学校の先生は小学生の「将来なりたい職業」(日本FP協会)ランキングでトップ10入り常連の人気の職業です。しかしいま、この教師の成り手不足が深刻な問題になっているばかりか、転職や離職をする教師が増えてきています。
教員免許を取得し、努力をして教員採用試験を突破して憧れの教師になったのはいいものの、子どもや保護者を相手にし、毎日遅くまで校務や授業準備、部活動指導をする生活に疲弊しているのが現状です。
30代にさしかかり、家庭をもって子供ができたり、キャリアの先行きに不安を感じたりすると、転職を意識するようです。教師がよりよい職場環境を求めて転職の道を探るのは当然の流れかもしれないですね。今回は、そんな教師の転職を考えていきます
目次
教師の転職は難しい、そう言われるワケは?
1.教師の離職率が低く、身の回りに相談できる人がいない
教師不足は頻繁にニュースになりますが、教師の離職率が問題になることはあまりありません。平成29年度の「公務員の退職状況等調査(総務省)」をみると、公立学校の教員の普通退職者は5,934名。
これは全体の教員数1.012,910名に対してわずか0.59%で、非常に離職率が低いと言えます。公務員の特徴でもある福利厚生の厚さと、年功序列で給与が向上していく「安定性」があるため退職に踏み切れないことが理由にあるでしょう。最も教師数の多い高等学校でも、学校あたり平均教員数が48人(H30文部科学統計要覧)であることを踏まえると、離職率0.4%から離職者は5校に1人という計算になります。
この中に転職者が含まれることを考えると、身の回りには転職した同僚というのはほぼいないということになります。公務員から転職という心理的ハードルの高さに加え、身の回りに転職サンプルがないとなると、なかなか重い腰が上がらないのも頷けます。教師の転職体験談を取り上げたブログがインターネット上に増えてきており、情報源として関心が高まっています。
転職活動はまず何をすればいいのか、職務経歴書ってどう書けばいいのか、職場にいても何も情報が入ってこないため、自分の生活に疑問を感じながらも、誰にも相談できず我慢を続けているという教師は、意外と多いのかもしれないですね。
2.就職活動の経験がなく、自己分析・自己PRが苦手
公立学校の教師になるためには教員採用試験を受ける必要がありますが、試験日は近隣の自治体で同一日であることが多いです。そのため出身地付近の自治体では併願ができないため、エントリーシートや履歴書を書いた経験自体が少ないという教師がほとんどです。
また、教師の世界で出会うのは同業の教師ばかりなので、自己分析や自己PRをする機会にも乏しく、自分の強みは何なのか、どういった分野で発揮できるのか、転職活動をしてはじめて考えるという人も少なくありません。
はたしてそんな自分でも転職できるのか、と自己肯定感を下げてしまい、転職に踏み切れないという事情もありそうです。
教師がもつスキルとそれが活かせる場とは
1.わかりやすく相手に伝える力が非常に高い
教師の仕事で大切なことは、自分の知っていることを相手にわかりやすく伝えることです。教科書に書いてあることを、子どもや初学者にも理解できるようかみくだいて体系的に教えるため、毎日授業構想を練っているのです。毎日何時間もプレゼンをしているのと同じことをしているわけですね。そのスキルを有効活用すれば、社内における研修業務や教育業務・営業業務などで力が発揮されるでしょう。
2.マネジメント経験が豊富で、集団をまとめる能力が高い
教室という狭い空間に何十人もの人がいると、そこにはトラブルがつきもの。教師は担任として、子どもたちの様子を日々観察し、トラブルが起これば仲裁や問題の解消のために奔走します。そこで磨かれるのは、双方の話を聞いて適切な落とし所を探りながら導くスキル。さらに近年はグループワークやジグソー法など、集団を動かす指導法を実践する機会も増えてきています。そのため、場を掌握し、課題を解決しながらリーダーシップを発揮するファシリテーション能力に長けているといえます。管理職として部門を管理したり、よりよいチーム作りの場面でそのスキルを発揮することが期待できます。
3.幅広い年代層とコミュニケーションを円滑にとれる
学校は子ども、教師はもちろん、保護者や地域の方々なども関わるコミュニティです。一般的な企業と比べて関わる年齢層が広いため、様々な年代の人と円滑なコミュニケーションをとるスキルを日々トレーニングしていることになります。そこで、持ち味のコミュニケーション能力を生かして、営業やコンサルタント業務を行ったり、人事業務を行うことでその力は発揮されるでしょう。
