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代表取締役会長 大川祐介 経歴
1979年、静岡県生まれ。18歳の時に内装業界に飛び込み、2年半にわたってクロス職人として修行。2000年に独立をしてユニオン企画有限会社(現クラフトバンク株式会社)を創業、内装仕上げ工事業をスタートする。2004年に事業拡大を機に現社名に商号変更。2017年に空間づくりの事業に加え、業界の抱える課題を解決して活性化していく事業「TEAM SUSTINA」を立ち上げる。
代表取締役社長 韓英志 経歴
東京大学大学院工学系研究科建築学専攻を修了後、2005年に新卒で株式会社リクルートに入社。住宅事業(現SUUMO)を経て、国内の新規事業開発を複数経験。その後、同社のグローバル展開を主導し、総額75億円のコーポレートベンチャーキャピタルを設立。実行責任者(リクルートストラテジックパートナーズ取締役、リクルートグローバルインキュベーションパートナーズ取締役)として30社以上への投資を実行。2015年にはドイツ・ベルリンに本社を置くQuandoo GmbHを買収し、Managing Directorとして現地で経営参画。2017年6月にリクルートを退職し、約半年間育児に専念。2018年1月より現職。元株式会社リクルートホールディングス エグゼクティブマネジャー。
クラフトバンク株式会社
クラフトバンク株式会社は、建設業の受発注プラットフォーム「Craft Bank」やオフィスやショップの設計・施工を行う空間創造事業「UT SPACE」、建設領域に特化したオンラインプラットフォーム事業「TEAM SUSTINA」を展開しています。 建設業界の高い離職率やシビアな労働環境といった深い問題を打破すべく、職人の技・クリエイティブ・ITを融合させ建設業界に新しい風を吹かせます。
お互いの強みを融合し経営を強化する
高野:今回はクラフトバンクの代表取締役社長 大川さんと取締役副社長 韓さんにお話をお伺いします。お二人の普段のお話がいつも面白すぎるので今日は本当に楽しみにしておりました。
私は昔から韓さんにはお世話になっていて頭が上がりません。リクルート×グローバルのど真ん中で経営をされていた韓さんがクラフトバンクさんにジョインされましたね。お二人の力のコラボレーションによってますます会社の存在感が増していくことを本当に楽しみにしております。まずは取締役副社長の韓さんのプロフィールをお聞きしてもよろしいでしょうか?
韓:私は東大から新卒でリクルートに入社し12年3ヶ月お世話になりました。リクルートでは様々な挑戦の機会を頂戴しました。
直近6年間はASEAN立ち上げ・欧米立ち上げなど、「リクルートのグローバル化」とゼロから向き合い、チャレンジしてきました。特に最後の3年間は極寒の地ベルリンに乗り込み、40カ国・300人を超えるメンバーと一緒に仕事をしました。世界中で多くの戦友と出会えたことは最大の財産です。
ベルリンのスタートアップに参画し私のマインドは大きく変わりました。ほぼ全従業員が複業をし、毎週末オフィスにDJを招き、友人を呼んでパーティーを開催します。LGBTへの許容度も高かったです。日本で言う働き方改革のメッカでした。同時に、ここで自分の働き方も考え直しました。
この機会がなければ、私がクラフトバンクに参画することはなかったと思います。そして、客観的に日本の魅力について考える機会にもなり、日本が世界に誇れるものは「アニメ」と「職人」だと感じました。
高野:「アニメ」と「職人」の魅力を感じるとは、ベルリン時代からクラフトバンクと何かシンパシーがあったのかもしれませんね!
韓:確かに ベルリンのスタートアップとクラフトバンク、双方には似通ったアーティスト気質があります。ベルリンでは多様な文化を尊重しながら仕事をしていました。クラフトバンクにも海外で映画を作っていたり、韓国の照明メーカーにいたり、時計の修理屋さんがいたり、書道家がいたり、と多様性が半端ないです(笑)。多分どの日本の大企業よりも、英語が話せる人の比率は高いんじゃないかと思います。
大川とは2017年4月に初めて会い、クラフトバンクの事業についてディスカッションしました。事業詳細を最初に分解した時、事業はぐちゃぐちゃで困り果てた一方、ブルーオーシャンすぎて驚いたことを覚えています。ネット事業経営を長年やってきましたが、こんなにボロボロなのに創業1年で月額課金売上が年間1億もある。可能性しか感じなかったです。
高野:韓さんほどのプロフェッショナルな方が、転職の意思決定をされるまでには時間を有したと思いますが実際はいかがでしたか?
