こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職のサポートをしているキープレイヤーズの高野です。
今回は、スタートアップの資金調達と投資家の投資管理ツールを提供するスマートラウンドさんに取材をさせていただきました。
スマートラウンドさんといえば、先日セールスフォースドットコムのスタートアップ戦略室から冨田阿里さんがジョインしたことでも話題になりましたね。
今回は、前半でスマートラウンドの砂川大さんにスマートラウンド創業の経緯や事業内容、今後の展望について、後半は冨田さんも加わってジョインの背景とお二人のキャリア観について、お伺いしてきました!
スタートアップに関わる方、興味のある方は必見の内容となっておりますので、ぜひご覧くださいませ!
目次
代表取締役社長 砂川 大 氏の経歴
慶應大学法学部卒業後、三菱商事入社。海外向け鉄道案件を手掛ける。その後、Harvard Business Schoolに留学、卒業後は米国独立系VCであるGlobespan Capital Partnersに入社し、ディレクターとして投資業務に携わる。同社日本代表を経て、起業。株式会社ロケーションバリューの代表取締役社長として、複数の位置情報サービスを開発、展開。NTTドコモに同社を売却しロックアップを経て、Googleに入社。Googleマップの製品開発部長、Androidの事業統括部長を歴任。2018年2月にGoogleを離れ、5月に株式会社スマートラウンドを起業、現在に至る。また個人としては、エンジェルとして国内外のスタートアップに積極的に投資している。
株式会社スマートラウンド
起業家と投資家を結ぶ事業を営む企業。「スマートラウンド」は、クラウド上で起業家・投資家の両方が、資金調達やその後の事業進捗について記載することで、双方が効率的にプロセスや実績管理ができるプラットフォーム。
スマートラウンド創業までの経緯
日系大手、VC、スタートアップ企業、外資系大手と多様な環境を経験
高野:早速ですが砂川さん、まずはざっくり経歴についてお伺いしてもよろしいでしょうか?
砂川:大まかな経歴をいうと、新卒では三菱商事に入社しました。MBA留学制度を使って、ハーバードに留学した後、アメリカの独立系のベンチャーキャピタル(以下、VC)に転職しました。
その後帰国して、位置情報のスタートアップを創業し、ドコモにイグジットしています。イグジット後はGoogleでMapsのPMとAndroidの統括をやった後に、今の会社を創業した、というのが私の経歴です。
高野:新卒で日系最大手、MBA留学後はVC、起業して売却、外資系企業でも働いて再度起業、と思いつく限りのキャリアを経験されている感じがしますね。
新卒ではなぜ三菱商事を選ばれたのでしょうか?
砂川:もともと帰国子女で、社会人になる前はフィリピンやメキシコ、アメリカに住んだ経験があります。その時の経験から、グローバルな仕事ができて、MBA留学できる仕組みがある企業を選ぼうと考えたことが主な理由です。
プラン通り、入社後にハーバードに留学して、プロジェクトファイナンスを勉強しました。実際には、プロジェクトファイナンスに限らず、かなり多くを学ぶことができたので、視野を広げる有意義な期間だったと思っています。
起業に備えて特許を申請、並行してアメリカのVCで経験を積む
高野:そして、そのまま現地で働くことにしたんですね。
砂川:私は社費派遣だったこともあり、当初は帰国する予定でいました。ただ、eBay(イーベイ)のCEOだったメグ・ホイットマンの講演を聞いた際に、CtoCで様々なものが取引されている世界に衝撃を受けました。
そのときに、eBayのビジネスモデルと位置情報・時間の掛け合わせのビジネスアイディアを思いついたのですが、三菱商事では全く受け入れられませんでした。
ハ―バードでは評判がよかったこともあり、うまく進められないことに悶々としていましたが、最終的には、特許を出願しつつ、来たる起業に備えて、VCで働くことにしました。
高野:ハーバードでは、起業する人が多かったのでしょうか?
