みなさんは、実際、起業について、どういったイメージを持っていますか?
スタートアップへのVCからの投資が、2000億、3000億、そして4000億になったと言われる昨今、起業したという話は珍しくなくなりましたよね。
一方で「起業するネタがない」「やりたいことがない」とおっしゃる方も多いです。
なお、私はつねづね、起業することも、セカンドキャリアのよい選択肢のひとつではないかと考えてきました。そのように考える背景やセカンドキャリアで起業することのメリット・デメリットをこの記事ではご紹介していきます。
目次
セカンドキャリアで起業するメリットデメリット
私は独立して以来、まわりのみなさんからたくさんの質問や意見を頂きました。
どうして起業したのですか?どうして今の仕事を選んだのですか?ビジネスパートナーはどうするのですか?株式公開は狙っているのですか?…..だとすれば、お金を出させてください!公開前に未公開株が欲しいですw!(こらこら何をいうw)
なぜ成長している会社で活躍していたのに、退職したのですか?起業するための準備資金はどれくらいかかったのですか?こういった質問もあります。とても好意的に聞いてくれる人が多かったですが、中には、起業が悪いことのように考えて、「なんでそんなことするの!?」といった反対意見もありました。
今のところ、私自身としては、メリット、デメリットをふくめ、起業というセカンドキャリアを選択したことは正しかったと考えています。
起業のメリット
良かった点としては、次のことがあげられます。
- 自分で意思決定できる
- 最終責任は自分でとることができる
- 自由と自己責任の原則が適用される
- 何より自分のペースで仕事ができる
私は独立することの障壁は、お金でもスキルでもなく、「心の問題」だと感じています。自信が大切だと思います。とはいえ、最初から自信がある人は少ないです。
「立場が人を作る」という言葉があります。これは起業にも当てはまるような気がしています。
踏み出したからには、あとには引けないという心意気のようなものが自分を奮い立たせてくれた。そんな経験をしたことは皆さんありますでしょうか?
こうして自分で覚悟したことを乗り越えた経験が自信になります。逆に、できることを続けていても自信はつきませんので、自信がないというのは新しいことをやらない理由にはならないと思います。
起業のデメリット
- 分からないことも自分で意思決定しないといけない
- 最後は自分で責任をとることから逃れられない
- 自由を得る対価が自分を縛りつけるリスクがある
- 自分がやらなければ何も進まない
先ほどのメリットの反対ですね。起業をしたことのメリットが、さまざまなリスクにもつながっているということは、肝に銘じています。すべてが、自分一人の身にはね返ってくるわけですから、その緊張感・責任感を背負っていかなければならないという覚悟も必要なのです。
起業のタイミングは人それぞれ
また、起業するなら、早ければ早いほど良いという人がいますが、私はそうは思いません。サイバーエージェントの藤田晋さんのように一年で自信をつけて、思い切れる人もいれば、私のように六年もかかる場合もあります。
人それぞれ個性や考え方がありますので、無理して二〇代で起業しようと考えるより、自然に、心の底からそう思ったときがタイミングかと思います。
そのタイミングの見つけ方にも、人それぞれの価値観が反映されるのでしょう。サマンサタバサの寺田和正社長は、バブル崩壊後に「今だ!」と直感したそうです。
一般的な価値観なら、いちばんリスキーな時期だととらえて、あえてその時期に起業することには二の足を踏みそうですが、寺田社長は、みんなが慎重になったその時期こそ、絶好の好機到来だと考えたようです。自信とともに、相当の覚悟があったのだと推測できます。
絶好のチャンスというのは人それぞれ異なり、ある人にとっては吉と出ても、ある人にとっては凶となる……こればっかりは、予測不可能な部分もあります。起業のメリット、デメリットも、やはり表裏一体なのです。
起業によって人生が狂うほどの失敗することは実はまれ
「起業することのリスク」が語られますが、実は人生が狂うほどの失敗に終わることは稀です。
私の例で恐縮ですが、起業を志した頃のエピソードを紹介させてください。
キープレイヤーズ高野の起業エピソード
「君は、誰のために、何をしたいの?」
独立前、ある年配の経営コンサルタントの人に起業についての相談を持ちかけたところ、鋭い眼光のその人は、まっすぐに私を見据えてそう質問しました。
私は、とっさに答えることができませんでした。起業をすることは決意をしたものの、私の中にまだ最後の迷いが残っていたからです。