韓:創業者が大川でなければ私がクラフトバンクに参画することはなかったと思います。大川とは知り合って1年も経っていないのですが、社会意義に対する突き抜け度合いや信頼感、そして全権委任してくれているので、自分も死にもぐるいで期待に応えようという意思が芽生えます。
また、知り合って1年も経っていないビックリするくらい全権委任してくれています。ふたりでの会議は皆無です。ほとんどチャットで終わり。前職で11か国の拠点をマネジメントしていましたが、ここまではなかなかできないですよね。その根底には、小さな商売をつくるのではなく、失敗しても大きな勝負に出よう、そのためには、勇気を持った意思決定が伴う。僕もいち経営者として、その突き抜け度合いや信頼感、勇気に、自分も死にもぐるいで期待に応えようと思ってしまいます。
意思決定が出来た最終的なきっかけは、大川との会話と過去の実績データにありました。クラフトバンクは、空間事業とインターネット事業の2軸で展開しています。私が「資金が足りなくなった時、空間事業とインターネット事業どちらに投資するか?」と聞いた時、大川は「僕が意思決定すると空間に寄ってしまうので、韓さんが空間事業も見て韓さんに決めてほしい。」とここでも私を信頼してくれました。さらに、その裏側にあるP/Lを見ると、創業期とネットに集中投資した期を除く16年間は一度も赤字になっていないんです。内装工事事業なので1週間遅れると大きな売上の計上が遅れるのですが、この着地の緻密さも信頼を置いたポイントです。結果だけがすべてを物語る、、、です。
そして、2018年1月から取締役副社長として参画し、私のキャリアをクラフトバンクに捧げることを決めたのです。5年前であればお互いに水と油でしたでしょうし、僕の介在価値もなかったと思います。本当に縁とタイミングです。あとは、その縁とタイミングに背中を預けられる覚悟を持てるかですね。
職人から始めたからこそ今がある、クラフトバンク大川祐介さんのご経歴
高野:次に、大川さんのご経歴をお伺いします。
大川:私は中卒で16歳の時、東京に出てきました。最初から職人を目指していた訳ではありません。学歴がないため、職業の選択肢は限られていました。その中からファーストキャリアとして調理師を目指しました。なんとなく美味しいものを自分で作れたらいいなという思いがありました。しかし、調理師への道は1ヶ月で挫折しました。その後、不動産会社の売買営業の仕事をスタートしましたが、テレアポのリストを渡されうんざりし、3日で辞めました。
そんな私にとって18歳の時に読んだ、読売新聞の記事が人生の契機となりました。「これからは新築の需要よりもリフォームの需要が一気に拡大する」という新聞記事を偶然目にしたのです。これからは、リフォームの時代だと何か感じるものがあり、職人を目指すことにしました。すぐに友人に職人として働ける先を教えてもらい、内装仕上げ業の会社に入社しました。クロス職人への道のスタートです。
高野:紆余曲折してたどり着いたのが職人への道だったのですね。本当に人は適材適所、何事も挑戦してみなければ分かりませんね。
大川:職人の仕事には自分も適性を感じていました。入社後間も無く、先輩の仕事の姿をみてカッコイイと肌で感じたことを覚えています。特に、鈴木さんという先輩がすごくカッコよく、鈴木さんの弟子として頑張ろうと断固たる決意をしました。クロス職人の仕事は技術力が目に見えます。
それからは、鈴木さんにべったりくっつき仕事をしていました。鈴木さんの行動から仕草、技術まで全てを模倣しました。クロス職人は技を身に付けなければ、現場に出て壁紙を貼る作業を任せてもらえません。
いち早く鈴木さんに追いつくため、内装現場で余り材をもらい自宅に持ち帰り、壁張りの練習を繰り返しました。自宅に帰れば、壁を剥がして技の練習・勉強をしていました。ローラーの使い方やクロスの貼り付けまで実践で技を磨きます。余り材を接続させることは難しく、自宅の実践練習で技を磨くことが出来ました。ちなみに、毎日自宅は工事現場状態となり、毎日壁紙が変わるので、綺麗好きな家族にはいつも怒られていました(笑)。
高野:毎日壁紙が変わる自宅って新鮮ですね(笑)。ご家族のご理解もあって今があるのですね。
目の前の仕事に本気で向き合ったからこそ見えたもの
大川:実践を重ねると、鈴木さんと同じレベルの技を身につけた自信が付きました。すぐに社長に自分の技の評価をお願いし、現場に出る許可を得ることが出来ました。
