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ヘッドハンティング・ダイレクトリクルーティングの落とし穴
29歳、大手半導体メーカーの経営企画から、某ベンチャー企業の経営企画部署を立ち上げるポジションに転職した知人がいます。
社長からダイレクトリクルーティングを受け、転職しています。
ヘッドハンティングやダイレクトリクルーティングは、今はよく聞く話になりましたね。
エージェントからのヘッドハンティングに加えて、社長からのダイレクトリクルーティングだけでなく、リファラル採用もダイレクトリクルーティングに当たるでしょう。
あのカルロス・ゴーン氏もヘッドハンティングによって、日産の社長に引き抜かれた経歴の持ち主です。
ヘッドハンティングやダイレクトリクルーティングは、一見華々しいキャリアアップヘの近道のようにとられがちですが思わぬ落とし穴もあるのです。
社長の魅力に惹かれて転職した彼の結末とは?
彼が転職を決意した理由は、オーナー社長の魅力でした。
「君なら絶対にできるよ!一緒に頑張ろう!!」と、声をかけられたときには、その社長の夢を語るパワフルさ、カリスマがかった個性の強さが、彼の目にはとても新鮮に映り、自分の中の何かを鼓舞されたように感じたそうです。
しかし、これまでサポート的な仕事をこなしてきたその彼にとって、部署の立ち上げというのは未領域へのチャレンジ。
自分に向いているか向いていないかはわからないけれど、社長についていきたい気持ちもあるし、チャレンジしてみる価値はあるかもしれない。
そんな前向きな気持ちで、転職を決めました。
実際に入社をしてみると、頼りにしていた社長は、社外で接していたときとは別人のように情緒不安定であることがわかってきました。
話に首尾一貫したところがなく、気分次第で部下への指示も評価もころころ変化する。
さらに、ゼロから何かを立ち上げるという仕事は、どうも彼には向いていなかったらしく、これまで経験したことのないストレスから、軽い胃潰瘍にまでなってしまったというのです。
キャリアの意思決定は準備・情報収拾を怠らず計画的に
実は、こういったケースは少なからずあります。ヘッドハンティングやダイレクトリクルーティングで転職活動を行う場合は、通常の転職のように段階を踏んで、きちんとした準備をしていないケースが多いからです。
会社研究や自己分析、キャリアヒストリーの洗い直しなど面倒な過程を踏まずに、誘われるまま入社してしまう人もいるので、転職先で大きな離齢が生じたとしてもやむを得ないことかもしれません。
しばらく休養を取ることにした彼は、その間、改めてキャリアも含めこれまでの自分の過去を顧みたそうです。
よくよく振り返ってみると、その作業を通していろいろなことが明確になったといいます。
学生時代から、誰かがつくった計画や企画をよりよく改善したり、サポートしたりするのは得意だったが、ゼロベースに近いところから何かを生み出すというのは苦手であったこと。
兄は昔から生徒会長などを務めるリーダータイプで、弟の自分はそんな兄に少なからずコンプレックスを持っていたこと。
どちらかといえば、開拓してゆくタイプというより、守りに徹するタイプであること。そのかわり、自分の仕事はミスが少なく、丁寧な仕事をすると上司に評価されていたこと…。
そんな自己分析を通して、やはり自分は、成長企業よりも、ある程度組織だった会社で、ルーティンにそった仕事をするほうが強みを活かせるに違いないと、痛感したとのことでした。
「今回の経験がなかったら、これほど深く自分について考えなかっただろうな」そうすっきりした表情で語ってくれた彼は、今、本当の意味での「セカンド就職」に向けて、いろいろと準備をしている真っ最中です。
キャリアチェンジのタイミングこそ、自己分析をしてみよう
キャリア相談に訪れる人は、最初から計画意識を持って取り組んでいる人よりも、ただ漠然と転職をしたいと考えている人のほうが圧倒的に多いものです。
そういった場合、私はまずキャリアの自己分析をオススメしています。
新卒の就職活動で嫌という程、自己分析をしているので、もう大丈夫と思っている方も多いかも知れません。
しかし、新卒採用・中途採用関係なく、自己分析は大切です。己を知ることがキャリアアップの第一歩です。
キャリアを顧みることで、自分の強み……つまリセールスポイントが浮かび上がってくるからです。
もちろん苦手なことも再確認できます。日頃からサービスや商品説明をしているプレゼンテーションの得意な営業職の人でも、「自分は何ができるのか」をうまく説明できないことはよくあります。
社会人になると自分自身のことを考える機会が少なくなるため、はじめは自己分析にも少し時間がかかるかもしれません。
しかし、自己分析は転職を成功させるためには非常に重要なプロセスです。
応募企業を選ぶときや面接時での受け答えにもかならず活かされるので、まずは改めて、自分の履歴書・職務経歴書をつくることからはじめてください。
文書にしてみることで、冷静な分析ができます。特に以下の点に注意して考えてみてください。
▼履歴書・職務経歴書の作成の着眼点
1 会社で実績を出したことは何か具体的な数字を交えて書く。また、どのようにしてその実績を出すことができたのかプロセスも記載。
2 仕事を振り返ってみて、身についたと思えることは何か?
3 自分の長所は何か?また、その長所をアピールできる仕事上のエピソードは?
次に、他の人に自分についての印象を聞いてみましょう。
私はこれを他己分析と呼んでいますが、カウンセリングをしていると、自分が他人からどう見られているかが分かっていなかったり、自己評価と他人からの評価の間に大きなギャップが生じている人がたくさんいるからです。
自己評価と他人からの評価をすり合わせることで、「自分のできること」「自分の強み」が、よりはっきりと見えてくるはずです。
キープレイヤーズ高野のコメント
今回の彼のキャリアチェンジのように、運を掴みに行くことも大切ですが、突発的なキャリアチェンジは悲しい結果になることもあります。
適材適所という言葉の通り、人は一人一人活躍できる場所が異なります。それは、企業の規模やフェーズであったり、ポジションや仕事内容など様々な要因が絡み合っています。
やはり、自分と自分の強みを言語化できている方はご活躍されている印象です。
また、着実にキャリアアップをされている方は、定期的にエージェントにあってキャッチアップをするため、クオーターに1回職務経歴書をアップデートしています。
毎クオーター自分の振り返りの時間を設けているのです。
ヘッドハンティング・ダイレクトリクルーティングの落とし穴を頭の隅におき、適切なキャリアの意思決定をしてください。
自分のキャリアの意思決定に何かお悩みのことがありましたら、いつでも相談してくださいね!