こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職のサポートをしているキープレイヤーズの高野です。
最近はスタートアップが盛り上がっている一方で、「スタートアップはリスクがあるんじゃない?」「なんとなく怖い…」という人は依然として多いように感じます。
リスクはどんな会社にいてもあるものだと思いますが、スタートアップにおけるリスクはあまり理解されていないようには思います。私自身、リアルを発信するように心がけていますし、失敗談もなるべくお話するようにしているのですが、まだまだ十分とは言えない状態ですよね。
そこで、今回はスマートニュース執行役員の川崎裕一さんと、スタートアップのリアルというテーマでお話させていただきました。
はじめに
高野:本日はスタートアップのリアルということで、スマートニュース執行役員の川崎さんとお話できればと思います!よろしくお願いします。
川崎:よろしくお願いします!
高野:今日は、いつものインタビューとは反対で、基本的には川崎さんから質問をしていただき、私が回答する形式で進めます。
もちろん川崎さんにも、ご自身の経験からお話いただければと思っています。
川崎:最初に簡単に私の経歴を説明させていただきますね。端的に言うと、ずっとエンジニア創業者の会社の中で、マネタイズの仕事にキャリアのほとんどを費やしてきました。
現職のスマートニュースは7年前に入社しました。そこから、広告事業をゼロから立ち上げて、現在はスマートニュースの収益の柱となっています。
一応、収益事業を創出したという意味では、私もファウンダーであると自負して仕事を頑張っています。
高野:ありがとうございます。私は、スタートアップ・ベンチャー企業の転職・採用を支援するキープレイヤーズという会社を経営しています。
加えて、エンジェル投資や社外取締役・顧問などの形で、ベンチャー・スタートアップの成長に役に立つことをやっています。
川崎:ありがとうございます。
ということで早速本題に入っていきましょう。
今日はこんな質問をしたいなというものを3つ考えてきたので、それを軸にお話していきます。
一つ目は、成功するスタートアップの見抜き方。
二つ目は、気をつけるべきスタートアップ。
三つ目は、成功するスタートアップ転職とは。
こちらの3つをお伺いできればと思います。
高野:分かりました!できる限り、赤裸々にお答えしていきます(笑)。
川崎:お願いします(笑)。
成功するスタートアップの見抜き方
川崎:ではまず、成功するスタートアップの見抜き方についてお伺いします。
高野さんご自身もスタートアップを経営していることもありますし、クラウドワークスやメドレー、識学にも投資実行して取締役にも名前を連ねていらっしゃいます。本当にスタートアップのど真ん中の立ち上げや採用支援することされていると思います。
その長年の経験の中で、成功するスタートアップにある特徴ってありますか?
高野:そうですね。
一つ目は、やはり起業家・経営者の方の巻き込み力というのはいつも挙げさせてもらっています。
川崎:なるほど。
高野:巻き込むというのは、社員の方もそうですし、お客様もそうですし、株主の方もそうですね。
多くのステークホルダーの方をどんどんと巻き込んでいくっていう、とてつもない情熱持っていることはかなり大事だと感じています。
巻き込み力というと、営業的な巻き込み力をイメージされる方も多いです。でも、それだけではなくて、炎の種類は別に赤い炎ではなくてもいいと思います。
内側にメラメラ燃えている青い炎タイプの方もいらっしゃいますよね。
自分の周りの人をきっちり巻き込んで、経営チームを作れるかというのが、まずとにかく大事です。一人ではやっぱり成功できませんね。
川崎:巻き込み力っていう観点だと、たしかに色々な経営者のタイプが居ますよね。
例えば営業だったら、「これくらい売上をあげられたら、このドメインでトップ取れるから一緒にやろう」とか。エンジニアだったら、「このプロダクト面白いよね、一緒に作ろうよ」とか。相手が興味のあることをフックに巻き込んでいくことが大切ですよね。
ちなみに、この人の巻き込み力は他の人と違って優れているな、というケースやエピソードありますか?