この時の給与は、鈴木さんが月40万円で自分は25万円でした。鈴木さんに近いレベルの仕事が出来るようになった自信があり、社長に給与交渉をしましたが、受け入れてもらえませんでした。社長から鈴木さんに出来て自分ができない仕事があると指摘を受けました。
高野:常に上司の全てを盗み成長しようとする上昇志向の積み重ねが、大川さんの仕事を表現していますね。
大川:これを契機にこれまでとは違う目線で鈴木さんの仕事を見ていました。そして、自分の落ち度に気がつきました。
鈴木さんは職人の技に加えて、全ての仕事に心遣いがあったのです。まずは、近隣の方への配慮です。内装業者は現場の近くに駐車し作業することが多いです。この時、鈴木さんは駐車中の車に宛先を書き置きし、周辺の方にご迷惑をかけない最大限の工夫をしていました。作業場に対する配慮も怠りません。仕事後は床を拭いてから帰ることを徹底されています。また、内装中の現場に次の入居さんが内覧に来ることを想定し、A3の紙で「只今内装工事中です」と張り紙を置いて帰っていたのです。
自分と鈴木さんの徹底的な視座の違いに気がつきました。この鈴木さんの仕事を見てからさらに鈴木さんにくっついて回りました。鈴木さんにとって私は金魚のフンみたいな後輩で可愛がって頂くことが出来ました。
高野:心から尊敬できる先輩に鈴木さんから出会うことができ本当に幸せでしたね。
大川:そんな時、鈴木さんから仕事の手伝い依頼を受けました。土曜日に現場に呼ばれ、一緒に仕事を終え帰ろうとした時、茶封筒を渡されました。それは手間賃で封筒の中には1万4000円も入っていました。当時1日8000円の給与で働いていた私にとってこの額は本当に衝撃的でした。今でも当時の衝撃を覚えています。
鈴木さんからは、会社を仲介すると手取りが抜かれてしまうので、自分で仕事を請け負っている事実を聞きました。これがビジネスの構造であり、初めて会社に所属しないで自分で稼ぐことの大切さを学びました。
高野:大川さんにとってこれが職人から経営者になる契機だったのですね。
大川:この衝撃を受け、居酒屋で社長に給与交渉をしました。しかし、社長からお前は若いから給与アップは出来ないと断言されました。私は、どうやらここでがんばって働き続けても、先輩と同じ額をもらうにはずいぶんと時間がかかりそうだと分かり、すぐに退職をして、会社を立ち上げました。
すべての建設業界の方を幸せにする仕事をする
高野:退職後はどのようにして仕事をスタートされたのですか?
大川:職人として現場で働いたからこそ見えた問題意識があり、これを仕事で解決しようと考えていました。「すべての建設業界の方を幸せにしたい」という思いで仕事をしています。
職人が所属している会社の多くは従業員3-4人程度で、その従業員は3-4年で辞めてしまう負のループがあります。建設業は高度経済成長期で効率良く仕事を分配するために分業化されました。自社単体で出来ることは何一つありません。持たざる経営が基軸で、クロス職人とタイル職人は異なる人間です。空間作りの会社として業者がいない場合は会社が成り立たなくなります。業界構造的に変えることが出来ていない現状が問題です。
また、建設業の仕事の需給にも波があります。住宅・オフィスは2月から3月、商業施設は8月が圧倒的人手不足になるのです。このような状況を見て、「私とお付き合いして下さっている建設会社が安定して10年以上、長期的に続くには何が出来るのか?」と考え、この難題を仕事で解決しようとしました。
高野:利益が出る、儲かるという視点以前に、いかに現場・建設業界が求める仕事が出来るかを徹底的に考え抜かれていたのですね。
大川:建設業界のトップランナーの人は現場が見えていません。「現場の職人が今後のキャリアのためにどんな技を身につけるべきか?」、「今、どこの職人が仕事を求めているか?」など考えることもないと思います。
まだまだ、職人さんたちは明日の現場に行かないとメシが食べられない状況です。仕事がない時は、仲間に電話をして仕事をもらいますが、友人からはたくさんのお金をもらうことは出来ません。建設業界は整備や評価が必要です。名刺も履歴書もない、ポートフォリオもない世界です。
こんな世界ですが職人はプロ意識を持って仕事をしています。職人一人一人が日の目を見る世界にします。
クラフトバンクは10年後の建設業界の未来をツクル
高野:クラフトバンクさんの事業についてお伺いします。
