ベンチャー役員の年収相場【2026年最新】取締役・執行役員の報酬とストックオプション徹底解説

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「ベンチャーの役員報酬って実際いくらなの?」——この質問を、転職を検討している方から非常に多くいただきます。ベンチャー・スタートアップの役員報酬は、大企業とは構造が大きく異なります。キャッシュ給与だけで比較すると「安い」と感じることもありますが、ストックオプション(SO)を含めた総報酬で考えると話は変わってきます。

私は転職エージェントとして約25年、数百社のスタートアップの採用・役員報酬設計に関わってきました。この記事では、リアルな数字と私の現場経験をもとに、ベンチャー役員の年収相場を徹底解説します。

目次

ベンチャー役員報酬の全体像

ベンチャー・スタートアップの役員報酬は「キャッシュ報酬+ストックオプション」という2層構造が基本です。大企業の役員報酬(基本給+賞与)とは根本的に設計思想が異なります。

なぜこのような構造になるかというと、成長途上のベンチャーにはキャッシュが潤沢にないからです。代わりに、会社が成長・上場した際の「将来の利益」をSOとして事前に約束することで、優秀な役員人材を獲得しています。

比較軸 大企業役員 ベンチャー役員
基本報酬 高い(1,500万〜) 低め(600万〜1,500万)
賞与・インセンティブ 業績連動型が多い 少ない(赤字期は特に)
ストックオプション 限定的 重要な報酬の柱
上場時の潜在利益 小〜中程度 数千万〜数億円も
安定性 高い 低〜中(フェーズによる)

一言で言えば、「今の給料を取るか、将来の大きなリターンを取るか」という選択がベンチャー役員のキャリア判断の核心です。

取締役の年収相場

ベンチャー企業の取締役の基本報酬(キャッシュ)は、企業のフェーズによって大きく異なります。

フェーズ 基本報酬(年収) 特徴
シード期 300〜800万円 創業者が役員の場合、報酬ゼロ〜最低限のケースも多い
シリーズA 600〜1,200万円 外部採用の取締役はこの水準が多い
シリーズB〜C 800〜1,800万円 CFO・CTO等の機能別取締役が増加
レイター〜IPO準備 1,000〜2,500万円 業績連動賞与が加わるケースも
上場後(グロース市場) 1,200〜3,000万円以上 SO行使に加え基本報酬も大幅増

取締役の報酬設計で重要なのは、取締役会で決議される「役員報酬総額の枠」です。この枠内で各取締役に配分されるため、会社の財務状況と他役員とのバランスが常に影響します。

私の知人で、シリーズBのスタートアップにCFO取締役として転職した方は、前職の大企業での年収1,400万円から1,100万円に下がりましたが、SO付与(0.8%)があり、上場後にその価値が2億円を超えたケースがあります。

執行役員の年収相場

執行役員は取締役会で選任された役員ではなく、「社内の上位役職」という位置づけです。法的には従業員扱いのため、雇用保険・社会保険が適用されます。

フェーズ 基本報酬(年収) SO付与目安
シード〜アーリー 500〜800万円 0.3〜0.8%
シリーズA〜B 700〜1,200万円 0.2〜0.5%
シリーズC以降 900〜1,500万円 0.1〜0.3%
大企業の執行役員 1,200〜2,000万円 ストックオプションは限定的

執行役員の場合、大企業では1,200万〜2,000万円が相場ですが、ベンチャーでは基本報酬が低い分、SOで補われる構造です。BNGパートナーズの調査によると、従業員数100人以下の企業の執行役員平均年収は870万円程度とされています。

ストックオプション(SO)の重要性と相場

ベンチャー役員の報酬を語る上で、SOを無視することはできません。私がエージェントとして役員候補の方にいつもお伝えするのは、「SOを含めた5〜7年の期待値で判断してほしい」ということです。

SOの仕組みのポイント

  • 行使価額:SOを行使(購入)できる株価。付与時点の株価が基準になることが多い
  • 行使期間:通常2〜10年。上場前後が行使のピーク
  • ベスティング:一定期間在籍することで権利が確定していく仕組み(例:4年間で毎年25%ずつ)
  • キャピタルゲイン:「上場後の株価 − 行使価額」×付与株数が利益

役職別SO付与割合の目安(2026年時点)

役職 SO付与割合目安 備考
CEO 5〜20%(創業者) 創業株式とSOの組み合わせが多い
CFO・CTO・COO(取締役) 0.5〜2.0% 入社タイミングが早いほど高い割合
事業部長・執行役員 0.1〜0.5% フェーズが進むほど割合が小さくなる
一般社員 0.01〜0.1% シリーズB以降での入社では限定的

