スマートラウンドさんの取材後半は、2019年に新たにジョインした冨田阿里さんもお招きし、スマートラウンドに参画した経緯と実際に働いて感じた日系・外資企業の違い、大手・ベンチャー企業の違いについてお話いただきました。
▼前半の記事はこちら▼
https://keyplayers.jp/archives/15345/
幅広いキャリアを経験されてる2人なので、多くの人のキャリアの参考になるのではないかと思います。ぜひご一読くださいませ!
目次
COO 冨田 阿里 氏の経歴
2012年インテリジェンス入社。大阪にてメーカーの採用支援を経験後、ベンチャー企業担当を希望し、東京へ転勤。2016年セールスフォース・ドットコムにインサイドセールスとして入社。2017年7月にスタートアップ戦略部立ち上げ。2019年スマートラウンドにジョイン。
代表取締役社長 砂川 大 氏の経歴
慶應大学法学部卒業後、三菱商事入社。海外向け鉄道案件を手掛ける。その後、Harvard Business Schoolに留学、卒業後は米国独立系VCであるGlobespan Capital Partnersに入社し、ディレクターとして投資業務に携わる。同社日本代表を経て、起業。株式会社ロケーションバリューの代表取締役社長として、複数の位置情報サービスを開発、展開。NTTドコモに同社を売却しロックアップを経て、Googleに入社。Googleマップの製品開発部長、Androidの事業統括部長を歴任。2018年2月にGoogleを離れ、5月に株式会社スマートラウンドを起業、現在に至る。また個人としては、エンジェルとして国内外のスタートアップに積極的に投資している。
株式会社スマートラウンド
起業家と投資家を結ぶ事業を営む企業。「スマートラウンド」は、クラウド上で起業家・投資家の両方が、資金調達やその後の事業進捗について記載することで、双方が効率的にプロセスや実績管理ができるプラットフォーム。
冨田阿里さんジョインの経緯
積極的に起業家と繋がり、砂川さんと異なるポジショニングができる人物
高野:さて、取材後半ということで、ここからは冨田さんにも加わっていただき、お話を聞いていければと思います!
早速ですが、冨田さんがジョインするまでの経緯についてお伺いしてもよろしいでしょうか?
冨田:よろしくお願いします。
砂川と初めて会ったのは、Googleをやめるくらいのときだったと思います。
砂川:そうだったね。
冨田:セールスフォースで、スタートアップを支援する部署を作った際に、SaaSスタートアップファウンダーズガイドという本の翻訳版ができました。今では、オンラインでダウンロードできるのですが、新しく部署を作ったことを認知してもらうために、50くらいのVCに手渡しで直接届けました。
ただ、砂川には、直接会うのが難しかったので、書籍で自宅に送ったことを覚えています。
砂川:でも、その後わざわざGoogleまできてもらって、ランチしたよね。当時から、この人かなり飛び込んで仕事ができる人だなあと思っていました。
高野:50ものVCに手渡しで届けに行くようなことは聞いたことがないですね・・・。
ただ、前回お伺いした創業の流れを踏まえると、すぐに一緒に活動した訳ではないですよね?どういったタイミングで、冨田さんにジョインしてもらおうと考えたのでしょうか?
砂川:私は、一度起業した経験もあるので、ある種ロートル(先生・老人的な意味)のようなところがあったのでしょうか。起業家と会っても私には悪いことをいいづらいのではないか、と感じたことがありました。
そこで、私のポジショニングを明確にする意味でも、起業家のネットワークを構築してくれる人が必要だと考えました。
また、私とはなるべく異なる属性や立場で、人と繋がれる人と組むべきだと出資いただいている方からもアドバイスを受けたときに、冨田のことが思い浮かびましたね。
高野:なるほど。ただ、冨田さんの前職もかなりいい会社ですし、転職の際は色々お声が掛かったかと思います。
その中で、スマートラウンドでやってみよう、となったのは何故だったのでしょうか?
