古賀徹
1986年生まれ、福岡県出身。学生時代に父の死を乗り越え起業。個人でメディア広告事業を開始する。2008年に株式会社MEJを設立、代表取締役社長。シリコンバレーでの2ヶ月間の修行や孫正義門下での学びを経て、現在もビジョナリーカンパニーの経営に従事する。
株式会社MEJ
MEJは2008年に設立。ヘルスケアDtoC事業を中心に4年で1000%成長と順調に規模を拡大しており、ヘルスケア領域を中心としたオリジナルサプリECを展開しています。“社会問題を解決し、人類の進化に貢献する”というミッションを実現するためにも、IT×ヘルスケアを軸に、インターネット領域における次世代のプラットフォーマーを目指してまいります。
MEJ古賀さんのご経歴
父の死、生きるために起業
高野:まずは古賀さんのご経歴をお聞きしてもよろしいでしょうか?
古賀:私は父の背中を見て育ちました。父は建築の商売をしており、内装や施工を手がけていました。将来、自分も家業を継ぐと漠然と考えていましたね。高校を卒業した時に、建築系の学校に進学するため上京しました。
高野:古賀さんが学生時代は建築系のキャリアをお考えだったというのは正直驚きです。
古賀:私も、すぐに起業することになるとは当時、予想だにしておりませんでした。
しかし、高校生の時に父が亡くなってしまい、家業を継ぐどころじゃなくなってしまいました。自分の進学のために働きながら学校へ行こうと一念発起したものの、仕事と学業の両立が難しく、結局1年で学校を辞めてしまいました。
しかし、建築家の道を諦めたわけではありません。一度仕事に専念して、学費を稼いだのちに再度学校へ行こうと考えていました。
その後は本屋で、「どうやったら最短で学費を稼げるか?」と様々な本を読み漁りました。その時、「インターネットで起業ができる」という本と巡り会いました。その本を早速購入し、その本の内容を参考にメディアを立ち上げました。そのサイトにバナーを貼って収益を出すこんな事業を10年前に始めました。単純に思えるかもしれませんが、これが創業のきっかけです。私が20歳の時の話です。
高野:その本の著作者は古賀さんの人生の意思決定にかなり貢献されていますね。
古賀:当時はビジネス書のカテゴリーにこの種の本が少なく、何か運命を感じました。
高野:そうですよね。今ですとインターネット起業系の本は豊富に揃っていますが。
古賀:その後1年、ネット事業に注力しました。そして収益が出てきたので法人として設立したのが2008年でした。
起業そして、失敗、人生のどん底を見たからこそ見えたもの
古賀:しかし起業はそんな簡単なものではありませんでした。いちばん大変だった時期をMEJショックと呼んでいるのですが、本当にしんどい日々でした。 今は考えられませんが、消費者金融で日々のお金を調達しては、かろうじて食いつなぐ毎日でした。毎日通帳を見ては明日の現金が足りるか数えて。僕超ポジティブなんですが、この時ばかりは不安で寝れなくて。。もちろん給料もしばらくゼロだったし、お金がないので誰とも会えず、引きこもりのように生きていました。 高野:!! この古賀さんの発言は、今、調子が悪くお悩みの経営者に希望を与えますね。こういった事は、ほとんど皆さんがご経験されているはずなのですが、みなさん黒歴史として隠されるんで。 古賀:そうですよね。。当時は自分と社員2名、アルバイト、学生インターン数名で、事業を行っていました。当時はまだITバブルが残っていたのですが、Googleのアルゴリズムの変更に伴い、BtoBの広告マーケットが一気に止まってしまいました。数千万のクライアントが居なくなったり、本当に激減しましたね。 そんなこともあり、当時のメンバーは全員辞めました。そして2011年、忘れもしない震災が起こって最悪の状況に陥りました。広告業界は冷え込み、売上激減、メンバー解散、借金地獄と、3重苦の中での更なる追い打ち。もう、駄目かもしれないという最悪な状況を、戒めを込めてMEJショックと呼んでいます。 高野:震災だけでもたくさんの企業に打撃を与えたのに、、。この時期は本当にご苦労なさったのですね。 古賀:この時、自分がどん底に落ちて何のために働くのか分からなくなっていました。当時の自分の働く理由は生きるためでした。しかし、毎日の生活だけでもしんどい状況のなか、それどころの話ではなく、なんでこんな苦労してまで会社をやっているのだろうとどん底に落ちました。 時間だけはあったので、救いを求めて色々な方の伝記を読み漁りました。坂本龍馬や松下幸之助、孫正義など多岐に渡る方の伝記です。その時、坂本龍馬の本で、「世に生を得るは事を成すにあり」という言葉に出会いました。この言葉を得てから、自分がこの世に生を受けた理由はなんであるのか考えるようになりました。 そして、偉人の本を読み漁った結果、決定的に自分に足りないもの、それが”志”だということに気が付きました。何のために働くのか、何のために生きるのか、そういった目的意識が全くなかったのです。 高野:私も伝記を読みいつも学びを得ています。経営者こそ本を読むべきだといつも思います。
