こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職のサポートをしているキープレイヤーズの高野です。
今回は、おすすめのベンチャー・スタートアップということで、営業SaaSを提供するマジックモーメント(Magic Moment)代表の村尾祐弥さんの話を伺いました。
Google、freeeのご出身と名だたる企業を渡り歩いた村尾さんが創業したマジックモーメントは注目の企業です。創業に至るまでの経緯から、サービス、今後の展望までお話いただいています。
顧客に価値を提供し、結果を出すためのエッセンスが詰まっておりますので、結果を出したいビジネスパーソンの皆さんはぜひご一読くださいませ!
マジックモーメント(Magic Moment)創業までの経緯
(今ではこれだけの規模に成長したMagic momentの創業までのストーリーに迫ります)
高野:まずは簡単に自己紹介をお願いできますか?
村尾:はい。マジックモーメントという会社で代表を務めております村尾です。
起業する前はGoogleやfreeeで働いていました。
長時間労働が精神的に苦手なので、効率的な会社経営を意識しています。まあもちろん状況に応じて自分としては猛烈に働くんですけれど。
社員が労働集約的に長時間働くのを見るのはあまり好きではありません。めんどくさいことを社員にさせてしまうのが一番嫌いです。。
規模感としては、最近は仲間も集まってくれるようになり、30人ほどの会社となっています。
高野:村尾さんは無駄には長時間労働しない派なんですね。経営者の方の長時間労働は基準が違うのではないかという声もありますが…(笑)。
村尾:インパクトの大きい仕事を常に狙ってほしいし、自分としても最高効率で常に最高の結果を求めてきたので、会社文化として育んでいきたいです。
高野:村尾さんは、今をときめく会社での経験をされていますが、改めてどんなキャリアだったのか教えて下さい!
村尾:ときめく会社。。なんだか自分の会社がそうだとは全く思ったことがないですw
では大学時代からお話させていただきますね。私は大学時代に生きていく力を育んだと思っています。
なかなか勉強のやる気が出ず、浪人したのですが、親は本当に優しかった。そんなに恵まれた環境ではなかったですが予備校の学費も出してくれましたし、特に父は東京に出ることも応援してくれました。
大学時代は、一人暮らしを始めて見つけたファミレスでアルバイトしていた、ごく普通の大学生でした。商品管理や店舗清掃も時間帯責任者もやらせてもらって、仕事を任される責任を感じながら、こうすれば生きていけるんだなと自信がつきました。
高野:あの村尾さんがファミレスで仕事していたんですね!
村尾:特に好きな仕事は商品管理でした。フレッシュなものを、廃棄なく提供するために発注する仕事です。天気や近所の祭なども全部頭に入れた上で発注していましたね。
2001年の11月末にしし座の流星群の観測ラッシュがあったのですが、このとき、夜中に多くの人が来店すると思い、「きのこ雑炊」を発注上限の99個発注しました。通常考えられない数値なのですが、「絶対にご注文入ります!」と店長を説得して注文しました。
結果、翌日の流星群が終わった後は、待機列ができるほど混み合いました。身体を温めたいお客様がこぞってきのこ雑炊を注文してくださり、すぐに売り切れていたのを覚えています。
深夜で従業員はたったの二人だったから、本当に料理提供に時間がかかったんですが、お客様はコーヒーを啜りながら雑炊の提供を待ってくれた。優しかった。若かった頃、何もかもがありがたかったです。
こういった経験を通して、アイディアとその説得材料を準備して、それがお客様の価値になるという信念があれば、人のためになれること。また、自分はそれにモチベーションを感じることが分かりました。
高野:身近にありそうなワンシーンですが、お客様への価値提供について考え抜かれた素晴らしいエピソードですね。
就職されたあとは、どういったキャリアを歩まれたのでしょうか?
