こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職のサポートをしているキープレイヤーズの高野です。
今回は株式会社カンリーの代表取締役Co-CEOである辰巳衛さんにお話を伺いました。
株式会社カンリーでは、飲食店舗等で所有しているGoogleマイビジネスやSNSアカウントを一括で管理ができ、運用コストの削減を実現するクラウドシステム、カンリーを運営しているベンチャー企業です。
コロナ渦で急速な成長を見せる大注目の企業で、事業内容や今後の展望をお伺いしました。
動画でも公開しておりますので、ぜひ併せてご覧くださいませ。
目次
代表取締役Co-CEO 辰巳衛さんの経歴
2015年に早稲田大学理工学部をご卒業され、新卒で双日株式会社に入社。与信・事業投資の審査・国内外の空港M&Aなどに携わる。2017年には米国公認会計士試験に合格。2018年8月15日に株式会社カンリー共同創業者。
株式会社カンリー
業務効率化を支援する一括管理サービスの「Canly(カンリー)」の運用をメインに、さまざまなプロダクトの企画・開発に臨むSaaSベンチャー企業。
カンリーの概要と立ち上げの裏話
高野:今回は新進気鋭のスタートアップ、株式会社カンリーの辰巳社長をお迎えしております。どうぞよろしくお願い致します!
改めて、株式会社カンリーと辰巳さんのプロフィールについてお伺いできますでしょうか?
辰巳:私は株式会社カンリーという会社を立ち上げて、3期目になりました。
カンリーは何をやっている会社かというと、美容室や飲食店、ドラッグストア、ホームセンターなどなど、店舗の方々に向けた業務効率化のクラウドシステムを提供している会社です。
具体的に、どんなクラウドシステムかを一言でいうと、店舗情報を一元管理するプラットフォームです。
例えば、「コロナの影響で営業時間が23時閉店から20時閉店に変更になりました」というときに、100店舗,200店舗ある企業様は、営業時間を100回,200回とわざわざ修正しなくてはいけません。
店舗数だけではなく、集客媒体の数が増えていることも頭を悩ませる要因のひとつです。
例えば、FacebookやTwitter、ホームページ、Google mapと、店舗に行くための集客媒体は世にあふれていると思いますが、すべて手動でやろうとすると、それぞれ管理画面にログインして営業時間を修正して…とやると非常に大変です。
さらには、営業時間の修正だけではなくて、写真をアップロードしたり、口コミを管理したり、という業務も考えたらかなり大変ですよね。
私達が提供する「カンリー」はそういった店舗の集客媒体の情報を一元的に管理するサービスです。
私自身は大学卒業後、新卒で双日という商社に入社し3年間働いた後、25歳のときに起業しました。当時、社会人2年目から4年目までルームシェアをしていた、元銀行員の秋山という者と共同創業しました。
高野:辰巳さんと秋山さんは本当に仲がいいですよね。
辰巳:そうですね。
共同代表はかなり危ないと、高野さんから言われましたよね。それでも、一番最初に出資していただいていたので感謝しています。
高野:そうなんです。
一応、セオリーはありますが、見ていると例外的にうまくいくと思いました。Branding Engineerさんも上手くいっていますしね。結局、何事も例外はありますね。
辰巳:高野さんと出資の会議をしたときに「本当に2人で大丈夫?…」と言われたのはまだ忘れませんね(笑)。覚えています。
高野:今までそういうことが多かったので、出資の会議の場でもお話させていただきました。
ただ、フリルの堀井さんも、colyの中島さんも双子のW代表で上場していますし、本当に例外はあるなと思うようになりました。
辰巳:言うのも恥ずかしいですが、私と秋山は社会人の2年間、同じ釜の飯を食べて、ルームシェアをしていたというのは、結構大きいかもしれないですね。
高野:そのレベルの人は、あまりいないですからね。
辰巳:よく会社の同僚と起業とか、大学の友達と起業というのは結構ありますが、ある意味、兄弟同然というような距離感で起業するのは珍しいんじゃないかと思っています。
高野:それで成長されているので、本当に素晴らしいです。
カンリー取り巻く環境と市場における強み
高野:業界について分かる方も限定されると思うので、カンリーを取り巻く業界やマーケットのトレンドについて教えていただけますか?
