オフィスデザインのプロが語る、従業員エンゲージメントを高める環境作りの極意

インタビュー          
       
       
     

先日、スタートアップのweworkへの入居について話題になりましたね。主な論点は費用についてでした。シードラウンド前後の場合、過度にコストを使っていると、「そのお金の使い方はどうなのか?」指摘を受けるのは当然のことだとは思います。一方で自分の投資先でwework入居企業がありますが、粗利率が高く、接客的なビジネスの場合は、キャンセル率がかなり下がったそうです。

経営戦略として、オフィスをどのようなものにするかが大事です。私がキャリア相談に乗っていても、転職の際にオフィスを見て志望度が上がったという方もいらっしゃいました。これは採用戦略の一つですね。私自身学生の頃、まるで外資系の企業のように見えるインテリジェンスのオフィスは魅力的でした。もちろんエントランスや接客用がよくできていて、中は一般的なものでした。また無駄にお金を使っているというよりは限りある資源の中でコスパがあう投資をしていたように感じます。

今回は、そうしたオフィスデザインで従業員エンゲージメントを高めるポイントを探るべく、企業のオフィスやショップなどの企画デザイン・施工を手がけるユニオンテック のデザイナーの坂井さんとプロジェクトマネージャー(以下:PM)の杉山さんのお二人にお話を伺いました!

従業員のオフィス満足度は著しく低い

高野本日はどうぞよろしくお願いします!

近年、オフィスデザインについて、従業員エンゲージメント向上や採用の観点からも脚光を浴びています。
従業員エンゲージメントを高められるオフィスにしたいという要望はやはり増えているのでしょうか?

坂井そうですね。弊社は特にデザインを強みにしているということもあり、採用・従業員のエンゲージメントを目的として、ご相談いただく数は増えています。最近では成長著しい企業からのご相談が多いですね。

従業員エンゲージメントについては、日本の労働者が自分のオフィスについてどのように感じているか、アンケート結果が出ています。

結果を見ると、なぜ近年対策が急がれているかが一目瞭然ですね。実は、オフィスに満足していると答えた割合は15%ほどしかいないんです。


『一般社団法人 日本オフィス家具協会 顧客政策委員会』(JOIFA)より

高野15%ですか、かなり少ないですね・・・。

坂井はい。一方で、オフィス環境の良し悪しが、仕事の成果やモチベーションに影響すると答えた人は全体の60%〜70%ほどに昇ります。

「オフィスが使いづらい」→「業務効率低下」→「業績悪化」→「会社に不満」→「モチベーションが下がる」→「原因探し」→「オフィスが使いづらい」→・・・と負のスパイラルに陥ってしまうリスクは十分ありますよね。

高野実際にそれが原因かは置いておいて、言い訳の余地を生んでしまいますね。
一方で、オフィス作りに参加したいという質問に賛同している人は比率が下がるのは面白いですね。


『一般社団法人 日本オフィス家具協会 顧客政策委員会』(JOIFA)より

坂井本当はオフィスづくりに参加したいけれども、参加できると思っておらず、諦めているケースもあるかもしれませんね。人によってオフィスに求めることは異なりますので、全員の意見を反映することは難しいのも事実です。

社員を巻き込んだ結果、要望が取り入れられなかった社員のモチベーションが下がることもあるかもしれないですしね。

経営方針・目的からの逆算で理想のオフィスを具体化

全社視点で物事を見れる社長が先導することが多い

高野自社にマッチしたオフィス作りをするために重要なことはありますでしょうか?

杉山PMをやっていて、全社視点で見れる方がきちんと先導することが理想のオフィスを実現する上で重要だと思います。都度、各所に意見を聞きながら進める、という方法では時間がかかり、適切なタイミングで移転できなくなってしまうリスクもあります。

具体的には、社長さんが先頭に立って移転を進めている企業様が多いですね。

フリースペースを作りたい企業の例

高野最近だと、フリースペースを作りたい!という社長さんの声は、よく聞く気がします。

杉山フリースペースを作りたい!というお客様は多いですね。ただ、フリースペースを作りたいから作ります!というのは、少し危険だと思っています。

そのままスペースを作ってみても、利用されないデッドスペースになってしまい、これなら執務スペースを広げておけばよかったと思っている企業様もいらっしゃるようです。

高野スペースを作ってみたけれど、あまり使われていないというオフィスありそうですね。
どうしたら防げるのでしょうか。

坂井この場合だと、「どんな社員間の交流を生むのが経営戦略上必要なのか」というところから、フリースペースという選択肢の妥当性を考えることが大切ですね。

すると、「この部署とこの部署の交流は増やしたいが、この部署は一定の独立性があった方がいい」といったより具体的なイメージが生まれます。

そうすれば、「フリースペースを作るのではなく、執務スペースの導線を変えることで必要なコミュニケーションを生みましょう。」「反対に私語禁止の集中スペースを作り、自席を近くの社員と話しやすい空間にしましょう。」など最適な提案をすることができます。

