コラム

地方のベンチャー支援状況 ~静岡編~

先日、静岡県に行く機会があったのですが、東京からかなり近いのですね。1時間程度で着いたので驚きました。海もあり、山もありという場所にこんなに手軽に行けるものなのか、と。またお伺いする機会があれば、ぜひ色々なスポットを知れたらと思います。

少し突拍子もない入りになってしまいましたが、今回は静岡県のベンチャー支援の現状についてまとめていければと思います。

 

静岡県の現状は?

交通の便の良さで発展も衰退もしうる

静岡県は東京と名古屋の中間に位置し、東名・新東名の2本の高速道路と東海道新幹線も通る場所であり、昔から交通の要所として栄えてきた土地と言えます。それでいて、北には富士山があり、南には海がありと、自然に恵まれたところでもあります。この辺りが静岡県のベンチャー企業の特徴に繋がっていたりするのですが、これは後ほどお伝えしますね。

2018年の日経新聞社の調査によると静岡県の人口は374万3015人(2018)で、前年比で1万3850人(0.37%)減少し、減少数は全国で8番目に多いとのことです。1つは、高校卒業と同時に都内や関西の大学に進学する学生が多く、そのまま地元に帰ってこない学生が多いことが要因と言われています。私の地元の仙台では、東京に出る人が多かったのですが、静岡の場合は東京にも大阪にも1時間程度で行けてしまうので、流出が特に多くなるのではないか、という話を聞き、なるほどな、と思いました。

ただ、私は仙台出身なので仙台のスタートアップの支援などもさせていただいているのですが、若手の人に魅力を感じさせる・伝えられる企業が少ないのも課題ですよね。私自身、大学を卒業して東京に出てきた経験がありますが、やはり刺激的というか成長できる場所として、自然と東京を選んでいました。

課題先進国日本、先進地域静岡

人口減少が著しい地方をどうやって盛り上げていくかは、日本全体にある課題ですし、これから世界的にも直面していくものだと思います。だからこそ、人口流出が進んでいる地域から、魅力あるスタートアップが数多く生み出され、魅力ある経営者に牽引され、多くの若者が集まり、地方から社会を変えるイノベーションが生まれる・・・そんな世界観を実現できるといいですよね。静岡や仙台のような歴史的にも、栄える要因がある地域がそうした動きを積極的に取っていきたいですよね。

一方で、静岡県内のある中堅企業採用担当の方の話では、静岡県出身者で地元に残り、就職活動をする大学生は保守的な方が多いのではないかとの意見もありました。地方に残る学生さんは東京に出る学生さんよりも保守的なイメージがあるというのは、東京の企業でも言われていることです。しかし、静岡県では少しずつ変化が起きているのだな、と思う点がありました。その変化の兆しの一部をお伝えできればと思います。

 

静岡県のベンチャー支援状況

ベンチャーの街 浜松

現在、浜松では、鈴木康友市長の号令の下、「やらまいか」精神を取り戻そう、もう一度浜松をベンチャーの街にしようと積極的なベンチャー支援策が打ち出されています。「やらまいか」というのは「やろうじゃないか」という意味の静岡県 西部地域の方言だそうです。浜松は、ホンダ、スズキ、ヤマハなどを輩出したベンチャーマインドを持った街なので、こういった言葉が使われていたと聞いても違和感ないですよね。その「やらまいか」精神を取り戻すべく、ハッカソン、実証実験、コミュニティ形成、企業誘致など様々な施策が実施されました。結果、自治体と民間企業の熱意が交わり、さらに多くの取り組みが行われるようになっているようです。

浜松ベンチャートライブ

浜松ベンチャートライブは、民間企業主導のベンチャーコミュニティで、浜松市内のベンチャー企業5社によって立ち上げられました。アントレプレナーシップ溢れる起業家を浜松に呼び込むために、定期的にピッチイベントや交流会を開催しています。参加者は地域の起業家やVC、金融機関、行政、大企業の新規事業担当者らなど非常に幅広いようです。特徴は浜松に閉じたコミュニティではなく、東京や静岡県外からも参加者を集めて、大きな動きになろうとしていることですね。

参考記事:“やらまいか”精神で浜松のベンチャー魂に火を付けろ!(日刊工業新聞)

 

スタートアップウィークエンド

スタートアップウィークエンド(以下、SW)は、週末だけでアイデアをカタチにするための方法論を学び、スタートアップをリアルに経験できるイベントです。これは全国各地で行われている取り組みですね。浜松(西部)では7回、沼津(東部)で2回、そして静岡(中部)にて、第1回SWが6月末に開催される予定です。過去の参加者から、外食産業用ロボットを開発するモリロボなど実際に起業するベンチャーも出てきています。浜松から始まったこのイベントが、県内に広がりを見せており、「起業家マインドを醸成しよう」という機運が高まっています。

