ケンタッキー・フライドチキンのオーナー、カーネル・サンダースも自分の成功を確信して、あきらめることなく努力を惜しまなかった人です。ご存じの人も多いかもしれませんが、彼は66歳のときに、美味しいフライドチキンの製法とフランチャイズシステムでの販売戦略を思いつきました。

66歳!常識的に考えれば、引退している年齢です。もちろんはじめのうちは、アイデアをいくら説明しても、そのビジネスに投資してくれる人は誰一人いなかったといいます。まだまだノウハウにお金をつぎこむ時代ではなかったので、当然といえば当然の滑り出しです。

その断られた数は、なんと1005回!1005回も失敗した経験を持っている人はそう多くはないですよね。少なくとも私は、他に知らないですね。

それはさておき、失敗経験の多い人というのも、そう多くはありません。チヤレンジをしていない人が多いからです。さらに突き詰めれば、1005回までチャレンジする人はなかなかいないのです。

たった一回の失敗でも、人は学ぶことができるはず。それが1005回以上ならさもありなん。学べることは無限大かもしれません。カーネル・サンダースのその後のサクセスストーリーも、そんなところに基盤があったのではないかと想像をめぐらせてみても、あながち間違っているとはいえないでしょう。

外資系メーカーの営業からインターネット企業の営業に転職した、33歳の男性の例です。

新規開拓力に長け、前職ではトップセールスマンとしてかなりの業績をあげていた人物です。トップセールスマンは、メンタルタフネスとはいえ、

「断られていやになることはありませんか?」

あるとき、カウンセリングの途中に、ふとそんな質問を投げかけてみたのですが、

「断りは挨拶……断られることなど、日常生活の挨拶程度にしか受け取っていません」

そうあっさり切り返されました。タフなのに加え、クールです。

「すべての案件をまとめられる人はいないのです。その代わりに、成約できないと思えば、妙に粘らない。席を立つ。そこに無駄な時間を使わずに、他にアプローチできる顧客を探すことに時間を使うのです。潔く、強引な営業をしないことで、結果的に信頼を獲得できて、のちのち顧客になるというケースもありえます」

彼はそんな自分の営業スタイルに、かなりの自信を持っていたのです。

新しい会社に移ってからも、彼の営業スタイルは変わらず、営業成績も順調な経過をたどっていました。

「ここでもトップセールスマンに登りつめるのは、時間の問題だな」彼自身、正直そのように高をくくっていたそうです。ところがある日、彼は思いがけないミスを犯してしまったのです。自分にとっては今までに考えられなかったような、初歩的なミスだったといいます。

油断から生じたミスとはいえ、クライアントの先方にとっては、会社内での評価・信用を下げてしまいかねない、致命的なミスでした。クライアントに呼び出された彼は、ものすごい剣幕で怒鳴られることも覚悟していたといいます。ところが、そのお客さまはいたって冷静でした。感情的にではなく、とても冷静な口調で、彼は淡々とこう告げられたそうです。

「君は僕の人生と僕の家族の人生まで台無しにするつもりか?・・・・クライアントに対しても、商品に対しても、誠心誠意の真剣さがあったのか?」

愕然とするしかない言葉でした。ひと言ひと言に重みがありました。

「自分は今の今まで、そこまで真剣に考えて仕事に取り組んでいただろうか?」

ハッとさせられる思いだったといいます。彼は、自分の営業スタイルに騎りがあったことを認めざるを得ませんでした。相手の話を聞いている振りはおてのものでした。商品を売り込むセールストークも得意でした。

ただしいちばん忘れてはいけないことは相手の立場に立って考えること、ひいては「聞く力」が欠けていたことに気づかされたのです。営業の成績さえあがればいいというエゴが優先して、根本的に忘れてはならないお客さまへの誠意が欠けていたことを思い知らされたのです。


彼は現在、新しい会社でトップセールスマンとして活躍しています。トップセールスマンというポジショニングは変わらずとも、営業に対する心持ちは、人一倍変わりました。

「断りは挨拶」ではなく、なぜ断られるのか、その理由をクライアントの立場に立って真剣に考えるようになったといいます。本当に自社のサービスがそのクライアントにとって必要なのか、マイナス点をとことん検討して、それでもなお必要がないと感じたときには、「この商品は貴社には必要がありませんね」といい切るまでになったといいます。

その真摯さが認められ、今では「それではこのサービスではなく、御社のラインナップの中でうちの会社で導入したほうがよいものはありませんか?」と逆に相談を受けることもあるそうです。

年収は入社時に比べ1.5倍に増えたそうですが、それよりなにより、仕事をするのが心底楽しくなったことが、失敗がもたらしてくれた最大の恩恵だと、彼は誇らしげに私に語ってくれました。

面接の折、「あなたの失敗体験を話してください」と要求されることがあります。先方は、あなたがどのようなチャレンジをして、どのような失敗があり、失敗から何を学んで今に活かしているのかが知りたいわけです。

26歳のとき、「年商70億の男」と呼ばれたエスグラントコーポレーションの杉本宏之さんもトップセールスマン出身。独立後は、毎月赤字決済が続いたそうですが、数々の失敗をのりこえて今日の成功をつかんだ人です。失敗の数だけ、いく通りもの学びがあるはずです。

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