【ベンチャーの採用戦略】成功企業の採用担当・経営者が実践している方法・チェックリスト

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こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職のサポートをしているキープレイヤーズの高野です。

多くのベンチャー企業が口を揃えて「採用が難しい…」と言います。

実際、採用が上手い会社とそうでない会社あります。人材は成長戦略において欠かせない要素ですので、採用上手な会社こそ成長する可能性の高い会社とも言えます。

では、採用力がある会社はいったいどんなポイントを大事にしているのでしょうか?

今回は採用・人事のバイブルとして、採用に成功している企業の採用戦略や採用担当・経営者が実践していることをまとめました。新卒と中途では違いがありますが、共通項になることを書かせていただきます。

なお、こちらの内容はウェビナーでもお話させていただいておりますので、YouTube動画で観たい方はこちらもご覧ください!

 

目次

ベンチャー企業の採用は難しい

ベンチャー企業は知名度が低かったり、ビジネスモデルが確立していなかったりすることが多く、仕組みで儲かるというカタチができていません。

従って、大手一流企業と違い、採用した人に力がないと何も結果が出せないことが多いです。大手企業よりも吟味して、結果が出せる人材を採用しなければいけません。

一方で日本人は特に大手志向の人が多いため、みんなから「この人はすごい!」という優れた人材は、ベンチャー界隈では激しい獲得競争になります。待ちの姿勢で良い人材が採用できることはとても稀といってよい状況です。

ベンチャー採用は「巻き込み力」が大事

前提として創業の前や、創業直後のベンチャーの場合は、友人、知人から候補者に当たっていくことになると思います。そのタイミングでは承諾が得られなくても、後にジョインしたいと言われることもあります。魅力的な人材にはコンタクトを取っておくことがとても大事です。

また私のような個人のエージェントに対して、「人材紹介の手数料は払えないが、ストックオプションや、株式のシェアを少し持っても構わない」とおっしゃる経営者もいます。関係者を巻き込んでいくには、上手いと思います。 私自身はエージェントとして活動を続けてきました。

このようなつながりのおかげで、エンジェル投資をさせていただくような機会もかなり増えました。 ただあくまでもミッションは、「応援したい」企業と「応援したい」個人をマッチングしていくことです。もっとスタートアップ界隈が盛り上がっていくことになんとか貢献していきたいと思っております。そしてそれが、社会の役に立つことでもあると信じております。

ベンチャー採用は「人」の重要度が高い

まず、考えて欲しいのが、採用には人の影響が大きいということです。まずは、社長のスタンスや社員のスタンスを確認してください。

一番「デキる」人=「社長」であること。

勢いがあるスタートアップの社長は、たいてい「オーラ」があります。普段は大人しくても、仕事の話になると突然スイッチが入ります。「この人やっぱり違うな」と思う何かが滲み出てきます。

まずは、社長自ら動き、最初のコアメンバーを10人を集めて欲しいです。集まらなければ、ビジネスモデルがしっかりと定まっておらず、事業の魅力が伝わっていないかもしれません。この段階で採用に失敗する理由は、給与などといった待遇ではないと思います。

また、社長が技術系や、黒子タイプである場合は、必ず表に立ち会社をプレゼンテーションする「イケてる社員」がいる必要があるでしょう。これが中長期的な採用力に繋がってきます。

シンパシーを感じる「イケてる社員」が心を摑まえる。

採用力に繋がる、イケてる社員とはどんな人でしょうか?採用したい職種によっても変わりますが、共通点は「仕事ができる人」です。会社の模範となるような人がいいかもしれません。 「話し上手で聞き上手」な人が理想的です。

しかし、技術系の場合には話が上手いことを重視していない場合もあります。そのような時は、採用のフェーズに応じて、複数の社員を当てていけば、口下手でも仕事ができる技術系の方を面接に出してもいいかもしれません。 エンジニアの世界では、コミュニケーション能力ではなく、別の評価基準があります。

それはエンジニア内のコミュニティが既にできていて、その中での有名人であるという基準が存在するからです。 エンジニアのコミュニティ内で評価の高い人材をひとり採用できれば、エンジニアの採用力は断然上がります。ただ、もちろん一筋縄ではいきません。

