インタビュー

【複業家 元榮太一郎さん書籍出版記念】代表弁護士/代表取締役会長/国会議員のパラレルワークの極意とは

キープレイヤーズの企業の代表インタビュー。ついに、弁護士法人法律事務所オーセンスの代表弁護士、弁護士ドットコム株式会社の代表取締役会長、参議院議員のパラレルワークで大活躍されている、元榮太一郎さんを取材させていただきました。

複業する方が増えてきてはいますが、活躍している方がどんな経緯でパラレルワークするようになったのか、気になりますよね。私以外にも、

・複業始めてみたいけど、会社に怒られないかな・・・。
・複業に踏み出すのが不安だけど、どんな人が複業に向いているんだろう。
・複業始めてみたけど、案件を増やす余裕がない・・・。どうやったらパラレルワークで稼げるの?
・パートナーが複業を始めると言うけど、仕事が大変で体調を崩さないか不安・・・。

こんな不安や疑問を抱えている人は多いのではないかと思います。

また、実は私は多くの方には複業を積極的にはオススメしていません。その辺りの考えも元榮さんにぶつけてみましたので、複業推進派の方も、反対派の人もぜひ読んでいただけたらと思います!

そこで今回は、書籍出版記念も兼ねて、元榮さんのキャリアをお伺いした上で、複業する際にぶつかる問題を乗り越え、「複業」で成功する秘訣について、お伺いしてきました!

 

【2019年11月14日出版】元榮太一郎さんの著書『「複業」で成功する』

高野:本日は参議院議員であり、法律事務所オーセンスの代表であり、弁護士ドットコムの代表である、元榮太一郎さんを取材させていただきます!現在に至るまでの経緯や複業やキャリアアップのポイントについて、お伺いできればと考えております。

元榮さんは2019年11月14日に著書『「複業」で成功する』を新潮新書から出版されました!結構攻めたタイトルですよね?

元榮:いつか新潮さんで本を出したい!と思っていたので嬉しいですね。
タイトルは少し攻めてますが、新潮社の編集さんがこのぐらい言い切った方が読者の方に手に取っていただきやすいんじゃない?と仰るので、少し思い切ったタイトルにしてみました(笑)。
僕が成功したかどうかって言うのは横に置いておきましょう・・・。

高野:大成功してるじゃないですか(笑)!
ちなみに、同じ「ふくぎょう」でも、複数の「複」とサブの「副」と2つありますよね?これは違いがあるのでしょうか?

元榮:実はそれぞれ、ちゃんと意味があります。

私の著書で採用した、複数の「複」の複業というのはメインが複数あることも含めているわけです。サブの「副」を使った副業は、本業があってサブで仕事をする、という副業の話だと思います。

『「複業」で成功する』は副業も含みつつ、いくつかの「業」を掛け合わせながらそれぞれの価値を最大化することが、これからの仕事の一つの在り方になってくるんじゃないかなという提起をしております。

高野:なるほど。私も読ませていただきましたが、この本にはそのポイント・エッセンスが詰まっているので、ぜひみなさん手にとっていただきたいな、と思います。

 

弁護士・上場企業経営者・国会議員3つの肩書きを持つ元榮太一郎さんのキャリア

サッカー漬けの毎日から、ドラマ・自身の交通事故を経て弁護士を志す

高野:参議院議員、法律事務所代表、上場企業の代表と3つの肩書きを持つ方って、これまでにおそらく元榮さんしかいないですよね。そもそも、なぜこのようなキャリアになったのか、まずお伺いできますか?

