均 | 532 | 293 | 433 |
まず、男性で「手取り20万」は20代中盤〜後半程度の平均収入であるといえます。全世代平均では、男性の平均給与は532万円となっており、300〜400万円と言われる「手取り20万」は全体平均よりもやや下の水準であると言えます。
一方、女性で「手取り20万」は全世代平均と同程度の収入であると言えます。20代前半では、300〜400万円と言われる「手取り20万」は平均よりも高い水準となっており、全体平均と比較しても見劣りのしない金額です。
このように、ライフサイクルなどを背景としながら、男性と女性という性別によって平均給与は異なり、全体の中での「手取り20万」の位置付けも異なります。男女を総合した全体平均では、「手取り20万」は平均の433万円よりもやや低い水準となっています。
さらに、東京・大阪などの大都市圏とそれ以外の地方部でも平均給与は異なります。そのため、皆さんの住む地域や年齢と照らし合わせながら、「手取り20万」の位置付けを確認してみましょう。
手取り20万の生活レベル
「手取り20万」の方の生活レベルは費用の削減がしばしば必要になるレベルです。
下の表(※の項目)は総務省統計局による、2021年の「家計調査」(単身且つ年収300〜400万円の世帯)をもとに作成したものです。
主な支出項目 | 金額(円) |
家賃 | 50,000 |
食料※ | 37,464 |
光熱・水道※ | 10,811 |
交通・通信※ | 20,528 |
交際費※ | 11,926 |
保健医療※ | 8,569 |
教養娯楽※ | 18,022 |
被服・履物※ | 4,606 |
家具・家事用品※ | 5,687 |
その他※ | 28,274 |
合計 | 195,887 |
仮に家賃を50,000円とした場合、その他の主な支出項目と合算すれば、ひと月での支出額の合計はほぼ20万円となってしまいます。そのため、基本的に日常生活での節約が必要となり、多額の貯金をすることも難しいです。また冠婚葬祭など、臨時で費用が出る際には家計がより苦しくなります。
特に、食費については4万円以下となっています。そのため、自炊を頻繁に行っていくなどして、節約をおこなっていくことが必要となります。
また、交際費は1万円強となっています。このため、友人などとの遊びの機会にはその費用を節約することをしばしば強いられる可能性があります。
尚、こうした生活レベルは地域によっても異なります。都心部と地方部では同じ金額でも受けられるサービスが異なり、一般的に地方部の方が都心部よりも物価が安いです。そのため、地方部での生活の場合、より広い部屋に住むことや余裕を持って生活をすることが可能となります。
手取り20万の家賃相場
手取り20万円の方の適正家賃は月5万円〜7万円です。
一般に、適正な家賃の目安は手取り月収のおよそ3分の1です。そのため、手取り月収が20万円の場合、約6万6000円ということになります。家賃に充てるお金には個人差があるため、家賃のおおよその目安は月5万円〜7万円となります。但し、必要以上に家賃にお金を充てすぎると日常生活の支出が苦しくなるため、注意しましょう。
都心部では、家賃6万円ほどの部屋はワンルーム物件となり、一人暮らしをする方には支障のない広さです。一方、郊外部や地方部、都心部でも築年数の古い物件では、同程度の家賃でも1DKなど、より広い物件に住める可能性が広がります。そのため、広い家に住みたいという希望が強い方は郊外部に家を借りることがおすすめです。尚、職場などからあまりにも遠くに家を借りてしまうと、結果的に生活費が嵩むこととなります。このため、物件は注意しながら、慎重に選びましょう。
加えて、実家暮らしの場合には、生活費を支払うとしても、家賃分の負担が軽減されます。そのため、生活費や貯金など他の部分にお金を充てやすくなり、より充実した生活を送ることができます。但し、実家暮らしには当然、家族の了解を得ることが必要であることを抑えておきましょう。
手取り20万の貯金額
手取り20万円の方が月々に貯金できる金額はかなり限られています。
下の表は、手取り20万円の単身世帯で家賃5万円、生活費を14.5万円と想定した際の貯金可能額のシュミレーションです。
項目 | 金額(円) |
家賃 | 50,000 |
生活費 | 145,000 |
合計 | 195,000 |
手取り20万円との差引き(貯金可能額) | 5,000 |
実際に上の表にもあるように、手取り20万円の方が単身世帯の場合、給与の多くが月々の生活費や家賃に割かれます。そのため、ひと月あたりの貯金額は1万円弱ほどとなり、生活費などを節約して貯金に回したとしても、大きくは増えません。
さらに、冠婚葬祭などの際、臨時でお金が必要となる機会には、さらに貯金をすることが困難になります。そのため、将来のために貯金をしておきたい方は普段から節約を心がけることをお勧めします。
手取り20万の一人暮らし
手取り20万円の方の一人暮らしでは、日常生活での節約が重要となります。
下の表は手取り20万円の方の一人暮らしをシュミレーションしたものです。
項目 | 金額(円) |
家賃 | 50,000 |
生活費 | 145,000 |
合計 | 195,000 |
まず、家について、家賃6万円前後では、都心部ではワンルームのお部屋が多いです。次に、生活費についても、実家暮らしであれば節約可能な部分ですが、一人暮らしの場合には大きな負担となります。そのため、もしもの事態に備え、日々の節約をしていくことが重要となります。
そして、二人暮らしやそれ以上の場合には、さらに生活費が多くなります。そのため、同居者に収入がない場合、あるいは収入が少ない場合には家賃や生活費の節約をより積極的に行う必要があります。
さらに、実家暮らしの場合には、生活費や家賃の分の費用が軽減されます。そのため、将来に向けて貯金をしたい方などは一人暮らしよりも実家暮らしがおすすめとなります。
手取り20万できついこと