「イケてるエンジニア」を採用するために

エンジニアがいないチームにエンジニアを採用したい、その最初のエンジニアを採用するのが一番難しいです。

絶対に確実という王道はないのですが、意識していることは、「気付いたら両足」方式です(笑)。 小規模な会社やフリーランスで活動している人に、仕事をちょくちょく頼んでおくことでつながりを持っておきましょう。

または、Web系企業の大手や、ベンチャーにいる優秀なエンジニアとつながっておくことも大事です。 最初は、「副業で手伝わない?」とアプローチしていきます。

いきなり転職するというのは、誰しもハードルが高いです。スタートアップであれば尚更です。そこで最初は副業という形で片足を入れてもらい、気付いたら両足が入っている状態になる。この方法は効果的かと思います。

また、優秀なエンジニアは基本引っ張りだこですのでここにも注意が必要です。単価が高くでもコミットメントが低かったり、他の業務で忙しく思うように仕事が進まないこともあります。ここは期待値コントロールが必要になります。

ここからは、フェーズ別にやるべきことを紹介します。

第1フェーズ:母集団形成「自社をブランディングすることはできていますか?」

まず初めは母集団形成についてです。動画も用意していますので、よろしければ併せてチェックしてください。

経営者自身が、採用のためのブランディングをしていますか?

AIDMAの法則(広告宣伝に対する消費者の心理のプロセスを示した略語)にもありますが、求職者の注意を引き(Attention)ために、まず認知度を高めることが前提となります。

例えば、世間での認知度の高さは、「就職人気企業ランキング」の上位企業とほぼイコールとなっています。 そのため、採用のためには世間での認知度を高めることが重要です。

認知度を高めるためにはメディアへの露出を増やすための広報活動が必須となります。特にFacebookのSNSや自社ブログで企業情報を発信する活動は、今や当たり前となっています。

認知されていないスタートアップは、自社の企業コンセプトを披露する機会を少しでも多く作ることが必要です。 例えば勉強会やイベントに積極的に登壇するなど、認知度を高める活動にお金も時間もかけましょう。

あまりお金が使えなくても無料で登壇できるイベントもあります。工夫が大切です。

採用にSNSを駆使していますか?

採用ツールとして侮れないのが、SNSです。採用を成功させるためには、SNSを駆使する必要があるでしょう。特に、FacebookやTwitter、Linkedinの情報は最低限、揃えておく必要があると思います。

採用する側もそうですが、採用される側も経営者や写真のFacebookの共通の友人や投稿を確認したり、Twitterの投稿の内容を確認することが往々にしてあります。

もちろん、投稿が充実しているのが全て良いという訳ではありません。しかし、ベンチャー・スタートアップに挑戦すること事態が不確実なことですので、基本情報を充実させることで、候補者を安心させることが出来ます。

やはり、リファラル採用にはお友達の数に限界があります。どんな会社様でも同じ壁にぶち当たります。その時、第三者の力を採用する必要があるのです。中長期的に企業を成長させるためにも用意をしておきましょう。

また、会社の情報が充実している会社は、エージェントも紹介しやすい企業になります。 これは、まだまだベンチャー ・スタートアップの採用の障壁となっている、嫁ブロックや家族ブロックの処方箋にも繋がりますね。

私自身、全ての会社様にお伝えいているのが、「会社名」「社長のお名前」などでgoogle検索をかけた時に、いかに充実した内容や掲載されているかです。

誰しもが、検索して情報を取得できるようになった昨今、これらの施策は非常に重要です。

Twitterが採用に繋がる事実を知っていますか?

SNSを駆使することの延長上に、Twitter採用があります。常に、 Twitter採用に成功している企業様が多数ございます。今回は Twitterで集められた声を抜粋してご紹介します。

自社のブランドを積み重ねて発信した結果、採用に繋がっているのだと思います。 Twitter採用は、 Twitter運用のコストのみで、比較的コストを抑えた採用になると思います。また、会社や会社のスタンスに共感している人を採用することが可能です。

どの会社にも有名人がいるわけではないです。現実的には出会いを作る努力を積み重ねることが大切です。
定期的なプレスリリースをするなど、話題づくりをしていますか?