高野:そうですね、やっぱりワクワクする未来が語れることが、すごく大事だと思いますね。
クラウドワークスだったら「働く人々を笑顔にする」のように、キャッチーでかつワクワクする未来を示しています。
「人々を笑顔にする」というのは確かに自分もやりたい、「働き方革命」も時代の流れに沿っていて、大義名分もある。クラウドワークスはこうしたワクワク感をうまく伝えることができて、優秀な方が集まってきましたね。
他にも、メドレーの瀧口さんも、すごく高いところを見ていらっしゃるなと初期から感じていました。
ただ、もちろんビジョンとそろばんは両輪揃ってこそですね。稼げなかったら、何も始まりませんから。
「なんとなく上手いことをやって、スモールでイグジットします」という人のところに、多くの人は関われないですよね。
なので、初期の頃のスタートアップであれば、野心的な大きなビジョンがあるのは、大きくなるスタートアップの共通項ですよね。
上場するなど、だんだん会社が大きくなると、パブリックマインドが高まるので、大きくなった企業の社長からそういうことを感じ取るのは難しいかもしれません。役割柄丸くなってくるので。
ただ、そういった成功されている皆様が初期の頃どうだったか振り返ってみると、やはり尖っている方、野心的な方が多いです。
衝突も厭わないくらいのエネルギーがないと、大きなスタートアップは立ち上がらないですね。
川崎:なるほど。
例えば、クラウドワークスさんだったら吉田さんって、最初からそういうビジョンを口にされていたんですか?
それとも自分で日々業務したり、社員さんやステークホルダーの皆さんと話していく中で、クラウドワークスや吉田さん自身の軸が固まって言葉で出てくるみたいな感じなのでしょうか?
高野:私が見てきた中では、だんだん高まってきたという認識ですね。
トラクションや売上をちゃんと上げてくる実業の部分もありつつも、事業が進むにつれて、より言葉に磨きがかかってくるイメージです。
やっぱり、会社が前進すれば見えてくる未来もより解像度が高くなります。解像度が高くなればさらに迫力が出てきますよね。
あと、私は上場が全てだと思わないんですね。やはり上場がひとつの目標になると、当然パブリックカンパニーになるにあたって、どうあるべきなのかという指摘をされたりして、真剣に考え抜くようになります。
すると、発言がよりパブリックに相応しいものになっていき、毎日相応しい話をしていると、ある種の人格変容が起きますね。これは誰か特定の人の話ではないです。
そういった意味では、初期の頃、自分は成功したい、とにかく稼ぎたいんだ」みたいなマインド自体は、私は全く悪いと思っていないですね。
川崎:なるほど。
高野:やっぱり最初は、自己顕示欲みたいなものがあってしかるべきだとも思うんですよね。起業するくらいですから。
一方で、ある程度成功してきて、周囲からももう着目されたという状態になってくると、つ所の目標はもう達成していますから。それじゃあ喜べなくなってきます。
そこから、経営者の方の人格がさらにグレードアップしていくというのは、色々な人を見て感じていますね。なので、最初から、キャッチーなビジョンを語れていることを重視しているわけではありません。
川崎:その話は面白いですね。
自己顕示欲は、欲としては深いものと思いますし、色んなソーシャルメディアを見ていても、この人すごい自分語りするな、という方も少なくないですよね。
でも確かに、成長して会社の規模が大きくなったり上場したりすると、そういう発言が減りますよね。
裏を返せば、そうしてパブリックにいいことをやっていきたい!というのは、上位の欲といいますか、より欲深くなっているのかもしれませんね。
要は、自分が満足しているだけじゃなくて、この世界を何とかするためにもっとやらなきゃという風に、自己顕示欲じゃ全然満足できなくなるのかなとも、僕は捉えました。
高野:そうですね。
社会的な影響力、社会貢献力みたいなものはより大事だと感じています。結局、社会性を帯びていなければ、皆から応援もされ続けないということにも、途中で気づきますしね。
必要性迫られる側面と、自分自身の欲が昇華する、2つの側面がある気がします。
川崎:高野さん色んな方をご覧になっていて、最初は自己顕示欲が強かったけど、今は全然前とは違うなという人もいそうですね。
高野:そうですね、経営者の方がどんどん成長されて、ステージがどんどん上がってらっしゃるなと感じる方はたくさんいますね。
あと、よく「上場ゴール」ということをおっしゃる方も海外にいらっしゃったりしますよね。
実際上場した後に、いわゆるVC等の180日のロックアップが解除された後に、徐々に株価が残念なことになってしまい、時価総額が三十億未満になってしまうことも実際にありますよね。
ただ、私の投資先や周囲の方には、「上場をゴールとして上手いことやった」と思っている社長は、少ないですね。
川崎:なるほど。そういった方が少ないのは理由があるのでしょうか?
