樋口 龍
学生時代はサッカー一筋で過ごす。高校は全国大会常連の帝京高校へ進学、卒業後は現在J2のジェフユナイテッド市原でサッカーに打ち込む。不動産会社でのセールス経験を経て、株式会社GA technologies設立。現在、代表取締役として経営に従事。
株式会社GA technologies
株式会社GA technologiesは、「テクノロジー×イノベーションで、人々に感動を」というミッションを掲げ、古い業態をテクノロジーの力で改革する『Real Estate Tech(リアルエステートテック)』の分野で、急拡大をしています。現在、人工知能を活用したリノベーションアプリや、20〜30代をターゲットにしたカジュアル不動産投資アプリなどをリリース。また今後は、様々なデータ活用により中古不動産のプラットホームの開発や、リノベーションや家選びなど暮らしや不動産購入に関する幅広い情報を発信するメディア創りをしています。
目次
サッカーでの挫折が原動力の起爆剤
樋口:小学生の時から変わらない夢を持っていました。“世界的なプロサッカー選手になる”ことです。この夢を本気で追いかけていました。ひたすらボールを追いかける青春時代を送り、高校は全国大会常連の帝京高校へ進学しました。
帝京高校へ進学を決めた理由は、とにかく厳しかったためです。当時はサッカーでプロを目指す場合、高校進学でなくクラブチームを選ぶ人が多かったです。私の場合は、FC東京のユースへ進む道がありました。
でも私は帝京高校を選びました。なぜかというと、高校サッカーの方が全てにおいて厳しく力がつくと思ったからです。例えば、帝京高校は年間360日のハードな練習に加えて、電信柱にヘディング練習しろみたいな意味が分からない練習もあります(笑)。
高野:全国大会常連校ってそこまでハードなんですね。。。
樋口:本当に厳しかったの一言です。高校卒業後は、現在J2のジェフユナイテッド市原でサッカーに打ち込んできました。東京選抜・関東選抜には入れましたが、それでもプロにはなれませんでした。
ある時、“世界的なプロサッカー選手になる”という目標から逆算すると現在の自分には厳しい事実に気がつきました。そして、23歳でサッカーをやめました。この決断は自分の人生の終焉のような感覚です。20年近くサッカー一筋で世界を目指してきて、夢破れ絶望しました。
高野:しかし、樋口さんにはここで折れないメンタルがこれまでのサッカーのご経験で培われていたのですね。
樋口:それもありますが、なぜ夢破れたかというと、理由は明確でした。サッカーの才能や実力の部分もありますが、人間的な部分が大きかったのです。私は、人間的に未熟でした。
例えば、本田圭佑選手や長友佑都選手、長谷部誠選手のように日本人として世界的に活躍しているサッカープレイヤーは稀有の才能があったわけではないと言われています。才能で言ったら、柿谷曜一朗選手や宇佐美貴史選手の方があると言われていました。
高野:この点のお話に関して、よく記事で拝読しますが、私はプロサッカー選手=全員素晴らしい選手でその違いは分かりませんでした。
樋口:最後は、“人間力とやりきる力”です。サッカーを辞めたときに、なぜ世界的なサッカー選手になれなかったのか死ぬほど考えました。つまるところ、人間的に未熟だったんです。お恥ずかしい話ですが、私は、監督やチームメートに怒られるとふてくされてました。本田圭介選手や長友佑都選手、長谷部誠選手がふてくされた姿を見たことはありません。ここが決定的な私の弱みだったんです。
高野:スポーツでご活躍されている方が、ビジネスの場でもご活躍される意味がさらに分かった気がします。
樋口:この考え方は仕事でも活かされています。上司に怒られてふてくされる人は絶対に損しています。ふてくされている理由は、失敗を周りのせいにしているからです。他責ですね。問題は自分だから起こっているわけです。マーケット・環境・上司のせいにして問題分析をしない。簡単なことなのですが、なかなかできない。人は自分ができていないと認めたくないですからね。私はサッカーでの反省を活かし、「仕事では絶対に他責にしない」と心に決意していました。
次は、“人間力とやりきる力”という本物の実力をつけて、“世界的なビジネスマンになる”。これが私が掲げた第二の夢です。ビジネスマンとして誰よりも実力をつけるため、一番厳しい環境を探しました。
>目の前の仕事に全力で向き合ったからこそ見えた世界
高野:ビジネスマンとしての知識がない中、どのように仕事を見つけましたか?