THE BRIDGEやTechCrunchなどのメディアに露出して、信用を印象付けることをスタートアップにおすすめしています。知り合いを通して、紹介してもらうとメディアに取り上げられやすくなります。

また、「プレスリリースをきちんと作る」ことです。ネタとして取り上げられやすい内容ほど掲載されやすいので、プレスリリースの作り方が上手い会社に聞いてしまうのもひとつの手段です。

例えばPR部門では独立系で東証一部の実績を持つベクトルさんの子会社・PR TIMESさん。他には、ソーシャルワイヤーさんの@Pressなどのサービスを使って露出する方法も効果的です。

設立1年未満の会社の社長が「何もわからないので教えてください!」と頭を下げてお願いすればリリースの書き方を教えてくれる方も多いと思います。記事を工夫したり、面白いことを敢えて実行するなど、話題作りのための努力は必要です。

会社について知らなければ、誰もその会社で働こうとは思えませんよね。起業したらどんなフェーズでも忙しいはずです。そもそも、人がいないと事業は進みませんし会社は成長出来ません。採用広報は後回しにされがちですが、早期に着手したいものです。

どんな社員が働いているか見える化していますか?

質の高い採用サイトを用意するのも効果的です。会社の求める人物像や社員の顔写真入りで社内の雰囲気を紹介するなど、会社をオープンにすることで、興味を持ってもらえます。たとえ3人の会社でも用意するべきだと思います。 例えばメドレーさんの場合は、自社コーポレートサイト内で採用情報を上手く紹介しています。

▼社員インタビューをはじめ、情報が充実している株式会社メドレーの採用ページ

(採用ページより)

他には、クラウドワークス、マネーフォワード、メルカリの採用ページもとても良いと思います。

コーポレートサイト内に採用コンテンツがある形が理想的ですが、採用専門で別のサイトを立てたほうが良いこともあります。コーポレートサイトのコンセプトが定まっていないと、採用情報の更新が後回しになってしまうこもあります。

まずは、Wantedlyを運用するという選択肢もありますね。 採用サイトでは、経営陣を前に出しましょう。これは社長に限らず、CTOがいる場合は前に出すような形でも良いでしょう。経営陣や技術者が有名な場合には、非常に効果があります。

経営者、人事が、人材紹介サービスの本質をわかっていますか?

人材紹介エージェントに依頼している企業の声として「頼んでいるんだけどいい人を紹介してくれない」とよく耳にします。その理由を端的に言いますと、その会社はエージェントから「決まらない企業」と思われてしまっている可能性があります。やはりエージェントも「決まる会社」に良い人材を紹介したいからです。

「決まらない企業」は、面接力がなく、かつ内定を出したけどクロージングがないことが多いです。このような詰めの甘さで「決まらない」と判断されているケースが多いと思います。

本来であればエージェントから「どういう人なら決まるか」を定期的にコミュニケーションとるような働きかけがあります。しかし、最近の成果報酬の場合は、その部分のお金を払っていないので、そこまで頑張って「紹介」の部分に力が入らないという実情もあります。

エージェントを上手に使って良い人を採用している企業は、採用にお金を払う気があります。そのような企業には、人任せではなく積極的に情報を取りに詰めてくる担当者が多い印象です。毎日データベースを見に来る担当者も実際にいます。その結果、やはり成果を出してます。

成果報酬というのは、そういった担当者の意識を鈍くしているという側面もあります。 加えて、成果報酬型の場合は複数社に紹介しているので、どうしても決まる会社にいってしまうというボタンのかけ違いが生まれてしまいます。こういった状況は良い方向に変えていきたいです。

採用広報に時間を割いていますか?

メルカリさんのようにCtoCやB2Cのサービスを提供している会社は、認知が高く、採用にあたっても比較的有利だと思います。

一方、BtoBでは一般の人が事業内容を認知しにくいため、予算をしっかりとった上で採用活動に力を入れるべきだと考えています。

採用を強化するフェーズで社員1人1人が会社の説明をしている状況では、一向に時間が足りなくなってしまいます。BtoBの会社ほど、採用を強化するフェーズで苦労されている印象を持ちます。早期から採用広報をスタートしておきましょう。

採用手法のひとつに、リファラル採用(社員紹介制度)がありますが、社員ひとりひとりが経営者意識を持って積極的に人を連れてくることは、難しいですし、繰り返しになりますが友人の数には限界があります。

そのため、ある会社では紹介してジョインした社員が1年間続けば、紹介者に39万円(サンキュー)が支給されるという制度を導入しているケースもあります。 それでも採用できない場合は、人材紹介エージェントに依頼することも選択肢としてあります。

本来どの会社も事業計画の中に採用コストを盛り込んでいますので、外部に依頼しても黒字になる形が理想です。 しかしコストを削らないと儲からないビジネスモデルが多いのも現実です。どうしても採用にお金をかけられない場合は、安く学生を採用できるWantedlyなどを利用すれば良いと思います。

採用を意識してHPを作っていますか?

