元マッキンゼー土井哲さんが語るヒューマンコアの重要性と組織開発の肝 | Road to CxO

インタビュー 採用

こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職のサポートをしているキープレイヤーズの高野です。

Road to CXO企画として、今回は、インヴィニオの代表を務めている、土井哲さんに取材しました。

土井さんは、元マッキンゼーで、DeNAの南場智子さんのとも働いたことのある方です。現在は独立して株式会社インヴィニオを創業、コンサルティングファームの経営をされています。なかでも、組織・人事領域のコンサルティングを得意とされています。

今回は、土井さんに組織人事やタレントマネジメントに重要となる、「ヒューマンコア」についてお話をお伺いしました!

 

目次

代表取締役社長 土井哲さんの経歴

東京大学経済学部をご卒業された後に、東京銀行に入行。同行在職中にMITのMBAを修了。1992年にマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社され、主に通信・ソフトウェア業界や情報システム構築のコンサルティング業務に従事。1995年にはベンチャー企業支援のコンサルティング企業の設立に参画されました。

1997年に、現在の株式会社インヴィニオを設立、代表取締役社長に就任されました。現在では、経営者養成の研修企画や実際の企業の課題を取り扱った戦略研修などを実施。

株式会社インヴィニオの会社概要

社名 株式会社インヴィニオ
代表 代表取締役 土井 哲
設立 1997年7月1日
所在地 〒106-0032
東京都港区六本木 1-4-5
アークヒルズサウスタワー 16階

人材開発・組織開発を中心としたコンサルティングサービスを提供する企業。

業績向上に向けた戦略を明確化し、戦略実現のための組織設計を行うことで、パフォーマンスの最大化を実現する。

人の行動に影響を与える3つの層・要素

高野:本日はよろしくお願いします!

今日は、インヴィニオの土井社長に、行動心理学というジャンルについて色々レクチャーいただければと思っています。

土井さんはマッキンゼーのご出身で、MBAを修了されている組織開発の超プロの方です。マッキンゼー時代は、DeNAの南場さんの部下だったこともあるそうですね。

かなり濃密なご経験をお持ちのコンサルタント兼社長ということでお話をお伺いしていければと思っています。

今日はこちらの1枚のスライドをもとに、色々とお話が進んでいく予定ですので、最初に目を通してみてください。

土井:本日はよろしくお願いします。

今日は、行動心理学を軸にお話をできればとおもっています。

会社を経営する上で、やっぱり人材がカギになります。

いい人材が採れるか採れないかで、業績が左右され、さらに育成もしないといけない。どう育成すべきかというのは、どこの会社の経営者にとっても、非常に重要なテーマなんじゃないかと思います。

その良い人を採用するとか、育成をするとか、あるいは会社に定着してもらうことを考えたときに、行動心理学をある程度知っていると非常に役に立つと思います。

高野:行動経済学は、人の意思決定などを科学する分野で、企業経営に非常に役立つとされていますよね。

土井さん:そうですね。組織にについて、この絵に凝縮しているので、こちらのスライドを見ていただければと思います。

これは、人の行動が何によって決まるのかを表した図です。

当たり前ですが、経営者の方がどういう人を採用したいかというと、やっぱり仕事上で成果を出してくれる人を採用したいと思うんですよね。

成果を上げてもらうには、必ず行動を起こしてもらう必要性があります。

例えば、お客様に自社の商品の説明をするとか、説得するとか、そういった行動が必要になりますよね。

この行動を決める要素がおおよそ3つの層に分かれています。

スキル・経験は後からでも身に着けやすいもの

土井さん:比較的表面的で、後からでも身に着けることができるものとして、知識やスキル、経験があります。何歳になっても身に着けられると言われているものですね。

これは比較的観察しやすいので、先程の絵「人の行動の氷山モデル」では、海から上に顔を出している部分です。ここが知識とかスキルとか経験です。

ただし、経験も一部は具体的にどんな経験をしているのかまで奥深いとこまでわかりませんので、一部見えてない状態ではあります。ただ、わりと表面的に見えやすいものとなっています。

例えば、私は医学の知識は一切ございませんので、目の前で誰かが倒れて意識を失っていても、助けてあげることができないわけです。もちろん携帯電話を持っていれば、救急車を呼ぶくらいのお手伝いはできますが、救命行動はとれません。

知識やスキルが、行動に影響を及ぼすということがお分かりいただけると思います。

高野:なるほど。

価値観・マインドセットも行動に影響を与える

土井:さらにもうちょっと深いところに、価値観やマインドセットがあり、これがまた行動を左右します。

価値観の例を挙げると、当たり前ですが、人間は人を殺してはいけない、罪だと思っていますよね。だから、そういう衝動に仮に駆られても、決して普通の人は人を殺すようなことは基本的にしないわけです。