高野必要な交流を生むことが目的であって、フリースペースがあればいいというものでもないですもんね・・・。ただ、こうした議論がなされる中で、施策がブラッシュアップされるわけですね。

「フリーアドレスにしたい」に潜む落とし穴

坂井同様に増えているのが「フリーアドレスにしたい」というご要望ですね。

フリーアドレスは、外出が多い部署のスペースを最適化したり、席順を日々変えてコミュニケーションが生まれたりするというのがメリットとして挙げられることが多いです。

ただ、フリーアドレスにするとなると、個人ロッカーを設ける必要が出てきます。内線の呼び出しも固定電話ではなくなるため、新たに携帯電話を貸与する必要も出てくるかもしれません。ロッカーの面積や購入費用、貸与費用が嵩み、結果的に必要以上に必要面積やコストが増えてしまう、という可能性もあります。

「コミュニケーションを生もうと思ったものの、不必要なコミュニケーションが増えてしまった。」「フリーアドレスに馴染めず、居場所を失ってしまった。」このような形で生産性が落ちてしまう、ということも大いに考えられますよね。

高野目的に則した選択肢を取らないと、本末転倒に終わってしまう可能性も高いということですね。結果、予算内で理想のオフィスを作ることができなかった、というケースも少なくなさそうです。

坂井まさにその通りです。

法律や配線の問題で追加コストが発生することも

坂井そのため、「こういう間取りにすることは決まっています!こんなレイアウト・デザインでパースを作ってください!」と具体的なご依頼をいただくこともあるのですが、それでも改めて移転の目的や理想のオフィスからヒアリングするようにしています。

よく聞いてみると、決められている間取りだと法律的に理想のデザインを実現できないというケースもあるんです。

こうした場合に、安易にデザインやパース作成を受けてから、法律的な問題に気づいて、相談した上で問題を回避したデザイン・パースを作成したと仮定します。万が一、そのデザインがNGとなると、間取りから作成し直してデザインをし直すことになり、再度時間や費用がかかり、二重コストになってしまうんですね。

予算を抑えるために、間取りを決めた状態で内装会社に持ってきていただいているにも関わらず、結果的に費用が過剰にかさんでしまうのでは、本末転倒です。そうした事態を避けるために、必ず最初に綿密にヒアリングさせていただいています。

杉山ちなみに、間取り決めの前の物件選定の段階で、余計なコストがかかることが確定している、というケースも少なくないですね。

元々のビルの設備としてついているエアコンの種類や配置によって、会議室などの個室をつくったときにエアコンの数や配置が合わず、新たに設置しなければいけない、などが具体的な例です。

その対応で予算が不足してしまって、やむなくオフィス家具のグレードを下げざるを得ない、ということもあり得るわけです。

高野これは知らずに、物件選んでいる企業様も多いような気がしますね・・・。

スタートアップがweworkに入居することの是非

高野ちなみに、最近スタートアップがweworkに入ることの是非が話題になりましたが、お二人はどうお考えですか?

杉山色々な面から是非が問われていると思うのですが、高価なオフィスに入ることも、質素倹約することも、どちらも戦略ですよね。

オフラインで対面で仕事をする場合は、誰もが一度は行ってみたいと思われる環境に入るメリットもあると思います。直前キャンセルが減ったり、お客様との接触回数を増やせたり、と明確に結果に繋がるケースも実際にあるそうです。

反対に、一般消費者に対してWebサービスを提供している場合は、来客が少ないので応接室やエントランスを煌びやかにする必要は必ずしもなかったりします。

この場合、自宅にいるかのような感覚で消費者と同じ視点に立って働けるオフィスも、来社すると思わずテンションが上がるようなポップでおしゃれなオフィスも、どちらも選択肢としてはありですよね。

移転、オフィスには会社の考え方が反映されるので、意見が割れるのは当然です。周りの企業の意見や風潮に流されず、自社にとってはどうあるべきか、というのを徹底的に考えるのが重要だと思います。

ただ、自社オフィスはコンセプト作りから入れるので、こうした選択肢を幅広くとれるのが魅力だと思います。

後工程まで理解したオフィス移転パートナーを

高野そもそも、何度も移転を経験している方は少ないので、企業側にノウハウが貯まりづらいような気もします。

物件を選定するときは何に気をつけたらいいのでしょうか?