一昔前の採用ページといえば、勤務内容・勤務地・労働時間・給与といった勤務条件が主でした。今では、働きがいを感じさせる情報を載せる会社が主流です。

事業内容だけでなく、社会的なメッセージを感じさせるホームページは見た人に印象付けしやすいです。それを友人に紹介してくれる可能性もあります。採用ページは営業活動と同じでマーケティングツールの一種だと考えています。

母集団フェーズでは周囲を巻き込んであらゆる手段を尽くすことが重要

第1フェーズでは、「自社をブランディングすることでできていますか?」をテーマに、母集団形成ための自社ブランディングの大切さについてお話ししました。 これを実践すれば100%確実な、という方法論はありません。

大切なことは、採用したい人材がいれば、まずはその人とのつながりを持つこと、自ら行動して人にリーチすること、採用・広報の発信を怠らず継続することだと思います。 採用は人の人生に関わる仕事ですし、信頼関係の構築には時間がかかります。

一朝一夕にできることではないと再度、認識いただけますと幸いです。

第2フェーズ:選考・面接「面接とは営業・交渉の場である。」

続いて面接・選考フェーズについて解説します。こちらも動画を用意していますので、よろしければ御覧ください。

 

面接の回数や納期設定に工夫をしていますか?

採用に失敗する理由の一つに、面接の回数が多すぎることもあります。

私の基準では、スタートアップやベンチャーで4回以上の面接をするのは多すぎると思います。3回が限度ですね。

ただ逆に1,2回で勢いで簡単に内定を出してしまうと、候補者がありがたみを感じられないという側面もあります。回数はバランスが重要です。

さらに、納期設定(候補者に返答をもらう期限)も見落としがちです。これを決めないのはオススメできません。この人をどうしても採りたい、という気持ちから長く待ってしまうこともあります。しかし、内定を出してから1週間以内がリミットでしょう。

社長がしっかり採用の現場に出ていますか?

まず、面接官はビジネスパーソンとして魅力的な人が務めることが重要です。さらに言うと、ぜひ欲しいと思う候補者の場合は、できればトップ自身が一回目の面接から登場するのが理想です。

実際に、インテリジェンス社、USEN社、U-NEXT社と何度も上場されている宇野 康秀社長は、以前「採用に3割の時間を使っている」とおっしゃっていました。

一方で、よくある失敗パターンは、社長が現場に完全に権限委譲をしているケースです。求める人物像の設定も含めて全て現場に任せている。現場に任せているというより、もはや確認もしなくなっている場合があります。

このような状況で、一次面接に現場の人間が対応することで、会社の魅力が候補者に伝わらない。結果的に辞退をされてしまう、というケースはよく見かけます。

加えて、スタートアップの場合は、営業のような現場の方が人事を兼任しているケースも多いです。このような場合、「自分より優秀だと思える人材を社長にあげてくる現場社員」が、少ないことも事実です。

現場では「デキる」人材でも、人の評価が適切にできるとは限りません。もしくは下手をすると、優秀な候補者に意図的にNGを出してしまうことすらあります。このようなケースが「少なくない」ということを、経営者には知っていただきたい。

かと言って「現場に全く任せるな」という意味ではないです。採用の緊急度と重要度が特に高いタイミングでは、社長自ら採用の指揮を執るべきです。

採用担当が本音を引き出すことに注力できていますか?

ある程度規模のある会社には人事担当者がいて、人事面接を設定することも多いです。人事担当の面接というプロセスがひとつ増えてしまうデメリットがあります。欲しいと思われる候補者のときは、はじめから社長面接を設定したほうが良いこともあります。

人事担当者の役割は面接本番に出るというより、合間の時間に候補者に話しかけて、本音を引き出すことです。人事担当者には、口説き上手であることは勿論、誰に面接をしてもらうのが良いか把握し、面接の場をアレンジすることが求められます。

採用の条件が悪ければ交渉するなど候補者を採るためのミッションに全力を注がねばなりません。もし社内にそのような人材がいない場合は、その部分をエージェントに任せるという選択肢もあります。

面接官がしっかりとヒアリングを行い、現場目線で語れますか?

