MRRとは?サブスクリプションビジネスにおいて欠かせない指標とその計算式について徹底解説!

コラム          
       
       
     

こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職のサポートをしているキープレイヤーズの高野です。

MRRとは何か?起業家の方やスタートアップ、ベンチャーに初めて転職する方から何度となく聞かれましたので、とても参考になった記事を翻訳させていただきました。

不備などもあるかと思いますが、とても大事な用語だと思いますので、ぜひご参照ください。

MRR(Monthly Recurring Revenue)とは

Monthly Recurring Revenue(月額経常収益)の頭文字であり、スタートアップ企業が30日ごと(月ごと)に確実に予測できる収益のことです。MRRは、売り切り型の取引ではなくサブスクリプション型のビジネスで用いられます。

SaaS企業において収入源を予測するための指標とされます(一度限りのサービスなどの予測不可能な収入は含みません)。

MRRを使うことによって、例えば契約期間にバラつきがある場合などでも、共通したメトリクス(指標)を用いて収益パフォーマンスを確認することができます。

MRRは企業のバリュエーション・評価において多用される

MRRの、リカーリング(取引が繰り返し発生する)およびサブスクリプション型という性質は、ソフトウェアのサービス提供をするという点と並んで、SaaSビジネスであることを決定付ける要素の一つです。

Dollar Shave Clubのような直販会社もサブスクリプションビジネスとしてMRRが発生してはいますが、ソフトウェアサービスではなくカミソリの刃(商品)を売っています。

すなわち直販会社はサブスクリプションコマースです。

MRRの主要なポイント:
* サブスクリプション式で、リカーリング(取引が繰り返し発生する)である
* ドル(もしくはあなたの国の通貨)で表示される。参照記事:Use Dollars in your startup(スタートアップには米ドルを使え)
* 月払いか、もしくは月払いに換算される(年契約がある場合)
* 売り切り型の取引は含まない
* 創業者がMRRについて理解して変化を追っているかどうかが、投資家にとって重要な指標となる
* 創業者が資金の状況を理解するための重要なツールである
* 会計上の収益とは異なる

MRRが発生する会社の例

あなたが多少なりともテクノロジーに精通しているビジネスオーナーなら、既にSaaS企業の顧客になっていることでしょう。

考えうるほぼ全てのソフトウェアサービスはSaaS式に変わってきており、MRRを生み出しています。

* LeadPages:シンプルなランディングページの設定を提供する会社。特に多くの広告キャンペーンのページのカスタマイズに便利。
* Xero:会計管理ソフトが必要なら、これが目下のところ最適な会計プラットフォーム。
* Slack:いくつものAPIが使用可能な、チームコミュニケーションツール。
* Salesforce:営業チーム管理に。

MRRの計算式

シンプルな計算例

MRR=ARPU(顧客1人あたりの平均収益)×顧客数
* ARPU:月次の、顧客から支払われる料金の平均値
* 顧客数:所定期間における顧客の数

2種類の料金プランがあると仮定した場合:
* ベーシック:$50/月
* プレミアム:$100/月

顧客数10人で、半数ずつがそれぞれのプランを使用しているとすると:
* ベーシック:5人
* プレミアム:5人

5×$50+5×$100=$250+$500=$750

この例でのMRRは$750となります。

複数の契約期間を導入

定期サブスクリプション契約(年間契約など、ユーザーが一定の期間だけコミットする契約)と、月々のサブスクリプションサービス(ユーザーは月単位で利用し、収益が確約されるのはその月のみ)の両方を提供している場合、計算は少し複雑になります。

年契約を提供している場合(通常は月単位と年単位で、3ヶ月や6ヶ月はあまり見かけません)、少し計算が必要になります。

年契約の場合、1年間分の収益が確実になります。これがARR(アニュアル・リカーリングレベニュー:年間経常収益)です。

このARRをMRRに正規化する必要があります。

これは簡単で、ARRを12で割って月額を出すだけです。逆にMRRをARRに換算するには12をかければ良いだけです。簡単ですね!

