パートナー/Chief Strategy Officer グロービス・キャピタル・パートナーズ 高宮慎一
グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)ではインターネット領域の投資を担当。投資先に対してハンズ・オンでの戦略策定、経営の仕組化、組織造り、国内外の事業開発の支援を実施。 GCP参画前は、戦略コンサルティング会社アーサー・D・リトルに て、ITサービス企業に対する事業戦略、新規事業戦略、イノベーション戦略立案などを主導。東京大学経済学部卒(卒論特選論文受賞)、ハーバード大学経営大学院MBA(二年次優秀賞)。
▼実績/支援先
実績には、IPOにアイスタイル(東証3660)・オークファン(東証3674)・カヤック(東証3904)・ピクスタ(東証3416)・メルカリ(4385)、M&Aにしまうまプリントシステム(CCCグループ入り)・ナナピ(KDDIグループ入り)などがある。現在支援先には、ランサーズ・メルカリ・ビーバー・タイマーズ・クービック・リブルー・ミラティブなどがある。
▼Twitter
@s1kun https://twitter.com/s1kun
目次
可能性を紡ぐDJとVCの仕事の共通項
高野:本日は、ベンチャーキャピタリストとして起業家、ベンチャーの支援を行う高宮さんにお話をお伺いします。東京大学、外資コンサル、ハーバードMBAそして、グロービス・キャピタル・パートナーズのVCと華々しいキャリアを歩まれている高宮さんに誰もが注目されると思います。
まずはご経歴からお伺いしてもよろしいでしょうか?
高宮:幼少期から遡ってお話をさせて頂きます。親の仕事の関係で、幼稚園の頃からイギリスで生活していました。小学校の時に日本に戻ってきましたが、周りと同質化するためにまるで隠れキリシタンのように、帰国子女であることを隠していました。
高野:そんな葛藤があったのですね。
高宮:当時は、若干、親の仕事の影響で自分の人生が振り回されたような感覚もありました。なので、自分は腕一本でやっていけるプロフェッショナルになろうと、中学校を卒業する頃には、漠然と国際弁護士を目指していました。
そう決めてからは、逆算で学校を決めていき、東京大学法学部にあたる文科一類を目指していました。しかし、浪人組に。なんとか東京大学文科二類に入学しました。
高野:高宮さんにもそんな失敗談があったのですね。何でもできる方だと思っておりましたので、少々驚きました。
高宮:大学時代は音楽にハマり、クラブジャズが好きでしまいにはDJにも手を出しました。週3-4日はクラブに通っていました。ちなみに、私はアゲアゲのジャンルとは違い、マニアックな音楽に没入していました。
クラブは音楽を通じて色々な属性の人と集まる部室のような感覚で、この雰囲気が好きでした。フォトグラファーを集めたり、ファッションデザイナー集めたりしてクラブイベントのプロデュース的なこともやっていました。……と、言っても友達とやっていた真似事レベルですが(笑)。
クラブイベントを通じてたくさんのクリエイターと接する中で、ぼんやりとですが、ビジネス面での支援などクリエイターと一緒に働くことに心地よさを感じていましたね。
私は、クリエイティブの才能はそこまでありませんでしたが、DJのセンスは少し持っていたのかも知れません。DJは0→1で音楽を作る訳ではありませんが、目利きをし良い音楽と音楽を紡ぐことが仕事です。改めて考えてみると、このDJの感覚はVCの仕事に似ているのかもしれません。
高野:可能性を紡ぐDJとVCの仕事の共通項、この考え方は素敵ですね。
高宮:「一歩先だと盛り上がらないが半歩先がフィットする」この感覚も同時に学びました。この点もVCに似ています。ニッチでマイナーすぎるとみんな盛り上がりませんが、少し先の流行りはじめくらいの感じが受けるんです。
周りのイケてる友人はみんな起業していた
高野:また、高宮さんは学生時代から著名な方々と一緒に過ごされていますよね。
高宮:大学時代はネットバブルの時期と重なっており、周りの方から刺激を受けました。東京大学に経営を学べるゼミが3つあり、その3つは非常に仲が良かったです。
隣のゼミにはミクシィの創業者の笠原健治さんがいました。インターネット好きが多く、周りのイケてる友人はみんな起業していました。ネットエイジ出身の起業家「ネットエイジマフィア」が輩出された時期です。
高野:羨ましい豪華メンバーですね。
高宮:本当に面白いやつらはみんな起業していたんです。それも、意識高い系の人間がレジュメを綺麗にするために起業をしているのではなく、アグレッシブかつ、いい意味成り上がってやろうと面白いワイルドな人が多かったです。
こんな可能性に満ち溢れたコミュニティの近くにいることが出来ました。もちろん私も起業に興味を持ってはいました。しかし、私は石橋を叩き割ってしまう性格です(笑)。これだったら絶対いけると確信できるテーマも自信もなく、「何をテーマに事業をしたらいいんだろうか?」「自分に経営なんてできるんだろうかとか?」と思い悩んでしまいました。
今思うと、人生最大のミスで、いいからやればいいじゃないかという感じなんですが(笑)。
高野:学生時代にテーマを見つけることは難しいですよ!
