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スタートアップ・新規事業で活躍する人材とは?
登壇者: for Startups, Inc.(フォースタートアップス株式会社) (旧株式会社ネットジンザイバンク)取締役社長 志水 雄一郎
株式会社キープレイヤーズ 代表取締役 高野秀敏
司会:eiicon founder 中村 亜由子
中村:「スタートアップ、新規上で活躍する人材とは?」をテーマにトークセッションを始めさせて頂きます。
今回は、人材業界のトップスター、for Startups, Inc.(フォースタートアップス株式会社・旧株式会社ネットジンザイバンク)代表取締役社長志水 雄一郎さん、株式会社キープレイヤーズ 代表取締役 高野秀敏さんにお話頂きます。私個人としましても、大先輩のお話をお伺いできること非常に嬉しく思っております。
初めに志水さん、自己紹介をお願いします。
志水:for Startups株式会社 代表取締役社長 志水と申します。軽く自己紹介をさせて頂きます。私は、今回の司会者、中村亜由子さんと同じ、パーソルホールディングス株式会社(旧インテリジェンス)で、DODAの立ち上げと、マネジメントをしていたのが前職です。
今は、上場企業の一部門を切り出して、IPOをしかけながら、マネジメントしています。今回はありがたいことに、ヘッドハンターとして尊敬する先輩の高野さんと一緒に登壇する機会を頂戴でき光栄です。
現在は、for Startupsという会社を設立し法人経営をしています。30人ほどのメンバーで成長してきました。for Startupsでは、ベンチャー支援・転職支援・ベンチャー投資を組み合わせて、日本一の成長産業支援プラットフォームを構築すべく日々活動しています。
中村:ありがとうございます。続いて高野さんお願いします。
高野:キープレイヤーズ高野と申します。よろしくお願い致します。
私の祖父は保護観察官をしておりました。罪を犯した方の更生の支援をしておりました。そんな背中を見て育ち、本当に人の役に立つ仕事がしたいと、人材業界に入りました。
新卒でパーソルキャリア株式会社(旧インテリジェンス)に入社しました。志水さんのようなかっこいい先輩がたくさんいるスタートアップのような雰囲気でした。もともと今のように、ベンチャーやスタートアップがなかったので、大手企業やコンサルティングファームを受けつつ、少ない選択肢からこの環境を選んだことを覚えています。
現在、私のやっていることは3つあります。1つ目に優秀な人材と成長が期待できる企業をマッチングする人材紹介を通じで成長を支援することです。2つ目に、ベンチャー投資をしております。ありがたいことに、創業から役員、株主をさせていただいたクラウドワークスが約3年で上場となりました。それを機に、投資して欲しいという依頼が増えました。3つ目に、面白いところで、バングラデシュで不動産開発をしています。
中村:ありがとうございました。今回のイベントを主催している「eiicon」は、パーソルキャリアの中の社内カンパニーで、オープンイノベーション・マッチングプラットフォームを提供しています。今日は朝から、いろんなセッションがありましたが、皆様も企業成長には「人」がキーワードになることはお気づきであると思います。
ここでは、「人」がお家芸のお二人にお話し頂きます。「スタートアップ・新規事業で活躍する人材とは?」をテーマにどのように「人」に向き合い。「人」をどう育成するのか?活用していくのか?など、様々な観点からお話頂きます。
外部のトークセッションですと、わりとふわっとした、着地になりがちですが、私の大先輩でもあるお二人は一味違います。ズバッと本質を突くお話を、頂戴しますのでご期待ください。
志水:かわいい後輩なので、何を振られても、すべて答えないといけないですね。
中村:ありがとうございます!
新規事業で活躍する人材の定義とは?