 

静岡県ベンチャーの課題

先に挙げたような取り組みもあり起業家マインドの醸成は進んでいますが、まだまだ起業が爆発的に増えるという状況には至っていないのも実状のようです。また、実際にスケールアップするスタートアップ/ベンチャーもまだまだ多いとは言えません。その主な要因を考えてみたいと思います。

資金調達を支援する機関が少ない

起業家を支援する方々は、地方自治体の産業振興課の方や支援機関(よろず支援拠点、商工会議所、産業振興財団等)および地域金融機関の方々があげられます。こうした機関から、補助金の案内や銀行借入のサポートは手厚い反面、エクイティでの資金調達に関して支援してくれる企業はほとんどないのが現状と言えそうです。

 

資金の出し手が現れない

これも決定的なところですが、エンジェル投資家のような資金の出し手がほとんどいなければ、ファンドが組成されるようなことも少ないようです。また、こうした仕組み自体、あまり知られていないように感じます。地銀系VCや信金経由で信金キャピタルと面談するケースはあるものの、それらのVCがリードを取って県内ベンチャーやスタートアップに出資するケースもあまりないのが現状のようです。そうなると、起業家がリスクマネーを獲得するためには、東京へ出るしかなくなってしまいますよね。

 

起業家の資金調達スキル不足

一方で、資金支援をしてくれる人や組織が現れても、エクイティ・ストーリーを効果的に伝えられる起業家が現れないため、出資できないというもう一方の問題も生じているのではないかと思います。その辺りを体系的に学べる機会自体があまりないのかもしれませんね。自分でなんでも調べてできてしまう人やできる人を巻き込む力がある人は都内に拠点を移し、資金調達を行うケースが多く、そのまま戻ってこないことが多いですね。静岡に留まるベネフィットを感じてもらえる仕組みを作ることも大事ですが、静岡で資金調達できるように学びの機会を提供できるといいのかもしれません。

 

静岡でベンチャーを立ち上げるメリット

これだけ聞くと、静岡で起業するのは少し不利益が大きい気がしてしまいますよね。ただ、そういった中でも、静岡で起業して事業を進めているベンチャー/スタートアップもありますので、その共通点を考えてみました。

 

地域資源/地域課題

例えば、農業ベンチャーで圃場が必要な場合や、観光系のベンチャーで地域の観光資源と密接に結びついている場合など、拠点を現地においた方が優位に働くケースもあると思います。また衰退する製造業の課題を解決するようなソリューションを提供する会社だとすれば、浜松のような製造業の街に本社をおくことで、顧客により近いところでビジネスができるという利点もありますよね。この辺りは静岡の地の利が活かせるところかもしれません。

 

生活環境/生活コスト

都心とくらべれば、不動産価格や家賃相場も安いため生活コスト(バーンレート)を下げることができます。また、満員電車も東京ほどひどくはありませんし、地方では車通勤の方も多いと思います。仕事に集中できる環境は人それぞれ異なりますが、東京でストレスの原因となると言われているものは回避できそうですよね。生活環境としても、海と山が近く自然にも恵まれ、アウトドアやサーフィンを息抜きで楽しむ起業家の方も多いそうです。

 

自治体との距離感が近い

特に、浜松市の職員の方はベンチャーに対しての理解があり、フレンドリーで親しみやすい印象を受けました。自治体との連携の相談やマッチング、広報・採用面でのサポートなどは現在積極的に進めているようです。また都内ベンチャーと比較してエクイティ環境が悪い分、補助金や金融機関からの融資をうまく活用しているベンチャー企業も多く、そうした知見からアドバイスもしてもらえることもあるようです。

 

静岡から地方ベンチャーを盛り上げていく

今回は縁あって静岡を取り上げさせていただきました。港として栄えた歴史もあれば、工業の地として栄えた歴史もある、商業的には盛り上がる要素がいくつもある地域だと思います。こうした特徴を利点に変えられるかどうかが、地方の企業には求められていくと思いますので、その先進地域として静岡発ベンチャーが盛り上がっていくといいな、と思っております。

今後も、静岡県の有望ベンチャーの紹介や静岡で起業/進出する際に活用できる補助金等もご紹介できればと考えております。

また、他にもこうした取り組みを進められている自治体職員の方、取り組みをしている自治体を知っている方、ぜひ連携してこの領域も盛り上げていければと考えておりますので、ぜひご連絡くださいませ!

※今回の記事はEXPACT株式会社 髙地 耕平さんに全面的にご協力いただきました。高地さん、ありがとうございました!

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