全ての契約期間について確認してみましょう:
* 年契約:12で割る
* 半年契約:6で割る
* 3ヶ月契約:3で割る

以下の新たな例で計算してみます:
* 年契約:料金$120、顧客数1人
* 半年契約:料金$100、顧客数1人
* 3ヶ月契約:料金$60、顧客数5人
* 1ヶ月契約:料金$12、顧客数10人


次のようにMRRに正規化します:
* 年契約:1人分×$120/12=$10
* 半年契約:1人分×$100/6=$16.7
* 3ヶ月契約:5人分×$60/3=5 x $20 = $100
* 1ヶ月契約:10人分×$12=$120

MRR合計は$246.7となります。

売り切り型の収益は除外

次に、MRRには一度限りの料金や、変動する料金、単発的な製品の売り上げは含みません。そう、MRRのポイントはリカーリング(繰り返し発生すること)です。

専門的サービス、サポート、そして保守契約などは繰り返し発生する場合のみMRRとなります。単発ならリカーリングではありません。

また別の例で見てみましょう(上の例とほぼ同じです):
* 年契約:料金$120、顧客数1人
* 半年契約:料金$100、顧客数1人
* 3ヶ月契約:料金$60、顧客数5人
* 1ヶ月契約:料金$12、顧客数10人
* 年契約の顧客への専門的サービス:$1,000

次のようにMRRに正規化します:
* 年契約:1人分×$120/12=$10
* 半年契約:1人分×$100/6=$16.7
* 3ヶ月契約:5人分×$60/3=5 x $20 = $100
* 1ヶ月契約:10人分×$12=$120

MRR合計は$246.7で、上の例と同じになります。単発のサービスの$1,000を無視するだけです。

MRRは複雑になることもある

まだ説明していない重要なコンセプトがあります。受注額(bookings)、請求額(billings)、そして前受収益(deferred revenue)です。

月単位のみ提供している場合はシンプルです。MRR、受注額、請求額、収益、そして前受収益は全て同じです。

1ヶ月以上の契約や、他のサービスを提供している場合、話はとたんにややこしくなります。

MRRでバリュエーション・評価の際に起こるミス

ここまでMRRの計算方法について説明しましたが、計算間違いを回避するために留意しておく点についても説明していきます。

ディスカウントを計算に入れる

最初の1年間だけ50%のディスカウントを提供する場合、顧客は正規の料金全額は払いませんね。

例えばMRRに加算するのは、ひと月100ドルではなく50ドルです。顧客が正規の料金での支払いを開始して初めて、全額を加算します。

トライアル期間を含めない

例えばAhrefsは、一週間のトライアル期間を7ドルで提供しています。

ユーザーは1週間だけの顧客になります。これはリカーリングではなく、単発の収益です。

もしこれを含んでしまうと、MRRの値が少し増加、顧客数は大きな増加になり、翌週に高い解約率を示すことになります。

専門的なサービスや他の単発の収益は含めない

これはもう説明済みですね。MRR(マンスリー・リカーリングレベニュー)だから、リカーリングレベニュー(繰り返し発生する収益)だけ含めます。

異なる契約期間は正規化する

これも説明済みですね。年契約はMRRに12をかけたものです。同じ期間に統一しましょう。

支払い遅延分も含める

滞納金が発生した場合のため、支払いを再開してもらうよう督促するプロセスを設定しておきましょう(ほとんどはクレジットカードの期限切れのケースです)。契約自体はまだ続いているので、解約したように扱うのは間違いです。

取引費用などは含めない

支払い処理費用は収益ではなく、売上原価に計上します。

MRRに種類があるか

これはあまり説明する必要な無いかも知れませんが、網羅しておくために軽く触れておきます。

MRRは現在の状況を示すものですが、今後の計画のためにMRRの予測を立てたくなるかも知れません。

そんな将来のために、下の2つの呼び方を持つ用語をご紹介します。

CMRR、すなわちContracted MRR(契約済みMRR)もしくは Committed MRR(確約済みMRR)です。

まずお伝えしたいのは、このどちらの呼び方でも同じ事なのです!なので、私がやってしまったように、違いがあるか調べるためにグーグル検索する必要はありません。違いはありません。