やってはいけないこと、だめなことという価値観があると、行動を抑制したりします。

一方で、意識とか意欲とか心構えとも言われるマインドセットも行動に影響を及ぼします。

今日は何かやる気が起きないなという日は誰にでもありますよね。仕事の締め切りが近づいていてもやる気が起きないから、今日はやめておこうということもあり得るわけです。

このように、マインドセットも行動に影響を及ぼします。

最も深層にあるのはヒューマンコア

土井さん:そして、3層目一番奥深いところにあるのがヒューマンコアと呼ばれるものです。性格特性や動機と呼ばれます。

動機というのは、よく採用面談の時に、「うちの会社を志望した動機は何ですか?」と聞くときの「動機」とは違います。

ここでの「動機」とは心理学の用語で、英語で言うとMotiveと言われるものになります。「基本的欲求」という呼び方をすることもありますね。

人間は心の奥底に、こうしたいああしたいという欲求があり、それが非常に行動に影響を及ぼすと考えられています。こちらは後ほど、詳細に説明します。

このように、一番表面にあるのが知識スキルや経験。特に知識やスキルは、何歳になっても比較的に習熟が可能と言われています。

その下に価値観・マインドセットと言われるものがあります。価値観は大体25歳ぐらいまで変わると言われていますが、それ以降も変わることがあります。例えば大病をして、命に関わるような辛い経験をしたりすると、価値観が変わることがあります。

今まで仕事が大事だと思っていたけど、やっぱり家族が大事だ、と考え方が変わることがあります。

一方で、マインドセットの方は、日々変わっていて、ある時はすごくやる気が起こっていても、なかなか長続きがしないことも多いです。

そして、一番深いところにあるヒューマンコアと呼ばれる、性格特性や動機の部分は、20歳くらいまでにある程度形成されて、なかなか変わらないと言われています。

実はこのヒューマンコアが行動に非常に大きな影響を及ぼします。しかも、なかなか変わらないので、会社に入ってもらったあとに研修で変えるようなことはほぼできないと考えておきましょう。

望む成果を挙げてほしい場合に無視できないヒューマンコア

土井:話を戻しましょう。

経営者であれば成果を出してもらわなければいけない。その成果を上げてもらおうと思うと行動を起こしてもらわないといけない。そして、その行動は性格特性や動機に非常に左右されます。

そのため、経営者の方が、「社員にはこういう行動をとってほしいんだよね」と思っている場合、その行動がとれるようなヒューマンコアを持っている人を選ばないと、継続的に望む行動を起こしてもらうのは難しくなります。それが最も深層なので。

例えば、営業マンを雇いたいとします。営業が成果を出すためには、お客様のところに行って、商品を説明したり、お客様の質問に答えたり、お客様から値段を下げてくれって言われてもそれに対して、いやそれは簡単にできませんと、交渉するみたいなことも重要になります。

そこで、成果を出すために必要な行動が実際にとれるかとれないかというのは、もちろん知識やスキルも関係しますが、粘り強く説得するとか、粘り強く交渉するとか、実は性格特性や動機に左右されるんですね。

そのため、選考ではこのヒューマンコアを見極めることが重要になります。

高野:そうですね。

私も採用関連の仕事をしていますが、経営者の方よくおっしゃるのは「そんなに経験はなくてもね、明るくて元気良くて地頭が良ければいいんだよ。」ということです。

多くの経営者がこういうことを言うということは、経験も大事だけど、素質みたいなものも大事だってことを意味しているのかな、と経験則的に思っていました。

土井:そうなんですよ。

知識やスキルは後からでも学べるので、誤解を恐れずに言うとそれほど重要じゃないです。もっと深層にあるところが重要ですね。

ちなみに、地頭というのは氷山モデルの中に出てきませんが、地頭もやっぱり良くないと仕事上できないことがあります。

頭を使ってなにか考えたり行動したりというのは、実はヒューマンコアの部分で、成果を大きく左右すると考えられています。

高野:なるほど。

強い動機を活かすことで入社後活躍もキャリアも変わる

土井:ヒューマンコアの部分について、さらに詳細にお話していきますね。

私が、20数年前に会社を始めたころに知り合った会社で、キャリパーという会社があります。これは元々アメリカの会社で、キャリパージャパンという会社が日本にあるのですが、この会社では、ビジネスに関係するような動機をニ十種類ぐらい挙げています。