実際の面接で一番重要なことは、ヒアリングです。熱心にヒアリングしていると、候補者が何をしたいのか、何ができるのかが掴めてきます。そして初めて、「うちの会社に来ればそれが叶うよ」という落とし文句を言うことができます。要は営業と同じです。

しかし、意外とそれができていないことが多いです。 特にベンチャーの場合は、面接官が熱くなって持論を展開し過ぎてしまうことがよくあります。大切なのは、話すより「聞く」ことです。候補者にとっては自分の話を聞いてもらえた方が好印象につながります。面接官がいくら熱く話しても逆効果になってしまうこともあります。

面接官には、他にも注意すべきことがあります。例えば、会社の今後の戦略についてなど、自分でははっきりと答えられないことを聞かれたとき、「わからない」と答えてしまっていいです。「ただ私としてはこのように思います」と、しっかり現場感を伝えられるといいです。

面接がスクリーニングだけでなく魅力づけになっていますか?

ヒアリングが重要な理由は、面接はスクリーニングの場であると同時に、候補者の入社モチベーションを上げる場でもあるからです。 どうしたらこの人が来てくれるのか、ということは人によって異なると思うので一概には言えません。

しかし、自分が心の底で期待していることが転職でクリアされると納得すれば、通常は安心するはずです。本音を引き出し、心の底で期待していることを掴むことは、とても重要なポイントとなります。

転職には誰にでもネガティブな側面があるはずです。そこをうまく引き出せるかがキーになると思います。

その人に、これから10年働いてもらえるかどうかは誰にもわかりません。従って、1年で自社に貢献する成果が出せるかが、内定の判断で良いと思います。 それが見えない場合は、内定を出すことはオススメしません。

入社してもすぐに辞めてしまうケースは、面接の段階で「本音」が引き出せていないことで起こるボタンのかけ違いが非常に多いです。お互いにとって不幸な結果にならないためにも、本音を引き出せるかどうかは、とても重要なポイントになります。

面接官同士が情報を共有していますか?

面接官同士で情報共有をしっかり行うことは重要です。「面接で良かった点・懸念点・志向性」このような情報を細かく共有できているかで「本音で話しやすい雰囲気」を作れるかどうかが決まります。

採用力の高い会社の多くが面接の詳細をきちんと記録しています。 次の面接官も、事前情報を元に面接に挑んだほうが、より踏み込んだ質問ができるようになります。情報を持っていると、相手の心に突き刺す話し方ができます。

例えば「将来新規事業に携わりたい」という希望を持っている候補者であれば、新規事業のチャンスがあることを伝えるなど…。最後に一言入れることでキラーワードになりえます。

また、面接官が基本的な質問さえもできていない、という面接官のスキル面の課題がある場合には、あらかじめ面接の型を決めておくのも良いでしょう。

例えば、以下のようなフローを構築します。

①会社案内
②転職理由
③強みや弱みを聞く
④そして自分たちの会社に対して何ができると考えているかと聞く

 このように流れをあらかじめ決めておくということですね。また、聞き上手な営業を面接に同席させることも、有効かと思います。

土日、深夜、早朝などを含め、融通の利く面接スケジュールを立てていますか?

基本的に皆さんが採用ターゲットとする方は、現職でもご活躍されている方だと思います。現職でもご活躍されているからこそ、採用ターゲットになっているのではないでしょうか?

明日からできる採用成功コツとして、融通の利く面接スケジュールを立てることです。現職でご活躍されているからこそ、定時時間内は仕事に勤しまれています。そんな方を採用するには、面接時間は柔軟に対応して頂きたいです。毎日、早朝深夜、土日も働けという意味ではありません。

しかし、人の力が会社を大きく成長させるのも事実です。特に、キーパーソンの場合は、融通の利く面接スケジュールを用意してください。また、次の選考に進んでもらいたいと思った時は、その場で他社の選考を確認して、次回の面接日時をそこで決めた方が良いです。

案外やっていない会社の方が多いのですが、先延ばしすることはなく、その場で決めてしまいましょう。

候補者を待たせたとき、2度お詫びしていますか?