杉山ポイントはいくつかあるのですが、移転目的によっても異なるので、一口に言うことはできません。

企業側にノウハウが貯まりづらいというのはおっしゃる通りです。それに加えて、同じ企業でも移転フェーズやタイミングによってやるべきことが変わるので、私たちのような存在が毎回必要になってきます。

なので、あえて言うなら、「オフィス移転を検討し始めたら、できる限り早い段階で後工程まで考えられる移転のパートナーを見つけること」が重要だと思います。

具体的には、物件選定のタイミングでデザイン・内装会社に同行してもらうことがおすすめですね。私たちは無料で同行させていただいています。

高野無料で同行していただけるんですね。

杉山:はい。

物件選定段階で検討し切れていないな、と思うことがあるのは立地ですね。費用削減のために主要駅を外してオフィスを借りる、という企業様も少なくないと思います。

確かに地価の高い駅を避けた方が賃料を抑えることはできます。ただ、その場合別のランニングコストとして、交通費がかさんでしまうことが多いです。金銭的なコストも増えて、社員の通勤ストレスも増加する、となると、本当に誰も得しないですよね。

坂井広さの問題は、デザイン次第でどうにかできる部分もあるので、こうしたハードの面で想定外のコストが掛からないよう、十分留意していただきたいですね。

高野費用を抑えることを考えるあまり、視野が狭まってかえって機会損失が発生してしまう、というのは考えものですね。

ユニオンテックは綿密なヒアリングで想像を超えるオフィスを実現

職人としてのプライドと顧客視点の融合

坂井そうですね。

そのため、費用を考える前に、「どんな目的でオフィスを移転するのか」「オフィスを移転することでどんな効果を生みたいのか」できる限り具体的にじっくりお伺いしています。弊社ではこのヒアリングにかなりの重きを置いています。

実は、ここでお話の時間を取れない場合は、私たち自身も満足できるサービスが提供できないので、お断りさせていただくケースもあります。

作品としてのオフィスはずっと残るものなので、中途半端なものは作りたくない、というのが私たちの根底にある考えです。

その上で、どうやって予算内で、より満足できるオフィスを作るか、というのが私たちの仕事の本質だと考えています。

高野職人さんのような気質と顧客視点が合わさったような不思議な感覚を持ちました。

坂井そうですね。よりよいものを作りたいという職人気質と、顧客のためになることをとことん突き詰めるという文化は、会長の大川と社長の韓の人柄が出ているかもしれません。

どんなに技術的に素晴らしいオフィスでもお客様の要望に沿っていなければ意味がありませんし、どんなにお客様の要望を満たしていても期待を超える技術や工夫を提供できなければ、私たちに任せていただく意味がありません。

だからこそ、ヒアリングの段階で理想のオフィスや優先順位を細かくお伺いすることで、予算が不足している場合も、お客様の期待を超えるような、満足度の高い代替案を出せるようにしています。

二者択一ではなく、なるべく多くの理想を叶える

杉山先ほどの立地の問題の視点を変えて、「都心にオフィスを設けると、坪単価が高くオフィスを狭くせざるを得ない」という問題を例にとってみます。この場合、狭い空間を広く見せる、もしくは狭くても問題ない仕組みを取り入れることで、この問題は解決できます。

パッと思いつくだけでも、会議室の壁面をガラスにする、広く見せたい空間の壁面を鏡にする、フリーアドレスにする、リモートでもMTGしやすいTV会議設備を取り入れる、などの選択肢があります。

こういった選択肢を、経営方針に応じて巧みに組み合わせていくことで、予算の範囲内でより満足度の高いオフィスを作ることができます。

杉山ユニオンテックは従来のゼネコンの下請け型ではなく、工事種類ごとに別々の会社に依頼する分離型で発注していることも魅力の一つだと思います。予算を抑えながら、施工会社と直接イメージを共有することで、予算内で二者択一・トレードオフの状態を解消することができていますね。

一方で、お客様により満足していただくために、時には当初の予算よりも高い金額を提示することもあります。それは、暴利を貪ろうとしているわけではなく、全体を見た際に、不要な費用を削減し、移転後の事業成長に繋がる、最もお客様のためになるオフィスを提案したいからです。

予算を上げるべきポイントは丁寧にプレゼンさせていただき、結果的に予算を上げる価値があると判断していただくケースも多いですね。

高野移転をしたい企業側が「これとこれは同時に成り立たないか・・・」と諦めていることも、ユニオンテックに相談すればできる可能性があるかもしれないということですね。

坂井はい。お客様の理想を実現するために、あらゆる手段を考え尽くしたいと思っています。これからも、「オフィス移転を企業成長のきっかけにしたい」「こだわりのあるオフィスを作りたい」そんな企業様の力になっていきたいですね。

オフィス移転やリデザインをお考えの企業様は、ぜひお問い合わせくださいませ!

高野貴重なお話ありがとうございました!

 

 

執筆者:高野 秀敏

東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。11,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。55社以上の投資、5社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。149社上場支援実績あり。55社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を国内・シリコンバレー・バングラデシュで実行。キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。
一覧に戻る