次に、顧客が将来どうするかをあなたが把握していることが、CMRRの前提となります。つまり既に契約があるか、もしくは営業担当が何らかの自信を持っており、あなたがそれを信用できるかの、どちらかを意味します(普通は契約が確実です)。

ここで顧客の選択肢は3つです。

* あなたを裏切る(ワインとチョコレートで傷心を慰めましょう)
* 更にお金を支払ってくれる(イビサ島リゾートでパーティーですね)
* あなたからお金を取る(キャンディーを取られた太っちょの子供のように泣くあなたを見るために)

CMRRは、現在のMRRに、確定している収益の拡大や新規契約見込み、解約見込みも計算に加え、将来のMRRがどのようになるかを予測するものです。

実はCMRRが意味を成すのは大企業でのみです。起業初期で、中小企業に重点をおく段階では気にかける必要はありません。

MRRをどう分析するか

MRRは安定した数字ではなく、様々なプラスへの変化とマイナスへの変化が組み合わさったもので、こういった変動はビジネスを売却したり廃業したりするまで続きます。

下のグラフはSaaS Financial model(SaaS財務モデル)の記事で私が作成した架空の会社のMMRを分かりやすく分析したものです。

基準値から上下に変動しているのが分かるでしょう。

注:価格設定が新規の収益や失う収益に影響することを踏まえて、普通は言及されない詳細もいくつか含めて説明します。「元の価格」と「新しい価格」がある事に留意してください。


(引用:https://www.alexanderjarvis.com/mrr/)

上のグラフに表されている数字を表にしたものが、下の表になります(数カ月分ですが)。

これは数値で明確に状況が分かりやすいよう表されています。
注:これは最低価格のベーシックプランのモデルです。

翌月の月初MRRは、単に当月の月末MRRです。

* MRR – Start of month(月初MRR):期間始めのMRRです。ビジネスを始めたばかりなら、このMRRはゼロです。

次に新規顧客と解約が記されています。

* New MRR(新規MRR):MRRに加算した、新規顧客分です。
* Churn(解約):顧客を失った事による減少分です。

次のセクションはプラン変更(Package switching)による変動についてです。合算したものが純変化です。

* ADD:Downgrade from Premium(プレミアムからのダウングレードを加算):顧客がプレミアムからベーシックにダウングレードすることにより、ベーシンクプランの収益は増加(全体では減収)。
* ADD:Downgrade from Pro(プロからのダウングレードを加算):上記と同様だが、プロからのダウングレード。
* LESS:Upgrade to Premium(プレミアムへのアップグレードを減算):顧客がプレミアムにアップグレードするため、ベーシックプランの収益は減少するが、全体としてのMRRは増加。
* LESS:Upgrade to Pro(プロへのアップグレードを減算):上記と同様だが、プロへのアップグレード。

次は既存顧客からの、増額した収益です。このSaaSモデルでは、取引先の規模の変化は拡大のみ予測に入れ、縮小については取引実績無しでは予測が難しいため入れていません。

多少楽観的に予測したいですし、まあ理屈は通っていますね!

* Plus:Expansion revenue(From new modules)(新たなモジュール購入などの規模拡大による収益)を加算:既存顧客の拡大。購入するサービスの追加や、利用人数拡大なども含む。

月末MRRは全ての数字の合計です。
* 月初MRR
* 新規MRRを加算
* 解約を減算
* プラン変更による純変化を加算
* 規模拡大による収益を加算
* =合計が月末MRR

MRR – End of month(月末MRR):これが月末時点のMRRです。

このスクリーンショットで分かるように、このモデルではベーシック、プレミアム、プロの3つのプランがあります。そして最後に合計があります。合計MMRは3つのプランの合計です。3つのパッケージは銅、銀、金、かも知れないし、段階的に分けられたイメージなどなんでも有り得るでしょう。

(引用:https://www.alexanderjarvis.com/mrr/)

価格変更による影響

価格設定については上で少し触れましたが、ここで詳しく説明します。

MRRと収益性を増加させる一番簡単な方法は、価格の引き上げです。予測のための安定したモデルがあれば、長期に渡って徐々に価格を変更することが可能になります。

しかし月単位より長い契約がある場合、モデルは複雑になります。しばらくの間、異なる価格を支払う顧客が混在し、解約する場合は現在の価格での解約ではないということになります。