村尾:仕事のし過ぎで4年で卒業がギリギリできなくて、、当時は秋卒業もなかったので絶望してましたが、毎日コムネットという会社が2部学生の僕を学生のまま正社員として内定をくれて、本当に喜び勇んで入社しました。営業が楽しくて、本当に楽しくて、毎日電話の受話器を握りしめていました。
深夜は出発する団体のバスを見送り、その深夜添乗手当を握りしめて朝まで仲間と飲み屋で夢を語らうような毎日でした。眠かったですが、、、笑
ここでも印象的なエピソードがひとつあります。東京大学のアメリカンフットボール部、ウォーリアーズのことです。
ウォーリアーズは、40年間軽井沢で合宿を行なっていましたが、部員数の増加によって宿を変える必要がありました。毎年その民宿までのバスを手配していましたが、それに伴い、「今年は大手旅行会社に頼む」と言われてしまったのです。
しかし、150名の大所帯で10連泊貸切の宿がすぐに見つかるはずがありません。2ヶ月後に「やっぱり手配してくれないか」と電話が来ました。でも、当然ながらもう宿はありませんでした。
すべての候補地を洗い出していく中で、斑尾の宿のことを思い出しました。自社から予約している2団体を他の宿に変えれば、150名10連泊で空けることができたのです。ただ、斑尾にはグラウンドがなかったんですね。
そこで、当時敬慕していた部長のアドバイスを貰い、レンタカーで斑尾まで行って「向かいの山を2ヶ月でグラウンドにできませんか?」と相談しました。
「頭おかしいのか」と返されそうになりながら、計画を元に「10年間リピートさせてみせます。そして自分の顧客を振り替えてでも満館にしてみせます」と口説きました。
結果、2ヶ月後には150名の宿泊施設とグラウンドが準備されていました。誰も信じないですし、誰にもできないような仕事ですよね。
このように、「この価値提案をできる人間は他に絶対にいない」そんな性質の仕事にはまっていましたね。諦めなければ、何でも実現できるのだと思いました。
高野:まさに村尾さんにしかできない仕事ですね。
村尾:その後、メディア企業を経てGoogleに入社しました。当時は、Google広告の新規営業として働き、日本のリーディングカンパニーに導入してもらう中で、気づいたらその四半期、売上は世界一になっていました。APAC全体のImpact Awardにも選ばれました。
そうした実績を当時直属のマネジャーだった現freeeの野澤さんが評価してくださり、すぐにプロモーションさせていただきました。当時のJapanの新規セールスオペレーションはグローバルに標準化されるようになりました。
その後は、大手広告代理店向けチームの責任者を務めました。ここでも、パートナー向けのインセンティブプログラムを作り、グローバルにケース展開して標準化されることになりました。
こうして、自分のアイディアで世界を塗り替えていく仕事は面白かったです。でも、大好きだったGoogleを僕は急き立てられるように辞めることになりました。
高野:どうして辞めることになったのでしょうか?
村尾:2015年の春先にある社内プロダクトが発表され、世界で二カ国だけが選ばれるということで、私のチームに導入されることになりました。
これは、営業担当者に提案内容や予算、メニュー、タイミングを自動提案するツールでした。結果、営業担当の目標は売上からポイントに変わり、仕事はアルゴリズムによって優先順位付けされたタスクを完了することになりました。
このとき、Googleは人間が期待するものとそうでないものをすでに分けていることに気づきました。私の培ってきた営業スキルが、アルゴリズムに置き換えられることに心はひどく抵抗しました。自分がやってきたことって意味があったのかな?と。
そんな思いを抱えながら、前述の野澤さんに誘って頂きfreeeに転職しました。猛烈に働き、全国各地を飛び回り、最先端の営業組織を志向するfreeeで学び行ったことは、人的ではあれど、Google のあの社内プロダクト そのものだと気づきました。そして、freeeでは驚くほどの高い結果をみんなで残すことができました。
この経験から、サブスクリプションでビジネスがデータ化される中で、顧客とのエンゲージメントのプロセスが正しくデータ化されていれば、それを説明変数にして相関や関係性を見れることに気づきました。
つまり、売上がどうあがるかは、顧客との合意一つから予測できるのではないかと思ったんですね。
そして、このコンセプトを実現できるチームを作り、プロダクトとして表現できるのは自分しかいないと思いました。
それまで、正直、会社を作りたい、起業したいということは全く思っていませんでした。できるとも思っていなかった。
ただ、短期間ではありましたがfreeeで一定の結果が出て、短期間でもやりきった感がありました。
Google と freeeでの経験を通して、最先端かつ、本当に結果が出る組織をつくる自信が生まれました。この培ってきた経験を様々な企業様に提供したいと考えたのが起業のきっかけです。
高野:村尾さんのようなキャリアを歩んでノウハウを持っていらっしゃる方は稀ですよね。
ちなみに、なぜマジックモーメントという社名にしたのでしょうか?