砂川:当時の日本に比べれば多かったかもしれません。40%が投資銀行、40%がコンサルティングファーム、10%が製造業などの一般的な大企業で、5%がPE/VC、残りの5%がスタートアップ・起業というような比率でしたね。
私自身、1,2年次の間の夏休みに投資銀行とコンサルティングファームでインターンをしていました。ただ、どちらもあまりフィットしませんでしたね。
私は毎日8時間は寝たいと思っていましたし、長時間働く自信もありませんでした。実際にやってみると、起業の方がよっぽど辛いと分かりましたが(笑)。
高野:起業家の皆さんはハードワークする方が多いですよね。
ちなみに、特許を先に出願して他で働くという方は珍しい気がしますが、元々特許を書いた経験があったのでしょうか?
砂川:自分には書いた経験がなかったので、マサチューセッツ工科大学(MIT)に留学していた、NTTの技術者にロブスターをご馳走して書いてもらいました(笑)。
その方から、特許の申請が通るまでに3年はかかると思うと言われたため、スタートアップの勉強をするためにVCに転職した、という運びですね。
このとき私が入社したGlobespan Capital PartnersというVCは、元々ジャフコアメリカだった会社です。主な仕事は、ファンドレイジングとLPのマネジメント、デューデリジェンスのお手伝いでしたね。
高野:そして、特許が取れるタイミングで帰国、起業されたわけですね。
砂川:はい。ロケーションバリューで事業をやっていた2005年~2012年の7年間、本当にあっという間でした。2007年のリーマンショックで全てのビジネスが止まった際は、文字通り真っ青になりました・・・。
そうした紆余曲折も経験しながら、2番目に始めたビジネスが順調に成長してきたタイミングで、NTTドコモさんからM&Aのオファーをいただきました。
実際にM&Aの契約書に判子を押したときは、複雑な感情になりましたね。不安の中で頑張ってくれた従業員に対して一つの答えが出せたという達成感と、自分の子どものような事業を手放すという味わったことのない感覚でした。
高野:苦労されつつも生み出したサービスですもんね・・・。
その後Googleを選んだのは何故だったのでしょうか?
砂川:その時すでに、もう1度起業しようと考えていたためです。起業する際に一番困るのは、エンジニア採用だと考えたいたので、最も優秀なエンジニアがいそうなGoogleを選びました。
高野:すでに次を考えていらっしゃったのですね。
自身の起業・エンジェル投資で感じた課題を解決するために起業
高野:実際に、スマートラウンドの創業に至ったきっかけについてもお聞かせください!
砂川:きっかけとしては、ロケーションバリューを売却後、自身もエンジェル投資家としてエンジェルのカンファレンスを主催したときの気づきが大きかったです。
多くのエンジェル投資家の方々と意見交換をさせていただいたのですが、意外とみなさん投資管理ができていない、大変だとおっしゃっていました。
一方で、私が投資させていただいている起業家に話を聞くと、資金調達にかなり多くの時間を割いている、と。投資家だけでなく、資金調達をする起業家も資金調達状況の管理には困っていたんですね。
そのため、この問題を両面で解決できるツールを作ればうまく行くのでは、と思ったのがスマートラウンドのビジネスを考えたきっかけですね。
高野:双方の管理ツールを考えるきっかけはご自身がエンジェル投資を始めたことにあったんですね。
砂川:最終的には、エンジェル仲間の後押しもありました。別の機会でエンジェルの仲間と飲んでいたら、やはり同じ話題になったんです。
いいツールがないか、という話の流れで、じゃあ砂川やればいいんじゃない?と話が進み、踏み切りました。
高野:たしかに、投資先の管理、大変ですよね・・・。
ある程度早い段階からサービスの構想はできていたのでしょうか?
砂川:実は、Googleをやめた段階では、別のプロダクトで起業するつもりでした。
当初、AlexaやGoogle Homeのようなボイスアシストサービスのミドルウェアを作ろうとしていたのですが、市場が成長する気配がなかったので、第二のアイディアを先に始めたものがスマートラウンドだったんです。
高野:そうだったんですね。
私はB Dash Campで砂川さん自身がピッチをされたと聞いたときに、新たな事業を立ち上げようとしていることを知りました。砂川さんはシリアルアントレプレナーとしてさらにチャレンジされていくのだな、とワクワクしたことを覚えています。
砂川:最初は2018年5月くらいに、紙芝居のような形でプロダクト構想を作っていました。100件くらいインタビューしてみた結果、ニーズがあることが分かったので、そこからさらにアクセルを踏んでいきましたね。
B Dash Campのピッチは、別のピッチコンテストでKlabの真田さんがSOICOでピッチの場に立ったのをみて、大先輩の真田さんがそこまでするなら自分も出ないといけない、と思いまして・・・。ただ、私の場合はあまりうまく行きませんでしたね。
高野:なるほど・・・。砂川さんのことは皆さんご存知でしょうから、見る目が厳しくなった可能性もあるかもしれませんね。
スマートラウンドの事業内容
起業家・投資家双方の資金管理を支援するサービス
高野:改めて、スマートラウンドの事業についておしえていただけますでしょうか?