中村:まずは新規事業で活躍する人材の事例についてお聞きしたいと思います。
志水:はじめに、新規事業で活躍する人材どんな人か整理してみます。私は、新規事業で活躍する人材とは、人を集め・お金を集め・お金を稼ぎ・組織を作り育てるというストーリーを自ら体現できる人であると思います。
加えて、「なんのために新規事業をやるのか」という観点を持っている人であることが大切です。
私のキャリアを具体例をお話しさせてください。私はパーソルで、DODAの計画書を書き、プラットフォームを一から起こして、上級管理職としてマネジメントをしておりました。この時も「なんのためにこの事業をやっているのか?」と常に考えていました。
パーソルやリクルートは「日本の人事部」の役割を果たしています。私はこの、「日本の人事部」の役割を果たすために新規事業をスタートしました。つまり、日本全体において、適材適所の人材配置を行うことで、日本の経済・産業を強くし、GDPを増やし、平均年収をあげるためのKPIを管理しPDCAを回していくことが目的です。
パーソルやリクルートにはたくさんの優秀な方が多いです。しかし、当時はまだまだ「日本の人事部」としての役割を果たしきれていない印象を持ちました。私は、インテリジェンスを変えることはできないので、インテリジェンスの新規事業DODAの延長戦上として外でやろうと決意し起業しました。
ただ収益化できないと、その思いも続かないので、日本一の成長産業支援プラットフォームを成功させるために外部の力をお借りしている、ということです。
新規事業で活躍する人とは、「何のため」にやるか、ということに対して本気になり、かつそこでマネタイズして多くの人を幸せにする仕組みづくりを実行できる人です。
ビジネスマンとして大成するため着眼点
中村:私は後輩として志水さんからたくさんのことを吸収させて頂きました。志水さんそのものが大企業の新規事業開発の事例ですよね。志水さんを見てきて、熱い思いと実行力を持った人が、新規事業で活躍できると思っています。パーソル社内的には、そういうイントレプレナ-を逃してしまいましたが(泣)。
高野:その点に関してですが逆に、志水さんのようないつでも社長をできる方が、よくあれだけ長くパーソルに勤めていたな、と感心していました。
志水:高野さんのご指摘は的を得ております。私の場合は外部の情報をシャットダウンしてしまっていたという反省点があります。
例えば、いまや世界的にナンバーワンのブライトキャリアは起業家です。その周りにいる、投資家や社員でさえも未公開株でかなりの資産を有しています。しかし日本では、東大・早慶を卒業しても、文科省が、大学を職業訓練校にするということを推奨しています。
仕事をしてお金を稼ぎ生活をするという方程式を最適化していないのです。仕事をしてお金を稼ぎ生活をするという方程式を最適化することで、国としての競争力を向上させているのが、米国や中国です。
皆さんは日本はGDPが世界3位のため、生活水準も世界3位と思っているかもしれませんが、そんなことはありません。日本の平均年収が十番台ですし、可処分所得は数十番台です。
大学を卒業し、就職して生涯年収4億円程度で幸せと思っているのが、日本です。そういう意味で、自分の立ち位置を会社の中だけでなく、社会の物差し、グローバルな物差しで測る必要があると思っています。私が、パーソルにいるときはそれをしなかった。
例えば、アメリカでそこそこの大学を卒業し、Facebookに新卒で入社すると初任給は1700万です。給与が全てではありませんが、皆さん新卒でこの給与をもらっていましたか?、ということです。
中村:シリコンバレーの学生インターンでも、年収1000万円もらっている人がいる、という事実すら知らない、日本のSEさんたちは多そうですよね。
新規事業の成功パターン
中村:志水さんのお話を踏まえて、高野さんのご意見を頂戴したいと思います。新規事業で活躍する人とは、「何のため」にやるか、ということに対して本気になり、かつそこでマネタイズして多くの人を幸せにする仕組みづくりを実行できる人だと志水さんよりお話しを頂戴しました。
高野さんはたくさんの方を事業・人材面からご支援をされておりますが、新規事業の成功パターンはご存知でしょうか?