SO上場時の試算例

たとえばシリーズAで入社したCTOがSO1.5%を付与されたケースで試算してみましょう。上場時の時価総額が200億円だった場合:

  • 付与されたSOの価値:200億円 × 1.5% = 3億円
  • 行使価額を差し引いた利益:約2.5〜2.8億円(税引前)

もちろん全員がこの水準になるわけではありませんが、上場に成功した場合のリターンは非常に大きい。これがベンチャー役員を選ぶ最大の理由のひとつです。

なお、2025年2月に経済産業省が発表した「スタートアップの成長に向けたインセンティブ報酬ガイダンス」では、設立5年未満のスタートアップに対してSOの行使価額計算が優遇される制度改正が盛り込まれており、今後さらにSO活用が広がると見られます。

詳しい年収・報酬の考え方は年収・手取り完全ガイドもあわせてご覧ください。

フェーズ別・役職別の年収比較表(総報酬ベース)

SOを含めた「総報酬期待値」ベースで整理すると以下の通りです。

フェーズ × 役職 キャッシュ年収 SO付与割合 上場時SO期待値
シードCTO 400〜800万円 1.5〜3.0% 3〜10億円+
シリーズAのCFO 700〜1,200万円 0.8〜1.5% 1.5〜5億円
シリーズBのCOO 900〜1,500万円 0.5〜1.0% 1〜3億円
シリーズCの執行役員 800〜1,400万円 0.1〜0.3% 3,000万〜1億円
IPO後取締役 1,200〜2,500万円 少量 SO効果は限定的

上場に成功すれば莫大なリターンがありますが、すべてのスタートアップが上場するわけではありません。SOに過度な期待をせず、キャッシュ報酬だけでも「許容できる水準か」を判断基準にすることをお勧めします。

大企業との年収比較

大企業の役員と比較すると、ベンチャーの役員報酬は一般的にキャッシュで見ると低くなります。

比較 大企業取締役 上場ベンチャー取締役 非上場ベンチャー取締役
基本報酬 1,500〜3,000万円 800〜2,000万円 400〜1,500万円
賞与 大きい 中程度 少ない
SO/株式 限定的 中程度 大きい(潜在的)
福利厚生 充実 整備中 最低限

私の感覚では、キャッシュ年収で前職比−20〜30%を受け入れられるかどうかが、ベンチャー役員転職の実質的な心理的ハードルです。「SOは幻かもしれない」と思いながらも、この差額を払える人が長続きします。

ベンチャーの年収・手取りガイドでは、給与交渉のコツや手取り計算もまとめています。

役員報酬の交渉ポイント

① キャッシュとSOのバランスを自分で決める

「キャッシュを高くしたい」か「SOを多くしたい」か、自分の優先順位を明確にしましょう。キャッシュを高くすると、相対的にSOが少なくなる傾向があります(会社のキャッシュフローに余裕がないため)。

② 入社時期がSOの価値を決める

当たり前のことですが、早く入れば入るほどSOの付与割合が高くなり、行使価額も低くなります。「少し待って別の会社に」と考えているうちに、最も美味しい時期が過ぎてしまうことが多い。

③ ベスティング条件を必ず確認する

入社後すぐにSOを付与しても、ベスティング(権利確定)期間中に退職すると消えてしまいます。一般的には「4年で毎年25%確定」などの条件が多いですが、確認せずに入社してトラブルになるケースが後を絶ちません。

④ 取締役か執行役員かで交渉の性質が変わる

取締役は役員報酬総額の枠内での交渉、執行役員は雇用契約に基づく賃金交渉になります。取締役の場合は株主総会の決議が必要な場合もあり、入社後の変更が難しいことを踏まえて最初の条件交渉を大切にしてください。

転職エージェントの使い方については転職エージェント選び方ガイドが参考になります。

向いている人・向いていない人

ベンチャー役員に向いている人

  • リスクを取って大きなリターンを目指したい人
  • 組織を作ることに喜びを感じる人(0→1だけでなく1→10のフェーズも含む)
  • 裁量権の大きさを重視する人
  • 前職での専門性(技術・財務・マーケ等)を経営レベルで活かしたい人
  • キャッシュ報酬が前職比−20〜30%になっても生活が維持できる人

ベンチャー役員に向いていない人

  • 安定した収入が最優先で、家族からの理解が得られない人
  • 役職名・ブランドへの執着が強い人(ベンチャー役員は意外と地味な作業が多い)
  • 失敗や責任を部下や状況のせいにしがちな人
  • 「報告を受ける側」より「実行者」としての仕事が嫌いな人(特に初期フェーズ)
  • ストックオプションの価値を過信して転職を決断する人

年代別転職ガイドでは、30代・40代・50代それぞれの役員転職の考え方も解説しています。

実際の転職事例

事例①:大手メーカー 技術部長 → シリーズAスタートアップ CTO(42歳)