高宮:「コンサルにいけば経営ができるようになる!」と誤解をし戦略コンサルティング会社アーサー・D・リトルに入社しました。当時は起業する人と外資系金融機関・外資系コンサルティング会社にいく人が同じ母集団にいましたね。
その中でミドルリスク・ミドルリターンを取った人が外資系金融機関・外資系コンサルティング会社に行きました。ファーストキャリアで外資系コンサルティング会社を選択した私は、気づけば石橋を叩き割ってしまい、ネットバブルをスルーしていたのです。
高野:石橋を叩き割ってはいないですよ!
高宮:コンサルタントとして6年半働きました。アーサー・D・リトルは「技術をどう活かして戦略を立てるか?」「イノベーションをどう起こすか?」という点に強みを持つコンサルティングファームです。
コンサルの仕事は非常に楽しかったです。若手でも大企業の社長や事業部長と仕事ができ貴重な経験となりました。しかし、本当にやりたいことを仕事にしていなかったので、自分の幸せを給与や昇進の速さみたいな、世の中の一般論的のような相対軸でしか測れていませんでした。自分の絶対軸が作れていなかったんですよね。
経営の修行のつもりで入社したコンサルティング会社で、修行自体が目的化されていたことに気がつきました。ここで本当に自分がやりたいことは何なのか考えましたね。コンサルティングそのものが悪いというよりは、自分で自分の絶対軸・価値軸が作れておらず、青い鳥症候群になってしまっていた自分が悪かったんだと思います。
起業し成功するためのベストなキャリアプランとは?
高野:これは是非とも高宮さんにお聞きしたかったのですが、「起業し成功するための修行の場としてコンサルティング会社に行くべきか?」この選択肢で悩まれている方は多いです。この点に関してどうお考えですか?