高野:目標を更新したり、どんどん高みを目指したりすることが楽しいと思う方が多いからでしょうか。
一丸となって戦って上場する、というのは、ある種、野球やっている人がプロ野球選手になるみたいな感じだと思います。
でも、いざプロ野球選手になったら、今までエースで四番だった人も、エースで4番の集まりになったら、同じ立場でいられないことの方が多いですよね。
例えばジャイアンツのコーチをやっている元木選手も、高校時代、圧倒的な四番バッターでも、プロの世界に入ったらバントをして右打ちをしてみたいな感じで戦っていました。
やっぱりプロの世界に入るとそこでまた厳しい競争が始まる中で、能力を発揮し続けるということは、なかなか簡単にできるものではないと思うんですよね。
それでも、もっと高みを目指したい、負けたくない、という気持ちが強い社長は、上場後もどんどん成長していくと感じていますね。
川崎:かなりリアリティがある話をしていただいていますね。
僕もいくつかの上場会社に今も関わっていますが、仰る通り、上場のプロセスってすごい大変ですよね。それ故に、社員がまとまっていくっていうのはすごく感じますが、そこでも経営者のタイプが如実に出ますよね。
一旦、上場したらそのとき考えようっていうタイプの人と、上場した後を予め考えようというタイプ。
で、やっぱり上場すること自体が、「42.195キロ走り切ってゴール」みたいな感じがないわけではないと思うんですよね。
上場はゴールじゃないでしょと、上場の経験なく言う人もいらっしゃいますが、やっぱりそんなに甘いものじゃないと思っています。やっぱり一つ本当に大変なことやるということに変わりないと思います。
ただそこから、めちゃめちゃ苦しいけど、あと5キロ走ってこい、もしくは必死に100メートルの水泳やった後に、もう一回頭をグイって水の中に突っ込んで、あと100メートルだって言われているのと近い感覚を覚えるのは事実だと思います。
それがゴールだと思った瞬間に、すぐ次の目標が来るから、さすがに息つぎしたいと普通なりますよね。
でも、次に挑戦することに慣れている人は、やっぱりもう一度苦しいことやってでも先に進むし、休む時間はないから次に行こうと考える人が多い。
これはやっぱりこういった経験している人なのかどうか、というのが大きいですよね。
事実、経験している人は、複数社で上場を経験していたり、連続で会社の規模を大きくしたりしている。この、ゴールと思った瞬間から新しい目標を掲げられて、そこに向けて走り出した経験があるというのは大きいように感じますね。
あと僕も色々な会社を経験して思うのは、フェーズが進むごとに求められる能力がどんどん上がるということですね。
やっぱ会社のフェーズが変わっていけば、基本的には一人ひとりが担う仕事も大きくなり、難しくなっていきます。
だから、それに追いつかずに今までと同じやり方でやっていると、会社としてはその人を評価できなくなるのが、残酷な真実としてありますよね。
高野:フェーズが変わると、人に対しての評価軸が変わるというのはあるあるですよね。
川崎:そうですよね。上場後のチャレンジもそうですが、一度ゴールして気持ちいいところから、もう一回ゼロからやらないといけない。
そうしたら、自分自身の評価もゼロからになりますよね。もちろん、評価者としては、今までの頑張りに感謝しつつ、今現在の評価とは少し切り離さないと次のチャレンジがうまくいかない可能性が出てきます。
この積み上げてきたものをある種捨ててでもまたチャレンジする覚悟が、創業者に近ければ近いほど求められる部分はありますよね。
だから、大きく成功する会社ほど、経営者自身が成長し続けているというのは言えるかもしれませんね。
気をつけるべきスタートアップの特徴
川崎:次の質問なんですけど、様々なスタートアップに関われてる中で、全てが全て成功したわけではないと思うんですよ。
こういうスタートアップは、実際成功確率が低い、失敗の道辿りつつある、というようなものをお伺いできますか?