ミッションを明確にすることが全てのはじまり
古賀:自分には志がないという問題が明確になり、自分が何のために働くのか探す旅に出ました。いろいろな経営者の方にまるで3歳児のように「何のために仕事をやっているのですか?」と質問しまくりましたね。 そしたら、みなさんかなり感動的な言葉をくれるのです。「僕は、こんな課題があってこの課題の解決のために仕事をしている。」「日本を元気にしたいから会社をやってる。」など、ここではお伝えしきれないですが、明確な目的意識と使命感を皆さんはお持ちでした。 そして、お前はどうしたいんだと聞かれると「いや、自分が生きて行くために会社を作ったのですけど、、。」と、取るに足らない回答をしか出来ませんでした。 高野:私もたくさんの経営者とお会いしますが、目的意識と使命感をお持ちの方は、事業の推進力がまるで違う印象です。 古賀:この目的のないビジネスマン時代が2年くらい続きました。まずは、最低でも日本一を目指すカンパニーMEJ
古賀:事業が軌道に乗ってきた2015年の夏にシリコンバレーに行ってきました。そしてシリコンバレー、サンフランシスコ、ニューヨークと、アメリカの主要都市で2ヶ月くらい現地に滞在しました。 シリコンバレーへ行った目的は、優秀な人材が集まり、自分もさらに成長しなければならないと危機感を持ったためです。 高野:現地に2ヶ月はだいぶいたと思うんですが、どのタイミングで行かれたのでしょうか? 古賀:新卒が入社したタイミングで行って来ました。僕と役員しかいないタイミングで全てを託して行ってきました。 高野:(爆笑)。それどうやってったんですか? 古賀:チャットワークでリモートワークをしていました。 高野:そういう時のためのチャットワークなんですね。 古賀:新卒が5人入社してきて7人になっていたのですが、「じゃあ後はよろしく!」と、私はすぐにアメリカに飛び立ちました。 高野:これを踏まえると社長が現場にいなくても成り立つ無敵なビジネスモデルが既に確立されていたのですね。 古賀:そうですね、幸い仕組み化が出来ていたのだと思います。 高野:実際シリコンバレーはいかがでしたか? 古賀:シリコンバレーに行って分かったことは、圧倒的な環境の違いです。よく耳にする日本とアメリカの差を肌で感じてきました。 20代最後に何か記憶に残ることを成し遂げたいと思いアメリカ大陸を横断して、その最後の終着点がシリコンバレーだった訳です。そこで感じた圧倒的な環境の差に危機感を覚え、帰国した3ヶ月後には、またシリコンバレーに来ていました。そして今度は2ヶ月間滞在して、実際現地の企業で働くことにしたんです。 高野:現地で働こうと思う人は中々居ないですね。現地で働いてみて、どんな変化がありましたか? 古賀:仕事のあとは日々Meet upなどに参加してネットワーキングをしていたのですが、「日本から何しに来たの?」とよく聞かれました。自分は日本で会社をやっていて、もっと成長したいから学びに来た。と答えていたのですが、ある経営者に「俺たちは世界を変えるために戦っている。シリコンバレーにはそういう奴しかいない。」と言われたんです。ほんと衝撃でしたね。 それからしばらく自問自答したのですが、やっぱり世界を変える経営者になりたい、世になくてはならない会社を創りたいと思いました。そのためには、最低でも日本一になる必要があるかなと。我々の業界トップが700億ですから、MEJをまず1000億企業にする。グループ100社で1兆規模を目指し、様々な社会問題を解決する起業家集団として、人類の進化に貢献する構想を練りました。 高野:日本一!シリコンバレーで現実を体感し、帰国した古賀さんだから言える重みのある言葉ですね。 古賀:日本一になるためには、日本一の経営者から学ぶしかない。まずは日本で一番凄い経営者と会おうと心に決めました。そして、帰国後にまず会いに行ったのがソフトバンクの孫さんです。 