高宮:コンサルティング会社に行けば経営できるようになったり、自分のやりたいことが見つかることもありません。そういう意味では、青い鳥症候群の特効薬にはならないと思います。
しかし、6年目になるとクライアント会社の事業を動かすことも出来ます。こんなダイナミックな仕事はなかなか経験出来ません。なので、本当にコンサルティングがしたいと腹落ちしている人にとって、こんなやりがいがある良い仕事はありません。
ただ、繰り返しになってしまいますが、「自分は何をしたいのか?」「どう世の中に貢献したいのか?」という確固たる自分の絶対軸が定まっていないと、知的なチェスのようなゲームになってしまいます。自分のミッションやゴールがないと伸び悩んでしまうのです。
高野:それは高宮さんがご活躍されていたからですね。
高宮:もちろん新卒でコンサルティング会社に入社し、よかったことも多々あります。特に、ビジネスのハードスキルと思考法を学ぶ事が出来ました。
この時期は、やりたいスポーツが決まらないまま筋トレをバシバシして身体能力が上がっている状態でした。体の基礎が出来ていたので、やりたいスポーツが分かった時の対応速度は早かったと思います。構造的に世の中を理解する能力も確かに備わりました。
ただ本質的には、やりたいスポーツが決まっていて、そのスポーツをやりながら必要な筋肉をトレーニングをする方が効率的です。そのため、最近若い人には、「やりたいことが決まっているなら、まずはそれをやっちゃいなよ。やりながら必要なスキルは身に着ければいいじゃん。」と言うようにしています。
この年齢になって、世の中どんな挑戦をしてもその方向性が間違っていなければ、やりたいことをやっていると周りが助けてくれるものだと実感しています。
高野:それは私も同感です。
高宮:日本で起業というと、一発必中でミスができないスナイプ感がまだまだありますね。しかし、そんなことはなく、起業とはあるテーマで挑戦し失敗したとしても、次の方向性や挑戦するテーマが明確になります。
起業とはキャリア観・ライフスタイルそのものだと思っています。この生き様は線で繋がっているなあと実感していますし、優秀な皆さんにはそこまで恐れることなく挑戦して頂きたいです。
個々人のキャリアの重ね方は千差万別で、正解やマニュアルはありません。そのため、「起業する為にコンサルに行くべきか?」それとも、「VCになるべきか?」「事業会社に行くべきか?」明確な回答は難しいです。ここで悩まれていたら高野さんに相談されるのがいいと思います!
高野:私が高宮さんに相談してしまうかも知れませんが、悩まれていたらいつでもご気軽にご相談ください!
高宮流ハーバードMBAの受験攻略法
高宮:そんな私も、コンサルタントとして自分のキャリアの方向性に悩んだ1人です。自分の給与や昇進の速さで自分の幸せを考えている自分に気がついた時、本当に自分は何がしたいのか自分と向き合う契機となりました。
その結果、出た結論は3つです。
①学生時代に機会を逃してしまった「アントレプレナーシップ」に関わること。
②コンサルでの経験で関心をもった「イノベーション」に携わること。
③学生時代のクラブで感じたような「クリエイティビティ」のある仕事をすること。
この3つです。
高野:これまでのご経験や原体験を振り返ることで見えてきたのですね。
高宮:加えて、私は帰国子女のためグローバルに関与したい思いもあり一念発起して留学に行きました。今振り返ってもこれは私にとって良い選択だったなぁと思います。ハーバードMBAへ進学し、2年間の最高なモラトリアム期間を過ごしました。
高野:そもそも、ハーバードのMBAってどんなことをすれば進学することが出来るのですか?(笑)
高宮:私は、ハーバードのMBAに入学することも事業開発で、応募するプロセスそのものでビジネスマンとしての総合力を試されているなぁと感じました。
数多い他の日本人の応募者の中でどう差別化するか考え、学校側が求めているニーズをアドミッションの人や在校生・卒業生のヒアリングから探り、合わせこんでいく、そして自分という売り物をマーケティングしてうまく伝える必要があります。
大学側は現地学生に程よい指導と刺激を与え、現地学生の成長を促してくれる人をMBA生として迎えようとしています。そのため、MBA生は現地のアメリカ人学生よりも平均年齢が10歳程度高いです。加えて、現地学生がグローバルに展開する時にコネになる各国の有力な人を求めているのです。
高野:そんな構造があったのですね。
高宮:そもそも、MBA生として受け入れられやすい、典型的なセグメントがあります。外資系コンサルティング会社・外資系投資銀行・日経大手企業・官僚のメインなど、日本のゼッケンを背負っている人です。
まず、このハイクラス層の中で自分をどう自分を見せるかストーリーが大切なんです。これは完全にマーケティングです。MBAの受験プロセスを通して、自分のビジネススキルが問われていると考えた方がいいです。
高野:私は、選考プロセスにものれない模様です(泣)。
高宮:そして、私が作り上げたストーリーは「コンサル×帰国子女×起業×クリエイティブ×人情ストーリー」です。特にアメリカの大学は人情ストーリーを大切する傾向があります。
私は、結婚を決めてからアメリカに行く予定でした。そのため「この学校のチャペルで結婚式をあげるのが夢だった。」と言ってみたり、面接では自分が学生時代に買った大学のロゴ入りのエコバックを持っていってみたり、こざかしいことをしまいた(笑)。
同じ土俵で戦っている人の中で差をつけるのは本当に難しいです。そうすると、同じバックグラウンドで、同じくらいの人がいたら、最後は人情ストーリーになってくると思っています(笑)。
高野:お涙頂戴的なストーリー。なるほど、ここまで考える必要があるのですね。
高宮:MBAの受験プロセスは「ハードの部分で細かいエッジを積み重ねつつ、最後はハートで勝負」これがキーワードです。最後は人情です。
これは入社や採用面接でも同じことが言えるのではないでしょうか?この逆算思考はコンサルで学びました。こんなところで役立つとは思いませんでしたね。
高野:MBAをご検討されている皆さまには大変参考になる内容でしたね!ありがとうございます!