前職年収1,300万円 → 入社時年収950万円に下落。しかしSO1.2%を付与され、3年後の上場時に税引前2.8億円のキャピタルゲイン。現在は後続のスタートアップの社外取締役を複数掛け持ち。

事例②:コンサルファーム マネージャー → スタートアップ COO(38歳)

前職年収1,100万円 → 入社時年収880万円。シリーズBのタイミングで入社し、SO0.6%を取得。3年後のM&Aイグジットで約8,000万円のキャピタルゲイン。現在はIPOを目指す別のスタートアップのCEOに。

事例③:外資系金融 部長 → スタートアップ CFO(45歳)

前職年収1,800万円 → 入社時年収1,100万円。IPO準備会社でCFOに就任し、上場後の株価上昇でSO1.0%が約1.5億円の価値に。ただし上場後に株価が下落し、最終的な行使利益は5,000万円程度。

CXO転職ガイドでは、CFO・CTO・COO・CMOそれぞれの転職事例もまとめています。

失敗パターンと注意点

失敗パターン①:SOのみを期待して低すぎるキャッシュを受け入れる

「上場すれば億単位で入る」と思ってキャッシュ年収600万円を受け入れた結果、会社が成長せず上場せず、3年間の生活が厳しかった——というケースを複数見てきました。SOはあくまで「おまけ」と考え、キャッシュで生活できる水準かを必ず確認してください。

失敗パターン②:取締役と執行役員の違いを理解せずに入社する

「役員待遇」と言われたのに実際は執行役員で、雇用保険や退職金の扱いが一般社員と同じだった、というケースがあります。法的な位置づけを必ず契約書で確認しましょう。

失敗パターン③:ベスティング条件を見落とす

SOが付与されても、ベスティング期間中に会社都合で解任された場合の扱いは会社ごとに異なります。「解任されたらSO没収」という契約条件も存在します。法律専門家のレビューを入れることをお勧めします。

失敗パターン④:ポジションの実態が伴わない

「役員」と聞いていたが、実際には単なる管理職レベルの仕事しかなく、経営会議にも参加できなかった——これは特に創業者が経営を握りすぎているスタートアップで起こりやすいパターンです。

ベンチャー転職の失敗・後悔ガイドも参考にしてください。

FAQ

Q1. ベンチャー役員になるのに年齢制限はありますか?

法的な制限はありません。ただし現実的には35〜55歳が最も多いです。シードやシリーズA段階では30代前後が多く、レイターやIPO前後では40代〜50代のCFO・CLOなどの採用が増えます。

Q2. 社外取締役の報酬はどのくらいですか?

月額50〜200万円(年600〜2,400万円)が相場ですが、スタートアップの場合は月20〜50万円(年240〜600万円)程度が多い印象です。上場会社の場合は株式報酬が加わることもあります。

Q3. 役員報酬は全額損金算入できますか?

法人税法上、定期同額給与(毎月同額)であれば損金算入できますが、業績連動型の役員報酬は条件があります。会社設立後3ヶ月以内に決定する必要があるなど制約もあるため、税理士に確認することをお勧めします。

Q4. IPO後すぐにSOを行使して売却できますか?

上場後にロックアップ期間(通常90〜180日)が設けられるケースが多く、その間は市場での売却ができません。また、大量保有報告の義務や売却タイミングの制限も考慮が必要です。

Q5. ベンチャー役員経験は次の転職で評価されますか?

高く評価されます。特に「事業を伸ばした実績」「組織を作った経験」は、次のステージでも求められる能力です。上場・イグジットできなかった場合でも、CXO経験者としての価値は十分あります。

まとめ

ベンチャー役員の年収相場を整理すると、キャッシュ報酬は大企業より低め(600万〜2,000万円)だが、SOを含めた総報酬は上場に成功すれば莫大なリターンになる可能性があるというのが実態です。

私が転職相談を受ける際に必ずお伝えするのは「SOは夢だが、キャッシュは現実だ」ということ。SOを期待しすぎず、しかし長期的なキャリア形成の観点からベンチャー役員ならではの「裁量と成長機会」の価値も加味して判断してほしいと思います。

キープレイヤーズでは、ベンチャー・スタートアップの役員ポジション(CXO・執行役員)への転職支援を専門的に行っています。報酬条件の交渉サポートも含め、無料でご相談いただけます。ご興味のある方はぜひお気軽にお問い合わせください。

ベンチャー転職完全ガイドもあわせてご覧いただくと、転職活動全体の流れが把握できます。

執筆者:高野 秀敏

東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。11,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。55社以上の投資、5社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。149社上場支援実績あり。55社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を国内・シリコンバレー・バングラデシュで実行。キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。
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