そもそも絶対に候補者を待たせてはいけません。

面接の場面では、社員のビジネスマナーも候補者から見られています。例えば、万が一、面接官が遅刻してしまう場合は、面接前と後の両方でお詫びをするなど、細かく心配りを忘れないでください。

面接室にすぐに担当者が現れる会社は、仕事ができる印象を与えます。10分くらい平気で面接室で待たせる会社もありますが、私なら「帰ろうかな」と思います(笑)。

お見送りのエレベーター前での対応についても、ドアが閉まる瞬間まで頭を下げているかであったり、細かい部分まで見られているのです。芸の道と同じです。神は細部に宿ります。

会社は綺麗ですか?

<オフィス環境も言うまでもなく会社の印象を左右するポイントです。やはり整理整頓されていない会社というのは、マイナスの印象を与えます。スタートアップやベンチャーが、面接のために立派なオフィスを構える必要はないです。

しかし、お金をかけずに内装を整える工夫はできます。デスクを整理することは言わずもがなです。

 

第3フェーズ:内定・オファー「緻密なケアこそ採用成功の鍵」

最後に内定・オファーのフェーズについて解説します。こちらも動画を併せてご覧ください。

内定を出すタイミングを考えていますか?

さてここからは、これまでの努力が実を結ぶ「内定」の話になります。

内定を出すタイミングで注意することや、内定者の本音を駆け引きによっていかに引き出すか。本当に難しいことではありますが、これまでの経験から思うところをお伝えできればと思います。

内定を出すタイミングは、非常に大切なポイントです。ここでひとつ間違いを犯してしまうと、それまでの苦労が水泡に帰します。

そこで重要になるのは、状況把握だと考えています。 例えば、自社の選考過程が他社に先んじている場合。他社よりも先に刺しきると決めて内定を早く出す際には回答期限を1週間などに決めておくなど工夫が必要です。タイミングを誤ると、他社がこちらの提示した給与条件を見て、それをわずかに上回る金額でオファーを出してくる危険性もあります。

できればエージェントなどに相談をして、適切な時期をきちんと見極めておきましょう。

簡単に内定を出していませんか?

面接の設計に関して、スタートアップやベンチャーで4回以上の面接をするのは多すぎて、3回が限度であるとお話しました。

しかし、簡単に内定を出してしまうことも、採用に失敗に繋がります。特に、過去からどうしても口説きたかった候補者や、優秀な人材の場合、簡単に内定を出したくなることもあるかも知れません。

その時に、起こりがちなのが会社の話や候補者のお話をヒアリングぜず、内定を出してしまうことです。候補者からすると、自分のことを何も見てくれてないのに何故、採用してくれたのかな?自分のやりたい仕事は出来るのかな?と、実は不安にさせてしまうことあるのです。

このあたりの、ストーリー作りも工夫する必要があります。ときには課題を与えることも考えましょう。

他社の選考状況を意識してますか?

内定段階では、「御社は第二志望なんです」と正直に言ってくれる関係性を構築することが非常に大事なポイントになります。

候補者の方から「御社は第二希望なんです」と言ってもらうことはかなり困難ですので、エージェントからその情報をもらえるかが、最も重要です。これは「エージェントと本音でコミュニケーション」を取り合える関係性を築くことが大切になってきます。

正直に「第二志望」だと伝えてもらえれば、その原因を探ることができます。例えば内定者が、「営業やりたくないんだけど、結局は営業か」と思っているにも関わらず、企業側がそれに気が付いていないケースもあります。もしそう思っていることを知っていれば、別の可能性を提示できます。

このように面接では話しきれなかった部分が原因で、第二志望になってしまうことが本当に多いんです。一度や二度の面接だけでは、ミスコミュニケーションはどうしても発生します。しかし、そのギャップを把握できれば、それを埋めることで、自分たちが第一志望に変わることもあります。

採用において、本音を引き出すことは非常にハードルが高く、私も完璧にできているわけではありません。しかし、そのような候補者の本音を聞ける関係性をエージェントと作っておくことは、採用のミスマッチをなくすためには非常に重要になります。 そのような関係性を築くことは難しいとは言え、できる限り実現していきたいと誰でも思いますよね。

エージェントは、「この会社をサポートしたい」と強く感じた時に、そこまで踏み込んだコミュニケーションを取ります。このように思わせることが大事です。 そのような状態を業界用語では「エージェントをよく握れている」なんて言います。

要するに大事なのは「信頼関係が構築できているかどうか」です。エージェントがそこまでのサポートをしてくれない場合というのは、そのリレーションができていないことが多いと思います。

結局最後は、お互いの熱意がものを言います。やはり売上が上がる会社さんは、それだけ採用に力を入れていますので、エージェントも力をかけます。ただし候補者の方が判断を迷っている際に、エージェントは影響力ほとんど発揮しないと思います。エージェントが「こっちの会社に行け」とは言えませんし、それで決めてくれるほど甘くはありません。

 

候補者を口説くための用意は万全ですか?