日本に軸足を置きグローバルな橋渡しをするVCの仕事
高宮:私がMBAを申し込んだ2006年はスタンフォード大学にd・schoolが出来た年です。本当はスタンフォードに行きたかったのですが、落ちてしまいました(笑)。
アメリカではMBAと平行してデザインファームでインターンをしていました。
起業して、IDEOのようなデザインファームをインターン先のDesign Continuumと一緒に日本で作ろうとしていたのです。しかし、当時のアメリカは、ファニー・メイが飛んでサブプライムがバブルが既にはじけていた時期でした。リーマンショックで日本が不景気になる一年前にアメリカはもう不景気に突入してましたね。
高野:デザインファームの業態はかなり景気の影響を受けますよね?
高宮:おっしゃる通りです。デザインファームの業態は、コストカットなどの後ろ向きなプロジェクトがなく、イノベーションを起こして新しい事業やプロダクトを作るなど前向きなプロジェクトしかないコンサルティングです。そのため、不景気に弱い業態となります。タイミングが悪かったですね。
そのタイミングで、日本のグロービスからもVCとしての内定を頂戴していて、向こうからもあまりせっついてこないのをいいことに、1年近くオファーを引っ張っています(笑)。
高野:この時からVCとしてのキャリアが選択肢にあったのですね。
高宮:日本とアメリカでVCを視野に転職活動をしていました。その結果、日本でVCとして働くことががベストな選択肢であると腹落ちすることができました。
当初からグローバルな仕事をしたいと考えていました。しかし、言われてみると当たり前なのですが、アメリカの会社に就職し、アメリカで働くことは、アメリカローカルな仕事に過ぎないと気付きました。
私が理想とするグローバルな仕事とは、「海外と日本を橋渡しをすること」だったのです。それならば、日本人としてのバックグラウンドをレバレッジしながら、日本に軸足を置いてグローバルに橋渡しをして行く働き方が最適であると気がついたのです。
高野:高宮さんの強みを最大限活かせる選択肢に気がつかれたのですね。
高宮:特にVCはローカルな深いネットワークに入り込んで、何かあったらいつでも相談にのったり、週一で壁打ち相手をするような身近な存在であることが大切です。案件を獲得して、バリューアップさせる部分は、凄いローカルなビジネスなんです。
高野:確かに、VCはローカルネットワークをかなり大切にされていますね。
高宮:一方、投資先をハネさせるためにはグローバルに持っていく必要があります。ローカル性を軸足に、掛け算のNice to haveの感覚でグローバルに展開させていくのがVCだと思っています。ここに私のやりたい仕事とのフィット感がありました。
また自分のやりたいことは、
①学生時代に機会を逃してしまった「アントレプレナーシップ」に関わること。
②コンサルでの経験で関心をもった「イノベーション」に携わること。
③学生時代のクラブで感じたような「クリエイティビティ」のある仕事をすること。
この3点です。
VCでは①と②が達成できるとはわかっていたのですが、関連がなさそうだと思っていた③も達成できるのではないかと気がつきました。
高野:VCと「クリエイティビティ」にはどんな関連性があったのですか?