解約は以前の価格での解約になり、場合によっては12ヶ月前の価格ということもありえます。

Less: Churn based on original pricing(元の価格での解約を減算)

もし年契約の顧客が契約終了時に解約した場合、あなたの会社はその顧客が契約した時点の価格と同額のMMRを失うことになります。一年後の、値上げ(または値下げ)した価格ではありません。

ユーザーは加入した時の価格で解約します。通常は値下げするよりも値上げするケースが多いため、解約の額は現在の価格よりも少なくなります。

New customers – based on new pricing(新しい価格での新規顧客)

新規加入、もしくは新価格または現在の価格で契約を更新する顧客です。

月契約の顧客は通常は元の価格ではなく、値上げしている場合は新しい価格を支払うことになります。

年契約の顧客が契約更新する場合、普通は元の価格ではなく新しい価格で更新します。(例外として、なんらかの理由で元の価格を認める場合を除き)

どの様にMRRを増やすか?

業績を上げたいならMRRを増やす必要があります。でもどうやって増やすのでしょう。

おそらくあなたが思っているよりも多くの方法があります。それらを全て解説していきましょう。


価格を引き上げる

ARPU(顧客1人あたりの平均収益)を引き上げるのが、MRRを増やすのに一番手っ取り早い方法です。実際、ほとんどのSaaSスタートアップ企業は自社製品を割安で売っています。

ほとんどの顧客が月契約の場合、すぐにMRRは上昇するでしょう。考慮しなければいけない唯一の難点は、価格上昇によりある程度の解約数が予想されることです。

価格の上昇がわずかなら、さほど多くの顧客を失うことはないでしょう。

もし顧客数が多ければ、顧客数の減少分は収益の純増で簡単に穴埋めできます。

値段設定が製品の価値よりもかなり低い場合、思い切った価格引き上げも合理的かも知れません。

ある程度の顧客を失ったとしても、純利益をプラスにする事も可能です。

顧客数を増やす

単純にもっと顧客を獲得しましょう。既存の顧客を維持する方が簡単ですが、新規顧客を獲得することが悪いわけがありません。

ただ、顧客獲得コストが少し高くつきます。

顧客を取り戻す

一度去ってしまった顧客にも、別のオファーや前より良い製品(ある場合)を準備して、アプローチしてみましょう。

もう一度、顧客として契約を再開してしてもらえるかも知れません。

顧客単体からの収益を拡大する

価格の引き上げは、それが可能なら一番簡単です。でも更に良いのは、取引先の経費をもっとこちらに割いてもらい、各顧客からの収入を増やす事です。

具体的には以下の方法で収益を増やす事ができます。
* もっとたくさんのモジュールを売る:別のサービスや、新たにリリースした他の機能を購入してもらう。
* 利用人数の拡大:ユーザー数を増やしてもらう。または重役用ダッシュボードや、顧客の状況に合わせて部署や国を加えるなど。

例えばAPIコールなどによって変動性の料金を請求している場合、当然収益は増加しますが、リカーリングではないためMRRの増加にはなりません。

顧客に、より高いプランに変更してもらう

あなたの顧客のほとんどがベーシックプランを利用しているなら、プレミアムやプロのプランにアップグレードを勧めて、払ってもらう金額を増やしましょう。

逆に顧客が安いプランにダウングレードしないようにも気を配りましょう。

ダウングレードは、提供しているプランの間に違いがあまり無く、そのことに顧客が気づいた場合に起こりがちです。

プレミアムで出来る事がベーシックでもほとんど出来るかも知れないし、プレミアム限定で利用できる機能が、実は無くても済むものかも知れません。

この場合、この顧客はダウングレードしてしまいます。顧客にはアップグレードしてもらいたいのです。

中には段階的な価格設定をしていない企業もあります。このサイトで私が読者の皆さんにお役立ち情報を送信するのに使用しているConvertkitは、ユーザー数によって価格が変わります。

すなわち皆さんのような登録者がもっと増えるほど、私が払う金額は増えるのです!

