【要約】エンジェル投資家-リスクを大胆に取り巨額のリターンを得る人は何を見抜くのか-

コラム          
       
       
     

はじめに

2018年6月19日、日本初のユニコーンと言われるメルカリが東証マザーズへの上場を果たしました。近年、日本国内でもベンチャー・スタートアップへの投資が注目され始めています。

しかし、エンジェル投資家の本質的な意味を理解している人は少ない印象です。今回は、ジェイソン・カラカニス著『エンジェル投資家 リスクを大胆に取り巨額のリターンを得る人は何を見抜くのか』の要点をまとめさせて頂きました。

これは、日本よりはるかに先行してベンチャー企業への投資が盛んなアメリカにおいて、著名なエンジェル投資家であるジェイソン・カラカニス(以下筆者)がエンジェル投資のいろはを記したものです。

この要約は、将来、エンジェル投資家を志している方だけでなく、エンジェル投資家を探している起業家の皆さん、将来的にベンチャー・スタートアップの世界で挑戦したい皆さんにも読んで頂きたい内容です。

エンジェル投資とは


立ち上げ初期の企業、いわゆる「スタートアップ」に投資することをエンジェル投資と呼ぶ。実績ゼロのスタートアップに大金を投げうつ行為は、ハイリスクだ。しかし、エンジェル投資家は、そのビジネスモデルを信じリスク以上のリターンを期待する。

スタートアップにとって最初の課題は、プロダクト・マーケット・フィットである。スタートアップが考え出したコンセプトやプロダクトを実際に利用してもらうユーザーを見つけるプロセスをこう呼ぶ。

多くのスタートアップが、このプロセスで資金を必要とし、窮地に陥る。そこで、まるで天使のように彼らを救うのがエンジェル投資家というわけだ。

成功したスタートアップは、他の企業に買収されるか、自ら上場する。エンジェル投資家は、この二つの場合を「エグジット(出口)」と呼び、かつて出資して得た株式を再度現金化することでリターンを得る。

マーケット・フィットがあり(ある程度のユーザー数を確保している)、優れたビジネスモデルを持つ優良なスタートアップへの投資を「エンジェル投資」とは呼ばない。実績ゼロのできたてのスタートアップへのハイリスクでクレイジーな投資を「エンジェル投資」と呼ぶ。

 

エンジェル投資家の資質

筆者は、エンジェル投資家として必要な項目を5つ挙げている。

・金:小切手を書けること。
・時間:創業者の抱える課題を解決することに協力できること。
・人脈:創業者と投資家、顧客の間を仲立ちできること。
・専門知識:創業者がミスを犯すことを防げること。
・人付き合い。

独善的で妄想にひたるわがままで付き合いにくい創業者たちが、エンジェル投資家へのリターンの多くを稼ぎ出す。エンジェル投資家は、「自分のビジョンを追うこと」にのみ懸命で他人に注意を払わない創業者を探し、彼らとうまく付き合っていく必要がある。

そして筆者は、エンジェル投資家について次のように述べる。

エンジェル投資家の第一の仕事は、揚げ足取り、後ろ向きの批評家、言い訳屋、要するに考えのスケールが小さい人間の言うことに起業家(創業者)が耳を貸さないように盾になることだ。小さく考えていれば人間が小さくなる。私はスタートアップの創業者には小さい成功を狙わず、ビッグな目標を追ってもらいたいと常に考えている。

 

スタートアップの資金調達ラウンド

すべてのスタートアップが、次に示すラウンドに沿って資金調達を実施するわけではないが、通例、スタートアップは、その設立から次のような順で資金調達を進める。

1:「ただ働き」ラウンド
 設立から、創業者自身が無給で働くことで事業を進める。エンジェル投資家にとって、このラウンドは重要な指標となりえる。「外部からの投資なしに創業者自身がどれだけ企業価値を形成できたか」を測ることができる。

 

2:「ブートストラップ」ラウンド
 「ただ働き」ラウンドと大差ないが、投資家以外の外部の力を借りつつ、自分たちでサービスを開発する。

 

3:「友達・家族、親類縁者」ラウンド
 スタートアップが個人的な人間関係から資金を調達する。例えば、不動産事業で小さくない財を築いた親戚などに株式を割り当てるケースを指す。

