成功する人は事前に家族と話をし、後悔する人は転職が決まってから伝える。

転職          
       
       
     

転職は家族の生活も左右する

転職は家族の生活も大きく左右します。
収入の変化、ローンの返済、転勤、勤務時間・通勤時間の違い……。転職にともなう影響は、本人が思っているよりけつこう大きいものです。転職活動をする前には、家族、少なくとも奥様には必す相談するようにしてください。お子さんがいらっしゃる場合は、特に保守的な場合が多く、転職を前向きに受け入れられない場合が、多いのです。「日頃、家庭ではほとんど仕事や職場のことを話さないし、経済的に心配をかけることもないのだから……」
気楽に考えている方もいますが、のちのちになって夫婦関係に亀裂が入る場合も少なくありません。

実例1:一切家族に相談をしなかった

Sさんは、新卒で入社した大手企業を退職し、中堅のネットベンチャーへ転職することになりました。以前から会社の古い体質に危機感を抱き、将来性に不安を感じていたからです。妻は専業主婦で子どもがまだ幼く、購入したマンションの住宅ローンの返済もあるため、収入ダウンにならないことが絶対条件でした。

幸いまだ知名度は低いものの、着実に業績を伸ばしている会社の内定がとれました。業務内容も手堅く、権限が広がって仕事もやりがいがあり、わずかながらストックオプションがつく好待遇です。
Sさんはキャリアアップになる転職だと喜んでいましたが、妻に報告すると、激怒されてしまいました。経済的な心配がなく、引っ越しがないことを説明しても、「こんな大事なことを話してくれないなんて!」とカンカンです。余計な心配をかけたくないと、正式に決まるまで黙っていたのが裏目に出ました。

あらかじめ相談がなかったうえに、無名の会社であることも妻には不満な様子です。転職を機におたがいの価値観の違いが鮮明になり、離婚することになってしまいました。

実例2:事前に転職活動することを家族に相談

一方、WEBデザイナーのTさんは、自分のキャリアアップのため、より大きなプロジェクトが手がけられる会社への転職を考え始めました。ゆくゆくは独立して起業したいという夢があります。奥様には結婚する時から将来の希望を伝え、転職活動をスタートする時もあらかじめ相談。奥様もTさんを応援してくれていました。

数社の面接を受けたところ、第1志望の企業から首尾よく内定が出ました。小さいながらも堅実な経営方針で、のんびりしたクリエイティブな社風も気に入りました。現在の会社より幅広い業務が担当できるため、WEBプロデューサーとしてのキャリアも積めそうです。クライアントとの直取引が多く、独立した時の参考になりそうな点も魅力でした。

ところが、絶好の転職先にもかかわらず、肝心のTさんが迷いはじめたのです。
現在の勤務先は大手企業のグループ会社で、同僚たちは今の環境に疑問をいだいていません。たまに退職する人がいれば、「なぜ、わざわざリスキーな環境に?」という反応です。Tさん自身はグループ会社の力ではなく、自分自身の力を試してみたいと考えていましたが、ぬるま湯の中でやってきた自分に「どれだけの実力があるのか?」と不安を感じたのです。

そこを説得したのが奥様でした。ずっと共働きでやってきた彼女はこう励ましたのです。「私にはきちんとした収入があるのだから、自分の信じる道を進んで、後悔のないチャレンジをしてほしい。あなたは自分の夢を追求すべきよ」奥様の言葉に力づけられたTさんは、内定した会社に転職することを決意。新しい職場で元気に働いています。

転職に対する考え方は人それぞれです。転職自体は珍しくなくなりましたが、自分の夫や家族に対しては別というケースも意外に多いのです。

事前に家族に共有しておくことは大事


家族の理解を得ておくことは、転職活動以前にクリアにしておかなければいけません。実際、転職すると不利になることがいくつかあります。たとえば、転職するとクレジットカードがっくりにくくなりますし、住宅ローンも組めないのが現実です。特に住宅を購入したいなら、転職前のほうが有利です。勤務先が大手企業なら特にそうでしょう。会社から住宅ローンを借りていれば退職前に一括返済し、借り換えを検討する必要も出てきます。転職は自分自身だけの問題ではなく、家族の人生にも影響を与えるということを認識してください。

 

執筆者:高野 秀敏

東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。11,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。55社以上の投資、5社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。149社上場支援実績あり。55社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を国内・シリコンバレー・バングラデシュで実行。キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。
一覧に戻る