「バリュー」のあるネットワークがある人は強い
単なる名刺交換のようなネットワークは意味がありません。しかし、人づきあいのよさやネットワークの広さも、多かれ少なかれ転職活動にやビジネスに関わってきます。
たとえば、他業界に転職したいと考えた時、その業界に知人がいれば雰囲気がわかりますし、親しい人なら業界事情などをヒアリングできるかもしれません。
・なんとなく見当がつく
・その気になれば話が聞ける
・関連業界に知人がいる
ちょっとしたことですが、この差は意外に大きいと思いませんか?
まったく白紙の状態で面接に挑むのと、予備知識があってチャレンジするのでは心の余裕が違います。
ビジネスは情報戦です。人との接点が多い人には情報が集まってきますし、相談に乗ってくれる人も見つかりやすいものです。転職活動だけでなく、交際範囲が狭いより広いほうが、人づきあいが悪いよりよいほうが長期的に見て成功しやすいでしょう。
ただ、交際範囲を広げるといっても、どうやって広げていくかの目線が大事です。
名刺交換しただけでは、自分という人聞を知っていただくことも、相手を知ることもできませんし、おつきあいも深まっていきません。
やはり、自分のバリューを上げて、winwinの関係をつくっていかなければなりません。つまり、相手がしてもらってうれしいことをやっていくことです。しかし、そこに気づいて実行に移す人はなかなかいません。
ネットワーク構築の基本はgive and give
たとえば、知人が著書を出版したとします。献本されて読む、あるいは購入する。ここまでやる人はいますが、レビューを書いたり、ブログで紹介する人はなかなかいません。
また、相手が宣伝してほしいと思っているサービスがあれば、Facebookで紹介したり、Twitterでつぶやく。1つ1つは小さいことですが、続けていくうちに感謝と信頼が生まれ、自分自身のバリューにつながります。
ビジネスパーソンであれば、仕事で成果をおさめることにつきます。たとえば、私の仕事であれば優秀な人材をご紹介し、入社後に活躍していただくこと。それを繰り返すことがバリューになります。信頼してもらえればよい人材も求人も集まってきます。
あるビジネスセミナーに参加したFさんは、修了後、講師を囲む懇親会に参加しました。かねてから講師である経営コンサルタントの著書を愛読していて直接、話してみたいと思っていたのです。気さくな人柄で話がはずみ、楽しいひとときを過ごすことができました。
参加者全員に著書が配られ、読了後、Fさんは自分のブログに紹介記事を掲載。フェイスブックやツイッターでも情報を流しました。
コンサルタントには御礼のメールを送り、「よろしければご覧ください」とブログのURLを書き添えたところ、思いのほか喜ばれ、新刊が送られてくるようになりました。
恐縮したFさんは、ささやかながら感謝の気持ちを示そうと、献本されるたびにブログに記事を書きました。運命はそれから動き出します。
「ある企業で新規開発のスタッフを募集している。とりあえず、話だけでも聞いてみませんか」と、なんとそのコンサルタントから連絡がありました。
思いがけないなりゆきに驚きましたが、チャンスがあれば、転職したいと考えていたIさんは、思い切ってその企業を訪問してみることにしました。先方の対応も丁寧で、新規事業の説明やどういう部分を担当してもらいたいかなど、詳しく話してくれます。仕事も興味のあるジャンルだったため、Fさんは応募することを決めました。
その後、役員面接を経て、その会社で働くことになりました。コンサルタントとも交友が深まり、各界のキーパーソンを紹介される機会が増えています。
Fさんが実際にやっていたことは特別なことではありません。相手のためにやっていたことが、Fさんのバリューになったのです。
一方で、ネガティブ情報発信をされる方がいます。口頭でもよくありませんが、SNSに投稿する方もいます。ネガティブなことを言われて、嬉しい人は一人もいません。ネガティブではなく、ポジティブな情報発信を心がけていきましょう。
社外のネットワークの広げ方