そして、キャリパーのテストを受けると、どの動機が強いか弱いかというのがスコア化されて出てきます。

内容について私がべらべらと喋ってしまうと、キャリパー社の秘密になるので控えますが、私もその時そのテストを受けてみたんですね。

私は強い動機が5つほどありました。

1つ目は主張力という動機で、自分の考えを伝えたいっていう欲求ですね。確かに言われてみると、「僕はこう思いますけど」とついつい言ってしまうところがありました。

世の中には主張力が強くない人もいるので、そういう方は自分にちゃんと考えがある場合でも、人に対して「私はこう思います」ということをはっきり言いません。

それから私が強いのは復元力っていう動機で、何か嫌なことがあってもすぐに復元する、ということです。

確かに思い起こしてみると、嫌なことを2日以上引きずったことがありません。大体一晩寝ると忘れてしまうんですよね。嫌なことがあると反省するんですが、翌日になると割とケロッと忘れてしまいます。

3番目に強いのが、新規リスク志向でした。先行きがわからないことでも、リスクをとってチャレンジすることが苦痛じゃないんですね。

そして4番目が抽象概念理解力という動機。抽象的なことや概念的なことをわかりたいという欲求です。実際に分かるか分からないかは別問題なのですが、わかりたいっていう気持ちは確かにあります。

10年前以上前のことですが、ハーバード大学のリサ・ランドールという物理の先生が、この世の中は五次元でできているっていう本を出したのですが、「なんだ五次元とは」と思って、本を買ったりしました。

抽象概念理解力がそれほど強くない人に話すと、興味ないよと言われたのですが、私は興味津々でした。

抽象概念理解力が高い方は、抽象的なこととか概念的なことを言われると妙に興味がわいてしまうということになります。

それから私が高いのは、アイデア志向という動機です。何か新しいアイデアを考えるみたいなのが確かに好きなんですね。

例えばお客さんに対して提案書を書いて持って行って、「これじゃちょっと違うんだよね、なんか他のアイデアないの?」と言われても嫌じゃないんですね。

「わかりました、またちょっと考えますわ」と伝えて、全然違うアイデアを考えるのは私にとって嫌じゃないんです。

このように、自分の動機・欲求があるところが、自分の行動に影響を及ぼします。

そのため、経営者の方が、新しい事業を起こしたい。だからリスクをとってチャレンジできるような人を採りたい。みたいな時には、新規リスク志向性が高い人を採る必要があります。

新規リスク志向性の低い人を採用しても、なかなかリスクがあることにはチャレンジしませんので、採用しても本人的にはストレスが溜まるだけで、しかもなかなか実行してくれないということになりかねません。

低い欲求・動機を把握しておくことも重要

ちなみに、私がキャリパー社のテスト受けたときに、低い欲求が4つありました。

1つは慎重性という欲求です。慎重に物事を進めるということなんですが、私は低かったです。

実は新規事業をやる場合は、新規リスク志向性が高くて慎重性が高くない人が向いていると言われています。

他にも、徹底性も低くて、何か丁寧にきちんとやろうというのは結構低かったです。

それからもう一つ低かったのが、外的管理という欲求です。外的管理は外から決められることに対して従おうという欲求なんですが、それが私は低いんですね。人が決めたルールや目標に従うのはあんまり好きじゃない。

外的管理の反対が内的管理で、これは自分で目標やゴールを決めて自分で取り組む欲求です。そちらは高いんですよね。自分で決めたことは一生懸命やりますが、人に決められたことはやりたくないという人間なんですね。

それから私が低いのが猜疑性で、人のことを疑うのが苦手なんですね。猜疑性が低いので、人が言ったことは基本的に信じます。

猜疑性の高い人は誰から何を言われても、「この人が言ってることは本当か?嘘なんじゃないか?」と聞くのですが、私はそれが極めて低いです。

このように、動機は非常に行動に影響を及ぼします。こうしたアセスメントテストがこの二十数年の間に進化して、私がビジネス始めたときには数種類しか有名なものはありませんでした。今では50種類以上ほどは世の中で使われているようです。

回答操作性の低いアセスメント・サーベイを使用すべし

土井:本題に戻すと、行動がは動機に影響を受ける重要なものですが、動機はなかなか見えづらいものなんですね。1時間くらい面談をしたからと言ってその人の本質的なことはわかりません。だから、なんらかのテストのようなものを使って選ぶ必要があると思うんです。

