「はじめまして!」
さっと差し出された手が印象的でした。
坂口憲二を思わせる爽やかな体育会系の好青年。
はきはきとよどみなく話し、好印象を与えます。
はてさて、私は、手元の資料を今一度確認しました。
営業……ではない。
専門商社勤務のバックオフィス、つまり内勤の事務職です。
これはずいぶんともったいない人事配置だなあと思いながら、カウンセリングをはじめました。
一流大学出身の彼は、案の定、海外営業や海外駐在を夢見て商社に就職したとのこと。30歳。
入社8年目になりますが、いまだ営業の第一線で活躍する機会はなく、アシスタント的な業務をこなす毎日。
そもそも、大手企業は実力主義が採用されつつあるとはいえ、まだまだ年功序列のタテ社会。
30代後半から40歳以上の中堅層が第一線をまかされており、なかなか若手に活躍のチャンスがめぐってくることはありません。
大手企業で活躍の機会を得るためには、石の上にも10年が必要。そういいきっても、決して大袈裟ではないのです。
もうしばらくの辛抱……とはいうものの、会社の業績不振の影響から、入社時の目標であった海外でのMBA取得もままならず、苦労して入った会社とはいえ、キャリアの先行きには不安を感じている。
「若くても権限を委譲してくれる会社はないのだろうか?」
「たいへんでもいい。仕事の成果がリアルタイムで返ってくる醍醐味を味わいたい」
それが彼のキャリア相談に訪れた理由でした。
体育会系の好青年のキャリア相談後は・・・
その後、コンサルティング会社と流通事業会社を受験。
どちらも内定を得ました。
年収、社会的ステイタスもふくめ、コンサルテイング会社は人気があり、通常ならそちらに転職を決める人が多いのですが、彼はあえて流通業を選択しました。
店舗開発に携わる、営業職です。
はっきりいって、現場でのゼロからのスタート。
店に立ち、足が棒になるまで一日中接客に追われるという経験も踏まなければなりません。
年収も下がります。彼のバックグラウンドを考えると新たな挑戦とはいえ、かなり勇気のいる決断が必要でした。
それでも彼は決断しました。
「PCの前にへばりついて、ルーティンワークをこなす毎日に、充実感が感じられない」
間接的ではなく直接、クライアントからの生の反応に触れてみたいという、まっすぐな熱意からの転職でした。
店舗開発を希望し、全国行脚の日々。
しばらくは慣れない現場の仕事に右往左往しましたが、徐々にかねてからの夢だった営業の第一線に立ち能力を発揮、収入も入社1年で2倍近くにまではねあがりました。
社長からも評価され、交渉の末、海外のMBAコースヘ社費留学するという思いがけない幸運にも恵まれました。
大企業から転身、自分のやりたい仕事をつかんだ、セカンド就職の成功例のひとつです。