以下では、手取り20万円の方の生活で苦しい・きついことについて、下の4点に分けて解説します。
- 外食や遊びに行けない
- 貯金額が少ない
- 好きなものを買えない
- 急な出費が苦しい
外食や遊びに行けない
手取り20万円の方の生活で苦しいことには「外食や遊びに行けない」ことがあります。
手取り20万円の方の生活では、生活費節約のため、自炊が食事のほとんどを占めます。そのため、一般的に自炊よりも価格の高い外食にはなかなかいくことができないです。外食に行きたい場合には、使う金額や回数の上限を決めてから計画的に利用することをおすすめします。
また、友人との遊びの際には、生活費が足りないために、遊びの誘いを断らなくてはならないというケースもしばしば存在します。遊びに行きたい場合には、事前に生活費を節約し、余裕のある状態で行くようにしましょう。
貯金額が少ない
手取り20万円の方の生活で苦しいことには「貯金額が少ない」ことがあります。
手取り20万円の方の生活では、その給与の多くが生活費・家賃に充てられます。そのため、貯金に充てられる金額は月1万円程度となり、貯金額を大幅に増やすことは難しいです。
将来のために貯金をしておきたいという方は、生活費を節約することをおすすめします。具体的には、郊外部に家を構え、家賃を低く抑えることや携帯の契約を格安SIMにして生活費を抑えるなど、今一度ご自身の生活費を見直してみましょう。
好きなものを買えない
手取り20万円の方の生活で苦しいことには「好きなものを買えない」ことがあります。
手取り20万円の方の生活では、好きなもの、特に高価なものを買うことに高いハードルがあります。生活費や家賃に給与の多くを割かなくてはならない中で、その他に高価なものを購入することは、家計を圧迫する可能性があります。
そして、これは手取り20万円の方に限らず、幅広い収入層の方に同じことが言えます。もし、どうしても欲しいものがある場合には、貯金と同様に、月々の生活費を節約することや副業を始めることによって、計画的に購入するようにしましょう。
急な出費が苦しい
手取り20万円の方の生活で苦しいことには「急な出費が苦しい」ことがあります。
日々の生活では、冠婚葬祭や通院など、想定外の出費に迫られることがしばしばあります。手取り20万円の方の生活では、多くの給与を生活費や家賃に割いています。そのため、こうした想定外の出費に対応するためのお金がなく、貯金などから捻出するほかないことが多いです。
こうした事態を避けるために、想定外の出費に対応するだけの計画的なやりくりをする必要があります。具体的には生活費などの節約が主となります。そうすることで、日々の生活における想定外の出費への精神的な負担も避けることができます。
手取り20万からの収入アップの方法
以下では、手取り20万円の方が収入を上げるための方法について、下の3点に分けて解説します。
- 新たにスキルを身につける
- 社内で昇給する・昇進する
- 給与の高い職種へ転職する
新たにスキルを身につける
「新たなスキルを身につける」ことで、収入アップを実現できる場合があります。
会社によっては、簿記や宅建士など業務上重要な資格を取得することで、通常の給与に加え、「資格手当」を得ることができます。現在の勤務先で、資格手当などの支給対象となる資格を調べ、取得することで、手取り20万円からの収入アップが見込めます。
また、転職の際にもスキルの取得は役立ちます。後述するように、現在の勤務先ではなく、他の会社での収入アップを目指す場合、資格などのスキルを新たに取得した状態で転職活動を行うことで、より多くの職種への転職が可能になります。そして、より多くの転職先候補の中からより高い給与の職種へ転職し、手取り20万円からの収入アップをすることが可能になります。
加えて、副業の際にもスキルの取得は役立ちます。資格などのスキルを取得することで、副業の仕事を受注し、収入アップを実現できます。
社内で昇給する・昇進する
「社内で昇給する・昇進する」ことで、収入アップを実現できます。
現在の勤務先での収入アップを目指す場合には、同じ職位内での昇給、あるいはさらに上の職位となる昇進を目指しましょう。但し、会社によって評価体系は異なります。そのため、現在の勤務先での評価体系を確認した上で、昇給や昇進の要件となるような業務上の成果を心がけることで、収入アップが見込めます。
但し、会社内での昇給・昇進の機会は年1〜2回程度と限られています。そのため、この手法は、短期間での手取り20万円からの収入アップを目指す方には向かないと言えます。さらに、会社によっては昇進試験などを通過することで昇進・昇給を実現できる場合がありますので、現在の勤務先の評価体系を確認してみましょう。
長期的にも、社内での昇進・昇給は、社内での業務で新たな経験を積める可能性が高まります。そして、こうした経験は将来的な転職の際にも役立つ可能性が高いです。
給与の高い職種へ転職する
「給与の高い職種へ転職する」ことで、収入アップを実現できます。
現在の勤務先でこれ以上の収入アップが見込めない場合には、より給与の高い職種への転職を考えましょう。具体的には転職サイトや転職エージェントを利用して、転職活動を行います。
但し、転職活動の際には、給与だけでなく、残業時間などの職場環境を確認するようにしましょう。これは、サービス残業などを強制する、「ブラック企業」と呼ばれる企業へと転職してしまうことで金銭的な負担は軽減されたものの、精神的・身体的負担が高まってしまう可能性があるためです。
転職活動をより充実したものにするために、まずは転職エージェントなどに年収査定をしてもらい、転職市場での自分の能力への査定を確認しましょう。また、転職先が決まる前に現在の勤務先を退職することはやめましょう。こうすることで、転職活動中に収入が一時的になくなるリスクをなくすことができます。
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