求職者の方にとっては、「スタートアップ選びで気をつけるべきこと」というテーマですね。
高野:そうですね。まず、実は投資して成功するということと、転職して成功するということは、ある程度相関はあるんですけど、同じではないということは理解しておいていただきたいですね。
その上で、重要なことは「転職後に活躍できる環境かどうか」というのは、スタートアップ選びで気をつけるべきだと思います。
「華やかで人気なスタートアップだけど自分のカルチャーにいまいち合ってなかった」
「大型調達しているベンチャーなのでいいと思って入ったが、転職後活躍できるポジションがなかった」
こういったことは、スタートアップ転職で度々あるケースですね。
ホームページがかっこいい、ビジョンが美しい、資金調達額が大きいという見せ方も採用する企業としては大事なことではあります。
でも、求職者としては、ご自身が転職後に活躍できるかということを包括的に考えて意思決定されたかどうか、が大事だと思いますね。
川崎:なるほど。どうしてもウェブサイトがかっこいいとか、会社のブランドがある、調達額が大きいというのは、目に見やすい指標ではありますよね。
高野:そうですよね。
一つの参考になることは確かなんですけど、やはり入社後に外部向けのブランドと内情は違うということもあります。
これは、悪意のある発言では全くないのですが、上場している会社さんでも、同じポジションの方が4回交代しているような会社さんもあるんですよね。この場合、なにか続かないなりの理由があったりします。
儲かっていて上場する会社でもそういったケースはありますから、儲かることとそこでの働きやすさは、完全には一致しないですよね。
逆に言うと、すごく地味な会社だけど、自分がすごく貢献できて、急成長を牽引できることもあります。
そこはやはり働き手として見てどうなのか、を考えたいですね。社員の方はもちろん、CXOクラスの方の場合もかなり大事になりますね。
川崎:なるほど。
会社を見るときに、見えにくい部分を求職者はどう見ていけばいいのでしょうか?どういう努力をして、どんなポイントを見るべきか、ぜひ教えていただきたいです。
高野:そうですね。やはり情報戦ですよね。会社のホームページに書いてあること以外の裏情報をいかに仕入れるか、ですね。
これは、かなり大事なビジネススキルでもあります。
私が大学時代に勉強したことの一つに、ノートの貸し借りがあるんです。
川崎:ノートの貸し借りですか?