最近はこのようなテストが比較的安価に使えるようになったので、上手に使ってマネジメントに反映させていったほうがいいと思いますね。

テストを選ぶときに非常に重要なポイントがありまして、それが回答操作性です。

大体この手のテストはウェブで行われる場合が多くて、短いもので20分ほど。長いもので1時間半ぐらい答えるテストになっています。

設問が出てきて、選択していくのですが、回答操作性を排除するっていうのが非常に重要です。

回答操作性とは、「この設問に対してどう答えたら自分はよく見えるだろうか」と考えて操作できる度合いのことですね。

例えば、「やる気の起きない日もあってそんな日には会社に行きたくなくなる」という文章があったときに、「はい」と答える人はあまりいないですよね。「はい」って答えたら採用されないかもしれないなと思いますよね。

そういう設問には、ほとんどの人が「はい」と答えずに、「いいえ」と答えます。

これではヒューマンコアが正確には把握できないので、回答操作性をできるだけ排除したテストを使わないといけないんですね。

反対に、回答操作性を排除したテストを使えば、受験者がどういう行動をとるのかが非常に正確に推測できるようになります。

こうしたテストを上手く活用することによって、自社の社員に求めたい行動がとれる人を採用できるようにしていったほうがいいですね。

社内のハイパフォーマー分析をすることで、配置にも使える

さらに進んだ使い方として、社内で素晴らしい成果を上げているハイパフォーマーにテスト受けてもらって、その人のヒューマンコアを分析して、モデル化することもおすすめです。

そのモデルに近い人を採用すれば、同じような行動をとりやすいので、成果を上げやすくなるんですね。

そのため、採用などの場合はテストも活用して、できるだけハイパフォーマーに近い人を採用するのが効果的だと思います。

ただ、注意しなければいけないのが、実はハイパフォーマーの人でも数タイプ存在することです。

例えば、成果を上げている営業マンを分析してみると、3,4つの成功パターンがあるとわかることが多いです。成功パターンが1つしか見えていなかったところから、複数になれば母集団を拡大することができますよね。

また、複数パターンがあった場合、実は採用後の配置にもこの情報が使えます。

成功パターンが3パターンあり、営業一課の課長はAパターン、営業二課長はBパターン、営業三課長はCパターンという風にタイプが違っているとします。

このとき、採用した新卒の子がAパターンに近い場合は、Aパターンの課長さんの下につけた方が育ちやすくなります。なぜならば、考え方が非常に似通っているので、アドバイスされたときに理解しやすいためです。

Aパターンの課長さんは自分のやり方で成果を上げているので、自分のやり方がいいことだと思って部下を指導します。このとき、同じAパターンの人は理解しやすいんですね。

逆に、ハイパフォーマーの特性に当てはまっている人でも、パターンの違う上司にあたってしまうと、思うように伸びないことがあります。

そのため、比較的タイプが近しい上司とくっつけた方が結果が出やすく、辞めづらいです。そういった社内でのマッチングにも使えます。誰と誰をペアにするとうまく育つのか、みたいなことが見えてくるんですね。

このように、一人ひとりのヒューマンコアに関するデータをちゃんととると、採用にも配置にも使えます。

データを活用して効果的な育成・研修を

土井:さらには育成にも使えます。Aパターンの課長さんの下につけたAパターンの営業見習いの若手の方がいるとします。

課長さんの行動パターン一緒なので、行動が似てくるんですが、それでもベテランの人が取れる行動と、若手が取れる行動には差が生じます。

そこで、どの行動が足りていないのかを特定してあげれば、その行動を開発するような研修を組むことができます。

成功Aパターンの課長さんに近づいていくために、どの行動を強化するのが重要かがヒューマンコアから特定できるので、無駄のない育成ができるんですよね。

ところが、このような分析をあまりせずに、「世の中でコーチングが流行ってるから、コーチング研修」「ロジカルシンキングが流行ってるから、ロジカルシンキング研修」のように、流行っているもの、よく使われているものを取り入れてしまうケースが多いです。

より科学的に進めていくのであれば、ハイパフォーマーの人のヒューマンコアからよくされる行動パターンを明確にする。そして、一人ひとりの行動のどこがハイパフォーマーと違うのか、差分の大きいところを探してあげる。それを埋めていくような教育メニューを組むのがいいですね。

これまで、一人一人の個別メニューを作るのは大変だったと思いますが、今はデータを使ってどのように行動開発してあげたら一番伸びるのか、成果につながりやすいのかが数値で分かります。

こういった、科学的な組織管理手法を、ぜひ経営者の方に取り入れていただきたいなと思います。

高野:非常に勉強になります。

認知がヒューマンコアを発揮できるかどうかに関わる

土井:それから、もう一つお話したいのが「認知」についてです。認知というのは、自分自身をどう見ているのか、自分の外側にある他人や会社をどう見ているのかということです。