辰巳:ありがとうございます。
私達が対象としている業界は、簡単に言うと拠点や店舗になります。
飲食店・コンビニ・ガソリンスタンド・小売店など「住所を持っている建物」そういうところが、マーケット環境となっています。
日本には800万店舗くらいあると非公式ながら言われており、次にマーケット全体で問題となっているのが、店舗の業界は労働集約型のビジネスにも関わらず、日本の人口減少によって明らかに”生産性を高めるという風潮”が非常にあると感じています。
私達のサービスは1年前にリリースしたのですが、立ち上げて1年間で導入店舗数は、約1万3000~4000店舗まで到達しました。急速にこのサービスが広まっているんです。
何でこの時期にということなんですけど、コロナを契機にかなり被害にあわれている店舗の方もいらっしゃいますが、逆にコロナが自分たちの生産性を見直すきっかけになったという側面もあります。
その時に、業務効率化システムはコロナを契機に後押しされた、ということがあるのかなって思っています。
高野:素晴らしいです。
私から見ていると、カンリーの強みって色々あると思うのですが、ベンチャーだけど、大手企業さんと取引できているじゃないですか。
ベンチャー企業が大手企業と取引を始めるのはなかなか難しいと思っていて、大手企業に対する営業力というのが、カンリーの強みの1つかと思うんですけど、このあたりというのは、実際どうなんでしょうか?
辰巳:ありがとうございます。手前味噌ながら、おっしゃる通りでして、私達のお客さんは、直近ではモンテローザ様や鳥貴族様と、大手企業から受注することが増えています。これは、飲食業界においてはいわゆるエンタープライズに区分される企業様なのかなと思っています。
なぜ受注が獲れるのかというのは極秘情報ではあるのですが、ひとつの要因として辰巳と秋山の創業者が日本の大企業にいたというのが大きいと思います。
私自身、昔からある業界の商社で働いてましたし、秋山がいた銀行も、昔ながらの業界なので、大企業の力学みたいなものを理解しているのは強いと思っています。
高野:そこは若手ベンチャーで、大手企業をあまり得意としていない会社もあるとありますよね。もちろん、プロダクトがいいというのもあると思うのですが、プロダクトがよくても、使ってもらわないと、プロダクトの本当の良さはわからないから、その辺りがすごいなと思っています。
辰巳:私達もプロダクトに自信があるのですが、プロダクトは良いという前提で、大手企業様と一緒にやるときって、ベンチャーとは勝手が違う部分が多くありますよね。
例えば、決裁者だけを攻めてもうまくいきません。応対してくれている方がどんな立場で社内でどんな利害関係がありそうなのかを理解する必要があります。裏側に決裁内容を検査する部署もあったり、窓口の人と決裁する部署は違うこともあったり、一筋縄ではいきません。
その力学を理解しながら、カンリーを取り入れることでどれだけ良くなるかを、いろんな部署に見せていくことを大事にしています。
商社はいろんなステイクホルダーがいたので、新卒で商社に入社してその肌感覚を身につけられてよかったなと思っています。
高野:大手企業を相手に辰巳さんと秋山さんはちゃんと出てやっているというのは、カンリーがうまくいっている要素の1つかなと思っています。
カンリーのハードシングス
辰巳:でも、起業したての時は大変でした。倒産を二回くらいしそうになっているので。
カンリーの前に、元々の創業事業は”宴会の幹事代行サービス”という事業でした。私が商社にいて宴会の幹事や接待があり、銀行員の秋山は銀行で幹事をしていました。そのなかで、ビジネスマンにとっては宴会場であったり、接待をする場所、お店を探すサービスがあればいいのに、と思ったのがきっかけです。
そこで、ビジネスマンに特化した”ぐるなび・食べログ”のような事業を最初にスタートしました。
ただ、コロナで環境が変化してしまって、宴会の需要が一切来なくなってしまい、結果的に、ピボットすることになったのですが、そういった事業をやっていました。
高野:ストレートに言うと、あの事業自体は、私は難しいだろうなと思っていたんですけど、でも、最初に言った事業と違う形で成功している人は多いので。
そこは、何か可能性はあるんじゃないかなと、もちろん思いましたし、BtoB的なものだったら、いずれにしても何から始めても最終的に行きつくところはあると思うので辰巳さんも秋山さんも成功するまであきらめないタイプの人だと思いました。
普通だったら、元の事業内容でコロナ時代になって終わりとなっていると思うのですが、むしろ生き延びて伸ばしている。本当にすごいなと思います!