候補者を口説くために重要な条件は、給与やSOなどの条件になると思います。候補者も年収に1割の差があれば、悩むのが普通です。

この点においては、先に内定を出した企業がやや不利になりやすいものです。そのため、どのタイミングで内定を出すのかは大事な事項です。 エージェントを活用している場合は、エージェントに確認することをオススメします。

また、現職が自社よりも給与ベースが高い外資金融や外資コンサルなどの場合、会社のフェーズによって年収を下げて入社してもらう必要があるケースもあるでしょう。 給与面の条件にほとんど差がない場合は、仕事の中身や一緒に働く人、仕事の裁量権、ポジション、労働時間といった勤務条件が判断基準になります。

しかし、企業側が候補者が持つ優先順位を、きちんとヒアリングできていないことが多いのが実情です。 その人には何が刺さるのか。転職のモチベーションは何なのか。そういったことは内定を出す前にしっかり聞いておくべきです。ただ、聞けば教えてくれる人もいれば、答えられない人もいますし、ヒアリングは案外難しいものです。

反対に、その情報を知ることができれば非常に有利になります。よく面接の後に人事の人がちょっと出てきて、「お茶しませんか?」などといってお話をする会社もありますが、何故か面接では本音を話さなかった候補者さんが、人事の方が話しやすい方ですとついついそこで本音を話してしまいます。

あなたの味方だよといったニュアンスが伝わっていることが大切ですし、ここはお人柄の良い方だと特に本音をヒアリングすることができます。結局、その候補者の方の「ツボ」をヒアリングできていなければ、まず口説くことはできません。

そして内定時のクロージングトークは、営業センスがものを言います。

候補者からの質問に逃げずに答えていますか?

CxOクラスの採用の場合は、候補者の方から回答が難しい質問をもらうことも多いと思います。その時に、質問から逃げない姿勢も大切です。

まず、CxOクラスを採用するのであれば、何らかの能力は社長や経営陣以上であって良いのです。回答できないことは、素直にわからないとお伝えする。だからこそ、あなたの力が必要なのだと、腹を割って話すことが大切です。自分よりも何らかの分野で長けている人を採用するには、心技体どれも高いレベルで求められてきます。

企業の成長のためには、将来を見据えて、そこからの逆算で自分たちよりも優秀な方を採用する必要があります。 そのような方が幹部が入れば組織には影響が出ます。結果として退職する方も出てくることもあります。

精神がすり減る場面もありますが、それを乗り越えていただくのが社長の仕事になります。(このような組織の入れ替わりに対して全く心が痛まないという大成功している経営者にもお会いしたことはありますが。)

候補者のキャリアプランについてきちんと考えていますか?

最後に、採用する責務として、候補者のキャリアプランについて考えていただきたいです。

もちろん、会社が候補者の全責任を追う必要はありませんが、一緒に人生の貴重な時間を費やす仲間になるのです。人によりますが、「働く時間は1日の時間の8割」という方などハードワーカーな人も時代は変化はしていますが、まだいるのが実情かと思います。

例えば「成長したい」と思っている候補者には「成長できる」環境が用意できるという話をするべきですし、「早く帰りたい」という人には働き方についてお伝えする。しっかりと相手のニーズを掴み、それに沿って話をすることが本当に重要です。

今、会社がなぜあなたを必要としているのか?そして、将来的はどんなことに挑戦して欲しいのか?どんな世界を一緒に作り出したいのか?その候補者に寄り添った、キャリアプランを提示して下さい。

また、『ビジョナリー・カンパニー 2 – 飛躍の法則』にある、「誰をバスに乗せるか」にもありますが、どんな優秀な方でも会社の求めること、その候補者のキャリアプランがマッチしないのならば、バスに乗せない方が双方にとって幸せな決断であると思います。