この認知がマインドセットに影響を強く及ぼします。

例えば、自分はいけてる人間だって認知してれば前に出てきますし、自分じゃダメな人間だよなと認知していると、せっかくいいものを持っていてもそれが発揮されません。

また、この会社って頑張れば頑張るほど、出る杭は打たれるで、マイナスが発生するんだよねと思うとみんなやらなくなります。ヒューマンコアが会社の仕事に向いてたり、知識やスキルを豊富に持っていたりしても、「この会社では頑張っても評価されない」「頑張ったところで評価も変わらない」という認知をしてしまうと、行動化しないんですね。

つまり、この認知というのは、ヒューマンコアが活きるか活きないかを決める大切なものになります。

このように、認知をコントロールすることは非常に重要で、その認知に影響及ぼすのが組織文化なんですね。

行動を誘発するには、うちの会社はやればやるほどいろんなことを任せてもらえて、チャレンジさせてくれる組織文化があるという認知を獲得する必要があります。

そういった意味で、組織文化のコントロールが非常に重要なんですね。

しかし、組織文化は大体の場合、経営者の性格でいつの間にか作られることが多いです。

そのため、データも活用してヒューマンコアを採用に活かしていくことが重要な一方で、組織文化を変えるのはやっぱり経営者の仕事です。

よりポジティブな認知が生まれるような組織文化を作っていくことは、経営者にしかできないこととして、取り組んでいただきたいですね。

高野:なるほど。

土井哲さんへの質疑応答

アセスメントテスト・サーベイはどのように選ぶべきか?

高野:ヒューマンコアを理解して採用に繋げる、育成に繋げるということが大事だと理解した上で1つ質問させてください。

適正診断やテストで言えば、SPIが有名ですよね。最近といえば色々と時代に合わせてサービスが立ち上がっています。私の投資先だとリーディングマークのミキワメやアッテルがテストを作っています。

例えばこういったテストを使えば、かなり解決するものなのでしょうか?

土井:ヒューマンコアを正確に把握しようと思うと、そういったテストを使わざるを得ないとは思います。

ただ、回答操作性がどのぐらい排除されてるのかという観点で、テストが有効なのかどうかを見極めることがとても重要です。

多くのテストはその点がまだ甘いものが多いと考えてまして、信頼できるものはそれほど多くないかなというのが正直なところです。

高野:そういうことですよね。

回答操作性が高くなるのは、理由のひとつに、テストが自己評価になってしまうと受験者に伝わるからなのでしょうか?

土井:そうですね。

基本的には自分について自分が答えるので、良く見せようという気持ちが働くケースが多いと思います。反対に、控えめな人は控えめに見せてしまったりすることもあります。

どちらもよいことではないので、よいテストは「どう答えたらよく見えるか」がわからないようにできてるんですね。

いずれにせよ自己申告に過ぎないのですが、自己申告しかない方法がないので、いかに回答操作性を減らすのか肝になるということです。

お見せした図の右下に、株式会社レイルと書いてありますよね。

この会社が作っているマルコポーロという名前のテストは、かなりのレベルで回答操作性が排除されています。そのため、私たちがコンサルする際は、レイル社のテストを使っていますね。

高野:回答操作性がやはり極めて大事ということですね。

土井:かなり大事ですね。

会社に組織風土のサーベイと掛け合わせることで、内定辞退率低減も

土井:余談ですが、レイル社のテストは会社の組織風土を入力することができます。

18問ほど設問があるのですが、「わが社は成果が出せなかった時に厳しく責任を問われる・問われない」というような質問にマーキングしていくんですね。すると、組織風土にマッチしているかどうかという切り口でも、一人ひとりの評価が出てきます。

だから、成果が挙げられそうな人かどうか、組織風土にマッチするかどうかという二軸で候補者をプロットできます。

結果、その会社の仕事ができて成果もあげてくれそうで、且つ会社になじんでくれてあまり辞めなさそうな人を選ぶ、みたいなこともできるんですね。その点が非常に面白いテストだなと思います。

高野:そう考えると、スキル面とヒューマンコア的な部分と組織風土があったときに、一般的にはスキルを重視しているところが多いと自分は感じているのですが、スキルを重視しすぎた結果、スキルがある人が入社したけど、なぜかうまくいかなかった、ということも発生してきますよね。

