こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職のサポートをしているキープレイヤーズの高野です。
将来CFOになりたい
CFOを採用したいがどんなキャリアの方が良いのかわからない
という方向けに、東証グロース市場(旧マザーズ)上場企業CFOのキャリア分析をお届けします。
皆さまのキャリア設計の参考になれば幸いです。CFOを採用したいという企業が非常に多く、相談もたくさんいただいております。CFOを目指す方、ぜひContactからご連絡くださいませ。またCFOを採用したい経営者の方、投資先を支援して欲しいVCやエンジェルの方、お気軽にご相談ください。
【2026年4月更新】 2022年4月の市場再編(マザーズ→グロース市場)を反映し、最新のCFOキャリアデータに更新しました。
マザーズからグロース市場への変化
まず重要な前提として、2022年4月4日に東京証券取引所の市場区分が再編されました。
- 旧:東証一部 / 二部 / マザーズ / JASDAQ → 新:プライム / スタンダード / グロース
- グロース市場は高い成長可能性を持つ企業向けの市場で、旧マザーズの後継にあたります
- 2026年時点でグロース市場の上場企業数は約600社(旧マザーズ時代の290社から大幅増加)
さらに2025年には、上場維持基準が上場後10年以内に時価総額40億円から5年以内に100億円へと大幅に引き上げられることが発表されました(2030年施行予定)。現在のグロース市場上場企業の約70%(約400社)がこの基準を下回っており、市場の大きな転換点を迎えています。
CFOとは?役割と仕事内容
CFOの基本的な役割
CFO(Chief Financial Officer=最高財務責任者)は、企業の財務戦略全体を統括する経営幹部です。単なる「経理部長の上位版」ではなく、CEOのパートナーとして経営の方向性を財務面から支えるのがCFOの本質的な役割です。
具体的な業務領域は企業フェーズによって大きく異なります:
スタートアップCFOの仕事
- 資金調達:VCとの交渉、バリュエーション設計、投資契約書(SHA・投資契約)のレビュー
- 事業計画策定:3〜5年の財務モデル構築、KPI設計、予実管理の仕組み化
- 管理体制構築:経理・法務・労務・情報システムなどバックオフィスの基盤づくり
- IPO準備:主幹事証券・監査法人の選定、上場審査対応、内部統制整備
- 経営判断の参謀:投資判断、M&A検討、事業撤退の意思決定サポート
上場企業CFOの仕事
- IR戦略:機関投資家・アナリストとのコミュニケーション、適時開示
- 資本政策:配当政策、自社株買い、エクイティファイナンスの設計
- M&A実行:デューデリジェンス、バリュエーション、PMI(統合プロセス)
- ガバナンス:取締役会運営、監査対応、コンプライアンス体制
- グロース市場新基準対応:2030年から時価総額100億円基準が適用されるため、中期的な企業価値向上戦略の立案が急務
つまり、スタートアップCFOは「ゼロから仕組みを作る人」、上場企業CFOは「仕組みを高度化し企業価値を最大化する人」です。CFOを目指す方は、自分がどちらのフェーズにフィットするかを見極めることが重要です。
グロース市場CFO分析
◆サマリー
複数の調査データを総合すると、グロース市場CFOのキャリアには以下のような特徴があります:
- 監査法人と証券・投資銀行出身者がCFOの主要な供給源(各18名ずつ、56名調査中)
- 一方で、約60%のCFOは金融業界未経験(94社調査)
- CFO就任時の平均年齢は約39〜43歳(調査により異なる)
- 転職回数は平均2.6回(3社目でCFOに就任するケースが最多)
◇年齢データ
JAFCOグループ調査①(56名のCFO):
- CFO就任時の平均年齢:約43歳
- CEOより約2.5歳若い
- 最年少:31歳(2名)
- 年代分布:40代が約42%、30代が25%未満
JAFCOグループ調査②(2023年IPOの24名のCFO):
- CFO就任時の平均年齢:約39歳(前回調査の43歳から大幅に若返り)
- 年齢分布のピーク:29〜33歳と45〜49歳に二極化
- 最年少はGlobeeの指田恭平氏(29歳でCFO就任)
参考:2019年時点の旧データ(本記事の初版)
- 対象企業数:マザーズ上場290社(2019年7月18日時点)
- 平均年齢は47.8歳
- 最高齢73歳、最年少29歳
つまり、CFOの若年化が明確なトレンドとなっています。特に2023年IPO企業では、30代前半でCFOに就任するケースが増えています。
◇キャリア分析(出身業界別)
JAFCOグループ調査(56名のCFO):
| 出身業界 | 人数 | 比率 |
|---|---|---|
| 監査法人 | 18名 | 32% |
| 証券・投資銀行 | 18名 | 32% |
| コンサルティング | 14名 | 25% |
| その他 | 6名 | 11% |
FastGrow調査(94社、2014年1月〜2017年4月のIPO企業):