大川:現在は2軸の事業を展開しています。業界の活性化を目指すオンラインプラットフォーム事業「TEAM SUSTINA」と、オフィスやショップを中心にブランディング・設計デザイン・施工をトータルで行う空間創造事業ブラン「UT SPACE」です。
「TEAM SUSTINA」は建設業界の会社が探せて見つかる「建設企業検索サイト」や「求人サーチ」「建設コネクト」などのマッチングメディアを複数運営し、建設業界のオンラインプラットフォーム事業を展開しています。建設業界の仕事は、「業者を見つける→会う→営業する→仕事をする」このPDCAの繰り返しです。IT企業になる予定はありませんでしたが、建設業界の仕事を最適化するためにはITの力が必要でした。
高野:大川さんのような現場に入り、現場のリアルを知っている方が生み出すサービスこそ、本当にユーザーから必要とされるサービスになるのですね。
大川:ブランディング、設計デザイン、施工までのトータルプロデュースを行う「UT SPACE」はこれまで私が現場で学んだノウハウの集大成です。実際に私も現場に立ち仕事をしています。SPACE(空間)に関わる全ての仕事を一つにすべく、以下のフローを一括して行います。
1.ヒアリング
2.環境分析&プランニング
3.デザイン
4.プレゼン
5.工事
6.中間検査
7.引き渡し
8.アフターサービス
この「UT SPACE」は弊社がお付き合いして下さっている会社と仕事を共有することで成り立っています。
クラフトバンクの共同経営戦略
高野:大川さんと韓さんの考える今後の経営戦略を教えて下さい。
韓:大川と仕事をすることで、小手先ではなく、世の中から必要とされる事業を生み出すための秘訣を教えてもらっています。世の中から必要とされている事業を最適な形で展開して行きたいです。
建設業界をIT化するためには、どこまでオンラインで最適化し、オフラインをどこまで許容するかという境界線が命題になります。この境界線を見極めることが大事で、バックヤードのシステムはバリバリのオンラインでつくりますが、UIはあえてオフラインぽくすることで心地よく使って頂けたりします。
例えば、請求書の作成のプロセスをITで最適化させたとしても、請求書の送付自体はFAXを使うことが大切です。この思考はピュアIT企業に出来ないことでして、ピュアなネット事業を長年やってきた僕としてはここが腕の見せ所で面白い。この面白さを、全然スマホが使えない(笑)大川が教えてくれました。
高野:大川さんと韓さんがお互いの強みを相互補完され仕事をされているのですね。
韓:大川は僕ほど上手にネット事業は作れません。一方、僕も大川のように現場工事は出来ません。ただお互いにそれぞれのアウトプットがイケてるのかどうかくらいはわかります。きちんと考え抜かれているのか、細部にまで落とし込まれているか。これはネット事業経営でもクロス張りでも同じです。ここに、お互いにプレッシャーを与えあっているんだと思います。「負けてらんねーぞ」って。
クラフトバンクは既に100人規模の会社でありました。しかし、大川はこれまでの成功体験に固執せず、「現在の自分の力では、もっと会社を成長させるために足りない物がある。それが何だか教えてください。」と言える社長です。このハングリーさ、成長志向が何よりもこれまでの成長の秘訣であると思います。
大川:韓がジョインする前は自分で「TEAM SUSTINA」事業を回していましたが、いくらやっても抜け出せない状況で正直途方に暮れてもいました。韓は大学院まで建設学科で実学としてしっかり学んでいますし、ビジネスで成功している人間です。職人から見て建設的なセンスはないですが!(笑)
自分はどっぷり建設業界に浸かりすぎていたので、自分の足りない、持っていない部分を韓に補ってもらっています。
韓:私はリクルートでネットと事業経営について優秀な先輩から学ばせて頂くことが出来ました。そして、大川の持っている悩みはカリスマ経営者・創業者だから持つ悩みです。「TEAM SUSTINA」が袋小路に入ってしまう前に自分が出来ることが腐るほどあります。着実に進めて行きたいです。
建設業界に限らず、オフラインの業界がオンラインに入るときの葛藤があります。この葛藤を越えてみたいと思いました。ITで世の中を破壊したいのではなく便利にしたいという思いで仕事をし、毎日の判断をしています。
