インタビュー

リクルートに事業売却を経験。起業家にM&Aのアドバイスを行う松本淳さんの売却事例

キープレイヤーズでは皆様のキャリアの参考になればと思い、成功している経営者やビジネスパーソンの方にインタビューをさせていただいています!

今回は、私のインテリジェンスの先輩でもある松本淳さんから、ファーストキャリアの選択からリクルートに売却するまでのエピソードをお伺いしました。松本さんは売却後も会社・NPOを立ち上げているソーシャル・シリアルアントレプレナーです。

社会起業・連続起業ともに興味のある方は少なくないかと思います。起業・売却の裏話まで赤裸々にお話いただいていますので、ぜひご覧くださいませ!

代表理事 松本 淳 氏

【経歴】
大阪市出身、1997年同志社大学法学部卒業、株式会社インテリジェンスに入社。人材紹介事業の新規立ち上げに携わり、事業戦略立案・WEBマーケティング・ITシステム企画などを担当。2003年に求人検索エンジン事業の株式会社ジョブダイレクトを創業。2007年、リクルートからM&A提案を受け、創業から4年で事業譲渡。現在は、株式会社ブライスアンドカンパニー代表取締役社長、一般社団法人アースメディア代表理事を務める。

インテリジェンス入社〜起業するまで

学生時代はESSに所属。バックパッカーとして海外のダイナミックさに触れた

高野:本日は松本淳さんに、リクルートに事業売却するまでのエピソードとあまり聞くことのない詳細をお伺いできればと思います!

ちなみに、松本さんは私のインテリジェンス時代の大先輩であります。

松本:私の方が2年くらい先に入社しているんですかね?1997年入社です。

高野:私は1999年入社なので、2年先輩ですね。
当時はなかなか激しい企業だったと思っておりますが(笑)、松本さんはなぜインテリジェンスを選んだのでしょうか?

松本:今は労働環境はだいぶ整備されましたよね(笑)。

私は、大学生のときにバックパッカーをやっていて、アジアを回っていたことが大きく関係していると思います。アジアのダイナミックな環境・雰囲気を見て、一生、普通のサラリーマンじゃつまらないなあ、と思っていました。

当時、ESSで英語をやっていて、幹部で人事をやっていたこともあり、HRで起業したいな、と考えていました。そうなると、基本的にリクルートに行くしかない、と考えていました。OB訪問もたくさんさせていただきました。

インテリジェンスの尖ったメッセージに興味を持って入社

松本:その中に面白いOBの方に「起業の勉強するなら、本当のベンチャー企業に行った方がいいよ。リクルートはもう大企業だから、やめたほうがいい」と言われましたね。
そして、「どうもリクルートのOBが作ったインテリジェンスという会社の方がよさそうだよ?」と。

そして、どういう巡り合わせか、その翌週にインテリジェンスの採用DMがポストに届くんですよ。当時はまだ、紙DMが家に届く時代でした。

そこに書いてあったのが、「3年以内にやめる人だけ募集します」
当時かなり珍しいメッセージだったので、面白そうだから行ってみようと思ったんですよね。

高野:かなり尖ったメッセージを発していて、勢いがありましたね。

松本:大阪の説明会に行ってみたら、社長が若くてイケメンで勢いがあって・・・会社の平均年齢25歳くらいで、みんな同い年みたいなものでしたよね。確かにこの方が色々できるな、と思いました。

その後受けた選考はトントンと進み、入社することになりました。

高野:同期入社の方は何名くらいいたのでしょうか?