樋口:カッコつけずにお話しすると学歴不問がポイントでした。私は高卒のため、学歴不問で検索すると不動産業界、飲食、アパレルが沢山出てきました。その中でも興味が湧いたのが、不動産業界でした。当時は「学歴不問で採用をしてくれて素敵な業界だ!」と不勉強な私は本気で思っていました(笑)。学歴不問にしないと採用出来ないと考えている自信がない会社が多かったんだと、今になって分かりました。
そして、不動産ベンチャーに入りました。しかし、社長も上司も会社に来ないような会社でした。ビジネスで頑張ると決めた最初で出鼻を挫かれました。当時の私は入社するまで会社を見る目もありませんでした。そのため、仕事でのお付き合いがあった、別の会社からのお声掛けがありすぐに転職しました。もちろん、一番厳しい環境である不動産業界です。
高野:どこまでも樋口さんは自分を追い込まれますね。
樋口:そして、2社目は上司に恵まれました。恵まれていると言っても、部下になった人は数ヶ月で辞めてしまうかなり厳しい方でした(笑)。隣の上司のデスクに私のパソコンが数ミリくらい出てるだけで睨みつけられすごい勢いで叱られました。
当時の私は、仕事を始める前に誓った「絶対自責」という精神があったので、「なるほど、これではお客さんとお会いする事なんて到底出来ないな。」と自省していました。私は本当に大雑把だったので、最初のうちお付き合いするお客さんはO型ばっかりでした。しかし、上司に指導を受けてからは、O型だけでなく、A型のお客さんともお付き合いが出来ました。面白いですよね(笑)、要は几帳面になれたんです。それからは見違えるように仕事できるようになりました。
高野:血液型で自分の成長を測定する樋口さんのお考え面白いですね(笑)。
樋口:几帳面が仕事に活かされているエピソードはこれだけではありません。 例えば提出物とかも、12時に出しますと言って30秒遅れたら、ものすごく叱られるんですよ。ここでも私は素直だったので、「期限は絶対に守らないといけない。」と自省しました。1分1秒の大切さを叩き込まれました。
フロア内で、私と上司の存在は異常でしたよ。私と上司だけスポ根マンガで青春してるみたいな状況でした。
高野:上司から可愛がって頂けたのですね。
樋口:上司も他の部下はすぐに辞めてしまうのに、そこで生き残った自分を可愛がってくれたのだと思います。ここで帝京高校の監督に言われていた言葉を思い出しました。「この経験は必ず生きるぞ。」と厳しい指導でいつもこんな事を言っていたのです。その意味が分かりました。仕事は大変でしたが、嫌だとは思わなかったですね。
高野:帝京高校は、人間教育も含めて厳しくしてたんですね。 樋口さんご自身が厳しい環境を選ばれたからこそ得ることが出来た事ですね。
樋口:そこから4年間は猛烈に働きました。日本でベスト3に入るくらい仕事をした自信があります。その辺にあるFAXを取りに行くのも走ってました。1分1秒に拘ってましたね。
高野:本当に厳しい環境だったんですね。
樋口:厳しかったのですが、本当に嫌じゃなかったです。しかも私から上司に「厳しくしてください。」と言っていました。とにかく世界的なビジネスマンになりたかったからです。サッカーで夢を叶えられなかった分、仕事では絶対に夢を叶えたいと思っていました。毎日深夜というか朝方3時4時まで仕事をしてました。今では「働き方革命」もあり、褒められたことではありませんが、当時の経験は今の自分の糧になっていると強く思います。
高野:その体力とメンタル、さすが過ぎます。
テクノロジー×イノベーションで、人々に感動を与える仕事をする
樋口:当初は1年で独立するつもりでしたが、先輩からマネジメントスキルをつけてから独立したほうがいいとアドバイスを頂戴し、4年間会社で働くことにしました。