本当に運が良く、孫さんがやっているソフトバンクアカデミアの門下に入ることができて、年に数回は孫さんに会い、経営について教えて頂いております。この機会は僕の人生に大きなインパクトを与えましたね。 高野:確か、1000人受けて10人しか入れない超難問であることは知っております。 古賀:実際は2000人くらい受けて10人程度しか入れてないですね。 高野:凄い。流石です!なぜ受かったと思いますか? 古賀:シリコンバレーに2ヵ月行ってきたというファクト、最低でも日本一になるという志があったんで、僕は絶対受かるだろうという自信がありましたね(笑)。 高野:古賀さんは非常に腰が低い方ですが、時折、本質が面白いですよね(笑)。そして、実際に今の事業が伸びているのがさすがです。
MEJは“社会問題を解決し、人類の進化に貢献する”
高野:なぜ、ヘルスケア事業に着手されたのですか? 古賀:MEJショックでどん底に落ち「何のために働くのか」MEJが最も大切にしているHard think
高野:社風について教えてください。 古賀:我々のコーポレートメッセージがHard thinkです。社風としてもこのHard thinkの文化が強く根付いていると思います。 Hard thinkとは分かりやすく伝えるとHard workの逆を言っています。資源には限界があり、がむしゃらに戦う時代はもう終わった。世界を動かす大多数ではなく、世界を変える少数派になれという意識を我々は常に強く持っています。一概には言えませんが、大企業が世界を動かす側だとしたら、ベンチャーは世界を変えていく側だと我々は見ていて、それをどんどん社風に落とし込んで行っています。 高野:Hard thinkの具体的なエピソードについて教えてください。 古賀:Hard thinkの具体的なエピソードと言いますと、仕事を無くすのが仕事だ。と現場で行っています。例えば、会議は禁止なんです。固定概念にとらわれず捨てるものをとことん捨てています。朝礼も日報も、決められた時間のお昼休みもないです。そして意外と驚かれるのですが我々の会社はほとんど私語がないのです。ベンチャーで言うと珍しいですね。みんなイヤホンで音楽を聴きながら集中して仕事をしています。 高野:どのようにコミュニケーションを取られているのですか? 古賀:チャットをめちゃくちゃ活用しています。常に生産性を高める方法を追求していますね。ベンチャーはお金も時間も資源も限られています。資本主義の中で、どうやって勝っていくかを常に意識しています。いわゆる生産性を上げていく取り組みが常に社内で行われています。会議の資料作りに数時間もかけて報告会で終わる、こんなに無駄ものはないと思います。 高野:会議の前に会議の準備の会議が開催されたりもしますよね。これでどんどん時間が取られていきますよね。 古賀:シリコンバレーでAppleに企業訪問した際に、ジョブズが「Meeting is War.」だと言っていたと教えてもらいました。会議は戦争であり、発言しない者、意思決定しない者は、二度と呼ばれないというものでした。この逸話に感銘を受けたので、MEJでは常に会社の状況を共有して、すぐに意思決定できるようにしています。 会議で非常に多いのが、この数字どうなってるの?となり、来週作って持ってきますねと、新しいタスクを量産していくことです。我々はチャットや普段の雑談で意思決定するので、必要な数字はその場で出します。その仕組みがあればその場所で意思決定ができるのです。これはHard thinkのカルチャーになっています。 高野:他にはどんな取り組みがありますか? 古賀:普段から全メンバーが経営者と同じ目線になれるように意識しています。そのために、経営KPIの可視化をしていて、会社の経営状況を全メンバーがダッシュボードで確認することが出来ます。各メンバーが会社の経営状況をすぐに確認出来るので意思決定は容易です。 ダメな会社ほど、情報を公開しておらず、現場が意思決定できません。しかも一番現場を分かってるはずの社員の意見を、何も分かっていない上司が覆してしまう。全員が経営者と同じ数字を見ることで経営者視点で意思決定の精度も頻度もスピードも上げていきます。 高野:これは、本当に限られた資源で最大限のインパクトを出すHard thinkの考え方ですね。 古賀:そうですね、我々は従来の働き方がこれから劇的に変化していくと思っています。ダーウィンの進化論のように進化し続け、次の100年を創るリーディングカンパニーになるために、最先端のワークスタイルを発信できればと思っています。