村尾:人は連続性のある人生を生きているので、いきなりそれを超えられることをなかなか想像しません。でも、経営者が課題を解決するために思い切ったアプローチをとると、遅行して大きなインパクトある結果が出て、みんな驚くことがありますよね。
この瞬間を、私はGoogleで使われていた言葉を使って「Magic Moment」と表現しました。
未来を手繰り寄せると、驚きと困惑が発生しますが、「Magic Moment」といえば、比較的受け入れやすくなりますよね。
経営だけでなく、努力し続けてもなかなか伸び悩むことがあります。でも、諦めずに努力すれば、どこかで一気に壁を超えられる瞬間がきます。これも「Magic Moment」だなと思います。
社内に、同僚に、このようなMagic Momentが訪れたら嬉しいですし、Magic Momentを経験したメンバーが社外によりMagic Momentをもたらすことができるようになるような好循環を生みたい。
これが、Magic Momentの社名の由来です。
高野:村尾さんご自身も高い壁を超えてきたからでしょうか、説得力のある素敵な名前ですね。
マジックモーメントのサービス
(Magic Moment PlaybookのUI。顧客価値最大化のためのアクションを提案してくれます)
高野:起業後は事業内容を見直しながらピボットされることもあったかと思いますが、現在はどのような事業を営まれているのでしょうか?
村尾: 「Magic Moment Playbook」というSaaSを提供しています。顧客エンゲージメントの向上が顧客価値最大化につながる、という考えのもと、営業プロセスや顧客エンゲージメントを可視化し、最適なアクションを提案するクラウドサービスです。
私は、これを現場に導入すれば、いわゆる営業側のDXはほぼ完結できるんだ くらいに思って開発しています。そして、その実装能力を有する、スタートアップとしては珍しい会社であると自負しています。
導入企業は、旧来の獲得型から顧客エンゲージメントを起点とした組織・オペレーション設計を実現できるほか、属人的になりがちなスキルを平準化し、成約率アップにつなげることができます。
私がグローバル企業やユニコーン企業で経験してきた中で、データを活用するというのは当たり前でしたが、多くの企業がデータを作る部分の組織文化で苦労しているように思います。
色々な企業様とお仕事をさせていただいたり、話を聞いたりする中で、データ活用できていない自体が課題ではなく、データ活用する重要性を社員が理解できていないことが課題だと感じました。
データを活用する前につくる文化が形成できている会社が少ないんですね。この課題をスケール感をもって解決したいと考えています。
高野:主に大手企業向けのエンタープライズサービスになると思いますが、どんな課題を解決しているのでしょうか?