高野:「新規事業で何をやるのか?」と「事業責任者が誰なのか?」が重要だと考えております。
私が頻繁に頂戴する依頼2つの相談内容を例にお話させて頂きます。1つ目の相談内容は、「新規事業を立ち上げるので、その分野で経験のある人を紹介してほしい」という依頼です。
経営者の肝いりの新規事業であり、予算もそれに対して十分にあり、自社の強みにそった事業領域であれば、社内のエース人材と、必要となるスキルのある中途採用人材を合わせれば成功する確率はかなり高まります。
中村:それは、周りの準備や方向性がきちんと整っていると、その分野に精通した人が入ればその方も活躍出来、事業も成長するということですね。
高野:おっしゃる通りです。2つ目の最近多い相談内容は「ベンチャー投資をしたいのでどうすればいいのか?」という依頼です。これは1つ目の方向性が固まっている新規事業の事例とは少し異なり、コアの事業が成長が鈍化してきたので、事業シナジーがありそうな分野に手を広げていきたいというニーズなんです。
更に言えば、「他社がやっているから」、「社長の鶴の一声」と言われることも多いですね。同業ですとか周囲のトレンドを気にされる経営者が多いようです。
双方の難易度
中村:ありがとうございます。新規事業の立ち上げ方法として、大きく分けて、社内での新規事業化とスタートアップとして起業する2つの手法があると思います。双方の難易度についてどうお考えですか?
高野:私は、新規事業かスタートアップかでいえば、実は大企業の新規事業の方が厳しいと思います。
経験上、大企業の方が「新規事業立ち上げます」という場合、ゴールが漠然としているケースが多いです。そのため、新しく採用した経験者もゴールがバクッとしている分、社内調整が必要だったりします。一方スタートアップの場合、1つの事業に命をかけるためゴールが明確で、やることが比較的はっきりしています。
この意味でも、志水さんのように社内で新規事業の立ち上げも成功されて、スタートアップでも成功してという方は貴重ですよね。
中村:志水さんは、社内新規事業化とスタートアップとして起業する難易度についてどうお考えですか?
志水:違いは明確です。大企業での新規事事業化は、場合によっては簡単に見えます。インフラもあるし、人も予算もあるので。でも、その分難しさもあります。最初、期待の星として事業を立ち上げても、期待通りに数字が出ないと、お金も人も取り上げられます。きんと数字、成果を挙げ続けられるか、という難しさですよね。
逆にスタートアップは、良くも悪くも、何もない中で立ち上げるので、すごく難しい部分があります。大企業で成功して、スタートアップに転職するも、なにもできなくて精神を壊してしまう方もたくさんいらっしゃいます。
しかし、都内でIPOする会社は年間70から90社あり、社員にして数百人くらいが一度のIPOで一億円近く個人資産を築きます。新規事業で年収1000万円ある人よりも、一度IPOに関われる人のほうが実は稼げます。
高野:この事実はあまり知られてないですよね。
志水:新規事業を社会の物差しで見たときに、ハッピーなストーリーにどう事業責任者として導くかということです。一緒に働く人たちに、自分たちがどうハッピーなストーリーに関与できるか感化し、本気にさせるかは責任者の大事な仕事です。
中村:メンタルへの加重が、スタートアップのほうが強いということですか。
志水:加重のかかる場所や加重の種類が違いますよね。スタートアップだと、人もお金も調達する必要があり、調達する過程にストレスを感じる人もいます。一方で、新規事業だと、さっき言った数字に対する社内的なプレッシャーがあります。どんだけ頑張って、利益をあげても、既存事業が儲かっていると、評価はいまいちになります。
新規事業で活躍する人材はどこにいるのか?
中村:新規事業を立ち上げるときに、必要な経験者を外から採用する動きが一般的ですが、人事異動などで社内から調達する際に、活躍できそうな人はいると思いますか?
高野:若い人。マインドが若く、事業化まではある程度時間もスピードも大切なので時間がある、という意味で若い人です。
マネジメントは、経験者やある程度ベテランが良いですね。本体の経営陣とも話をする必要が多々ありますので。また、横並びで横を見ながら仕事するより、ピラミッド型の組織のほうが動きが早いです。
中村:企業様から、新規事業の立ち上げにあたり、経営企画の人、PLを読める人、つまり地頭のいい人がほしいといわれますが、どちらを優先されますか?
