起業する前に覚悟しておくべきこと・知っておくべきこと

コラム          
       
       
     

起業するためにはどんな準備か必要なのか?

「どの会社で経験を積めば、起業するのに有利ですか?」
「どんなスキルを身につければいいのですか?」

独立前も、独立後も、こういった質問をよく受けます。まず最初にすべきことは、あなた自身の目指すべき理想像を設定することです。あなたが「こんな経営者になりたい!」と尊敬する人・憧れの人・その背中を追い続けている人はいますか?そして、その経営者とあなたの少しでも近い部分があるでしょうか?

たとえば、営業職の人なら、営業畑出身の経営者・技術職の人なら、技術畑出身の経営者・経理職の人なら経理畑出身の成功している経営者のモデルとなる人を探してみると良いでしょう。起業までのファーストステップとしてまずその経営者のもとで働けるなら、それにこしたことはありません。

 

将来起業するにはどこに就職すべきか?

よく「起業をするには、リクルートさんに就職するといいのでしょうか?」と質問されます。どの企業に勤めていたから起業できる、できないというものはもちろんありませんが、一方で、チャンスが多い会社というのはあります。ひと昔前ですと、企業別に紹介すると、リクルートやパーソルキャリア(旧インテリジェンス)を中心とした人材系やレインズインターナショナル、ワタミフードサービスなどの外食系です。

かつてのリクルートは起業家輩出企業でした。しかし、ここ1~2年でいえば、どうでしようか?会社も事業も大変魅力的ですが、安定期に入りつつあり、社員数に対して起業する人の比率を考えてみると、社内でしっかり仕事をしている人のほうが増えているようにも感じます。むしろ、割合でいえば、リクルートよりも小規模の成長企業のほうが、起業をする人が急増しています。

パーソルキャリア(旧インテリジェンス)では、サイバーエージェントの藤田晋社長(私の二つ上の先輩です)を筆頭として、上場されたアトラエ新居社長など面識がある人だけでも50人以上の人が起業されており、企業の役員クラスヘの転職をふくめれば、100人以上の人材を輩出しています。

起業など考えてもいなかった私が、入社6年目にして独立するに至ったのは、この社内環境に起因するところが大きいと思います。宇野さんをはじめ、藤田さんなど、身近なところに目指すべき理想像となる人がいたわけです。

藤田さんがおっしやるには、「営業だけで起業ができるわけではないが、営業は起業をするうえで、かなり重要なファクターになる」とのことでした。私も同感です。私の場合も、前職では、営業・キャリアカウンセリング・マネジメント・人事の仕事をしていましたので、営業出身者の起業例になります。

 

営業出身の経営者のキャリア

営業出身の経営者が非常に多いのは事実です。ある意味、起業とは、自分ブランドで顧客の獲得を狙わなければならないからです。お客さまがいなければ、会社にお金が入ってこない。そうなるとすぐに倒産してしまいます。

ただ、営業職出身の方にも落とし穴はあります。ブランドのある大きな企業で、トップ営業マンとして活躍していても、一度看板を背負って仕事をする癖がついてしまうと、独立した場合に大きな差が出てしまうからです。もちろん、ブランド企業出身で起業をされる人もいます。

しかし、仕事をするうえで、「自分ブランド」を確立せざるを得ないのは、大企業よりもまだ発展途上にある若い会社です。成長企業が起業する人を多く輩出するわけは、そこにあるのです。起業を目指して就職するのであれば、ブランド企業というよりも、「今成長をしている会社・伸び盛りの会社」を狙ったほうが、同志と切磋琢磨することで、スキルアップのみならず起業マインドを醸成させられると思います。

 

起業すると出会う人のバリエーションが一気に広がる

さて、実際に独立して自分自身、いちばん驚いたことは、出会う人のバリエーションが一気に広がったということです。

独立する前は、どちらかといえば、「転職を希望している人」「独立を希望している人」「フリーで働きたい人」との出会いが多かったわけですが、実際に起業してみると、各方面のいろいろなタイプの人から連絡が入るようになりました。

成長企業やベンチャー企業の採用を考えている経営者の人や人事の人、ヘッドハンティング会社の人、転職を考えている人、資産のある人など、アポイントがどんどん入ります。共感してくれて応援してくれる人、提携を持ちかけてくる人、もちろん、私欲から、何かあやしげな仕事に巻き込んでしまおうという魂胆が見え隠れする人もいます。

 

起業前のキープレイヤーズ高野の体験談

出資のオファーを受けてびっくりしてしまったこともありましたが、ふと、こんな体験を思い出しました。

独立前に、W社の経営者輩出計画の説明会に参加したときのことです。W社の社長は、日本におけるベンチャー企業黎明期の話を語ってくださいました。その人は、創業するにあたって、起業資金がなかったため、なんと100社に事業計画書を送って、電話交渉を試みたそうです。

「類似したビジネスがあれば投資してもいいですけど、何か成功例あります?」

すでに成功例があれば、ベンチャー企業としては、決して革新的ではありませんよね。ベンチャーという概念自体が、まだまだ浸透しておらず、当時は、なかなか賛同が得られずに悪戦苦闘したということでした。アメリカのシリコンバレーとのギャップは、歴然とあったようです。そんな体験から、W社の社長は、万が一自分が成功したら、可能性のある事業と人に投資しようと心に決めたそうです。

実際、どんな分野に事業投資されてきたかというと、大きく分けて、人材・金融・情報の3分野。独立前に、投資したいと話を持ちかけられることなど、私は夢にも考えていませんでしたので、W社の社長のお話を思い出すまで、正直、はじめはきつねにつままれたように感じたものです。しかし、よくよく考えてみると、私が起業した人材ビジネスは、事業家の人にとっては十分に投資する価値のある分野だったようです。今投資家になった自分からしますと、先日投資したVR企業や暗号通貨関係の方がトレンドを感じますが、今もなお人材ビジネスまたはHrtechは注目の産業です。人材だけですとバリエーションはつかないものの今後も上場企業が出てくると予想されます。

 

キープレイヤーズ高野が起業について考えること

私が会社を作った2005年の時は、取締役3名、監査役、株式会社でしたら、資本金1000万円くらいでといったように、今よりも起業のハードルが高いように感じました。しかし、今では法改正がされ、社長一人でもできます。資本金もほぼ不要です。ノートパソコンなどの事務機器購入をはじめ、登記などをするための40万円程度の支出、HP、PC、スマホ、シェアオフィスなど。本当に便利な時代になりました。

エンジェル投資を私自身やっていますが、ベンチャーキャピタルもありますし、お金の出し手は本当に沢山います。また監査法人もベンチャーサポートに積極的ですし、事業会社もCVCを作り投資しています。スタートアップには素晴らしい時代がやって来ました。

誰でも起業できる世の中だからこそ、経営者が大事。人が大事。資本関係も大事、エンジェル、VCなど座組みをしっかり整えることが一層大事になって来ました。せっかくの新しいビジネスモデルでも後からやって来た会社に逆転されるという現象が多く怒っています。ファーストムーバーが全部とる訳ではなく、よりユーザーに対して結果を出した会社が逆転して勝つということも近年の現象だと思います。

 

執筆者:高野 秀敏

東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。11,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。55社以上の投資、5社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。149社上場支援実績あり。55社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を国内・シリコンバレー・バングラデシュで実行。キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。
一覧に戻る