村尾:1つは、最も大事なことが「データになっていない」 という状態を解消します。
多くの企業でアポを取得して頑張って商談していますが、それがデータになっていないため、事実の分析はもちろん、成功パターンが構築できず思うように営業効率を高められないでいる企業が多いです。
歴史・実績ある企業でも、先輩の背中を見てなんとなくで学ぶ場合が多いので、そういった不確実性を、説明変数を明らかにして解決したいと思っています。
先輩の背中を見てなんとなくで得た学びよりも、過去の何件もの営業を分析した結果から得られた学びのほうが効率的な営業に繋がります。
何がお客様にとって関係性を深める結果になったのか、そしてそれはしっかりと会社にとっての売上や関係継続に繋がっているのか?ということですね。
データを正しく活用するためには、「行動すれば、その結果が構造的なデータになっていく」状態を作ることが重要です。
行動しても蓄積されない状態だと、営業もやる気が出ないですよね。
データ分析という言葉が注目されていますよね。データを分析するためのプロセスは、収集→加工→分析という3つのステップを辿ります。
分析するためには必要なデータを収集して、それを加工することではじめて価値のある分析ができるんですよね。そのための基盤を整えることが重要だと感じています。
また、最近は様々なSaaS、CRMを導入している大手企業も増えています。アメリカの企業では1社当たり100以上のツールを導入していると言われています。
日本のベンチャー・スタートアップでもかなりの数のSaaS入れてますよね。
中でもCRMツールでは、「入力が大変」「現場が入力をやってくれない」という課題感をもっている企業も少なくないようです。
これは、SaaSのために働いてしまっていることが原因のひとつに挙げられると思います。
SaaSのために働く・働かされるのではなく、「自分のために記録する」ことが大切です。記録と入力は違うものなんですね。
記録は将来の自分のために録を記しますが、入力はあくまで作業です。「このデータをなぜ入力するのか」が理解できて、はじめてそれが記録になるわけです。
このような使い方ができると、マネジメントのためのツールだけではなく、営業のエンゲージメントを高めるためのツールとして機能するようになります。
反対にそれがわからないければ、営業からすると「80本電話すれば1案件取れると言われているからやって、終わったら入力する」作業のような感覚に終わってしまいます。
そうではなく「お客様に対して何をしたのか、どの行動がお客様のためになっているのか」。これが正しく導き出すことが大切です。
そのためには、データがつながっていないと分からないんですよね。ただ、獲得できたかどうかを記録しているだけでは分かりません。
高野:営業の方もこれだけ頑張って行動しているので、何かそこから得られるものってありそうですよね。
村尾:そうなんです。頑張って価値を提案している営業が、同じ数やって獲得するロイヤルカスタマーの数に違いがあれば、そこに明確に価値があるはずです。
そういったものをデータを収集して正しい数式で加工し、分析しているのが私たちの仕事です。
高野:なるほど。
SaaSを提供するだけでなく、もっとコミットしてほしいという会社もあったりするんですよね?
村尾:もっと売上を挙げたいから、マジックモーメントの人に実際に来てほしいという会社もあります。
正直、既存のオペレーションが面倒になっている営業の方は多いです。そういった中に、経営企画やDX担当の人がいきなり入って変えられるかと言うとそうではありません。
一緒に現場に入って、その現場に合った形で導入することが大切になります。とはいえ、お客様の力で変革できるようにしていかないといけないというのは、サービスの提供者として感じているところでもあります。
高野:最終的に、マジックモーメントのサービスを使うことで、何が分かるかが明確であれば、より導入しやすくなるかもしれませんね。
ちなみに、既存のエンタープライズの企業さんがデータを取得して、見える化されてくると具体的にどんなことが分かってくるのでしょうか?
村尾:個別具体的な企業のことは紹介できないのですが、ご利用いただいているお客様は渉外活動のすべてが見えるようになります。
人を採用するときは、「どういう人を採用する必要があるのか」ということを考えますよね。企業の経営目標を達成するにあたって、足りていない人物像を因数分解して、採用をするわけです。
営業も同じで、「どういう行動をする必要があるのか」を因数分解して行動することで、結果を出すことができるようになります。渉外活動のすべてが見えると、LTVから生産性まで結果につながる様々な目標が立てられるようになると感じています。
高野:最近では、「営業を科学する」というようなことも言われていますよね。
村尾:実はマジックモーメントでは、「営業を科学する」とは言っていないんです。
ただ、「お客様はどうしたら喜んでくれるのか」をデータで語れるようにすることが大切だと感じています。
だから、私たちがやっていることは「顧客との関係性を可視化して、未来を作る」ことだと考えています。
これまで、営業のパフォーマンスはオーラ、雰囲気でしか語られてきませんでした。
でも、頑張ってお客さのために価値提案を高めることだけにフォーカスして営業活動の量をこなしていれば情報が構造的に溜まってくるので、「価値の出せる営業とそうでない営業、どう違うんだっけ?」という分析ができるはずなんです。
「トップ営業の人は何が違う?」というハイパフォーマー分析は昔から使われていますよね。でも、それは客観的でなく、主観的なものがほとんどでした。
Magic Moment Playbook を使えば、この分析結果が自動的に出てきます。具体的には、「この人はこの点を深く・早く合意できているから売れているね」というのが分かるようになります。
お客様にどのように価値が届いているのかを見て、より価値が出せる方法を徹底すれば、お客様も嬉しいし、自然と売上も上がっていきます。嬉しいことしかないですよね。
高野:なるほど。
話は変わりますが、このコロナ禍であらゆる会社が営業に悩んでいますよね?対面の営業が減ったことで、うまくクロージングできないという企業も多いようです。
これについては、村尾さんはどうお考えでしょうか?