高野:大学に入って、めちゃくちゃ頭のいい人がたくさんいるなと思ったんですけど、必ずしもその人の成績と繋がらないですよね。
流通してないけどいいノートを手に入れるためには、自分自身が他の教科のいいノートを持っているとか、またはその相手の方が釣りが好きだったら釣りの話ができるとか。
限定的な美味しいお店を知っていて連れていける、など、その人のためになる付加価値を提供することが必要です。
これは、社会人になっても同じで、やっぱり自分が付加価値を提供できないと、流通していないけど重要な裏情報は仕入れられないですよね。
何かを見極めるためには、情報にリーチする必要があり、そのためには自分自身が付加価値のある人間にならないと情報の等価交換は成り立ちません。
なんでも教えてもらえる、聞けると思っている人も一定数いらっしゃいますが、長続きはしないですよね。
川崎:そういうことですね。
入社してからのことを想像するためには、公開されていない情報を手に入れなければ具体的にならない。
それを仕入れるためには、相応の情報の交換、プロセスが必要になって、自分自身の付加価値がないと良い情報は手に入れられないということですね。
高野:そうですね。あとは、継続的に情報を収集することも大切だと感じています。
転職を考えていて、ご本人が転職したい企業の情報だけ欲しいみたいな方が多くいた時期もありました。
そのときは、その方が転職に成功するためならと思って教えていたんですけど、教えてもその人がそんなに活躍してないなと感じたことがしばしばありました。
転職にも、やはりビジネススキルのようなものが必要で、それが身につかない状態で転職しても、転職後活躍に繋がらないなと。
そのため、日頃から有益な情報・裏情報にアクセスしてもらえるように、オンラインサロンをやるようになりましたね。
川崎:なるほど。
反対に、採用側の目線で、こういう人はなかなか転職後活躍しないな、という特徴ってありますか?
高野:そうですね…「肩書にこだわり過ぎる」人というのは、成功するケースが少ないかもしれません。
もちろん、ポジションが人を育てるとか対外的に交渉が有利だという意見もあります。
でも、経験則として、「とにかくCXOじゃ何か嫌だ」みたいな人で、仕事がすごくできる人は少なかったように感じますね。
今雇われ経営者、プロ経営者をやっているような人が、取締役以外では入らないというのは理解できます。
できる人、結果が出ている人は、重要なポジションで重要な仕事をしているので、適切な給料や株、SO、ポジションを用意しないと来てくれないし、来てくれてもやめちゃいますよね。
でも、大手とかコンサルとかにいて、いきなりスタートアップなら取締役で入れるかと言われると、それは違うと思っています。
川崎:なるほど、なるほど。
私自身同じような考えをもっていて、ポジションにこだわって転職したことは一度もないですね。
これは、自分のことを低く捉えているかというわけではなくて、ポジションは奪っていくものという感覚があるからです。実力で奪えるものなら、最初からもらうことにそんなにこだわる必要ないですよね。
給料についても、稼いだら稼いだだけ、「俺これだけ稼いでいるのに給料これじゃおかしくないですか」と言えますしね。
それを最初から交渉するというのは、あまり入社後のことを考えても、あまり得策じゃないなと思っています。
実際に、私の場合、実績が認められたら、執行役員・取締役に任命していただけていますしね。
高野:入社後に認められれば、自然と役職はついてきますよね。そうしないと、優秀な人は離れていってしまうので。
ただ、経営者、ベンチャー社長がすごく人を見抜けるというわけでもないので、難しいですよね。
川崎:人を評価するプロではないですもんね。
高野:面接で全てを見抜くっていうこと自体は私自身も不可能ではないかとやっぱり思っていますね。
どこまでいっても、やはり何事も100%っていうことはないですから、意思決定してからは自分の意思決定が正しかったことを証明するために努力をする、ということが大事だと思いますね。
川崎:そうですね。
そういった意味では、入社前に、お互いに期待していることをとフェアに話すことがかなり重要ですよね。
「入社後に自分が活躍できるようなリソースがあるか」
「もしくはないんだったらそのリソースを獲得するだけの権限があるか」
「なければ自分が獲得できる余地があるか」
この辺りのことは、入社前に情報を得て、考えた上で転職することが大切だと思います。
スタートアップ転職を成功させるために大切なこと
川崎:では、最後の質問で、スタートアップ転職に成功するためには、どんな点を意識したらいいか、教えていただけますか?