 

4:「自己資金調達」ラウンド
 スタートアップの創業者自身が初期の運営資金を拠出することはよくある。

 

5:「インキュベーター」ラウンド
 スタートアップは、インキュベーターに加わり、ある程度の株式の持ち分と引き換えに少額の出資を得ることができる。

 

6:「シード/エンジェル投資」ラウンド
 さあ、エンジェルの出番だ。

 

7:ブリッジ・ラウンド
 次のラウンドへのつなぎ(ブリッジ)のラウンドだ。このラウンドの投資家は、シードラウンドに参加したメンバーであることが多い。彼らはすでに投じた資金がの価値がゼロになることを防ぎたいという動機から再度参加する。そのため、その事業が失敗する可能性に盲目になっていることも多い。

 

8:シリーズAラウンド
 このラウンドの主役はベンチャーキャピタルであり、ほとんどのスタートアップがこのラウンドに到達することを目標の1つとしている。エンジェル投資家が、著名なベンチャーキャピタルと並んで、このラウンドに参加する場合、プロラタ条項を最大限に活かすべきだ。

 

 

エンジェル投資家としての一歩

エンジェル投資家としてスタートを切るには、著名なエンジェル投資家がリーダー(幹事)を務めるシンジケート(投資組合)へ参加することが近道だ。シンジケートに参加することで、ハイリスクの案件に1000ドル~2500ドルという少額から出資することができる。また、著名な投資家の下で、投資のノウハウを習得することができる。


まずは、「実績ある著名なエンジェル投資家が数十人参加した有望なエンジェル投資10件を実行した」と経歴に書くことを目標にシンジケートでの投資に参加しよう。


シンジケートや投資先を検討する基準がいくつかあるが、その一つは、「スタートアップに最低2人の創業者がいる」ことだ。2人なら、事情によりひとり欠けても事業を継続できるからだ。

シンジケートにおいては、自分が他の投資家よりも役に立つ、価値ある投資家であることを創業者やリーダーにアピールしよう。こうすることで次の投資案件を紹介される可能性が高まる。

また、シンジケートのメンバーや共同投資家にコンタクトを取り、投資家コミュニティに入ろう。最高の投資案件は、シンジケートやインキュベーターで発見されない。それは、投資家コミュニティの中でこっそりと紹介される。ここでも、他の投資家に自分の出資先の創業者を紹介するなど、エンジェル投資家としての自分の価値をアピールしよう。

 

10億ドルの創業者を見つけるために

エンジェル投資家として仕事を始めると、創業者のプレゼンを聞くピッチ・ミーティングで予定が一杯になる。1件の投資先を選ぶために、その数百倍以上のピッチ・ミーティングをこなす必要があるだろう。このようにして投資先が200件程度に達すると、このうち1社だけがリターン全体の99%を稼ぐことに気づく。エンジェル投資とは、これほどハイリスク・ハイリターンなのだ。

筆者は述べる。

「どのプロダクトが成功しそうか?」など予測できない。「どの人間が成功しそうか?」を判断する努力をしなければならない。10億ドルに化けるスタートアップを選ぶのではない。10億ドルに化ける創業者を選ぶのだ。

10億ドルに化ける創業者を見つけるために、投資家は投資を実行する前に、次の4つの質問を自問しなければならない。

1:この創業者はなぜこのビジネスを選んだのか。
2:この創業者はどこまで本気なのか。
3:この創業者がこのビジネスで成功するチャンスはどのくらいか。
4:成功したときの収益や私へのリターンはどのくらいか。

これら4つの問いを自ら問い答えるために、ピッチ・ミーティングにおいてまず、次の4つを創業者に問う。

1:あなたは今どんな仕事をしていますか。
2:あなたはなぜこれをやっているのですか。
 これらの問いを通して創業者に、大事なのは「会社が何をしたいか」ではなく「創業者であるあなたが何をしたいか」であると伝えられる。
3:なぜ今なのか。
 創業者は「今」というタイミングの大切さを深くわかっていないものだ。業界内では、同じようなアイデアを持った人間が常に現れていることを知るべきだ。大切なことは市場が熟したときに「最初」になることだ。
4:あなたの不当なまでの優位性はなにか。