高野:それは両方ですね。企画系の人がほしい、というのは、資料をかける人がいる、ということです。でも資料を作る人と事業を作る人は違います。
また、新規事業だと、どうしても時間をかけながら、とにかく手を動かす、ということが求められます。大企業さんですと、資料を作れる人、レポーティングできる人は社内にそろってるので、スタートアップから新規事業に行く人もあっていいと思いますが。圧倒的に新規事業からスタートアップが多いです。
中村:新規事業を立ち上げるときに、必要な経験者を外から採用する動きが一般的ですが、人事異動などで社内から調達する際に、活躍できそうな人はいるかに関して、志水さんはどうお考えですか?
志水:社内で人材を調達することは、逃げだと思います。社内との調整役は必要ですが、事業責任者に求められるのは、強いリーダーシップと、人をひきつけるビジョンを描く力です。
社会の物差し、特にグローバルな物差しで見ると、新規事業よりもスタートアップがブライトキャリアです。つまり、情報感度の高い、優秀な人たちほど、スタートアップへ行きます。そんな彼らをその流れに逆らわせるだけのリーダーシップや魅力が必要ということです。なので、社内で人材を調達することは逃げなんです。
中村:社外から採用したことによるデメリットはありますか。
高野:社外から採用した中途の人のほうが定着率は低いです。しかし、新卒がスキルを持つ中途採用のベテランから、学ぶことも多いです。
外の世界を知っている人は、常に最適を選択し続けるので、定着率が低いです。現在の世の中では、スタートアップを選ぶ人、自分の意思で次の環境にトライする人が増えています。そういう優秀な人たちをひきつける仕組みを社内に作る必要はあります。
例えば、新規事業でも、その株を持たせて、後に売却して個人に還元する仕組みを作っている会社もすでにあります。
中村:なるほど、素敵なお話をありがとうございました。
新規事業にアサインするのはエースであるべきか?
中村:最後に会場の方からご質問を頂戴したいと思います。
質問者:新規事業へアサインするのは、エースであるべきですか?
志水:エースであるべきです。エースを配置することで、社内に向けて本気だと示すことができますし、社内調整もうまくいきます。
高野:例えば、某有名企業のK社さんは、非常に海外展開がうまくいってると思いますが、K社さんでは、優秀な人、外れたら困る人から海外へ送るそうです。
一方で、友人が勤めるある企業では、優秀な人ほど今のポジションに残るそうです。この企業は新規事業もうまくいってないそうです。
中村:「新規事業へは、エースをアサインしろ」、がキーワードですね。
さてお時間となりました。新規事業やスタートアップ、社内社外など枠組みにはとらわれず、会場の皆様には素敵な方々と一緒に、新規事業を伸ばして日本の経済活性化の為に尽力して頂きたです。そのために一助と今回のセッションがなれば幸いです。ありがとうございました。
フォースタートアップス株式会社 代表取締役社長CEO 志水雄一郎氏 ご経歴
フォースタートアップス株式会社 代表取締役社長CEO
慶應義塾大学 環境情報学部 卒業の後、株式会社インテリジェンス(現パーソルキャリア株式会社)にて『DODA』立ち上げ等を経て、2016年、成長産業支援ベンチャー 株式会社ネットジンザイバンク(現フォースタートアップス株式会社)を創業、代表取締役社長に就任。2014〜15年『Japan Headhunter Awards』にて『Headhunter of The Year』2年連続受賞し、2016年 国内初『殿堂』入りHeadhunter認定される。2019年 一般社団法人日本ベンチャーキャピタル協会ベンチャーエコシステム委員会委員に就任。
forstartups口コミ、評判
スタートアップへの想いや熱量がものすごく、全社員の方に意識浸透がされていると言われています。日本を勝たせる。挑戦する人を支援する存在として知られています。
<取材・執筆>高野・田崎