ネット事業としては、2016年に大川が同時多発的に様々なサービスを市場に出してくれました。しかし、いろいろなことをやりすぎて、どれも中途半端になってしまっているのが現在の大きな問題です。これまでのたくさんのサービスのおかげで、データは集まっているので、今まで経験した途方もない新規事業に比べれば意思決定はしやすいです。人もリソースももちろん限界があります。今後は、選択と集中で事業をスケールさせていきますが、確固たる成長イメージは描けています。
大川:私は「すべての建設業界の方を幸せにしたい」という思いで仕事をしています。自分がお世話になった世界ですので。
高野:トップのお二人はバックグラウンドこそ異なりますが、向かっていこうとする方向は確かに一致されていますね。
韓:私がお世話になったリクルートは、世界的にオフラインをオンラインにできた唯一の会社だと考えています。オフラインがオンラインになるときの葛藤とそれを乗り越える方法論は、リクルートホールディングスの現社長 峰岸真澄さんが2009年に「SUUMO」 ブランドを作ったときに、紙からネットへの見事な事業転換をしまして、それを右腕として横で見ていたことを思い出し、実践しています。
また、新しい取り組みを仕掛けて行きます。弊社では建設業会初の複業解禁をしました。ネット業界では普通かもしれませんが、構造的にハードワークになりやすい建設業界では画期的だと思います。僕の知るところでは、建設業界では初の試みだと思います。問題が起こるだろうなぁ、と思いながらも踏み切ったのですが、やってみると想定以上にうまくいっていまして、このハードワークを因数分解すると意外と無駄がシンプルに見えてきました。
高野:クラフトバンクさんが先頭に立ってリアル産業の働き方改革を推進してください。
韓:もちろんです。大きな会社の中だけで推進していく働き方改革と、不透明な業界の中規模の会社が行う働き方改革は全く意味合いや方法論が異なってきます。クラフトバンクくらいの規模の会社で働き方改革を推進することによって、建設業界全体に伝播していくと考えています。
大川:私たちがやろうとしていることは絶対に間違っていません。弊社サービスのユーザーは40歳未満の人が多く、「現状に満足していない・将来に不安・成長志向がある」このような考えを持つ職人が多いです。彼らの期待に仕事で応えていきます。
2020年の東京オリンピックまでに成し遂げたいこと
大川:我々は1つ2020年の東京オリンピックを1つの期日としています。オリンピックまでに新しい市場を作って行くことが命題です。
現在、大手建設会社は受注を軒並み減少させています。ボトムの人たちは実は仕事が余っているのに現場の声を知らないがために、この状況が生まれています。オリンピック後、建設業界の市場はもちろん縮小しますが仕事が無くなることはありません。市場の予想として、2020年はマンションの大規模修繕が始まるとされています。この機会に、職人はスキル転換が必須なのです。クロス職人だけでなく、マンションの外壁も出来る職人になる必要があります。
私は、職人というボトムの世界から来ているので自分が見えている世界からしか物事を判断出来ません。2年前から理解できてなかった領域を韓から教わりながら仕事をしています。
韓:大川の圧倒的成長思考にはいつも面食らっております。私が何気なく使っていて、大川は知らなかったビジネス用語も、その場でググってtech crunchを読み次の日からはあたかも知っていた言葉のように使っています。既に開発ディレクションまでできてしまいます。学校の勉強は意味がないと判断して全くしてこなかっただけなんでしょうね(笑)。
創業者がここまでハングリーで勉強してくれる姿勢にある意味感動を覚えます。
大川:韓の話す通りで、これまで自分からの外交や学びはゼロで、これまでの経験ベースで仕事をしていました。韓からの刺激を受け、目線を上げることが出来ました。
クラフトバンクさんはこんな方を求めています
高野:ここからは欲しい人材像について教えて下さい。
韓:高野さんしっかり営業してきましたね(笑)。
このブルーオーシャンで、「不」の多いこの市場で挑戦したい人を求めています。たくさんの先輩たちにお会いして来て思うのが、人間の寿命は100歳にもなると言われていますが、「50歳になったら新しい挑戦は出来ないのではないか?」ということです。「人生の中で圧倒的に何かをチャレンジしたい!でも、何をやっていいかわからない。」こういう人には是非とも門をたたいてみてほしいです。後悔させない自身だけはあります。