私がアップグレードしているわけではなく、皆さんによってアップグレードさせられていると言えますね。

当初$50だったのが、今や数百ドル支払っています、お陰様で…。これは使用量によって価格が変わるSaaSスタートアップの実例です。

そして、ユーザー数によって価格帯が決まっているので、これもリカーリングです。これによってConverkitは少なくとも、毎月私の口座からいくらお金を取ればよいのかを把握しています。

こういった使用量による価格設定によって、事実上、顧客からの収入見込みの上限を取り払うことができます。

サービスに対する価格の上限設定や、無制限のサービス提供などはしないようにしましょう。収益のポテンシャルを減らす事になります。

顧客によって異なる価格のオファーで価差別化
価格差別は、買う相手によって異なる価格を請求することです。

一番単純な例で言うと、ウェブサイトに複数の価格帯を載せることです。機能のレベルによって価格が変わります。

もう少し進んだ応用は、企業向けの価格帯をウェブサイトに載せないことです。

そして営業担当者が、取引先から引き出せそうな価格を判断します。

フリーミアム(基本機能無料)の提供をやめる

もちろんフリーミアムがうまくいく事もあり、マーケティング戦略として素晴らしい効果をあげることもあります。

例えばDropboxでは成果をあげましたが、Evernoteでの成果は今ひとつでした。

無料の製品は、価格を0ドルに固定してしまい、誰もそれ以上は支払いたくなくなるでしょう。

消費者向け製品を売る場合ならフリーミアムは良い選択肢かも知れません。ですがビジネス向け製品を提供しているなら、永久に無料の製品を提供するのは無意味です。

それよりも、無料のトライアル期間を設定しましょう。

もしトライアルユーザーが期間後に解約したなら、そのユーザーはどちらにせよ料金を払う気が無かったという事でしょう。

それにサーバーコストも節約できます(顧客生涯価値の計算の一部である、売上原価の改善になります)。B2Bにおけるトライアル期間は、14日間が理想的です。

解約を減らす

穴の空いたバケツはあまり効率が良くありません。

月間の解約率が3%だと、そんなに悪く見えないかも知れません。

しかし毎年、総顧客数の36%を失っているのです!こう見るとかなりの数です。

解約率が低いほど、MRRを早く成長させることができます。

顧客に月契約プランから年間プランに変更してもらっても、MRRは増加しません。

受注額と請求額が増加するだけです(前払いで請求する場合)。

顧客が1年間に(もしくは月単位に正規化して)支払う金額が実際に増加した時のみ、MRRは増加します。

複数の契約期間の提供

顧客に年契約に加入してもらうということは、顧客に1年間の支払いを約束してもらうということです。

もしかしたらその1年の間に、顧客が製品に価値を見出だせないというケースもあるでしょう。それでも年契約の場合は、否応なく支払いを続けてもらうことになります(通常は前払い)。

これが月契約なら、翌月に解約できてしまいます。

もちろん、年契約でも解約されてしまうので先延ばしになるだけなのですが、短期的なMRRは高くなり、また、その資金でより良い製品を作ることができ、年契約が終わる頃にはもしかしたら解約されずに済むかも知れません。

スタートアップでMRRが好まれる理由

MRRはとてもポピュラーです。クールなSaaS仲間と一緒に過ごすことがあれば、挨拶代わりにあなたのMRR値を聞いてくるでしょう。

投資家も同様だし、ジャーナリストさえもあなたに取材の価値があるかどうかを見極めるために、同じ質問をするかも知れません。

MRRが好まれるのには、下のような理由もあります:
* 正規化:異なる長さのサブスクリプション期間を正規化できます。
* タイムリー:月単位で業績を見ることができる、分かりやすく正規化された表記です。年単位の値に比べ、素早く変化を追って対策を取ることができます。毎月のMRRの成長を見ることもできます。
* 予測:MRRは予測できる数値です。将来のキャッシュフローを予測して予算を立てるのに使える、簡単な手段です。MRRによって、会社の成長の計画とコントロールがしやすくなります。新規契約の伸びと解約数を知ることができます。
* 顧客からの支払いが遅れない:変動性の価格ではなく、毎月顧客に請求書を送る必要もありません。時間単位で請求するコンサルティングサービスのようにタイムシートを記入してインボイスを送ったり、期日通り払ってくれるか心配したりする必要もありません。もし料金を支払わない顧客がいれば、単純にその顧客がサービスを使えなくなるだけです。
* データ駆動型:指標を重視しているデータ駆動型の人には特に最適です。MRRを、顧客生涯価値(LTV)や、CAC/LTVレシオ(顧客獲得コスト/顧客生涯価値の比較)などの主要な指標の計算に用いる事ができます。更に、他社との比較のためのベンチマークとしても役立ちます(データが入手出来れば)。
* コホート分析:毎月、獲得した顧客の行動をMRRコホートで分析して、収益をどのように最適化すればよいかを見極めることができます