辰巳:コロナ禍になって、当時は本当に焦りました。
飲食の業界って、一番コロナでダメージを受けていた業界でで、その中の宴会と接待の領域って、特に誰も使わなくなったじゃないですか。
今回の「カンリー」というサービスを始めたきっかけとして、前身のサービスを営業している中でお客様に凄く良いサービスだねとは言ってはいただけるのですが、ぐるなび・食べログ・Retty・ホットペッパー等、メディアが多すぎて管理する方が大変だと言われていたんです。
1メディアとして、飲食店さんであったり、店舗さんに貢献するのもいいですが、むしろそれを裏側でまとめたインフラのニーズを感じていて、カンリーのアイディアにつながりました。
カンリーの調達した資金の用途と求める人物像
高野:今回、資金調達をされているということで、どのくらい調達されたとか、今後の調達の使い道とか、その辺りは、いかがですか?
辰巳:大体5億円の累計の調達を実施しているというような状況です。このお金は、採用に使おうと思っています。
特に私達、人数がカツカツでやっていて、エンジニアが足りなかったり、マーケターが足りなかったり、もあらゆる職種の人数が足りないので、人材というところに、お金を使っていきたいというのが、まず1つ目になります。
2つ目は、マーケティング活動です。
私達はマーケティング活動をそんなにしていなかったんです。店舗数は伸びているんですけど、プロダクト開発をしっかりしようというところをちゃんと考えていたので、マーケティングの活動をちゃんとしていませんでした。
これからはマーケティングの担当者を採用して、マーケティング活動にも積極的に取り組んでいきたいと思っています。
高野:エンジニアはどこも取り合いになっていますよね…!
あらゆる職種を募集中というお話がありましたが、カンリーに合う人はどのような人なのでしょうか?
辰巳:うちはバリューをすごく重要視しています。
カルチャー経営をしていまして、5つのバリューがあります。
1.お客様の理想から入れ
2.まずやってみろ
考えすぎず、まず行動して、その結果をもとに、考えられる人
3.圧倒的当事者意識
自分が責任、自分がオーナーだと思って働ける人
4.利他主義でいこう
自分の利益を優先するわけではなく、自分の利益より組織の利益を優先して働けるか
そして、5つ目が一番重要なのですが「正直であれ」です。
自分が何か、問題を抱えたとしても、常にオープンでいられるか。嘘をつかないか、誠実か。
この5つを満たしているのが、カンリーに合う人です。
裏を返すと、何か自分の利益を守って、ちょっと嘘をついちゃうとか、我を通しすぎちゃうとか、そういう人は向いていないと思います。
私達は組織で勝っていく会社なので、チームの利益に貢献できる人が合いやすいかなと思っています。
高野:ベンチャー経営していくとハートの強い人一方で、我の強さからハレーションが起きたりするのも、多くの会社が悩んでいたりしますからね。
辰巳:我が強い人は多くの場合、ハイパフォーマーでもあるじゃないですか。一個人としては。そういう方を集めれば短期的には業績が上がるとは思いますが、長期を考えると個人の足し算ではなく、組織の掛け算で勝っていかないといけないと思っています。そう考えたときに、素直さが本当に重要です。
高野:新卒のときも素直であることが大事と言われますが、経営を始めるとより一層強く思うようになりますよね。
辰巳:そうなんです。就活をしていた当時、体育会系の人は素直だからという理由で採用される人が多かったんですよ。当時、どういう意味か分からなかったんです。体育会系だから素直ということはなく、あくまで個人の問題でしょうと。