そして、マネージャーのポジションに就き、セールス部員50人をマネジメントしました。個人でも1番、マネージャーでも1番の地位を確立しどこか悶々としていた時、Facebookが上場するニュースを目にした時、心打たれました。しかも、マーク・ザッカーバーグは私より2つ下の年齢でした。
“世界的なビジネスマンになる”という人生の目標を達成するため動き出すのは今だと心に決めました。ビジネスマンとして実力もついてきた自信もあり、独立を決断することが出来ました。
ただ、自分1人でやりたいとか、社長になりたいという気持ちで独立を決断した訳ではありません。サッカーと同じで、チームで勝ちたいし、何かを成し遂げた時のスタメンでいたいという思いが強いです。そしてやるからには一番を目指します。
高野:この上昇志向は樋口さんの才能ですね。
樋口:そして当時、孫正義さんが好きで「次の時代はテクノロジーだ」という言葉を信じました。自分の得意な領域は、今までやってきた不動産です。不動産業界はアナログで、働き方もアナログだったので、ここにテクノロジーを持ち込む価値があることには気がついていました。この得意な領域にテクノロジーを加えることで、起業家として大成し、“世界的なビジネスマンになる”ことを決めました。
そして、会社が何のために存在するか、何のために会社を立ち上げるのか、何がしたいのか熟考しました。そして、情報革命に生きているこの時代に、テクノロジーの力で人々に感動を提供する仕事がしたいと心に決めました。誰に頼まれているわけでもなくそれが使命だと思って仕事をしています。
高野:会社の理念として掲げられている「テクノロジー×イノベーションで、人々に感動を。」この言葉の重みを感じます。
樋口:ちなみに私が一番テクノロジーで感動したのは、電動自転車です。体育会系の私が坂道でおばちゃんの自転車に先を越されたのです(笑)。そのおばちゃんは電動自転車に乗っていたのです。この電動自動車というテクノロジーが、おばちゃんの生活を便利にしているのです。小さな体験でしたが、私には衝撃的な出来事でした。
GA technologiesはReTechで日本を掴む
高野:不動産×テクノロジーでどんなビジネスモデルを生み出したのでしょうか?
樋口:FinTechに続くイノベーションとして注目されているReTech(Real Estate Tech:不動産テック)に着眼しております。
不動産業界は、宅建業法や高額商品という特性がありネットだけでは完結しないビジネスです。不動産領域のネット系企業だと売上の構成が、広告モデルかサブスクリプションで粗利が大半になると捉えられがちです。しかし、広告モデルはテレビやLINEのようにマスを取れるものじゃないと成長しないと思います。不動産広告の市場規模は1,500億円程度しかありません。一方、リアルは年間約40兆円のマーケットがあります。
リアル側で(マンション開発事業などを)やろうと思うと、売り上げが100億円の場合でもデットが同規模か半分程度ありリスクが大きいです。そのため、このスキームで急成長した不動産企業は財閥系を除いて倒産しています。リーマンショックの時がわかりやすい例です。
高野:特にリアルの不動産業界は業界構造が複雑すぎて、スタートアップの参入が難しい印象ですね。
樋口:この日本のマーケット構造を見た結果、リアルはやるけどデッドは組まないビジネスモデルを確立しました。現在、売上が95億円ですがデットは2億円しかありません。そのため、当初は、売買仲介から始めることにしました。
ビジネスモデルのキーワードは、“プロダクト・サービス・ヒトのベストプラクティス”です。不動産業界は、この3つがワークしない限り成功しません。例えば、ゲーム会社であれば、プロダクト(アプリ)を作ってしまえばあとは、広告を打つだけです。一方、不動産の場合は、プロダクト(アプリやWEB)もつくり、サービス(商品、つまり物件)、ヒト(アフターフォロー)もしっかりしないといけません。5,000万円の物件であれば、それに見合うサポートやアフターケアを人がします。私は不動産セールスの経験があるので、現場のことは誰よりも理解していますし、実際に今でも私自身がCS(当社ではCSをCustomer Successと定義)の責任者としてのフロントに立って顧客と対話する時間を定期的に持つようにしています。