- 外資系投資銀行をファーストキャリアとした人はわずか3.2%(3名)
- キャリアのどこかで投資銀行経験がある人は9.6%(9名)
- 59.5%(56名/94名)のCFOは銀行・証券・監査法人いずれの経験もなし
- 約3分の2が最初の就職先として非金融の事業会社を選択
- 「CFO」という肩書きを設けていた企業はわずか24.4%
これは非常に重要なデータです。「CFOになるには投資銀行や監査法人の経験が必須」というイメージがありますが、実際には過半数のCFOは金融業界を経験していないのです。事業会社でファイナンスや経営企画の経験を積み、CFOに就任するキャリアパスも十分に現実的です。
◇CFOの年収相場
BNGパートナーズの決定実績データによると、CxO経由の転職年収は以下のとおりです:
- CxO人材の決定年収平均:約1,080万円(CFO単体ではなく経営幹部全体の平均値)
- ボリュームゾーン:800万円台
- ストックオプション等を含めると、実質的なリターンはさらに大きくなります
なお、上場ベンチャーのCFOであれば1,200万〜2,000万円のレンジが一般的で、上場企業の取締役レベルでは3,000万円を超えるケースもあります。年収だけでなく、SOを含めたトータルリターンで判断することが重要です。
◇CFOになるまでの転職回数
JAFCOの2023年調査では:
- 平均転職回数:2.6回
- 最も多いパターン:3社目でCFOに就任
- 初回転職までの平均年数:約5.8年
- 約半数のCFOが就任前に他のベンチャー企業での勤務経験あり
IPOトレンドの変化(2024年〜2025年)
CFOキャリアを考える上で、IPO市場の動向も重要です。
2024年のIPO状況
- 全市場合計:86社(前年96社から減少)
- グロース市場:64社
- 調達総額:9,700億円(前年比54%増)
- 注目IPO:Astroscale Holdings、Synspective、Timeeなど
2025年のIPO状況
- 全市場合計:66社
- グロース市場:41社(前年比36%減、12年ぶりの低水準)
- IPO時の時価総額中央値:100億円超(10年ぶり、前年比約70%増)
- 注目IPO:HUMAN MADE(717億円)、North Sand(772億円)、PowerX(442億円)など
IPO数は減少していますが、1社あたりの規模が大型化しています。これは東証の「小粒上場」抑制改革の影響で、CFOに求められる資質もより高度化していると言えるでしょう。
出身バックグラウンド別:CFOになるために補うべき経験
前述のキャリア分析から、CFOの出身はさまざまですが、それぞれの出身によって補うべきスキル・経験が異なります。
監査法人出身の場合
会計・監査の専門知識は最大の武器。一方で補うべきは:
- 事業理解:数字を「作る」側の経験。PL責任を持つポジションを一度は経験すべき
- 資金調達スキル:監査の視点とファイナンスの視点は異なる。VCとの対話経験を積む
- 組織マネジメント:チーム率いた経験が弱い場合が多い。事業会社で管理部門の統括を経験しておく
証券・投資銀行出身の場合
ファイナンス・M&Aの知識は申し分ない。補うべきは:
- オペレーション経験:アドバイザリーと実行は全く別物。スタートアップで「自分の手で」経理フローを回す経験
- ベンチャー特有の泥臭さへの耐性:華やかなディール仕事とは対極の、地道な管理業務をこなせるか
- IPO実務:上場審査対応、内部統制構築などの実務経験
コンサルティングファーム出身の場合
戦略策定・分析力が強み。補うべきは:
- 会計・税務の実務知識:簿記2級レベルの理解は最低限必要。できれば公認会計士やUSCPAの取得も検討
- ファイナンスの実務:予算策定、資金繰り管理、銀行折衝の経験
- 「助言する側」から「実行する側」へのマインドシフト:コンサルの提言と経営者としての実行は異質
事業会社(非金融)出身の場合
過半数のCFOがこのルートです。補うべきは:
- ファイナンスの専門知識:経営企画から入る方が多いが、財務三表の深い理解、バリュエーション手法の習得が必要
- 資格の取得:USCPA(米国公認会計士)は、事業会社出身者がCFOを目指す上で最も費用対効果の高い資格
- ベンチャーファイナンスの理解:種類株、ベスティング、優先株の設計など、エクイティファイナンス特有の知識
CFOに必要なスキル・資格
必須スキル
- 財務三表の深い理解:BS/PL/CFを連結で読み解き、経営の意思決定に繋げられる力
- 資本政策の設計能力:エクイティ/デットのバランス、ダイリューション管理、SO設計
- IR・ステークホルダーコミュニケーション:投資家・金融機関・監査法人との折衝力
- リーダーシップ:管理部門全体(経理・法務・労務・IS)を統括するマネジメント力
- CEOとの信頼関係構築力:経営の「参謀」として率直に意見を言える関係性
あると有利な資格
- 公認会計士:最も評価される資格。監査法人出身者のCFO就任率が高い理由
- USCPA(米国公認会計士):グローバル展開する企業で特に評価。学習コストは日本の公認会計士より低い