この4つの質問を通して、創業者がなぜこのビジネスを選んだかを理解できるだろう。そして次の5つの質問を通して、創業者がどのようにしてそのビジネスを成功させるつもりか知ることができる。

1:競合について教えてください。
2:どうやって利益を出しますか。
3:顧客にはいくら請求しますか。
4:平均的な顧客はいくら使いますか。
5:このビジネスが失敗する理由のトップ3を聞かせてください。

ここまで聞ければ、投資家が自問すべき4つの質問という広範囲の問いに答えを持つことができるだろう。

投資すべき創業者とは誰か。見分けるべきは、創業者が辛く苦しいときに逃げないかどうかだ。スタートアップが廃業する主な理由は、資金が底をつくからでなく、創業者がビジネスを放棄するからだ。自分のビジョンに対する飽くなき追求心をもっているかどうかが重要だ。

 

 

いざ出資 ―プロラタと月次報告書―


何度となくピッチ・ミーティングを繰り返し、望みのない創業者にやんわりとした「ノー」を伝え続けた結果、出資すべき創業者に会うことができる。出資額にもよるがデューデリジェンスを経て、適切な出資先であることがわかれば、契約の手続きを進めることなる。
この際には、必ずしプロラタ条項を入れるようにしよう。

プロラタ条項とは、出資先の企業が増資する場合、初期の出資比率を維持できるように追加出資する権利を初期の投資家に付与するものだ。

月次報告書に対するレビューを通して常に創業者とコミュニケーションを取ろう。ビジネスには良い時も悪い時もある。悪い時には、自分の専門分野の能力やシンジケートのメンバーの力を借りて、創業者をサポートすることができる。エンジェル投資家は、創業者の最強の応援団である。

筆者は言う。「エンジェル投資家にとっていちばんの仕事は、CEOが苦闘しているときにはそこにいて、話を聞いてもらっていると感じさせ、自分が味方であることを確実にわからせることだ。地雷が埋まっている場所を教えて正しい方向に導くことはできても、運転を交代してパイロットになることはできない。」

ここまでしても、IPO、買収、非公開市場でも売却などエグジットまで到達する出資先(スタートアップ)は極々僅かだ。しかし途方もない努力によって運を引き寄せることもできる。

 

キープレイヤーズ高野のコメント

日本において近年稀に見るスピードでベンチャー ・スタートアップが立ち上がり、さらにエンジェル投資家に対するニーズや期待値が高まっていく印象を持ちます。

そんな時、エンジェル投資家の本質的な意味や役割を理解することが、起業家・投資家・ベンチャー・ スタートアップを志す皆さんに有意義てあると思いまとめさせて頂きました。

この書籍は、皆さんがバイブルとして持っていて良いオススメの書籍です。ぜひ、さらに詳しくエンジェル投資家について学びたい方は、書籍を手に取ってみて下さい。

 

私自身もエンジェル投資家の活動もしておりますので、エンジェル投資家として私のスタンスをご紹介させて頂きます。

エンジェル投資家として何をしているのか?

定期的なミーティングを常にしているということはないのですが、人事・採用・組織についての相談はもちろんのこととして、営業先、アライアンス先のご紹介や、Facebook(フォロワー数:8,546人)、Twitter(フォロワー数:26,696人)を活用してPR活動の支援をしたり、増資の際にエンジェルの友人たちやVCの方に繋いで調達を支援したりしています。

幸いなことにベンチャー、スタートアップの世界に約20年ほどいる関係で、各所に仲間がおりますのでこれはお役に立てるかなと思えば微力ながら行動しております。

 

どんな方にお会いしたいか?

志高く、社会的なインパクトを残したい起業家の方はもちろんのこと、良いプロダクトを作りハイスピードでエグジットしたい連続起業家タイプの方も大変興味ございます。お気軽にご連絡くださいませ。

 

執筆者:高野 秀敏

東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。11,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。55社以上の投資、5社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。149社上場支援実績あり。55社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を国内・シリコンバレー・バングラデシュで実行。キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。
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