松本:同期は40人でしたね。ちなみに、その中の10数人は起業しているので、採用メッセージがしっかり響いて、ターゲットが入社していますよね。

同期の中に、サイバーエージェント社長の藤田さんがいたのですが、彼は新卒1年目、7ヶ月で辞めて起業しました。

私は5年くらいインテリジェンスにいたのですが、他の起業した同期も、彼の頑張りを受けて、後に続いたという感じですね。

最初は営業で思うように成績が出なかった

高野:松本さんがインテリジェンスにいた頃はどんな働きだったのでしょうか。

松本:社会人6年目の2003年に起業したので、そのときまでのお話をしますね。

インテリジェンスでは1年目から紹介事業の立ち上げをやりました。ただ、営業時代は売れなくて辛い期間もありましたね。

高野:松本さんにもそういう時期があったんですね。

松本:当時、リクルート人材センターというのが唯一大手で、他は年齢層の高い方がほとんどの時代でした。人を紹介するビジネスは怪しい、という雰囲気が当時はあったと思います。しかも、新卒が営業をかけて、スカウティングもして、とやっているわけです。新卒がきて、何ができるの?と言われるようなこともありました。

また、当時は日系企業はまともに人を採用していなかったので、ゴールドマンサックスなどの外資系企業に営業に行ったりしていたのですが、思うような結果は残せませんでした。それでも売れてる人はいたので、上からも、こいつはダメだな、という感じでみられていたと思います。

成績が伸びなかったので、一回企画に異動しろ、ということになり、バックオフィス・企画に移ることになりました。これが私の中では一つの転機だったと思います。

企画部署で経験したITの仕事が転機に

高野:そこではどんな仕事をされたのでしょうか?

松本:ハガキを使ってエントリーしてもらっていたようなところから、ネットを使ったビジネスをやってみようということで、その事業企画をしていました。当時、色々なご縁をいただいて、サイバーエージェントやライブドアさんとも仕事をさせていただいて勉強することができました。

そういった起業家と接して勉強できたのが自分自身の起業につながったと思うので、やはり自分の身を置く環境はすごく大事だな、と思います。

高野:そんな立ち上げの経験もあって、実際に自分で会社を立ち上げることになった、ということですね。

松本:はい。インテリジェンスの尖ったメッセージに惹かれて入ったのが最初でしたが、自分のエッジを立てられたという意味でも、いい選択をしたなあと思っています。

高野:いい意味で変わった人は多かったですよね。

起業からリクルートへ売却に到るまで

Indeedのような求人専門の検索エンジンサービスでIPOを目指し起業

高野:どんな事業で起業されたのでしょうか?

松本:一言でいうと、求人専門の検索エンジンサービスを手がけました。今のIndeedのようなものといえばピンと来る方もいるかもしれません。
実は、Indeedと同じ時期に創業しているんですが、起業した数ヶ月後にIndeedという似たサービスがアメリカであるよ、と聞いて知りました。

当時は、クローリングというのが様々な分野に広まっていた中で、求人分野でも、ということで始めました。

高野:最初から順調に進んだのでしょうか?

松本:大手のサービスを否定するというか、不足している部分に入り込むという方法で営業していますね。

例えば、求人広告だと掲載できる求人は限られていますが、私たちは企業のWebサイトから直接拾ってくるので、量が違いますよ、という形で利便性を訴求していました。

高野:最初に認知してもらうまでが大変かと思いますが、そこはうまく行ったんでしょうか。

松本:一定、うまくいったのではないかと思います。SEOという概念も出始めの頃だったので、内部リンクや被リンクのスキームをうまく組めんで、検索上位に上げることができました。

相手もリンクが欲しいので、「相互リンクしましょう」というのが頻繁にやりとりされていましたね。私たちは、案件がたくさんあるので、たくさんリンクが集まり一気に立ち上げることができました。

10社くらいをメインに広告枠を買ってもらい、営業していくような感じでやっていましたね。

高野:事業の数値もうまく上がっていそうですね。

松本:1年目のうちに単月黒字を達成して、2年からは完全黒字でしたね。社員もどんどん増えて、ちゃんとしたオフィスを構えていました。
IPOを目指していたので証券会社を決めて、監査も早い段階から入れていました。

大手企業と組むことによる事業の拡大に期待し、売却に梶を切る

高野:そういった中で、どうして売却を考えるようになったのでしょうか?