こうした採用ミスは結構各社でも発生していると思うんですよ。こうした組織風土とのマッチ度合いもテストで分かれば、だいぶ回避できるのでしょうか。

土井:ある会社さんは、このテスト使って採用時のトークを変えて、内定辞退率の低下にも成功しましたね。

あなたに関して、テストを使って分析した結果、うちの会社で成果が挙げられそうで、組織風土にもすごく合っていますと。これから何年間か会社に人生かけるんだから、どうせなら自分がやりやすくて成果が出せるところを選んだ方がいい。だからうちに来た方がいいと思うよというトークにテストを使ったんですね。

その結果、辞退率が激減したという会社さんがあります。

それまでは、一次面接をやって、二次面接で課長クラスの人が面接して、三次面接で役員が面接して、良さそうであれば、うちにおいでよみたいなトークをしていたんですね。

そうではなくて、うちの会社はテストの結果をすごく重視します。その結果、あなたは活躍できそうだし、うちの会社にぴったり合っています。うちに来て過ごしたら色々学べて成果も出せます、ということで辞退率を下げたという会社さんがありますね。

高野:なるほど。それはたしかに辞退率下がりそうですね。

面接の場合、社長中心に、面接力の中でもアトラクト力が強いかどうかで採用力が決まってくると思いますが、このアトラクト力の高い人はどの会社も限定されています。

そのため、面接官によって内定辞退率が高かったり低かったりすることも多いんですよね。アトラクトされていない面接官に「君はうちで活躍できる」と言われると、逆に志望度が下がってしまうこともあります。

そこで、テストという客観的・科学的なデータで示すことによって内定辞退率が下げられるというのは面白いですね。

土井:今HRテック・タレントマネジメントみたいなことが流行り始めていると思うんですが、データベースの中にはこういったデータを入れるべきだと思いますね。

人事管理システムにどういったデータを保管しておくべきか?

高野:私もどの人事管理システムをどういう時に導入したらいいんですかという質問を受けますね。

土井:問題はその中に何を載せるかですね。やはり、ヒューマンコアのデータを入れるのが重要だと思います。

例えば、現状、確かにハイパフォーマーはいるんだけれども、これから事業も変えていくし、今のハイパフォーマーが未来のハイパフォーマーとは限らないので、今後の戦略に合わせたタレントマネジメントをしたいという相談を受けることもあります。

その時には、これからとる戦略をヒアリングして、その戦略を成功させるために必要な行動をピックアップしていくんですね。そこで、未来の戦略は実行するための行動パターンを特定します。

もともとアセスメントテストは、ヒューマンコアから行動を予測するモデルが作られているので、逆に求める行動を入力すると、蓄積されたデータからどういうヒューマンコアの人がその行動を取りやすいかが逆算できるんですね。

その結果、求める行動をとりやすい人が選べるようになります。そういう時代になったんですね。

そのため、ヒューマンコアのデータがデータベース化されていると、今の採用や配置、育成だけでなく、未来に向けたアクションもとれるようになります。

高野:ありがとうございます。

タスク型からクリエイティブ型の組織への変革するポイントは?

高野:他にも、聞いていただいている方にいくつか質問をしていただきましょうか。

Xさん、お願いします。

X:ありがとうございます。

タスク型の組織からクリエイティブ型の組織に変革していく場合もこうしたヒューマンコアも有効なのでしょうか?

土井:少し具体的な話をしてみましょうか。

クリエイティブな会社を作りたいということであれば、新しいことを生み出す動機のある人が集まらないとダメですよね。

今日のお話ですと新規リスク志向性とか、他にもアイディア志向が高い人たちを集められるといいですよね。

少し古いんですけど、DDIという会社が2011年に作ったレポートによると、いくら鍛えても鍛えられないものの一つに好奇心があるそうです。

その結果を採用すると、クリエイティブな組織を作るためには、好奇心の高い人を採用するのは重要ですよね。研修したらやれるようになるものではないので、こうした動機に着目して人を集める必要があります。

こういった方針を立てたり、人選をするためにも、ヒューマンコアのデータを取ることは有効だと思います。

X:ありがとうございます。

トップダウンとボトムアップ、どちらがいい?