高野:“プロダクト・サービス・ヒトのベストプラクティス”これを事業化するのは難易度が高いですね。
樋口:そのため、ピュアプレイで経験を積んできたネット系の人がReTechのようなクリック・アンド・モルタル(Click and Mortar)のサービスを始めようとすると、プロダクトだけでなく、リアルもケアしないといけないため参入障壁が高まります。流行のFinTechであれば、リアルのケアはほとんど必要無いので、ネット系の人の参入障壁はReTechよりも低いのです。
FinTech企業は現在500社くらいあると言われています。アメリカでFinTechが流行ってから、3年のタイムラグで日本でもFinTechが流行りました。ReTechは、2015年頃、アメリカでVCの投資額が膨らみました。そのため、日本に来るのは2018年くらいと言われています。しかし、ReTechは人を介在させる必要があるため、FinTechほど企業数増えないと考えております。
高野:今後、日本でのReTech動向が楽しみです。
樋口:通常、企業数が伸びると市場規模が大きくなりマーケットが追い風となりますが、そうなる前に日本のReTechに関わる部分は弊社で取っていこうと思います。今この分野でマネタイズまで出来ている企業は日本でも弊社を含む数社と言われています。エンジニアチームもワークし、さらにAI戦略室も設立し、大学との共同研究も積極的に進めています。不動産業界は、ネットで言うと1990年代、黎明期です。このチャンスを絶対に掴みます。
エンジニア採用の失敗談
高野:樋口さんはどんな困難も気迫で乗り越えてしまうと思いますが、起業し困難な壁にぶつかったことはありましたか?
樋口:エンジニアの採用には大失敗しました!もう今となると笑い話です。起業当初から、IT・ReTechで戦うことを決めていたのでエンジニアの採用は必要不可欠です。エンジニアのマネージャーも私が採用していました。
私が採用したエンジニアのマネージャーが短期間に3人変わっているのです。一人採用し、すぐに離職、また採用してもすぐに離職という負のループでした。この原因は明白で、私にプログラミングの知識がありませんでした。
面目ない話ですが、以前はプログラミング言語に違いがあることすら知りませんでした。そのため、最初のエンジニアマネージャーに「アプリ作って下さい。」といっても、「私にはできません。」となり、「え?なんでエンジニアなのにアプリも作れないの?」と一悶着起こります。新たなエンジニアはサーバーサイドの方だったのに、「Webサイトを作って下さい。」とオーダーし、「え?エンジニアなのにこれ出来ないの?」みたいな事を3回繰り返しました。エンジニアについて何一つ知りませんでした。全て私の責任です…。
高野:樋口さんのようにエンジニアの採用に苦労されている経営者の方は多いと思います。
樋口:このままでは駄目だと、プログラミングの学校に通い勉強しました。また、エンジニアチームの近くに自分の席を置いたり、ラフな格好で出社したり、エンジニアとのコミュニケーションも心がけました。今では開発への理解度は高いと思っています。
高野:今エンジニアは何人ですか。
樋口:現在では開発部門も30人のチームになりました。ワークスアプリケーションズでのマネージャー経験者にジョインして頂き、状況が一変しました。得意不得意ではなく、何事もやり続けることでしか未来は開けないと思っていますので、今後も開発力強化に取り組んでいきます。
高野:事業会社でよく発生するセールスサイドとエンジニアサイドのすれ違いはありますか?