私自身、ある環境では苦労されていた方が、新天地で挑戦された途端にキープレイヤーになった事実を何度も見ています。

ミドルベンチャー、メガベンチャーの採用基準

ベンチャー企業の場合、成長市場に挑戦していることが多いですよね。なかでも、一度マーケットを捉えてミドルベンチャー、メガベンチャーになる過程では売り上げやKPIが爆発的に伸びていくため、採用基準を下げてしまいがちになります。

これは気持ちとしてはわかるのですが、自社の採用基準を下げて大量採用した企業はほとんどが後悔しています。マーケットを捉えたとしても正社員で採用する場合は、採用基準を下げずに脇を締めることを強くオススメしたいと思います。マーケットによる自社の成長は早晩止まりますので。

また面接において、大手と違いベンチャーの場合は、「定量的」に数字に執着するタイプの方の方が望ましいです。売上、利益、コスト、時間、納期など、ビジネスは数字がつきものでして、会社や仕事の結果に執着してくれるかどうかがとても大切です。

面接でどんな結果にコミットしてきたのか聞いてみると良いでしょう。営業職以外の人でも有効です。

ベンチャーの採用失敗を防ぐには?

スタートアップ、ベンチャーで採用失敗をしたことがないという会社はないと言って良いと思います。多かれ少なかれなぜ採用してしまったのかということはあります。少なくともミスを減らすためにはいくつかの方法があります。

複数人とあって決める

スタートアップ、ベンチャーの場合は社長があって即断することも多いと思います。ただしそれは10名から20名くらいまでは良いかもしれませんが、大きくなってくれば自分以外のメンバーとの相性も大事になってきます。

複数人の人とあって双方の相性で決めていくことで極端な失敗は減ります。

食事、会食をする

食事をともにすると、人となりがよりよくわかります。面接では緊張感からお互いに型通りのお話で終わってしまっていることも、もう少し突っ込んだお話がしやすいです。また食事をすることで、内定承諾率が上がります。

本人にきちんと同意の上で、レファレンスをとる

明確な詐称をしている方については、レファレンスをとらせていただく同意を得て、ご本人から過去一緒に働いた方2名をあげてもらい、お電話をさせていただく。マッチングしていないのにも関わらず、採用、入社してしまえば双方ともによくありません。この時に何を確認すべきかについては高野までご相談ください。

副業、業務委託を依頼する

期間を決めて、副業、業務委託で切り出せる仕事はないか検討してみる。双方一致することがスタートアップ、ベンチャーでは大事ということを丁寧に説明すれば嫌がれることは少ない。

またNDAを交わした上で、会議やミーティングに出てもらうなど、仕事ぶりが少しでも理解した上で決断するというプロセスをへることで失敗を少なくすることはできます。

最後に

採用力を上げるには、地道な努力が必要です。 採用力の高い会社が実践している、大事なポイントをいくつかご紹介させていただきました。しかし結局のところ、採用力を上げるためにトリッキーな近道はありません。 重要なことは地道に

・候補者にリーチし続けること。
・紹介をお願いすること。
・エージェントと懇意にし紹介してもらうこと。
・媒体からスカウトすること。
・Facebook、Twitterなどのソーシャルでの発信すること。
・断られたとしても、また時期をみて連絡してみることなど、心を動かす努力をするということです。

三国志で劉備玄徳は、諸葛孔明を迎えるにあたって「三顧の礼」をしました。本当に社会に影響力を与える会社にするためには、ほとばしるほどのエネルギーが必要です。地道な積み重ね、アクションが功を奏します。

これだけの長文のエントリーを最後まで読んでくださってありがとうございます!採用に関わる皆様方のが参考になれば、大変うれしく思います!

コロナ禍になり、第二新卒の求人がクローズするなど、不景気に備える会社が出てきております。日本を代表する大手のHR企業をはじめとして、大量採用系の会社は先を読みはじめました。これは逆に採用という目線ではチャンスになります。

ベンチャーの採用チャンスです。前回の不景気の時は、エムスリー さん、SMSさん、レバレジーズさんは積極的に採用し、その後大いに飛躍なさったと感じています。

採用に力を入れている、あるいは入れていきたい会社はぜひお気軽にご相談ください。

執筆者:高野 秀敏

東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。11,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。55社以上の投資、5社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。149社上場支援実績あり。55社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を国内・シリコンバレー・バングラデシュで実行。キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。
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