村尾:それについては、商材による部分も大きいと思います。会うことで決まっていた場合は、会えなくなったら当然決まらないですよね。
例えば、MRの方は病院の先生と直接会うことで成り立っていることも多いでしょうから、苦戦を強いられているのではないかと思います。じゃあ、新規営業どうする?といきなり考えてもなかなか難しいですよね。
でも、対面するところから引き合いを作れていて、「お客様にどんな価値を提供すれば買ってくれるのか」が分かったら話は別です。訪問でも電話でもお客様が買ってくれるだけの方法論をやりきれば、絶対買ってくれると考えています。
高野:お客様がどんな提供価値を評価して買ってくれるかが分かり、それを提供できれば問題ないということですね。
マジックモーメントの資金調達
(Magic Momentに出資しているDCM Ventures、DNX Venturesのとのお写真)
高野:スタートアップを加速度的に成長させていくにあたって、資金調達も重要ですよね。
マジックモーメントには、有名VCも投資を決めています。DCM Ventures、DNX VenturesなどシリコンバレーのVC、freeeやビザスクを当てているような企業からも出資を受けています。
どのようにしてVCを口説いていったのでしょうか?
村尾:口説いた っていう感覚はまったくないんですけどね(笑)
まず、Googleにいたときに、ビジネスケースをよく作っていました。どのポイントを抑えたら、エグゼクティブレベルの人はROIがよいと考えて見てくれるか、ということはよく考えていたんですね。
そして、それがどんなに既存の枠組みから大きく変えなければならないケースでも、「絶対にこれをやるべきなんだ」という意思を、あらゆるコンテクストやデータを使って迫力持って伝えることが大事だと常に考えてきました。
また、そういうストーリーの話し方にも多少慣れていましたし、英語が苦手な僕はあらゆるものを使って、たとえそれが顔芸と言われようが、日本語がわからない相手が悪いんだというくらいの気持ちで英語ネイティブと話すときにも物怖じぜずに伝えてきた。そういうこともあると思います。だって、ダイバースって言ってるじゃんかと(笑)
freeeにいた頃、よく地方に営業に行っていたのですが、税理士の方とよくお話をさせていただいていました。freeeの提供価値を理解してもらえるまでは、ひどいことを言われたこともあります。
そんな経験もあり、本質的に正しいこと、自分が信じてるものを誰より熱量持って伝える、それだけが僕がコントロールできることのすべて、と考えることができるようになった。
伝わらなくても、変えることができなくても、それは僕がコントロールできることじゃない。なので、僕は極限まで自由だなぁと思えるようになりました。
営業活動は僕はとてもリードタイムを気にするので、期日がある中で結果を出すことが求められます。しかし投資を受けるのはもっと時間的に自由を感じました。
「投資をされるとしたらどういう状態だろう」というOKR的に発想して、その状態や条件を構造分解して、その状態に向かって日々ワクワクしながらそこに近づけていくのが凄く楽しかった。
なにより、僕は投資家の方に恵まれました。投資いただく結果に向かう日々、いただく言葉の一つ一つが成長を促してくれました。
DCM Venutres の投資委員会に向かう数ヶ月、日本チームが本当に支えてくれた。あの感覚は一生忘れずに感謝していきます。
ビジネスケースを作って、いつまでにどうあるべきかを考えて、そういった方々のサポートを受けながら、おかげ様で実行するのはスムーズに進められたと思います。
高野:ご経験が活きたのですね。
反対に、どんなVCから出資を受けたいと思っていたのでしょうか?