樋口:ありません。創業から弊社は、ReTech領域で“プロダクト・サービス・ヒトのベストプラクティス”で勝っていくと決めていて初志貫徹です。この可能性にかけてジョインしてくれるメンバーと働いているので、セールス側も、エンジニア側で収益が上がっていなくても文句を言うメンバーはいません。むしろ自分が担当する顧客をエンジニアに紹介して、ユーザーヒアリングの場を設定するなど、積極的に開発に協力してくれます。反対にエンジニア側もリアル側の人間が必要だと十分にわかっています。実はもう直ぐ別の階にオフィスを増床するのですが、エンジニア側から「セールスやCSなどフロントに立つメンバーと同じフロアにして欲しい」と言う声が上がるような関係です。全員がReTechで絶対に一番になる高い目標を掲げて働いています。
高野:これは樋口さんのマネジメント力の賜物ですね。
GA technoogiesはこんな方を求めています
高野:会社の成長の要因はどこにあると思いますか?
樋口:人の力、チームの力です。弊社には不動産業界経験者は10%程度で、新たな業界出身者の風を取り入れています。最近は、外資系金融出身・リクルート出身・IT系メガベンチャー出身など、多様なバックグラウンドのメンバーがジョインしています。一人一人の存在が会社の成長を加速させ、さらに強いチームになっています。
そして、僕が日々ダーウィンの進化論の言葉を借りて、「最も賢い者が生き延びるのでもない。 唯一生き残るのは、変化できる者である。」と伝えているため社員の柔軟性・対応能力は平均して高いです。
加えて、弊社は不動産会社12万社で唯一、商品を買ってもらったお客さんを採用しています。流行のリファラル採用の先を行く、「顧客採用枠」と呼んでます。実際にサービスを使って頂いた方を採用しているため、商品や会社の理解度も高く、ユーザー視点でのサービス提案を積極的に行ってくれます。
高野:顧客採用枠!新しいですね。
社風としては、樋口さんのような元気な方が多いですか?樋口さんは普通の社長の10倍の元気さとインパクトがあると思います。
樋口:天才より努力をする人材を採用しているため、これまでの努力の方向は様々でキャラクターは多種多様な人材がおります。社内には意識が高いメンバーが多いです。意識が高い人はそこに到達するまで努力をするためです。あとは人が良いですね。
高野:優秀層を採用し、競合他社よりも強いメンバーで経営することが事業の成長の秘訣ですね。
樋口:新卒採用では、地方だろうとどこだろうと足を運び積極的にコミュニケーションをとりますし、キャリア採用であれば毎月GA tech パーティーというオープンオフィスパーティーを開催し、とにかく沢山の人に会う機会を大切にしています。リファラル採用について話し合う「リファラル会議」も経営メンバー間では毎週、リファラル担当社員間では2週に1回のペースで行っています。そして、入社する社員には絶対に私が面談します。
とにかく、エンジニア採用も急務です。Android・iOS・AI・RailsのエンジニアとPMのポジション全てあります。
高野:エンジニアのニーズは高まる一方ですね。
樋口:エンジニア採用は、当社が成長するために最重要課題ですね。リアルな産業をテクノロジーで変革していきたいと考えているエンジニアの方が非常に増えていますね。
ネットで置き換えられていない最後のビッグマーケットが不動産になります。
高野:事業会社だからこそ出来る、開発環境ですね。
樋口:加えて経営企画の人材も探しています。事業サイドがわかり、私と一緒に新規事業の立ち上げや、既存事業のメンテナンスをしてくれる人材を求めています。
テクノロジーを活用し「世界のトップ企業を創る」
高野:今後のビジョンを教えてください。
樋口:日本の不動産中古市場を活性化させたい強い思いがあります。日本の不動産市場は、新築8割・中古2割です。欧米諸国はではその反対で、新築2割・中古8割となっています。本来、OECD加盟国は新築物件の抑制を行います。つまり、人口の伸びにあわせて住宅を供給しようという試みです。