冨田:これまでのキャリアの中で、自分でプロダクトを作るというのはできないでいたので、それにチャレンジするよい機会だと思えたからです。それを、自分自身のベンチャー支援の経験を活かしてチャレンジできるのはすごく魅力的だと思いましたし、その感覚は実際に働いてみても変わりません。
今は、CRM・MAツールの導入や起業家向けのイベント企画・運営に加えて、プロダクトに対するフィードバックを毎日必ず1人からはもらってサービスの改善も行なっています。
砂川:かなり大車輪の活躍ですよ。パートナーの開拓もしてもらっているので、私がやっていたことをほぼ全てやってもらっているような状態です。
おかげさまで、戦略などに思いっきり時間を割くことができています。当初の期待を上回って活躍してくれていますね。
高野;パートナーとしてかなり機能していそうですね。
砂川大さん、冨田阿里さんが自身のキャリアから考える、企業属性別の特徴
教育と仕組みどちらで解決するか、自分と他人どちらの問題意識で動くか
高野:お二人は幅広いキャリアをお持ちなので、よく話題になる日系企業と外資企業、大手企業とベンチャー企業の違いなどをお伺いできればと思います。
まず砂川さんから。日系大手企業、独立系VC、スタートアップ、外資系大手企業とキャリアを歩んでいらっしゃいますが、それぞれのメリットデメリットのようなものを教えていただけますでしょうか?
砂川:新卒で入社した三菱商事は日系大手企業に該当すると思いますが、まっさらな人を組織色に染め上げて、文化を統一していますよね。そのため、みんな向いている方向が揃っており、企業としてのアウトプットの最大出力が高かったですね。私のいた頃は、その人の能力を全て担当分野に集中させるような人の育て方をしていました。
優秀じゃなくても、染まりさえすれば動ける文化が特徴だと思います。
高野:なるほど、Googleはいかがでしょうか?
砂川:Googleは三菱商事とは打って変わって中途採用が中心でしたね。内部で、自分より後に入社人の人数・比率が分かるようになっているのですが、3年いただけで会社を辞めるときには60%くらいが自分よりも後に入社した方でした。
人自体を染めることはないので、パフォーマンスが出せるような仕組みが作られていましたね。ただ、優秀な人がくる前提なので、優秀じゃないと苦労する側面もありました。
高野:大手企業とベンチャー企業の比較でいうと、砂川さんにとってはどんな認識でしょうか?
砂川:スタートアップの代表を経験した身で言うと、大企業は他者の問題意識を他者と協力しながら解決する場所という印象が残っています。ベンチャー企業は、自分の問題意識を自分を主とした視点で解決する方法を考えられる場所という印象の違いがありますね。
高野:なるほど、社長になるという観点でいうと、最近、シリアルアントレプレナーとして活躍される方が増えてきた印象があります。
砂川さんはご自身もシリアルアントレプレナーでありつつ、起業家を支援する立場として、どのような心境ですか?
砂川:シリアルアントレプレナーが増えてきたのは、M&Aが広まってきたことが大きいと思いますね。アメリカでは8,9割が売却でエグジットしているのですが、日本ではあまり見られませんでした。
日本はIPOを目指す企業がほとんどで、IPOしても創業社長は会社を辞めづらい風潮があるため、なかなか2回目の起業を、となりませんでした。その中で、M&Aによるエグジットという手段が生まれたことで、創業者がフリーになりやすくなったのが、シリアルアントレプレナー増加の背景だと思います。
その時の選択肢としては、だいたい会社員になる、無職になる、専属投資家になる、もう一回やるの4つが多いと思います。私はもう一度やろうという考えのもと、会社員になることを一時的に選びました。
大企業だから・ベンチャーだから、ではなく、文化やツールで解決できることもある
高野:なるほど。
冨田さんは日系メガベンチャー、外資系大手企業、スタートアップというキャリアですね。同様にそれぞれの特徴を教えてください。
冨田:インテリジェンスに入社したのは、ちょうどテンプホールディングスに買収されたタイミングでしたし、セールスフォース・ドットコムも1万人から4万人に人が増えたタイミングでした。
印象的だったのは、セールスフォース・ドットコムでは違う国で同じ役割を担っている人の顔が見えたことですね。
大きくなるとそれが難しくなることが多いと思うのですが、セールスフォース・ドットコムの場合はそれを感じることがあまりありませんでしたね。場所や時間にとらわれず、同じ役割を担う他国の社員とノウハウをシェアしながら仕事ができるのだな、と思いました。
インサイドセールスのときは、1ヶ月から2ヶ月ほど、和歌山で働いて生産性を比較するような取り組みも行うなど、成果に繋がるものであれば比較的自由のきく環境だったと思います。
なので、大企業という感覚があまりなかったですね。
高野:4万人ほどの規模になっても、そういった体制を構築できているのはすごいですね。
外資企業は退職率が高いケースも少なくないですが、セールスフォース・ドットコムの場合はいかがでしたか?