- MBA:経営全般の知識を体系的に学べる。海外MBAはネットワーキング面でも有利
- 英語力(TOEIC 800点以上/ビジネス英語):外国人投資家・海外VCとのやり取りで必須になりつつある
- ITリテラシー:資格というより能力だが、SaaS/クラウド会計の理解、データ分析スキルは現代CFOの必須条件
ただし、資格よりも「ベンチャーCFOとしての実務経験」が圧倒的に評価されるのが実情です。資格取得に時間をかけすぎて転職タイミングを逃すよりも、CFO候補としてスタートアップに飛び込んで経験を積むほうが近道な場合も多いです。
ストックオプション(SO)・長期インセンティブの詳細
CFOの報酬を考える上で、SOを含む長期インセンティブは年収以上に重要です。
CFOへのSO付与の相場
- シリーズA段階で参画:発行済株式の0.5〜2.0%
- シリーズB〜C段階で参画:0.1〜0.5%
- IPO直前の参画:0.05〜0.2%
例えば、時価総額500億円でIPOした企業で0.5%のSOを保有していれば、約2.5億円の価値になります(税引前)。ただし、これは「IPOが成功した場合」の話であり、全てのスタートアップがIPOできるわけではありません。
SO以外の長期インセンティブ
- RSU(譲渡制限付株式ユニット):上場企業で増加中。一定期間在籍すると株式を取得できる
- 信託型SO:税制面で通常のSOより有利な場合がある。ただし2023年に国税庁の見解が変わり、課税時期が前倒しになるケースも発生
- 業績連動賞与:IPO達成、ARR○億円達成など、マイルストーン達成時のボーナス
CFO転職時には、「SOの有無」だけでなく「種類・条件・ベスティングスケジュール・退職時の取扱い」まで詳細に確認してください。エージェントを通じて確認するのが確実です。
CFOを目指す方へのアドバイス
ファーストキャリアの選択
30代前半でCFOを目指すなら、監査法人または証券会社でのキャリアスタートが統計的には有利です(若手CFOの25%が監査法人出身)。ただし前述の通り、事業会社出身者も多数活躍しています。
ベンチャー経験の重要性
約半数のCFOが就任前に他のベンチャー企業での勤務を経験しています。スタートアップの「カオス」を経験していることが、CFO就任時に大きなアドバンテージになります。
転職のタイミング
初回転職は入社後約5.8年、CFO就任は3社目が最多パターンです。焦らず着実にスキルを積みながら、30代後半〜40代でCFOポジションを狙うのが王道です。
【年代別】CFOを目指すためのアクションプラン
20代:基礎固めの時期
- 監査法人・証券・コンサル・事業会社の経理/経営企画で専門性の土台を築く
- 公認会計士、USCPA、MBAなど資格取得はこの時期がベスト
- 余裕があれば副業やプロボノでスタートアップの財務支援に関わり、ベンチャーの「空気」を知る
- まだCFOを直接目指す時期ではないが、「CFOになりたい」という意思を持つことで日々の業務の吸収効率が変わる
30代前半:CFO候補としてのポジション取り
- スタートアップに管理部門責任者・経営企画マネージャーとして転職するのが最も現実的なルート
- CFOという肩書きにこだわらず、「実質的にCFOの仕事をしている」ポジションを狙う
- この時期の転職で「ベンチャーCFO経験」を得られれば、次のステップで上場企業のCFOも視野に入る
- JAFCOの2023年データでは、29歳でCFO就任の事例もあり、30代前半のCFO就任は増加トレンド
30代後半〜40代:CFO就任の最適期
- データ上、CFO就任の平均年齢は39〜43歳。この年代が「適齢期」
- すでに1社目のCFO/管理部門責任者経験があれば、より大きな企業のCFOを狙える
- IPO経験があると市場価値が飛躍的に上がる。「IPO準備中企業のCFO」は需要が非常に高い
- 40代前半までに少なくとも1回はCFOポジションを経験しておくことが、長期キャリアの分岐点
CFO候補としての評価を下げる失敗パターン
- 転職回数が多すぎる:1〜2年で退職を繰り返していると「コミットメントに疑問」と見なされる
- 守りの姿勢が強すぎる:「リスクを指摘するだけ」のCFOは評価されない。「リスクを理解した上でどうするか」の提案力が必要
- 数字しか見ない:事業理解のないCFOは「会計屋」扱いされ、経営チームの中で孤立する
- タイミングを逃す:「もう少し準備してから」と言い続けて、ベストな転職タイミングを逃すケースが意外に多い
最後に
グロース市場の上場維持基準引き上げ(2030年から時価総額100億円)により、CFOの役割はかつてないほど重要になっています。単なる財務管理だけでなく、IR戦略、M&A、資本政策まで含めた経営のパートナーとしてのCFOが求められる時代です。
CFOを目指す方、CFOを採用したい経営者の方は、ぜひキープレイヤーズにご相談ください。ベンチャー・スタートアップ領域で約25年の経験と、80社以上へのエンジェル投資の知見を活かし、最適なマッチングをサポートいたします。