私の考えは、ややもすれば独りよがりなのではないか……はたして、ビジネスとして成り立つものなのか……
このように、自信がなかったからです。息をするようにできて好きな仕事、だからといって、これで起業するのが正解なのか分かりませんでした。
独立前も、独立後も、おかしなもので、私は一日中暇さえあれば、担当している誰かのことを考えています。でも、まったく苦にならないのです。不思議なものです。個人のキャリアにとても関心があるのです。
私の興味、関心のすべては、人にある。キャリアにある。でも関心があるだけでは、何の問題解決にもなりません。その人に合った企業を見つけるという、実質的な取引をしなければなりません。
経営コンサルタントの方にに質問されたとき、私は、こうした自分の思いと実質的なビジネスとの間にギャップがあるのでは……と懸念していました。今までは会社の看板がありました。3000人のカウンセリング経験も、会社という看板あってのこと……自分が独立し、看板を捨てても、企業が私と取り引きしてくれるのだろうか?個人に関心がありすぎることが、ネックになりはしないだろうか?などと不安は尽きませんでした。
「それで君は、誰のために、何をしたいの?」
もう一度、問いつめられて、思わず私は支離滅裂ながらこう口走ったものです。
「僕、個人の方のために頑張りたいんですよね。大企業で満足していない人、悶々としている人や……ハードワークすぎる環境で報われていない人のために。能力があるのに、活かされてなくて、もったいないと思う人がいるじゃないですか……やる気のある人の応援!人から喜ばれる仕事がしたいんです。」
一気にまくしたてている間、彼は静かに聞いていました。
「あのお……そんなんじゃ甘いですかね……」
静かに話を聞く彼の 間に耐えきれず、最後にこう言葉を添えたことを覚えています。彼はそんな焦りや様子を察したのか、このように返してくださいました。
「いや、それでいいと思いますよ。正しいことをきちんとやっていけば、ビジネスとしてついてくると思いますよ」
熱くなって口走った自分のつたない言葉が恥ずかしく、思わず下を向いていた私に、彼はこう続けました。
「その思いが、自分のミッションだということを忘れないようにしてください」
挑戦していると、挑戦を賞賛し評価してくれる人物が集まる
この章を書きながら、起業について、あらためて思いをはせました。
約15年前の私には、ベンチャーの友人、知人など誰一人としていませんでした。それがインテリジェンスに入社し、仕事をする中で、知り合いの輪が広がっていきました。さらに自ら起業してみると、私を取り巻く環境は、さらに変化してきたのです。
今では、私の知り合いの大半が、起業されている人もふくめ、何かしらベンチャー企業に関わっている人たちで占められています。起業といっても、必ずしも社長になっている人ばかりではなく、立ち上げのメンバーとしてやっている人も多数います。
私のまわりにはなぜかそういった人が集まってきており、セカンドキャリアとしてベンチャー企業を選択し、新しいステージで活躍されている人も大勢います。
日本はやる気のある人ばかりなのか?私は、そんなふうに感じることさえあるくらいです。
過剰な経済的リスクはファイナンスの段階でストップがかかる
「しかし、ベンチヤーはリスクがありますよね?たいへんですよね。失敗するかもしれませんよね」
もちろん、一方で、こういった声も耳にします。でも実のところ、起業による失敗例というのは、ほとんどないのです。万が一起業して失敗しても、また組織に戻ってゆく人はたくさんいますから、人生設計の歯車を狂わすほどの破綻というのは、あまり例がないのです。起業経験のある人材が欲しい会社もたくさんあります。
多額の借金をして独立する……といっても、独立前にそんなにお金を集めることは、比較的ファイナンスが容易になったと言われる今ですら無理がありますから、巧みに嘘をついたケースでもないかぎり、みなさんが思っているほどリスクは高くないのです。
本当のリスクを生むのは、会社が傾きかけたときではなくて、軸となる自分のミッションを見失ったときなのだと思います。
独立後、さまざまな問題でいくら迷っても、私はかならず独立したときの自分のミッションに戻るようにしています。それがぶれたとき、足元をすくわれるような気がするからです。
私のもう一人のメンターというべき経営コンサルタントの人が、独立前の私におっしゃりたかったことの真意が、最近ようやく骨身にしみてわかるようになってきたのです。
セカンドライフとして起業・開業し経営者になりたい人は
最後に、家族の強力なサポートを得て、フランチャイズビジネスの夢を見事に成功させたケースをご紹介しましょう。会社組織の中で、ごく平凡なサラリーマン人生を送ってきた、当時44歳の男性のお話です。