松本:先ほどのSEOの話に戻るのですが、リンクをお金で買うようなSEO手法が出てきました。大手企業がガンガン買って、検索に強くなっていくので、3期目くらいのときに、少し苦しい局面を迎えました。

それまでIPO目指してやってきていたので、VCに出資してもらって増資して、自分たちで事業をもう一度加速させようということも考えていました。

ただ、そこで改めて調達をしたときに考えると、SEOのリスクなども考慮して、IPOを目指すことが本当に会社にとっていいのか、というのを考え直したんですね。

結果、大手企業さんの資金力をお借りして事業を進めた方が、社員の待遇もよくなるし、ビジネスもさらに早く、大きく展開できる可能性が高いと思って、売却に舵を切りました。

高野:なるほど。
ちなみに、スタートアップをこれからするという方に向けて、踏み込んで話を聞きたいのですが、創業時の調達はどうされていたのでしょうか?

松本:オープンソース・クラウドというようなシステムがないときなので、全て自前でサーバーなども持たないといけない時代でした。それが数百万円かかったりしました。

私の場合は、自分が代表で600万円くらい親戚にお金を借りたりしながら創業しました。そのときに、何人かの方にエンジェル投資もしてもらっていましたね。そうした支援もいただいたおかげもあって、きちんと立ち上がりましたね。

高野:そうだったんですね。

リクルートを売却先に選んだ経緯・エピソード

収益面に限らない総合性を一番高く評価してくれたリクルートに売却

高野:最終的な売却先としては、リクルートを選びましたね。
これは何が決め手だったのでしょうか?

松本:HR事業会社さんからもたくさんオファーをいただいていたのですが、最終的には他の領域にも声をかけて、可能性を探っていました。

最終的にはリクルートと商社系のネット子会社の2社に絞っていました。そこで決め手となったのは優先順位づけの一致ですね。

商社系の会社さんは、期待することとして収益面を最優先されていて、SEO上の課題もあり少し評価が厳しくなりました。

一方で、リクルートさんは、ビジネスモデルや技術、ノウハウを高く評価していただけたことが、最後リクルートさんに決めた理由ですね。

ストックオプションを発行していた分は、社員に自分の売却代金から支払い

高野:ぶっちゃけると、いくらくらいで売却されたんですか?

松本:一応、ロックアップも解除され10年経ったとはいえ、守秘義務のようなものがあるので、はっきりは言えません。
ただ、なんとなく伝わっているところでお話をすると、10億円は行ってない、くらいの規模で考えてもらって大きく相違ないと思います。

高野:それは現金で入ってくるものだったのでしょうか?

松本:おお、踏み込みますね(笑)。事例を知りたい方が多いかと思うので、お話します。

私は2年間のロックアップがあり、2年後にあらかじめ決めた金額を現金でもらう、という契約でした。社長はリクルートさんから来ることになったのですが、2年間は役員、専務として残ってください、という契約の内容でしたね。

なので、2年間は私は手をつけられなかったのですが、他の役員・社員は退職するタイミングで換金できたようです。

高野:ストックオプションは発行していなかったのですか?

松本:オプションは実は、私の株式売却時の代金から、当時の価格に相当する金額を、現金で提供しました。

高野:契約としては、支払わなくてもうよかったものをお支払いした、ということですね。

松本:発行して頑張ってくれていた社員もたくさんいましたからね。それにはしっかり報いたいという気持ちが強かったので、自然とそうしていました。

高野:松本さんのお人柄が出ていますね。

社員に隠密で進めることの精神的な苦労は大きい

松本:ただ、交渉自体は、守秘義務を守るために、社員には隠密に交渉を進めるのが大変でしたね。精神的にかなり疲労しました。

売却先を探すところから実際の売却のリリースまで、DDなども含めると、1年近くの時間がかかりました。あるエンジェル投資家の方から紹介を受けて、M&Aに詳しい会計事務所にアドバイスをもらいながら進めていました。