高宮:0→1でサービスを立ち上げる時は、天才型のヒラメキに依存することもあります。会社は天才型の属人性に依存するとスケールしませんし、組織がぐちゃぐちゃになってしまいます。
天才のアートと秀才のサイエンスを組み合わせ会社をスケールさせて行きながら、「コンシューマ向けのサービスに会社全体でどこまでリスクを取り、リスクヘッジして行く仕組みを作るのか?」これは、私がクリエイティビティのマネジメントとしてやりたかったことそのものでした。
「クリエイティビティ」とは外観の美しいことを示すだけではありません。新しいことを生み出して行くとか、さらに言うとベンチャー企業を作ること自体も「クリエイティビティ」ではないかと思っています。
高野:ベンチャーを作ることは、確かにクリエイティビティです!
仲良くなることが起業家側にも投資家側にも大切である
高宮:自分のミッションが明確になり、今はVCの仕事にのめり込み気がついたら10年が経っています。
高野:10年以上VCとしてご活躍されている方って少ないですよね?
高宮:そんなこともありません。VC第一世代がインキュベイトファンドの赤浦徹さんやグロービス・キャピタル・パートナーズの仮屋薗聡一さんです。VC第2世代がインキュベイトファンドの和田圭祐さん、グロービス・キャピタル・パートナーズ今野穣さんや私かなと思います。
高野:2層くらいある感じなんですね。
高宮:私自身はVCという立ち位置にこだわりはありません。自らがやりたいことに一番レバレッジをかけてくれる場所に自分を起き、見晴らしがいいところにいることを心がけています。
とにかく、日本から世界に羽ばたくようなメガベンチャーを輩出したい、日本に新産業をつくりたいというミッションがあって、それを一番達成できる場所であれば、投資家側でも事業側でもどちらでも良いと思っています。
高野:以前、投資先を決めるポイントは様々な観点があるとお話を頂きました。その中でも印象的だったのが、仲良くなる・友達になることが起業家側にも投資家側にも大切であるとお話し頂いたことです。
高宮:この話に関連しますが、私はVCの中で一番起業家とお友達になっていると勝手に思っています。仲良くなる・友達になるって、言うと陳腐に聞こえてしまいますが、ケミストリーが合うことは非常に重要だと思っています。
アーリーであればあるほど事業計画は変わっていきますし、市場も変わっていきます。そのため、私は紙に書かれたピッチをみるのではなく、人と人との付き合いの中で、「この経営者は信頼できるか?」「この経営者と一緒に何年もやりたいか?」というのが、まずは先立つと思っています。
まぁ、これは投資家から起業家だけでなく、起業家から投資家を見て、お互いにそう思えるかというのが大事だと思います。
高野:私も確かに、企業様を見るとき一番注目するのは社長のお人柄ですね。
高宮:投資家と言うと外部者の人のようなイメージが先行しますが、自分自身が内部のパラメーターとして入ればhowの部分は変えることができます。何をやるかwhatの部分は、起業家の思いとパッションによります。
しかし、起業家と一緒にどう勝つかのhowは一緒に考えたいと思ってますし、常にどう勝つか同じ目線で考えるようにしています。
高野:これが高宮さんの強みですよね。
高宮:これは裏を返すと、中二病的に大学生時代から私が引きずっている青い鳥症候群であるとも言えます。この業界の負を変えてやるという青い鳥をみつけられていないからこそ、what とwhyを持っている起業家の懐に「howを一緒に考えましょう」と参謀的に入っているのかもしれません。
高野:そんなネガティヴにとらえないでください!VCのお仕事は高宮さんの天職であると確信を持って言えますよ!適職ど真ん中です。
高宮:プロにそう言われると転職できないですね(笑)。
ベンチャー・キャピタルのビジネスモデル
高野:最近はVCの存在や仕事が注目を集めるようになりました。しかし、VCのビジネスモデルを正確に理解されてない人が多い印象を持ちます。
高宮:まず、前提として、VCはファンドの一種です。「ファンド」とは、複数の出資者から資金を募り、その資金を元手に事業への投資を行い、収益を出資者に分配する仕組みを指しています。
そして、主に株式上場前のベンチャーやスタートアップを対象に資金供給する組織を「VC」と呼びます。ファンドの一部にVCが含まれる構図になります。対象をより狭めているのがVCです。
