コミュニケーションツールであるSlackや音楽ストリーミングサービスとして人気のSpotifyなど、オンライン上でサービスを利用できるSaaSの市場規模は年々増加傾向にあります。
そうしたSaaSでのビジネスモデルを確立する企業において、サブスクリプションによるマネタイズが一般的となる今、NRRと呼ばれるものが指標の一つとして用いられる様になりました。
このNRRは、現代主流のビジネスモデルにおいては、欠かすことのできない指標の一つです。特に、これから新たなスタートアップの立ち上げを行いたい方にとっては、非常に重要な指標にもなるでしょう。
ですが、NRRがどの様なものかイマイチ理解できていない方もいるのではないでしょうか?MRRと混同しやすいのも一つの原因となっているといえます。
今回はそんなNRRについて、MRRとの違いや実際の事例を踏まえつつ解説していきましょう。
NRR(Net Revenue Retention)の意味とは?
NRR(Net Revenue Retention)とはどういったものなのでしょうか?
売り上げ維持率のこと
NRRは、売り上げ維持率のことを指します。
サブスクリプション型のビジネスモデルを採用する企業が用いる指標で、対象月の売上から数値を算出することで、来年の同時期にはどの程度の売上規模になっているのかを把握できるものです。
一般的に、算出した数値が100%を上回っていれば、アップグレードなどのアップセルによる売り上げの増加が早いペースで行われていることがわかります。
また、成長率が高い企業ほどこの数値が高くなる傾向にあり、安定した経営が行われている企業は、実際に100%以上の維持率を示していることが大半です。
そのため、数値が高ければ高いほど、企業としての経営が楽になるともいえます。1ヶ月毎や1年毎での算出で行われることが一般的です。
NRRとMRRの違いは?
NRRとよく混同されやすい言葉の一つに、MRRという言葉があります。MRRはMonthly Recurring Revenueの略で、月額経常収益を指す言葉です。
ひと月毎に、サブスクリプション等による確実な収益額がどれほどになるのかを示した数値となります。
NRRを算出する際にもMRRを使用しますので、押さえておきたいですね。
MRRについて詳しく知りたい方は、以下の記事で解説しています。
MRRとは?サブスクリプションビジネスにおいて欠かせない指標とその計算式について徹底解説!
- NRR=売り上げ維持率
- MRR=月額経常収益
数値としても全く別のものとなります。
データからの分析を行う際や、実際にビジネスの場面においてこの二つを混同してしまうと、結果から読み取れる内容も変わってしまいますので注意しましょう。
NRRを求める計算式とは?
では、実際の収益状況からNRRはどの様にして求めることができるのでしょうか?
NRRを求めるための計算式は、以下のような形になります。
NRR=当月の合計MRR+ アップグレード MRR + 新規契約 MRR – ダウングレード MRR – 解約 MRR / 当月の合計MRR
この様な計算式でNRRを求めることが可能です。
これだけでは現実味がわかない方もいると思いますので、例として数値を用いながら、実際のNRRがどのようなものになるかをみていきましょう。
NRR算出の例
月の収益データ例を下記の通りとします。
当月初MRR:10,000円
アップグレード MRR:500円
新規契約 MRR:500円
ダウングレード MRR:500円
解約率:10% → 解約 MRR:1,000円
アップセルやクロスセルのような追加課金で500円、新規契約による収益で500円、サブスクリプションのグレードを落とした場合などのダウングレードで500円、退会により収益が減った額として1,000円という収益状況と仮定します。
この場合、先に紹介した計算式に当てはめると
NRR=10,000(当月初MRR) + 500(アップグレード MRR) + 500(新規契約 MRR) – 500(ダウングレード MRR) – 1,000(解約 MRR) / 10,000(当月初MRR)
という計算式になります。
結果、10,000+500+500-1,000-500/10,000=0.95(95%)
となり、この例の場合、NRRは95%となります。
この維持率であると、このままの営業を続けても経営状況としては下降傾向となっていくため、新たな施策を打っていく必要がありますね。
NRRはカスタマーサクセスと密接に関係
NRRは100%を越えてはじめて成長できることになりますので、まずは100%を超えることを目標としながら、サービス内容の改善や料金プランの設定見直しなど、新規顧客の獲得と既存顧客のアップグレードによるMRRの増加を行なっていく必要があります。
もちろんサービスにもよりますが、 解約率は5%が目安とされることが多いです。
そのため、この場合は、カスタマーサクセスに注力することで、解約によるサービス離脱を阻止し解約率を低下させる施策を検討してみてもいいかもしれませんね。
最後に
今回はSaaS企業では欠かすことのできないNRRについて解説をしてきました。
新たな事業立ち上げを考えている方やSaaS企業のコンサルを目標としている方は特に、今回の内容は重要なものとなるはずです。
しっかりと理解して、ぜひ実際の現場で生かせるようにしてみてください。
カスタマーサクセス、サブスクリプション型のビジネスモデルのベンチャー・スタートアップに興味がある方は、是非ご連絡下さい!