X:もう一つ質問なのですが、トップダウンがいい、ボトムアップがいいという議論は長く行われていると思うのですが、土井さんはどちらがよいとお考えでしょうか。

土井:上からトップダウンで落としていきたいという考え方と、現場主導で動かしたい、動いてもらいたいという考え方がありますよね。

まずは経営者がどちらのスタイルを採りたいかによると思います。前者のように、上から与えて業績を振り分けて、あなたはこの結果をあげてねと上から落としていきたいパターンもありですよね。

反対に、現場で自由に発想してくれて、それが成果に繋がればいいのだっていう考え方もあり、それも当然ありです。そのため、どちらでもよいと思います。

ただ、求められる組織行動は変わるので注意が必要ですよね。

上から落としていって、それに合わせて成果をあげてほしいよという考えであれば、動機としては、与えられた目標を達成する外的管理の動機を感じる人じゃないと続きづらいです。

そうではなく、現場でどんどん目標を立てて成果をあげていく会社にしたいのであれば、内的動機が重要です

このように、トップダウンか、ボトムアップか、ではなく、会社としてどうありたいかに合わせた採用すべき人材像が明確になっていることが大切だと思います。

X:ありがとうございます。

組織サーベイと個人サーベイを組み合わせていかに組織開発するか?

高野:他に質問ある方いらっしゃいますか?Yさんお願いします。

Y:私は今、経営企画で人事をやっていて、タレントマネジメントをしています。まさに、ハイパフォーマーを分析して、制度の廃止や採用をやっているのですが、最近、リモートになって、組織のあり方や求められる人材は転換期だと感じています。

そこで、組織サーベイと個人サーベイ、2つのアセスメンをどう組み合わせるべきか、アドバイスいただけると嬉しいです。

土井:私の一番好きな話ですね(笑)。

まず組織開発という言葉について、私は組織開発は「戦略を実行するための組織能力の開発」だと思っています。そのため、みんなで対話して仲良くなりましょうとかではなく、戦略実行の観点から組織の効果性をあげるの取り組みが組織開発だと思っています。

そう考えたときに、戦略を実行する上で各組織が発揮しなければいけない組織能力が定義できると思っています。

例えば、ある製薬会社さんで、その会社が癌領域に力を入れているとします。癌領域で新しい薬を作っていくとなると、研究開発部門が新しい薬を生み出せないといけないし、自分たちでできなければ、癌領域の技術を持っている会社を探して買収しないといけない。それからすごくお金をかけて開発するので、全世界的に展開することができないといけないわけですね。

その戦略を実行しようと思うと今度は実現するために現場で行われるべき活動が導き出されます。

例えば、研究開発部門で癌領域のこの分野の研究・実験をする活動が行わなければいけなません。全世界で一斉にマーケティングしようと思ったら、各国の規制に合わせながら、特許について申請を出すなど色々な活動がありますよね。

この活動ができるかどうかで戦略が実行できるかどうかが決まるので、その活動がやれるだけの組織ができているのかを調べます。そして、弱い部分を見極めて、その点を強化するような施策を打たないと、組織能力開発とは言えないと思っているんですね。

また、それができているかを診断しようと思ったときに、二つのやり方があります。

一つは、活動システムマップというものを作ることです。もう一つのやり方としては、組織能力を客観的に見るアセスメント・サーベイを使うことです。私たちがよく使うのはデニソン組織診断というものですね。

それらを使うと、組織上のどの能力が高い低いというのが分かるので、能力が低い部分を強くするための施策を打っていくのがいいと思います。

Y:ありがとうございます。

対話をすることには意味がない?サーベイの結果をどう活用すべきか?

Y:弊社では、後者のサーベイ系をやるとなっているのですが、言葉で話して分かりあった方が早い、みたいな意見もありますよね。

土井:その意見、非常に多いんですよ。対話すればなんとかなるという考えですね。関係の質がよくなると思考の質が高まり、その結果、行動の質が高まって、結果の質も高まる、という考え方ですね。

でも、「何のために対話をするのか」が明確で、戦略実行に好影響がない限り、私は意味がないと思っています。

例えば、日本でラグビー・ワールドカップ行われたときに、日本代表のメンバーはすごく対話していましたよね。あれは世界一になるぞという明確な目的があっての対話なので、意味があると思います。

でも、仲良くなりましょう、心理的安全性が大切です。という目的で行われる対話には、全然意味がないんじゃないかと思っています。

Y:私もそう思っています。そのため、サーベイ結果から施策を考えるときに、よくわからないグループワーク研修をしがちですが、そういうことではないのかなと感じています。

土井:その点は、先ほどの活動システムマップを作るといろんな打ち手が見えてきたりするので、興味のある方はぜひ調べてみてください、

ある会社で11部門くらいのリーダーにヒアリングしたんですね。その上で、内容を可視化しました。

その結果、お互いの間の連携が発揮されてないってことがすごくよく見えてきました。

既存の事業を守るための有効な開発が開発部門で行われてなかったり、新しいものを作ろうとして研究開発はしてるけど、それを事業化する受け皿がなかったり、間に落ちている構造的な問題が見えてくるんですね。そのため、それを改善する施策を打ちます。