でも、経営してみて体育会系であることと素直であることには、一定の相関があるのかもしれないと感じるようになりましたね。
高野:絶対体育会系じゃないといけないわけじゃないけど、組織を分かってくれている人じゃないと、一緒に同じ神輿は担げないですよね。すごく大切なことだなと、私も長くベンチャー業界にいて強く思います。
昔から、才能と野心は双子の関係という言葉もあるんですけど、ちゃんと組織プレーができるというのは、とても大事なことですからね。個人競技じゃないので。
辰巳:属人性が高いコンサルティング会社とかだったらいいのかもしれないと思いますが、特に、私達のようなSaaSのプロダクトは組織が大切ですね。
SaaSはいわゆる「ザ・モデル」のように、開発チームがプロダクトを作って、マーケティングがリードを獲得して、営業がリードを案件受注につなげて、カスタマーサクセスチームが受注した案件フォローをして、という流れになりますよね。
どこか一つでも崩れたら終わりなので、組織が一体となって全員部署が協力しないと、SaaSプロダクトを成長させるのは難しいと思っています。
高野:他の会社さんを見ていても思いますね。
カンリーの今後の展望
高野:さらにその先はどのようなことを実現していきたいか、最後に展望をお伺いしてもよろしいでしょうか?
辰巳:私達の会社のミッションにもなっているのですが、店舗に関わる全ての人に最も信頼されるインフラを作りたい、という想いが非常に強いです。
私と秋山のバックグラウンドも影響しているのですが、秋山は銀行で金融のインフラを携わってきた人間で、私自身は商社で空港のインフラのビジネスに携わっていました。
空港があることで周辺の施設がより良く活性化されたり、銀行があることで融資を受けた会社が成長することができたり、根幹を支える”インフラ”になることがキーワードだなと思っています。
私達の会社も店舗にとってインフラとなるような、必要不可欠なそういった存在であり続けたいということが、会社として成し遂げたいミッションになっています。
それを実現するために、私達は今何をしているかというと、カンリーというプロダクトを通して、店舗情報の多重管理という問題というのを解消したいと思っています。二重管理、三重管理じゃなく、多重管理です。
ありとあらゆる媒体を、カンリーというところに連携をして、店舗さんがカンリーというプロダクト1つ使えば、全ての情報が管理できて、分析、運用できるというプラットフォームにしていきたいなと思っております。
結果として、業務の効率化ではあるのですが、私達の目指している、見ている先というのが、店舗の奥の消費者の方だと思っています。
店舗の方たちが本来やるべき仕事は、目の前のお客さんに満足してもらうことだなと思っています。
私達のシステムを通じて、無駄ないろいろな作業を効率化してあげて、お客様への価値提供につながる業務に注力していただく。
その結果、店舗に来ていただいたお客様に満足になって帰っていただくことで精神的に豊かな人たちが増えて、精神的に豊かで幸せな社会になっていくんじゃないかなという風に考えています。
高野:本当に実現していきたい世界観ですね。今後も応援しています!
本日はありがとうございました。
取材あとがき
改めまして、辰巳さんありがとうございました。
創業当時の事業内容から、コロナを経て、新しいサービスへ方向転換し、そして急速に拡大させていっている。辰巳さんと秋山さんの粘り強さは本当に素晴らしいです。
私がベンチャーで大事だと思っているのが、”経営者・市場の成長性”はもちろん、”その中で勝てそうかどうか”。
カンリーはこの3要素をクリアしているベンチャー企業だと思いますので、興味を持った方はぜひ採用にエントリーしてみてください!