村尾:投資をいただくのであれば、多様性を受け入れてもらえるVCから調達をしたいと思っていました。
freeeでは、人が多様であることをすごく尊重していました。人が大事にしていることを否定せず、尊重できることで大きな成長につながったと思っています。
Googleでも、グローバルで意見を戦わせても、むしろ傾聴してくれる文化がありました。
Patience と言ってましたけど、自分に本質的な良いアイデアがあればどんな立場の人も、英語が苦手な僕が必死にたどたどしく伝える言葉を、我慢強く聞いてくれた。
マジックモーメントもそういった文化を培っていきたかった。
DCMの本多さんと話したときに、近い考え方を感じ、引き上げてくれる方だと感じたので、ぜひ出資いただきたいと思いました。
正直、投資を受けなくてもそれなりにやっている会社だったんです。ですから正直言うと、本多さんがいなかったら、私はスタートアップではなく堅く中小企業経営者として事業を進めていたかもしれないとさえ思っています。
人生は選択 とはよく言ったものだな と心から思います。
マジックモーメントが採用したい人物像
(コーポレートサイトより。5つのCore Valueを掲げて前進中!)
高野:今はどんな仲間を採用したいとお考えでしょうか?
村尾:全ポジション採用中です(笑)。
中でも、シニアの事業開発、PdM、リードエンジニアのポジションは一番採用したいと考えていますね。あとは、わがままを言うと世界レベルのデザイナーの方に来てほしいです。
高野:なるほど、どういった方に来てほしいですか?
村尾:自分の担当する事業や領域のポイントを抑えているか、「これもいつか来た道だ」と思える人だといいですね。
経験したことがない仕事でも、メタで今までの経験を生かして、行動できる人は高く評価しています。経験値による部分もありますが、地頭がいいと解決できるなと思うこともあります。
あとは、カルチャーフィットですね。
一つの例として、「入ってきたあとに、その人にみんな耳を貸すんだっけ?学べることがあるんだっけ?」という点は注意してみています。
よく言われる話ですが、マネジメントは肩書がつくりますが、リーダーシップは周りが作ります。周りの人が認めなければ、リーダーにはなれないんですよね。
やっぱり周りの助けがないとなかなか難しいですよね。どんなに能力の高い人でも、入社してから発揮できなければ意味がありませんから、その人が入社した後のイメージはするようにしています。
高野:反対に合わない人のタイプはありますか?
村尾:最近はっきり言うようにしているのですが、コミットメントは欲しいです。
マジックモーメントには「一生涯かけてやるんだ」という人が多いです。
スティーブ・ジョブズの「このまま一生砂糖水を売り続けたいのか、それとも私と一緒に世界を変えたいのか」ではありませんが、私が人を採用するときは「一生捧げるつもりできてくれ」という気持ちで呼んでいます。
逆に、「絶対これを成功させてやるんだ」という温度感でないと合わず、いずれミスマッチが起きてしまうと思います。
高野:マジックモーメントの人は、まさに本気な方が多いですもんね。
村尾:成功に対してまっすぐで、価値を提案し続けないことが気持ち悪い、という人が多いですね。その価値が高いか低いかはお客様が決めるので、一心に、価値提案に集中していることが大事ですからね。
不器用かもしれないけど、真摯に正しいことをやっていくことを嫌いじゃない、そんな人が集まっているようにも思います。
マジックモーメントには、「GO TRUE WAY」というコアバリューがあります。
ビジネスが大きくなってくると、完全に TRUE じゃなくてもいいよね、という瞬間って出てくると思うんです。そうならずに、GO TRUE WAY を進みつづけられるかは、CEOの仕事だと思っています。
真実の道、表面的な眼の前の目標を満たす道、2つの道が現れたときに、真実の道を選び続けられるか。TRUE を標榜することさえ苦しいですが、これを一心にやっていけば成長できると確信しています。
ある意味ぶきっちょなんですけどね(笑)。それはそれで、とても僕も含めてみんなで作ってきてるその不器用さも好きです。