彼は、大学卒業後、新卒で中堅の機械メーカーに営業職として入社。伝統のある安定した会社で、20年間地道にこつこつと仕事をこなしてきた彼は、順調に出世コースを歩み、管理職として、つつがなく毎日を送っていました。仕事自体に特に不満があったわけではありませんが、管理職に就いた頃から、自分の将来について、いろいろ考えるようになったといいます。
ひとつだけはっきりしているのは、この先の出世は、自分の上司の判断にかかっているという点でした。伝統のある会社であったため、年功序列的な古い体制が、まだまだ根強く残っていたからです。彼のさらなるサラリーマン人生のステップアップは、上司からの評価をあげてゆくしかないことは火を見るより明らかだったのです。
「上司とはある程度うまくやってはきたが、基本的にそりが合う人ではない……はたしてこのまま、自分はサラリーマンとして、一生を終えてしまっていいのだろうか?」
そんな思いを抱えながら、お昼休みに近くのコンビニに立ち寄ったとき、新しいアルバイトの男の子が接客している姿が目に止まりました。その店員が、快活な声で気持ちよく接客をこなし、生き生きと働いている様子がとても印象に残ったのだといいます。
「そういえば、学生の頃、サービス業のバイトをよくやったもんだな」
普段はほとんど思い出すこともなかった20年以上前の記憶が鮮明に甦りました。いつか、自分の店を持って、一国一城の主になるのも、悪くはないな……そんなふうに夢を描く自分がいたことを思い出したのです。
「これまでのキャリアを捨てても、忘れかけていた自分の夢にチャレンジしてみたい!」
彼は一カ月、思い悩んだ末、ついに家族に相談することに決めました。
国立大に入ったばかりの息子さんと、奥さんは、思わぬ彼のこの申し出に、はじめはびっくりしたそうです。その日は、夜遅くまで、家族三人で話し合いました。
今まで、面と向かって聞いたことがなかったような、奥さんからの本音も浮かび上がってきました。専業主婦だった奥さんは、子育てが終わり、外に出て何か仕事をしたいと思っていたものの、自分にはできることなど特にない……そんな悶々とした思いを抱えていたそうです。
またときどき、朝、出社してゆく夫の背中が、寂しそうに見えて、やるせなさを感じることもあったとか。……思いもよらない妻の洞察力に、しばし唖然としたといいます。
「サラリーマンをしていても、今の時代、いっリストラされるかもわからないんだから、第二の人生にチャレンジしてみるのもいいじゃない……パートで人に雇われるくらいなら、お店を手伝うほうがよっぽどやりがいがありそうね」
そういって快く、会社を辞めることに賛成してくれたそうです。それから彼は、仕事の合間を見つけては、フランチャイズビジネスの会社説明会を回り、最終的に、フランチャイジー(フランチャイズの会社から営業の権利を借りて、店舗を出す人)として条件の良かった、ある大手コンビニエンスストアからの出店を決めました。
堅実な暮らしをしてきた一家だったので、貯蓄もあり運転資金には困らなかったそうです。息子さんも、アルバイトで協力してくれることとなり、家族総出で店を切り盛りする日々がはじまりました。
開店当初は大変だったそうですが、そのうち息子さんがアルバイトリーダーになってくれるほど成長してくれたため、アルバイトの離職率はどんどん低くなっていったといいます。
余談ですが、コンビニエンスストアなどのサービス業の場合、アルバイトの人材確保、定着率向上は、如実に無駄なコストの削減につながります。定着率が高ければ高いほど、店舗の運営はスムーズにいくものなのです。
こうして家族で経営しているコンビニエンスストアとして常連客もつき、一年間で、前職よりも年収が三倍にまでアップしたそうです。
後日、その男性にお会いしたのですが、サラリーマンをされていたときよりも、ずいぶんと若返ったような印象を受けました。
最近では、すっかり経営の面白さにはまってしまった息子さんが、父親の彼をさしおいて、二店舗目の出店場所を積極的に探しているそうです。
息子さんが青年実業家になるか、あるいは脱サラミドル世代の彼が、セカンドステージでのさらなる夢を開花させるのか、今後が大いに楽しみです。
まとめ
何かに挑戦することに早すぎることも遅すぎることもありません。自分が挑戦したいと思った時に挑戦できることが大切です。
いずれは起業したい、でも今がいいのかわからない、と足踏みする場合は、今のお仕事で圧倒的な結果を残すことから始めましょう。仕事を変えずとも、新しいチャレンジをする人の周りには支援者が集まります。
そうして支援者の力も借りて自分の殻を破り、一歩踏み出して結果を出す経験ができれば、自然と起業したいという気持ちが湧くタイミングが来るはずです。