砂川:はい。
スマートラウンドは起業家・投資家の資金調達・投資管理ツールです。起業家に対しては資金調達ラウンドや投資家を管理することで適切な資本政策を進める支援をします。
投資家に対しては、投資先の状況を可視化することで効率的に投資状況を管理する支援をしています。
高野:現在、競合のようなサービスはあるのでしょうか?
砂川:国内で良く比較されるのはFUNDBOARDさんでしょうか。でも当社でベンチマークしているサービスは、アメリカのCarta(カルタ)ですね。
Cartaは各社の資本政策をシェアするサービスです。今年、アンドリーセンが300億円を出資してユニコーン企業になっています。
アメリカの人にスマートラウンドのことを説明する際は、Cartaのようなサービスだと言うと、あぁなるほどね、となるような有名なサービスです。
他にも、Captable.ioや capshare.comのようなサービスがありますが、アメリカで投資しているVCの方は投資先について聞くと、Cartaの情報が送られてくることが多いですね。
高野:なるほど、アメリカでの先行事例もあるのですね。
砂川:はい。ただ、アメリカと日本で、ざっくり100倍くらいの市場の大きさの違いがあるのが現状です。
日本も投資が伸びているとはいえ、日本のベンチャー投資の市場はまだ未成熟だと思っています。
そのため、広義の意味で、スタートアップと投資家、士業の人を巻き込めるようなプラットフォームのようなものを作りたい、という考えの下でやっていますね。
一方で、狭義の意味でターゲットとしているのは、これから発足するスタートアップも含めた市場全般ではなく、まずはすでに出資が行われている部分。
すでに行われた投資に対して、月次報告を自動化できるようなものにしたいと思っています。
高野:すでに行われている投資の状況が分かれば、どういった投資家に投資してもらうべきか、反対にどんな企業に出資すべきか、といったことも見えてきそうですね。
砂川:「資本政策は逆戻りできない」とよく言いますよね。私は、早い段階からイグジットするまでのシナリオを描いておくことは非常に重要だと思います。
例えば、IPOする際には33.4%以上株式を持っていたいと考えているのであれば、「シリーズAでは○○円ほどのバリュエーションにして、シリーズBのときに△△円を調達しよう。だから、シードのタイミングでは〜〜にしておこう。」といった流れで逆算できます。
スマートラウンドが持つ強みの1つとして、このようにシナリオを複数作れることが挙げられると思います。
高野:ダウンラウンドすることも可能ですが、あらかじめ考えておくに越したことはないですよね。
砂川:これは私自身の経験でもあるのですが、資金調達は情報格差やリテラシーの差で大きく不利になりうる領域だと感じています。
ロケーションバリューは2005年当時、普通株で取引していたのですが、2006年に会社法が改正されて、優先株が取り入れられたときに感じました。
まず、普及するのにも2,3年の時間がかかりましたからね。シンジケートを理解していない人がいると、話がまとまらないので実際に活用されるまでは、かなり長い時間を要しました。
今となっては、種類株が増えたこともあり、その分バリエーションが高くなったと言われていますね。
ただ、ダウンサイドリスクをしっかりと考慮した 資本政策を組むことは今でも難しく、失敗事例も時折耳にします。
そうした環境を少しでも改善して、投資家・起業家が適切な情報を得て、最適な意思決定ができるような支援をしていきたいですね。
高野:今後も応援しております!
それでは、前半はここまでにして、後半は冨田さんもお招きして、冨田さんがスマートラウンドにジョインした背景やお二人のキャリア観についてお伺いさせていただければと思います。
▼後半の記事はこちら▼
https://keyplayers.jp/archives/15346/
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