教師からの転職は勇気がいる。特に30代。しかし教師を求める企業も多い。
教師からの転職というと、塾や予備校といった教育系の企業や、児童教育やクラブ等の教室長といった職業を連想しがちです。しかしこれまで述べてきたとおり、教師経験によって磨かれるスキルというのは非常に多岐に渡り、しっかりとPRできれば転職に有利に転換できるものばかりです。
教員の退職者全体から見ると、35歳未満退職者は51.3%と過半数を占めます。多くの人は35歳までを一つの節目に転職を考えているようです。しかし転職には失敗の可能性もつきまといます。今持っている公務員という立場を捨てて転職しても、収入や待遇が改善される保証はありません。
そのため、30代になり家庭を持った身での公務員からの転職は、教師の転職が難しい背景と相まって非常に勇気のいることになります。そこで、キャリアアドバイザーや転職エージェントといった転職のプロと連携をして、自身の適性にあった職種や業種を検討していくことが大切になります。教師スキルは社会に通用するスキルです。自身を過小評価せずに活躍の場を広げていきましょう。
教師の転職先について
1.塾講師・予備校講師
授業での指導経験を生かせる点で転職先として選ぶ方が多いようです。学校の先生と違って、授業力がシビアに評価され給与面に反映されることもあり、やりがいを感じるとの声もあります。部活動業務や校務がなく授業研究に集中できるため、教員はやめても授業はしたい、子ども等に関わりたいと思っている人にオススメです。
2.教材開発・教育系出版社
授業研究の中で、いかに相手にわかりやすく伝えるか、力を伸ばすためにどのように工夫するか、ということを教師は常々考えます。それを商品として形にして販売する仕事に転職する人も多いです。教科書や問題集、参考書の制作業務に携わる方も多いですが、最近ではe-ラーニング教材など、教育業界以外でもインターネット教材の需要が高まっているので、教材開発・販売の形も様々にあるようです。
3.ITエンジニア・SE
意外と多いのが、IT業界への転職。エンジニアやSEとして業界をガラっと変えて働いている人も多いようです。ITエンジニアと一口にいっても、サポートデスクのような人に関わる仕事から、アプリ・セキュリティ開発といったプログラマーのような仕事、中には持ち前のコミュニケーション力を発揮して営業として活躍されている方も多いようです。情報系や理系の教師にはコンピューターに関心がある人も少なくありませんから、転職先の候補としては検討の価値がありそうですね。
4.人材エージェント
進路指導経験を通して人の将来に関わる仕事をしたいと感じている教師の方の中には「人材業界」に転職する方もいます。教師経験を生かして、教師の転職専門の人材エージェントという働き方をする人もいるほどです。教師は得てして営業経験がないため、未経験としてはたらくのは大変な部分もありますが、人と関わる仕事をしたい、感謝されたいという方にはやりがいのある仕事でしょう。
5.コンサルタント
人と関わる仕事をしたいという方には、コンサルタント業界ではたらくという選択肢もあります。教師には子供たちの話をよく聞く姿勢が求められるため、「傾聴の姿勢」を持っている人が多いです。クライアントの気持ちを汲んで適切なアドバイスをすることで、成果をあげられる仕事にやりがいを感じる人も多いです。人の相談に乗る機会が何かと多い教師だからこそ発揮できる持ち味もあります。他人の力になりたいという強い思いを持っている方は選択肢に入れる価値がある業界です。
6.起業・教室経営
思い切って起業をしたり、自身で教室経営をするのも選択肢の一つです。起業においては、やはり教育に関わる起業をする人が多いようです。現場で働いていて、指導の方針や教育のあり方に疑問を持ち、自身の教育理念を発揮できる場所を新たに作るバイタリティのある方が起業をする傾向があります。また、部活動の指導経験で集団をマネジメントする力を養ってきた教師は、専門的な指導法を学んだ上で、自身の経験を元にした教室を運営している方もいます。教師の仕事はやめても子ども達の将来に関わる仕事を作っているとも言えます。
最後に
先日、https://twitter.com/h61564510さんと教師の方のキャリアイベントをさせていただいたのですが、今まであまりお会いしたことがない属性の方で、キャリア考えている方いるもんなんだなと。閉ざされている空間、世界な気がとてもしました。お役に立つことはありそうですね。
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