このとき、対話ばかりしていても、会話する相手との部分最適化しか行われず、組織の全体の成果最大化には繋がりません。対話するよりも、業務フローを変えるなどの手を打たないと何も変わらないですよね。

やるのであれば、「こことここの連携がとれてないですよね」ということを明確にした上で、「抜けている連携をどうやってつなげますか」という対話をしてもらうことなら意味があると思います。

Y:そうするとサーベイ結果を活かすためには、何が原因か、抜けている点はなにかを特定してフィードバックしていくことが大切なんですね。

土井:おっしゃる通りです。原因が特定されてないのに施策を考えることに意味はないと思います。

Y:ありがとうございます。大変参考になりました。

入社後に鍛えにくい、採用時に見ておくべき素養とは?

高野:ご質問ありがとうございました。Zさんいかがでしょうか?

Z:お伺いしたいのは、なかなか鍛えにくい素養についてです。

好奇心以外に、組織開発の場で鍛えにくいとされているものはありますか?

土井:前述のDDIのレポートには、5つくらい載っていました。

今覚えているのがアロガンス、つまり横柄な態度をとるということですね。

横柄な態度をとらないといけない仕事があるか分かりませんが、横柄にふるまうのは訓練しても難しいそうです。

あと、重要なものとしては、リザルト・ドリブンですね。いわゆる成果志向は鍛えられないそうです。

高野:これめちゃくちゃ大事な話ですね。

Z:身も蓋もない衝撃的な真実ですけど、成果志向がないと、採用した時点で負けてしまうということもあるということですね。

高野:さすがのZさんの質問力が良かったです。

本日はありがとうございました。人材業界で働いている身としても、大変勉強になりました。

土井さんの発信されている内容に興味を持った方は、土井さんやインヴィニオさんが発信する役に立つ情報をTwitterでフォローしてみてくださいね!

取材あとがき

後日、ヒューマンコアについてのある事例をご共有いただきました。インヴィニオで実際にあった話だそうです。

ある問題を起こし、その後辞めていただくことになった社員Aさんについて。レイル社のマルコポーロを受けてもらっていたため、Aさんのヒューマンコアをレイル社須古社長に読み解いてもらったのが以下の文章だそうです。

「Big5では、フットワークが軽く気さくで、チーム志向であり、情報をどんどん仕入れ、頭は論理的に思考することが解ります。一方で、良識性が極めて低く、情緒安定性も次いで低い。

誠実さは20しかなく、損をすると解れば平気でウソをつく。完遂は27しかなく、受けた仕事は最後までやり遂げない。そして役割意識も37しかなく、自分の任務を軽く考えてしまう。

そして情緒安定性の3つとも低く、緻密性も低い。

要するに、仲間とは仲良く仕事をしたいと考えるが、社会人としての責任感、使命感はないと言えます。いろんなことを知っていたいので情報は収集し、論理的にゼロイチで話そうとするため、一見、仲間からも一目おかれるかもしれません。しかし仕事の精度はかなり低く、しかも最後までやり切ることはない、極めていい加減な人と見れます。

Business Big5では、だいたい高いけれども、ストレス耐性が極めて低い。特に要求・指示耐性は10しかない。こんな低い数字は見たことがありません。誰かから指示されるのはまっぴらゴメンという人です。

仕事上で責任を持つことや上からの指示命令に全く耐性がない。残業は最小限しかしません。できればしたくないという考え方。それでいて、孤立しても良いとは考えておらず、周りの仲間からは良く見られたいという考えです。

変革創造性もあるため、新しいことを言い出すし、アグレッシプさと明るさもあるし、いろんなことをよく知っていてしかも論理的な話そうとするので、目立つ存在になりますが、しかし、最後には、とんでもなくいい加減であり、無責任で、使命感ゼロがバレてきます。

動機を見ると、達成、権力がほぼ同じで、少し離れて親和、そして回避が21。

まとめると、ポジティブ幻想の症状で、自分は人より優れていると勘違いしている癖に、仕事は無責任で質は悪くやり遂げません。対人ストレスがとても低いのは、逆に言うと、人からとやかく言われることに耐えられない。もし他人が自分を攻撃してくると、持ち前のアグレッシプさで攻撃し返します。

一言でいうと大バカヤロウに見えます。」

ヒューマンコアについて、分析できていれば、防げるミスマッチやコンプライアンス問題もありそうですね。

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執筆者:高野 秀敏

東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。11,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。55社以上の投資、5社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。149社上場支援実績あり。55社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を国内・シリコンバレー・バングラデシュで実行。キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。
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