高野:そうですね。
自分が重視したほうがいいと思うポイントとしては、経営者の巻き込み力、成長市場でビジネスをしている、市場の中で勝てそうな会社、という3点ですね。
成長市場というのも、どこかのタイミングでは成長カーブはゆるやかになってしまうので、正しい市場を見極めることが大切です。
また、市場が成長していても、敵が強すぎると市場シェアをとれず、思うように成長できないケースがあります。
そういった意味では、いわゆるキラキラスタートアップもいいですが、少し地味だったり、不人気な業界のような、みんなが諸手を挙げて興味があると言わないような領域の会社さんは、活躍して大きく伸びるチャンスが大きいと思っていますね。
川崎:なるほど。それらを求職者目線で見極めるためにはどういうアクションをとればいいのでしょうか?
高野:私だったら、周辺の会社に何社か面接に行きますね。
そうするとどっちがより魅力的か、より勝てそうか、というのは、ある程度気付けると思います。
とは言っても、私は長年転職エージェントとして活動してきたから気付ける部分もあるかもしれません。若手の一回目二回目の転職時にすべてを見抜くこと自体は本当に難しいと思っています。
ただ、仮説を立てて何らか情報収集に熱心にやり、悩みながら意思決定する経験自体がかなり大事なことですよね。仮に一度、二度のご自身の中での失敗があったとしても、失敗する方法が分かっている人の方が後々活きてきますよね。
35歳以上で起業した成功者の方も数多くいらっしゃいますし。
やっぱり成功し続けるためにはなかなかやっぱり粘り続け、また選択が必要なら選択をして、という戦いの連続ですね。
川崎:なるほど。
少し脱線するんですが、こういうタイプの人はシード期のスタートアップ、レイター期のスタートアップ、大きい会社の新規事業の方がいいみたいな特徴ってありますか?
高野:そうですね。
シード期においては、何でもやるというスタンスや強みが明確にあってエッジが立っていることですね。やったことがない業務でも、やってみてできるようにする、という考え方が根付いている人が活躍しやすいですね。
レイター・大企業と会社が大きくなればなるほど、関係各所を調整するスキルが重要になっていくと思います。できないことは、自分でやるのではなくて、できる人の力を借りる、という感じになっていきますから。
そのため、ビジネスパーソンとしての調整力、バランス力、あとは人から嫌われないような人間力みたいな総合力が次第に求められるようになると感じています。
川崎:確かにそんな形で役割も求められるスキルも全然要件変わってきますね。
高野:そうですね、都度、自己変容させられる方はシード期でも上場前後でも大企業でも活躍できるというスーパーマンもいます。
でも、そこは都度変化させられない、またはしたくないという人も多いと思うんですね。それは事業ステージに合ったところで働いた方が。会社にとってもご本人にとってもハッピーだと思いますね。
その辺り、途中で撤退することを悪としないような日本のスタートアップ社会であってほしいとは思いますね。全てのSOを取り上げてしまうというようなケースもあると聞くので、そうした環境は整備していきたいですね。
アメリカの方に聞くと、途中でやめた方でも、このような功績があったからこの分くらいは持っていてもらったという話も聞いたことがあります。
そういうエコシステム的なものが時代によりフィットして、皆がハッピーなる方法ないかなということはいつも考えています。
川崎:SOですね。アメリカとかだと一般的にはサポータブルって言いますけど、いわゆる会社を辞めても失効しないオプションが主流だと思うんですね。
それと比べると、日本は辞めた時点で取り上げられてしまう、みたいなことが多いのかもしれませんね。
高野:そうですね。だから、こういったスタートアップ環境というのも川崎さんと整えていければと思います。
川崎:整えていきたいですね。ぜひよろしくお願いします!
高野:はい。本日はありがとうございました!
取材あとがき
川崎さん、改めてありがとうございました。
川崎さんの質問力が大変素晴らしく、今回は基本的に高野が答える形を中心として進めさせていただきました。
スタートアップ業界はまだまだ目に見えない部分も多く、興味を持っている方もどこかで不安があるというケースは少なくないのではないかと思います。
そういった不安を払拭していくためにも、今後もリアルな情報発信をしていきます。
川崎さんと働くことやスマートニュースに興味を持った方、スタートアップ転職に興味のある方はお気軽にご連絡くださいませ。