高野:GO TRUE WAY。これめちゃめちゃかっこいいですね。
村尾:The Breakthrough Company GOのクリエイティブディレクターである鶴見さんが導いてくれた言葉です。自分たちのプロダクトや経営にまっすぐ向き合ってきた生き方をお伝えして、ディスカッションを重ねる中で導いてくれました。
TRUEという言葉でいうと、TRUE INDEX というデータ活用フレームワークを使った経営を布教していきたいと考えています。顧客との関係性をもとにした正しい経営判断ができると思うわけなんですよね。
TRUEに考えようということで、お客様には THINK “TRUE”というコミュニケーションコンセプトを打ち出しています。
高野:ミッション・ビジョン・バリューやっぱり重要だなと思います。
村尾:そうですね。なかなか言葉にならなかったのですが、すっと落ちる言葉に出会えてよかったです。
ただ、もっともっと世の中に表現していかないといけないとも感じています。何をやりたいのか、どんな気持ちで進んでいくのか、もっと表現していきたいと思います。
高野:会社のプロダクトももちろん大切ですが、言葉がプロダクトを定義していくので、やっぱりビジョンなどにも違いが現れてくるな、と最近感じますね。
マジックモーメントの今後の展開
(前のオフィスから5.5倍の大きさにまで広がった神谷町のおしゃれなオフィス)
高野:今後はどんな展開を予定しているのでしょうか?
村尾:今年はプロダクトをいよいよ僕が温めてきた戦略に沿って大きく進化させていく予定です。プロダクトに関しては、ワガママに野心的にいきます。
今年中にエンジニアチームは3倍、プロダクトチームも3倍規模にして、営業チームも今年中に10名体制にしたいと考えています。
特に私は営業で今まで評価されてきました。ゆえに、営業に対して大きな意志を持ちたいと思っています。この最初の10名は日本の営業の上から数えてTOP10の実力の方に来ていただきたい。その時TOP10じゃなくても、僕が、Magic Moment がその実力になっていただける環境を用意します。ぜひ弊社ビジネス開発をリードする桐原とそのあたりもディスカッションしてみてほしいです。
僕の営業に対する気持ちを、正面からぶつけて、受け止めてくれる方にぜひお会いしてみたい。自分の営業で、自らの手で何もかも変えていける、そう信じる方とどこまでも進んでいきたいです。
また、まだまだ多様性を受け入れながら、会社のカラーが変わっていくフェーズだと思っているので、色を変えたり、文化をつくったりしていく仲間を探しています。
高野:マジックモーメントは、神谷町に今風な素敵なオフィスがありますよね。あの広さなら、そのペースで人が入っても当面密にはならない気がします。
村尾:今風ってなんですか(笑)そうです、オフィスは5.5倍の大きさにしたんですよね。
自分たちの計画を考えると足りないくらいですが、オフィスでも会社の在り方を表現したいと思っています。
オフィスがどうあるか、というのも表現のひとつで、コミュニケーションの場になれば、と思っています。
このように、環境はどんどん整ってきているので、よい方を採用したいですね。
高野:村尾さんは慎重に経営されている中で、これだけのオフィスに投資しているのは、すごく意味のあるメッセージだと感じています。
もっとマジックモーメントのことを理解してもらって、よりよい方にジョインしてもらえればいいなと思います!
村尾:そうですね。アピールばかりしているのはどうかという気持ちもあるのですが、経営資源を調達して成長してこれたからこそ、皆さんにお返ししていければと思います!
高野:そういった葛藤もあるかと思いますが、引き続き発信していきましょう。本日はありがとうございました!
取材あとがき
改めまして、村尾さんありがとうございました!
顧客への価値提供を最大化することを追求してきた村尾さんだからこそのエピソードがたくさんありましたね。まさにご自身がTHINK “TRUE”を体現されている素晴らしい経営者のひとりだと改めて実感しました。
記事中にもあったとおり、Magic Momentでは働く仲間を絶賛募集中です。興味を持った方はぜひお気軽にご連絡くださいませ!