MRRが顧客に好まれる理由

顧客は別にMRRを好むわけではないのですが、サブスクリプションという特色が人気です。

端的に言えば、毎月いくら支払うのかが分かりやすく、ある日いきなり変動性の料金を請求される事もありません。

余裕がない時は、利用するサービスを減らせばどのくらい節約できるのか明確で、特に月払いだとフレキシブルです。

一方で、顧客が製品を気に入った場合、簡単に規模を拡大できます(逆に縮小も)。

これは従来のソフトウェアのインストールモデルを打ち負かしました。

MRRが投資家に好まれる理由

投資家は予測可能性を好みます。サブスクリプション型ビジネスは一般的に季節に左右されず、eコマースのように運営する上での様々な頭痛の種に悩まされることもありません。

投資家はMRR、特に分かりやすく分析されたMRRによって、あなたのビジネスについて詳しく知ることができます。

「結局のところ、MRRは信頼できます。ARPA(ユーザーあたりの平均収益)はいくらか、特定の顧客について拡大したり高額サービスを追加できる能力はどのくらいか、などが全て包括されています。

マイナスの方では、顧客維持能力や、解約率の高さが要注意な場合も知ることができます。」ーPetro Bezza

投資家にとって安定したMRRだけが重要なわけではありません。もっと重要なのは、収益成長の軌道と速さです。

「成長のペースは、数字の大きさより重要です。」ーMike Chalfen

投資家はMRRを使ってあなたの会社と他社を比較することにより、極めて平等な判断ができます。

実のところ、ベンチャーキャピタリストはMRRによりビジネスの評価が簡単になるため、MRRのアイデアが気に入っています。MRRのマルチプルは、大変優れている指標です。

MRRとARRとの違い

ARRはある意味MRRと同じコンセプトです。単にMRRを年単位にしてどのくらい収益があるかを示すもので、月単位の収益に12をかけたものです。上記で既に説明しましたね。

MRRと会計上の収益とは違うのか

MRRと会計上の収益は異なります。あなたや投資家以外の人には、GrouponがACSOI(調整後連結事業営業利益)なるものを作り出したのと同じように、MRRもでっち上げられたもののように見えるでしょう。

MRRは、財務会計基準審議会(FASB)や、証券取引委員会(SEC)にも認められていません。

米国会計基準(GAAP)に沿って財務報告できる収益ではなく、収益認識と混同したり収益認識に組み込んだりするべきではありません。つまり、MRRは公式に報告できるものではないのです。

会計上の収益は、収益認識の基準に則ったものです。しかし全ての契約が月契約である場合は、収益とほぼ同じです。

トップラインのSaaS指標について知ろう

SaaSでの収益に関する主要な指標についてもっと知りたいなら、無料のエクセルモデルをダウンロードして、これらの数字がどのように算出されているか見ることができます。

(引用:https://www.alexanderjarvis.com/mrr/)

 MRR(ARR)+成長率 SaaSの「Growth KPI」

SaaSのサブスクリプションビジネで最も基本的、重要なKPIは、MRRとその成長性になる。MRRは全てのSaaS企業の最重要KPI。ARRはMRRベースに計算され、企業価値評価のベースとなる。資金調達をするときに、経営者が最も意識すべきKPIである。

※この記事は、『50 FOLDS』の内容を参考に、翻訳・一部校正したものです。

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執筆者:高野 秀敏

東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。11,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。55社以上の投資、5社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。149社上場支援実績あり。55社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を国内・シリコンバレー・バングラデシュで実行。キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。
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