ファンド及びVCの収益源は2つです。1つ目に管理報酬です。これは、ランニングでファンド総額の数%をもらいます。これは、ファンド総額にもよります。大きなヘッジファンドだと1%以下もありますし、小さいVCファンドですとと2.5%とかもらえることもあります。
高野:この辺を知っている方は少ない印象です。
高宮:2つ目に成功報酬です。成功報酬は、VCがもらった管理報酬を引いたあとのリターン、要は投資家がネットでいくら儲かったかによって、報酬をもらうというものです。
通常、投資家に1倍返した後の超過リターンの20%がスタンダードになっています。成功報酬のもらいかたには、金融用語でヨーロピアンウォーターフォールとアメリカンウォーターフォールという考え方があります。
ヨーロピアンウォーターフォールはファンドのリターンが1倍を超えたら成果報酬の払い出しが始まります。それに対して、アメリカンウォーターフォールは、個別案件でリターンが出るごとに、ファンド全体のリターン予想に基づき、都度成功報酬を払い出します。
高野:ヨーロピアンウォーターフォールの方が利害の衝突が少ないと聞いたことがあります。
高宮:そうですね。ヨーロピアンの方が、圧倒的に投資家フレンドリーですし、保守的です。
アメリカンウォーターフォールはファンドにとっては早期にリターンを回収できるので良い仕組みです。しかし、例えば後にサブプライムが弾けたり、景気が悪くなった時、リターン予想よりもファンド全体のリターンがでなかった時に、本来発生しているものよりも多く既に払い出してしまっているものを、返さなければいけないという、クローバックという問題が発生してしまいます。
例えば、もらったパートナーがすでに辞めていたら、この過剰分の成功報酬を返すみたいな話がやりにくくなってしまいます。
そのため、リーマンショック以降グローバルスタンダードは、ヨーロピアンウォーターフォールになっています。機関投資家が入っている場合は、特にほとんどヨーロピアンウォータフォールですね。
一方で、日本の若いファンドなどは、早期にちょっとリターンをくださいとアメリカンウォーターフォールを取り入れてしまっているところもあります。
高野:若いファンドの気持ちもわからなくはないですね。
高宮:VCには2側面の仕事があります。1つ目に、ベンチャーと寄り添って一緒に成長していく側面です。こっちは目につきやすいし、報道も多いです。ここの印象ばかりが先行している印象です。
しかし、2つ目に、投資家の皆様から資金を調達し、お預かりした大事な資金をリターンを出してお返しするという側面もあるのです。プロのファンドマネージャとしては、この金融業としての側面も忘れてはいけません。
私は、普段は起業家と合うことが多いので、ラフな格好が多いですが、機関投資家とお会いするときは、ダークスーツに白シャツネクタイです。ちょっとしたコスプレです(笑)。
特に、機関投資家のお金をお預かりすると、VCは景気がいい時も悪い時も複数ファンドでコンスタントに10年で2倍くらいのリターンを出してねという期待値で投資家から資金を調達しています。
また、機関投資家から資金を調達しているVCはIR、レポーティングも期待されています。機関投資家の期待する、ガバナンスやコンプラのスタンダードもあります。まさに金融業です。
高野:機関投資家と仕事ができるVCはまだ少ないですよね。
高宮:最近は、VCに投資するエンジェル投資家も増えてきました。エンジェル投資家はそこまで細かいことに目くじらはたてません。一方、機関投資家は彼ら自身が説明責任があるので、ガバナンスとかコンプラとか言うわけです。
VCと一言で言いますが、誰のお金を預かって、どのステージ、フェーズに誰が投資するのかによって内容は異なると思っています。同じコンサルでも、恋愛コンサルと戦略コンサルがあるの一緒だと思います。「VCとしてベンチャーに投資して一緒に成長するぞ!」だけだと一側面しか捉えられていないと思います。
今後のVC業界全体の発展を考えると、景気や投資家の業績の好不調にあまり振り回されず、業界がどんどん大きくなっていくといいなと思っています。そのためには、一番安定的、継続的に投資をしてくれる機関投資家のお金をもっと呼び込む必要があると思っています。
リターン的にも、ガバナンスやコンプラ的にも、機関投資家レディなVCが一杯増えるといいなと思っています。
高野:これはぜひ、高宮さんお願いします!