他業界の知り合いがいると、情報収集がしやすいというお話をしました。機会があれば、直接、業界事情や仕事の状況を聞くことができますし、リアルにイメージできます。
では、社外のネットワークを広げるにはどうすればいいでしょうか。
学生時代と違い、いったん社会に出ると仕事が忙しいうえに、自由になる時間は限られ、知らず知らずのうちに人間関係は狭くなりがちです。ふと気づいたら、自宅と会社の往復になっていた……という場合もあります。
転職を考えているかどうかに関わらず、別の会社や業界の人との接点を増やすために、時聞をやりくりして異業種交流会やセミナーに参加するのはいいことだと思います。
私は会社員時代から勉強会や読書会、懇親会など、いくつかのコミュニティを立ち上げてきました。20代は異業種交流会をやって、さまざまな業界の人たちと知り合いになり、30歳前後でスタートした朝の読書会は長く続き、世代の違う人たちと交流しました。
参加者自身、イベントのご招待を受けた時は参加させていただくことを心がけていました。そこに行けばまた、自分のネットワークにいないタイプの人たちと出会うことができました。
今では当時知り合った人たちとビジネスの話をするようになっています。私が起業したせいもありますが、彼らはポジションが上がり、それなりの責任や決裁権を持つ立場になったことが大きいのでしょう。
すぐ仕事に役立つわけではありませんが、10年後にビジネスでつながればいいというぐらいの長いスパンで考えることが必要です。すぐに結果を求める人には無駄に感じるかもしれませんが、将来への投資だと考えてみてはどうでしょう。
例えば、メルペイの青柳さんも転職時はご自身で積極的にネットワークやコミュニティを広げられていました。
2005年はプライベートで、たくさんのIT企業の経営者の方とお会いしています。
ミクシィの笠原健治さん、ドリコムの内藤裕紀さん、Yahoo!の川邊健太郎さんや、当時楽天でご活躍され現在はYahoo!の小澤隆生さん、グリーの田中良和さんとお会いした年でもありました。彼らとの出会いがなければ今の自分はありませんので、ここに導いてくれた皆さんに感謝しかありません。
このタイミングでグリーの田中良和さんから、CFOを探しているとお話を頂戴しました。
昨今はコミュニティーやイベントの数が増えました。闇雲に参加しても双方が話す目的が明確でなければ、バリューも生まれにくいです。この点は留意頂きたいポイントです。
自分の価値提供を起点にネットワークを広げよう
積極的に、ネットワークを築きたいなら、自分で勉強会を主催することをおすすめします。自分の得意に気がつくきっかけにもなると思います。同僚、学生時代の友人、クライアントの担当者など、ごく身近なところから声をかけてみてください。
テーマを決めてディスカッションしてもいいですし、スピーカーを交代制にして、その人の仕事の話を聞いてもいいでしょう。話題の本の読書会もアリだと思います。趣旨に賛同してくれる人が気軽に集まって、不定期でもいいので続けてみましょう。
1つの会社に長くいると、いつのまにか、自社の常識が世間の常識だと思い込んでいることもあります。それを払拭するためにも、ネットワークを広げてください。
メーカーでエンジニアをしているJさんは会社の先行きに不安を感じ、転職を考えはじめました。老舗ではあるものの、時代の変化に対応できておらず、採用も新卒中心のせいか、改革していこうという気持ちのある人が少ないのです。
成長産業が狙い目だと思い、以前から参加している読書会のメンバーに、さりげなくリサーチしてみました。
彼らの意見では、やはりネット業界やケゲーム業界が強く、これからはWeb系のエンジニアやスマホアプリの開発にシフトしていける人が強いと言います。最近、友人のl人が人材エージェントを通して好条件の転職をしたことも聞きました。世間話程度とはいえ、社内では決して得られない有益な情報でした。
Jさんはさっそく自分のスキルで対応できる求人があるかどうかを調べはじめ、そのジャンルに強そうな人材エージェントに登録しました。チャンスをつかむ人は例外なくフットワークが軽いです。自分の「バリュー」を確認し、give and giveを前提にネットワークを広げててみてください。