冨田:成果を出せばしっかり評価してもらえる環境があったので、それが合う人は長く続いたと思います。
また、3年,5年,10年と働くと盾をもらえるなど、長く働いている人を賞賛するための取り組みもありましたね。
スマートラウンドの今後の展望と採用方針
VC・ファンドのバックオフィスに精通した人材を採用したい
高野:スマートラウンドも今後は組織を拡大していくご方針なのでしょうか?
砂川:現在は、役員も含めて7人の正社員に加えて、インターン2人というチームでやっており、拡大できるような体制を整えていきたいという思いはあります。
ただ、恥を忍んで申し上げると、フォーカスが絞り切れていなかったな、という反省が私の中にあり、まずはきちんと軸足を固めて進めていきたいと思っています。
高野:砂川さんでもそんな葛藤といいますか、悩みがあったのですね。
砂川:当初、投資家と投資先の関係構築を支援するためのプロダクトにしようと思っていましたが、欲を出して資金調達ができるツールのようにしてしまったんです。
プロトスターやエンジェルポートのような機能も加われば、より多くのスタートアップに使ってもらえそうだという推測があったのですが、最初から手広く進めてしまったので、コンセプトがぼやけてしまいました。
今は、株主や投資先に焦点を戻して、その成長プロセスを管理できるサービスに注力したいと考えています。
その際に、「関係者をどうやって巻き込んでいくか」「投資家・起業家だけでなく、LPや士業の方も巻き込んで有機的にサービスを作っていくためにはどうしたらよいか」ということをよく考えていますね。
高野:その中で採用したい方はどのような方でしょうか?
砂川:VCでバックオフィスをやってきたような方がいらっしゃれば、特に採用したいですね。具体的には、ファンド管理をして、リターン分析やキャッシュ管理ができる人を求めています。ファイナンスの知識がある人であれば、自社のCFOも兼務的にお願いできるのが理想です。
私と新しくジョインした冨田で、投資のフロント、事業はカバーできるのですが、バックオフィスにメインで取り組んだことがないので、その知見がある方を採用したいですね。
高野:我こそは!という方いらっしゃれば、ぜひご連絡くださいませ!
砂川さん、冨田さん、本日はありがとうございました!
キープレイヤーズ 高野のコメント
ご自身のエンジェル投資の経験を活かして、2度目の起業に取り組んでいるシリアルアントレプレナー砂川大さんにお話を伺いました。
実際に、資本政策に迷っている起業家は相当な数がいますが、株主比率などは上場しない限りあまり表にならないので情報があまり出回っていない状況です。創業当初はどんな計画だったか、実際はどのラウンドで誰からいくらずつ調達することになったか、といった予実データはなおさら残っていません。
こうした日本社会で整理することのできていないデータを収集できるだけでも、かなりの価値がありそうです。起業のダウンサイドリスクをより精緻に推測することができるようになれば、さらに起業しやすい環境も整っていくでしょう。
スタートアップ/ベンチャーの環境を整える、砂川さんのチャレンジを引き続き応援してまいります!
VC/ファンドでバックオフィスの経験がある方は、ぜひContactよりご連絡くださいませ。