高宮さんはご自身のチームメンバーを探しています!
高野:高宮さんはご自身のチームのVC採用もされていますね。どんな方が高宮さんのお眼鏡に叶うのか全く想像も出来ませんが、どんな人が欲しいのかご教示願います。
高宮:人が好きで人を動かせる、好奇心が旺盛で成長意欲が強い人、人間力と言ってしまうとふわっとしてしまうのですが、人間的に魅力的な人が起業家にも好かれると思います。
VCに金融業界出身や戦略コンサルティング会社出身が必須などの要件はなく、そこまでスキルセットは問いません。成長意欲が高ければ、後からハードスキルはいくらでもつけることが出来ると思っています。
高野:やはり最優先事項は、人間力なのですね!
高宮:戦略を語れれば必ず成功するわけではないですよね。
人間力に加えて、人が好き、インターネットが好き、ベンチャー業界が好きであることを大切にします。好きだったらその領域についていくらでも勉強するので、好きが大事だと思っています。
高野:実際、VCを目指されている金融業界や戦略コンサル出身の方もご自身が何をやりたいのか意外とクリアになっていなかったり、調べてすらいない方が多いです。本当にこの業界が好きなのかなと思ってしまいます。
高宮:そうなんです。なかなか情報がオープンになっていないので難しいのですが、「VCになったらどんなVCになって、どんな業界のどんな会社に投資したいですか?」という質問に対する回答から見えてくる部分が多いです。
新聞や雑誌の紙面で踊るようなAIやIoTという抽象的な回答ではなく、「こういう未来が来ると思っているので、こういう未来を作りたいのでAIに投資したいです。」「AIの中でも技術的には画像認識の次は自然言語処理がくると思います。」という粒度で、自分なりの仮説を持っている人は、本当にVCになりたいんだなぁと思えますよね。
私たちも正解はわかりませんし、模範解答は求めていませんが、自分なりに妄想していてこのように世の中が変わると自分の言葉で話せる人、起業家に新しい視点をインプットできる能力がVCには必要です。
起業家と同じ立ち位置でシンパシーを感じてもられるかが大事だと思っています。
高野:高宮さんの仕事そのものですね。
高宮:私の考えるVCの仕事は3つの機能であると考えています。
①まずはベンチャーキャピタル企業の経営者
②投資家に相対する金融業としてのファンドマネジャー
③スタートアップに相対して伴走するスタートアップの支援者
この3つができるようなポテンシャルがあるといいなぁと思います。あくまでもポテンシャルで、完成されている必要は全くないと思います。
高野:要件が高いです!
高宮:そんなことはないですよ(笑)。まずは、スタートアップの支援者として起業家とやっていれば、全然大丈夫です。私もMBAでは、ファイナンスの単位を落としていたりします(笑)。①、②に関してはやりながらで、私も10年以上やっていますが、まだまだですし。
高野:一体どんな方がペルソナになるのでしょうか?
高宮:ペルソナをお話しますと、バックグラウンド自体は多様な人を求めて、戦略コンサルティングファームや投資銀行などのプロフェッショナルファーム、事業会社や商社で新規事業や事業開発をやられていた方、大きなテクノロジーカンパニーにいる方、元起業家など色々でいい、むしろダイバーシティがあったほうがいいと思っています。
人好きの性格で、成長意欲があれば、本当にバックグラウンドは関係ないと思います。加えて、起業家のお友達が多く、インターネットが好きだとか特定のテーマで好きがあるとすごくVC向きだと思います。
高野:必死に探して来ます!
高宮:ぜひ日本のスタートアップ業界、VC業界全体を盛り上げていきたいと思いますので、ぜひエントリーを心よりお待ちしております!