しかし、日本だけが未だに新築物件を抑制していません。人口が減少する日本社会において、新築物件の供給量は年間40-50万戸でいいといわれていますが、現在100万戸が供給されています。
高野:こんな社会問題があったのですね。
樋口:日本は戦後復興の経緯で、政府が経済効果の大きい新築物件・新築マンションの建築・購入を促してきました。5,000万円の新築物件であれば、経済効果は倍の1億円となります。家を買えば、車も家具も買いますし、建築業者にもお金が入ります。日本人は古来、物を大切にしてきました。しかし、時代背景もあり住居だけは大切にしてこなかったのです。
こんな状況を見て、中古不動産市場を活性化させるという志を持っています。中古不動産市場を活性化させるには、中古不動産の価値を正しく評価し、買いやすくする必要があります。そこにテクノロジーが介在します。
様々なデータから不動産価値を多角的に評価し、不動産情報も見やすく分かりやすく伝え、問い合わせなどの明解な動線設計も必要です。しかし、これまでの不動産企業はイメージが良くないんです。そこを我々がクリエイティブに変えていきたいです。
高野:最後に今後の事業展開を教えてください。
樋口:まずは、不動産の分野でReTechと中古市場で1番を取ります。その横展開として、親和性の高い分野にテクノロジーを入れていきます。業界的にアナログなんだけどリアルが介在する余地のあるところが弊社の得意な分野です。
たとえば、ReTechと関連深いFinTechやInsurTech(Insurance Tech:保険テック)、そしてCon-Tech(Construction-Tech:建設テック)などです。その選択肢として、新規事業だけでなく、M&Aも考えています。この領域に我々が介在することで、どんな些細なことからでも構いません、テクノロジーを介して感動を増やしていきます。
私たちのミッションは「テクノロジー×イノベーションで、人々に感動を。」です。私たちのゴールは、ビジネスで収益を上げることにとどまりません。人々に感動を与えることがゴールです。そのために、「世界のトップ企業を創る」というビジョンに向け、あらゆる困難に立ち向かい、挑戦し続けます。我々はビジネスで世界を取ります。
戦略顧問 久夛良木健氏のコメント
久夛良木健氏
GA technologies 戦略顧問
世界規模で加速する情報革命の中でも、GA technologiesが注力する不動産テックは将来大きな成長が期待されている分野です。急速に進化が進むAI の投入も、競争戦略上大きな差別化要因となるでしょう。従来の不動産業界に旋風を吹き込むべく、戦略顧問として強力に皆様のチャレンジをサポートさせて頂こうと考えています。
キープレイヤーズ高野のコメント
樋口社長は人間的な魅力溢れる経営者です。お会いした瞬間に「社長だ!」と分かる溢れるオーラとパワーがあります。何よりもサッカーで鍛えられたご経験がビジネスで活かされております。社長の“人間力とやりきる力”が会社の成長を加速させています。
ReTechの中で成長著しいGA technologiesさんは大注目の会社さんです 。“プロダクト・サービス・人のベストプラクティス”を掲げ、強いセールスの力とテクノロジーの側面の両輪で急成長しております。不動産領域の事業は単価が高いため、人のクロージング力に比重を置き、マーケティングからアプリ開発までやりきる会社はこれまで実は少なかったのです。
ビジネスとしても順調に成長し、着実に売上も伸びています。メンバーの皆さんが本気で、ReTechと中古市場で1番を目指していますし、ReTechでのスキームを活かした今後の事業展開からも目が離せません。
追記:その後見事にIPOされて、拡大発展を続けております。オフィスも移転されますます勢いを感じています。今後は既存事業の拡大に加え、新規事業の立ち上げ、さらにはM&Aなど目が離せないベンチャーです!また、どちらの会社出身なのかよく検索されているようですが、樋口龍社長は、青山メインランド出身です。独立されている方も比較的いらっしゃる会社さんかと思います。魅力度高い経営者、社長ですね。
<取材・執筆・撮影>高野秀敏・田崎莉奈