MEJさんはこんな方を求めています
高野:採用に関して教えて下さい。どんな方と一緒に働きたいでしょうか? 古賀:今、一番求めているのはマーケティング職です。マーケティングといっても、商品開発からプロモーション、カスタマーエクスペリエンスまで非常に幅広い職種にチャレンジできます。当然、コンサルや営業からのジョブチェンジでもいいですし、とにかく、今の環境で限界を感じている人に、Hard thinkをしに来て欲しいです。 高野:なるほど! 古賀:僕は創業期に人の3倍働いていたので、Hard workの限界を知っています。営業では本気を出せば誰でもNo.1になれると思います、しかし、どこまでやっても人の3倍程度しか差をつけることは出来ません。10倍、100倍の差を付けることは不可能です。 現代は労働と生産が比例しない時代であり、労働の産業構造自体が変わってきました。だからこそ、Hard thinkをしていかないと世界を変えることは出来ないですし、自分の限界がすぐに来てしまいます。 最近転職でジョインしてくれた方も、普通に前職ではナンバーワンを取れたけどこれでは、世界を変えることは出来ない、変わらないなと悟ってしまい、広告代理店から0→1がやれるMEJに来てくれました。 高野:大活躍とのことで嬉しく思います! 古賀:そんな境遇の方に是非、Hard thinkをして欲しいです。すごく優秀な営業マンの方に人の100倍以上の成果を出して頂くことが可能な仕事があります。我々の生産性ですと、一人1億の生産性があります。これは一般的な企業の10倍以上の水準ですが、売上が10倍高いということですし、10倍も世の中にインパクトを与えられるということです。 どうせ一度きりの人生なら、世界で大暴れして、社会問題を解決して、人類の進化に貢献して欲しい欲しいと思います。 高野:求める人物像について教えて下さい。 古賀:志が高い人と一緒に働きたいです。世の中になくてはならない会社にしていくためにも、我々の“人類の進化に貢献する”というミッションへの共感はもちろん、自分の使命感を持ち、志がある。そんな方に来て頂きたいです。Hard think推しで採用しています。 よく、新卒採用の場面でコンサルタントになりたい・トップ営業マンになりたいという学生にお会いします。それって、Hard workだよねっていうお話をしています。どれだけ頑張っても影響を与えられる範囲は限られていますから。 高野:Hard workだからこそ新卒で学べることもありますが仰る通りですね。 古賀:世界を動かす側の仕事は誰でも出来るから、世界を変える側の仕事をしよう。そんな会社の創業メンバーになれるチャンスは今しかない、と言うと、みなさん目をキラキラさせてくれます。 あと、Hard thinkとは社会的義憤力だと思っているのですが、世の中に対する苛立ちとか憤りとか、誰しもあると思うんです。でも考えるだけで行動に起こす人は本当に少ない。目の前の社会問題は誰かが解決しなければならない、じゃあ俺たちがやろうと。人類の進化に貢献するために、様々な社会問題を解決できる集団でありたいと思っています。 高野:なるほど、そんな世の中を変えて行きたいというエネルギーが、Hard thinkには込められていたんですね。 古賀:加えて採用においてストーリーはかなり大事であると考えております。繰り返しになりますが、ミッションと志を大切にしています。 普通の面接スタイルだと、うちはこんな会社でこんな事業をしています。業績がこうですという現在の話しか出来ないです。今、こういう状況で、経営がこうで今後はこうチャレンジします。一番重要なミッションはほとんど伝わっていないんです。 「会社の話は他の役員に任せるから自分はミッションの話をします。」というスタンスで、このパターンにしてから採用がうまく行くようになりました。ダメだった時は、僕も最初から事業の話しかできず、MEJの魅力を伝えられていませんでした。 高野:実際、このやり方自体を取り入れられている会社さんは実は少ないです。 古賀:我々も同じ事業をずっとやっていくわけではありません。何かのプロダクト型で採用をしていくのもいいですが、企業は社会のニーズに合わせて進化する必要がありますし、それが変わった時に人は離れてしまいますので。日本一のトヨタですら、創業時の機織り機事業を続けていたらとっくに倒産していますし。