転職先の候補として、Google・Facebook・New Picksのような超最先端IT企業も考えました。しかし、それらの企業には自分よりも優秀な超スペシャリストが既に沢山いて、私がジョインしたところで到底太刀打ち出来ません。自分にしか出来ない、大きな価値提供が実現できるかは分かりません。それよりもリスクをとって、まだまだ残っている「不」の解消に向き合ったほうが生きてる感が実感できて、面白いです。
自分の価値に気がつきながらも上には上がいて何か葛藤を覚えている方、大きな挑戦をしたい方にジョインして頂きたいです。建設業界は本当にブルーオーシャンなんです。まずは、一度このおしゃれなオフィスに遊びに来てほしいです。
高野:韓さんのようなIT企業経営のスペシャリストの方、超最先端IT企業で何かうずうずしている方にもっとスタートアップを盛り上げて頂きたいです。
韓:かっこいいことを言わせて頂きましたが、スキルがあってもヒューマンスキルがないと仕事は出来ません。職務経歴書なんか作らなくていいので、弊社に共感して頂いた方にはどんどんお会いして行きたいです。
今後は事業会社のビジョンに共感してジョインする人が増え、お金ではなく、社会的意義で仕事をして生きていこうとする人が増える時代なると考えています。何のために働くのかしっかり定義出来る人と働きたいです。
現在、前職で一緒に仕事をした取引先や仲間が数人兼業で事業をお手伝いしてくれいます。どういう形であれこのビジョンや働き方に共感し、ジョインしてくれる人がいるのは本当に嬉しいです。
高野:現在はどんなメンバーがいらっしゃいますか?
大川:ブランディングから設計・施工までのトータルプロデュースを行う「UT SPACE」事業の社員はものづくりのプロフェッショナルな人が多く、バックグラウンドは職人が多いです。私が実感した通り、職人は自分の領域が限定的になってしまうため仕事に飽きてしまいます。アーティスト思考があるから本来ならオフィスだけでなく、美容室やブランドショップにも関与したいのです。
究極的には建設業界の職人に正規雇用はフィットしないと考えています。全員が個人事業主や独立出来る世界観が理想です。
高野:韓さんの見ているビジネスサイドはどんな方が多いですか?
韓:こちらも多様性にあふれた組織です。今まではネットに詳しくない大川が気合で作ってきましたが、まだまだ仕組みになっていません。プロダクトチームは10人程度ですが、PDSサイクルを最高速化すべく、ここにメスを入れたいと思っています。
そして、我々の最大のウリは、隣に現場監督や設計士がいることです。プロダクトを作ったら、隣ですぐに使ってもらい意見をもらうことが出来ます。また、現サービスはぐちゃぐちゃですが、大川が分からない中でまっしぐらに作り続けてきた独自コンテンツが多く、持っているコンテンツはめちゃくちゃいいです。資産はあるけど見せ方が下手という機会損失の塊です。このシナジーを当事者意識をもって主体的にフルに活用できる方には向いています。
エンジニアにとってはオフィス内でリアル事業が動いているので秒速でPDCA回し、すぐにユーザーのリアクションが分かるのは仕事の楽しみかもしれません。
高野さんご紹介をお願いします!
大川:引き続き私たちは、「すべての建設業界の方を幸せにしたい」そんな世の中を作り出すべく日々成長していきます。
キープレイヤーズ高野のコメント
クラフトバンクさんのお二人の経営者が面白いです。現場の経験から着実に力を発揮して、会社を拡大してきた大川さん。東大しかも建築出身で、リクルートで国内事業や投資、海外事業も経験されている韓さん。違うキャリアを歩んでいるからこそ経営をしてシナジーがあると思います。
ネット化が遅れている業界をネットの力によって便利にすることは大変社会的な意義があり、ビジネスチャンスがあると思います。最近、建設などの領域においてもネットベンチャーが出現してきていますが、相当大きな市場ですので、その分だけチャンスがあると感じます。
もし全く0から事業を立ち上げるとしたら相当なハードルがあります。一方でクラフトバンクさんであれば建設業界の知見やネットワークがあるという状況から、サービスを作っていくことができます。そこが大きな魅力だと思います。
リアル領域な世界をネットの力でより便利に変えていきたいという志のある方には大変魅力的な企業だと思います。余談ですが、お二人とも大変オーラパワーがあります。オーラもスタートアップ成功には必要な要素だと自分は感じております。
追記:インタビュー当時は社長が大川さん、副社長が韓さんでしたが、現在会長が大川さん、社長が韓さんになっております。
<取材・執筆・撮影>高野秀敏・田崎莉奈