自分がどうなりたいか?
この記事の読者の皆さんは、満足の行く日々を過ごし、納得の行く人生にするためにも、達成したいことがあり、それを達成するためのキャリアを常に描かれ、模索されているのではないでしょうか?
自分の強みや欠点を探り出すことは大切です。
その一つが、己を知る自己分析であると思います。
今回は、自らの成長をうながすために不可欠なメンター(師)の存在についてふれておきます。
キャリアを考えるうえで、「自分がどうなりたいか」を思い描くことはたいへん重要です。
具体的な夢や目標を持つことで、成長スピードは大きく変わってきます。
「自分の目標は何か?」また、「いつまでにその目標を実現させるのか?」ということを具体的に考えてみてください。
キャリアカウンセリングの際、「将来どうなりたいですか?」と質問を投げかけると、その大半が、「具体的に……そういわれてもなぁ……」と困った顔をされる方が多いです。
漠然としたイメージはあるのでしょうが、「どうなりたいか」を具体的に語ることは、なかなか難しいようなのです。
そういった場合に、私はこのようにお話ししています。
「会社内でも、知人でもあるいはまったく接点のない偉人や有名人でもいいですから、指針となる人、あるいは憧れている人はいますか?」
自分の師匠、メンターとは?
この思考には、メンターの存在が大切になります。私の持論では、メンターには大きく分けて二通りあると考えています。
まず1つ目に、目標として憧れている人、つまり、あなたがなりたい姿を思い描くときに、いろいろな学びや気づきの機会を提供してくれる人物です。
この場合は「会ったことがない故人・有名人」でもいいのです。
たとえば、私は松下幸之助さんが好きです。
裸一貫で、あれだけの会社を創られて、「社員は、自分株式会社の経営者たれ!」という哲学を、何十年も前から実践されてきた。
独立した今となっては、この言葉はさらに重みを増すばかりです。
経営者に限らず、スポーツ選手や芸術家など、さまざまな世界の成功者・先駆者でもかまいません。
彼らが遺した著書や発言に刺激を受けつつ、「なりたい自分」へのイメージを具体的にふくらませていけるはずです。今現在、現役で活躍中の人なら、前述したようにセミナーや講演会などで生の声を聴けるチャンスもあるかもしれません。
もう一つは、もっとあなたの身近にいて、良いところも悪いところも愛情を持って指摘してくれる人物を思い浮かべてください。
学生時代の友人でも、同僚でも上司の方でもかまいません。
ガールフレンド?奥さん?家族?もちろんそういった身内の存在でもかまわないのですが、ポイントとなるのはあなたの仕事のやり方を知っているかどうか、ビジネスの現場でのあなたを知っているほうがより最適だと思います。
要はその人物が、自分と違った能力を持っていて、自分と違った発想があり、なおかつ自分の仕事上・性格上の強みや弱点について、客観的に理解してくれているかどうかということです。
私のメンターをあげるとすれば、前職でお世話になったインテリジェンス(現・パーソル)創業者の字野康秀さんが真っ先に思い浮かびます。
宇野さんは、何事にも手を抜かず本気で立ち向かわれるという、熱血漢でした。
とにかく、本気。お客さまはもちろんのこと、事業、社員、それぞれのベクトルに向けて限りなく100%に近い情熱を注がれていました。
ある社員総会での一幕でした。
全社員に向かって、こんな話をされたことを、いまだに鮮明に覚えています。
当時社長だった宇野さんは、お父さまが亡くなられ、当時の大阪有線放送社の社長に就任、インテリジェンス(現・パーソル)ではすでに会長となっておられました。
設立以来10周年を経て、会社はまだまだ成長著しい時期。
社員全員が心情として、宇野さんの直接的な関与が低くなったことに対する一抹の寂しさを抱えていたと思います。
正直なところ、私もそう感じていました。
社員一同のそんな思いを察してか、その日、宇野さんはいつにも増して熱っぼく、こう語られました。
「宇野は、インテリジェンスのことを忘れたんじゃないか。有線の人になったんじゃないかといわれているようですが、私は設立以来、インテリジェンスのことを忘れたことは一日たりともありません―私、宇野康秀はみなさんのことを愛しています!」
文章に書くと何か気恥ずかしいひと言も、宇野さんがいうとなぜか心打たれるのでした。
宇野さんのひと言ひと言は、心の奥底から発せられているようでした。
社員の私たちにとってはカンフル剤のようで、心に響く効果は絶大でした。
「私にはソフトバンクの孫正義さんのようなカリスマ性はない。だからこそ、社員のみなさんの力が必要です―」
宇野さんの口癖でした。
ご自身はそう思われていなかったようですが、社員からすれば間違いなくカリスマ的な存在だったと思います。
サイバーエージェントの藤田晋社長も、宇野さんのことはたいへん尊敬されているようですが、私も同様に心から尊敬しております。
宇野さんからは、仕事への決して涸れることのない熱意と、つねに相手を思いやる心配り、そして事業を成長させてゆくための鉄の意志、強い信念について教わったような気がします。
キープレイヤーズ高野のメンターは前職の同僚です
そして、私のメンターとしてのもっと身近な存在は、前職の同僚です。勉強はあまりしなかったけれど、もともと頭が良い人、頭が切れる人っていますよね?
彼は典型的にそのタイプ。多くの人と交わることは好みませんが、少人数になると途端にリーダーシップを発揮したりする、妙な存在感を持つ男です。
論理的でクール。いわゆるポーカーフェイスです。問題発見や分析に優れていて、何より、人の強み、弱みを客観的に把握している点が優れています。
独立の折、社内からは辞めないでほしいという声とともに、時期尚早、高野には独立するなんて向いていないという声まで、さまざまな意見が飛び交いました。
向いていない主な要因として聞こえてきたのは、自分で書くのも間抜けな気がしますが、
「人が良すぎる、優しすぎる」という声でした。
「私は、やっぱり……独立する器じゃない?」と本気で考えました。
私は、決断まであと一歩のところで、その友人に相談を持ちかけました。
「会社ではキャリアとしてはトップを極めたわけだし、この先はマネジャーとして後輩を管理してゆく立場だけど。俺は高野にはマネジャー職は向いていないと思うよ。現場の第一線にいてこそ、お前の強みが活かされるんじゃないか?」
「強み?」
「人が好きなんだろ?多くの人と知り合いになる能力と、人と人を引き合わせるマッチングカそれがお前の強みだろ。お前はお前のやり方でしかやれないんだし、それで人が集まってきているとしたら、独立したってきっとやっていけるんじゃないかな」
「……やっぱり」
信頼している友人からのコメントだったので、腑に落ちました。
そのひと言がきっと、最後に私の背中を押してくれたのだと思います。
余談ですが、もちろん弱みも指摘されました。
計画策定力のなさや実務的な数字に弱い点など、私自身、そういった弱みをサポートしてくれるビジネスパートナーを見つけて、一緒に立ち上げたほうが得策だという判断はありましたが、彼からのアドバイスで裏づけが取れたような気がしたものです。
メンターとなる存在があることは、キャリアのみならず、人生にとって本当に大切な財産になると思います。
あなたにはメンターと呼べる人はいますか?みなさんもぜひ、メンターとなる存在を探してみてください。