それでも、急に非公開の会議が増えたり、一向に契約に進まない営業アポが入っていたりしていたら、なんとなく伝わってしまうものがあるみたいですね。怪しいな?と思っていた社員もいたみたいです。

ただ、他の人には相談できないので、アドバイザリーの方の存在は大きかったですね。

高野:苦楽をともにしてきたメンバーに言えずに、粛々と進めるのは精神的に苦しいですよね・・・。

これから起業・エグジットを目指す起業家の方へ

売却は自分の頑張りを市場が評価してくれる機会

高野:総じて、松本さんにとって、売却はどんな機会だったでしょうか?

松本:そうですね…。
自分にとっては、起業家としてやってきたことを、市場の物差しで評価してもらえるいい機会だったなと思います。

基本的に、経営をしていると自分で目標を決めて、それを着実に達成していくことになるので、外部から評価される機会は少なくなります。

ただ、売却するタイミングでは、他の人から自分が今までやってきたことを、市場がまとめて評価してくれます。それまでの自分の努力が認められるというのは非常に嬉しかったですね。

高野:市場から客観的に評価してもらえるのは嬉しいことですよね。

社会起業家としてご活躍。M&Aのアドバイスも実施

高野:売却後はどのようにされているのでしょうか?

松本:売却直後は喪失感がすごくて、アイデンティティを失ったような感覚でした。

融資を受けた際に、会社で返済できない場合は個人保証で代表者が責任を取らないといけない形で融資を受けていました。その金額が、借り入れで5000万円、サーバーのリースなども諸々含めると、1億円くらいの個人保証があったのはプレッシャーでした。

そうしたプレッシャーもなくなったので、半年くらいセミリタイヤっぽくやろうと思っていたのですが、私にはできなかったですね。本を読んだりしていても、2週間ほどで飽きてしまいました。自由な生活って、いざなってみてもすぐに飽きるんだな、と思いましたね。

なので、売却した2週間後には新しく個人会社を立ち上げていました。前からやりたかったアジアでの非営利のNGOの活動をビジネスの知見を活かしてできるのは、やっぱり起業・売却してよかったな、と思っています。

高野:今は、社会起業したいという方も多いですよね。
そういう方にとっても、一つのモデルケースになるのではないかと思います。

松本:収益を上げ方をノウハウとして持って、非営利な団体を持続可能にする仕組みを考えられるという観点から、ビジネスや起業を経験するのはいいことではないかと思います。

売却するときは会社自体を営業することになるので、そうした経験もあると団体として活動をどうアピールしていくか、というのもよい経験になりました。

高野:非常に参考になります。
最近は、起業・売却したいという方へのアドバイスも始めたみたいですね。

松本:はい。Twitterも始めたので、お気軽に相談してもらえればと思います。

高野:ぜひこちらのアカウントをフォローして、DMから相談してみてください!

Twitter:@Jn_Matsumoto

Facebook:松本 淳

本日はありがとうございました。

取材あとがき

控えめながらも、赤裸々にお話いただきました。決断の一つひとつに松本さんの豊富な知識やお人柄が表れており、非常に勉強になりました。松本さん、ありがとうございました!

M&A/事業の相談にも親身に乗ってくれると思いますし、ここには載せきれなかった知見をたくさんお持ちです。ぜひ連絡してみてください!

 

高野 秀敏

1999年に株式会社インテリジェンスへ入社。2005年に株式会社キープレイヤーズを設立。3000名以上の経営者の相談と、10000名以上の個人のキャリアカウンセリングを行う。また、55社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を国内・シリコンバレー・バングラデシュで実行。キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。転職・採用、投資のご相談は Facebook Messenger、もしくはLINEからご連絡くださいませ。
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