元榮:結論から言うと、まさかパラレルキャリアを歩むような人生になるとは、全く思っていなかったです。

もともとは弁護士になりたくてしょうがなかったんですよね。高校生の時に、そろそろ大学の進学先を考えなくてはいけない時のことでした。自分は文系でどんな仕事があるのかな?と思った時に、弁護士ドラマを見ました。夕方ぐらいにやっていた、「都会の森」という高嶋政伸さん主演ドラマの再放送でしたね。弁護士ってかっこいいな、となったのがきっかけです。

その後、自分が大学生のときに、自動車の物損事故で弁護士に依頼することになりました。自分の乗っている車と相手の車がぶつかってしまったのですが、私は任意保険という自動車保険に入っていなかったんですね。それで示談交渉で困っていた時に、助けてくれた弁護士さんを見て、やっぱりかっこいいな!と。

そこから、本気で弁護士を目指すようになりました。弁護士として、一生頑張っていこう、と20代後半くらいまでは思ってましたね。

親に止められながらも、サッカーで培ったストイックさで司法試験に合格

高野:憧れるきっかけがあったんですね。それでも、弁護士はかなり狭き門ですよね。

元榮:大変でしたね。親からも止められましたし、「太一郎、人には向き不向きがあるんだよ。あなたはずっとサッカーしかやってなかったでしょ…。」と(笑)。

高野:大学までサッカーをされていたのでしょうか?

元榮:そうですね!小・中・高・大、体育会のサッカー部で活動していました。

当時の体育会は授業に行くと怒られるんですよね(笑)。今だと本当に問題になりそうなスポーツマンシップ(?)に則った生活を送っていました。

大学のサッカー部は2年生の時に退部して、その後はアルバイト三昧の毎日でした。弁護士を志してからも親は反対していたのですが、大学を卒業してから司法試験を受験して、2回目で通過できました。私の場合は、幸運だったところもあると思います。

高野:幸運と仰いますが、書籍にそのときの努力の凄さが書かれていましたよね。トイレに1日1回しか行かないというのは衝撃でした・・・。

元榮:体育会サッカー部で身につけた根性やストイックさは、司法試験受験に活きたと思いますね。1日1回しかトイレに行かないとか、1日200円しか使わないとか・・・。そのためには、お金を節約するために昼ご飯を食べない生活をしていました。

自分を徹底的に追い込んだ結果、合格できたとも言えますね。

高野:現在は司法試験受験者数が減ってきていると聞きますが、今よりも受験してる人数も多く、難しかったのではないでしょうか?

元榮:当時の合格率は2%で、本当に屍の上を乗り越えてというような状況でしたね。

私も、春先ぐらいまでは司法試験予備校に通っていたのですが、予備校はキャンパスと同じくらい華やかでした。ただ、択一試験というのが5月にありまして、これに合格した人だけが、論文試験を受けられるんですね。

択一試験を通るというのは、司法試験に合格するまでの1つ目の高いハードルです。それが終わった途端、教室に残ったのは仙人のような人たちだけでしたね。

司法試験の平均合格年齢は約29歳だったのですが、「あ、司法試験の受験生だな」という感じになりました。そういう選抜されたメンバーだけになって、非常に厳しい競争の試験なんだな、というのを改めて感じたのを覚えています。その中でなんとか勝ち残った受験でしたね。

アンダーソン・毛利法律事務所で担当したM&A案件がきっかけに

高野:そして、試験に合格し、事務所に就職・独立と進んでいくわけですね?

元榮:そうですね。
アンダーソン・毛利法律事務所(現アンダーソン・毛利・友常法律事務所)という、企業法務を扱う法律事務所に就職が決まり、英語も使って国際企業法務の世界も扱う環境に進みました。自分も、留学を経験して、企業法務弁護士として国境を跨いだ仕事をして、将来はパートナーになりたいなと、大手の法律事務所に入る多くの方と近い考えでスタートしました。

ところが、入って丸2年経った2003年の秋頃、大きな転機がありました。上場ネットベンチャー企業が、あるネット証券企業を買収する案件のM&Aチームに加わることとなりました。そこで初めて上場起業家という存在、ネットの無限大の可能性を知りました。

当時、Yahoo!BBが街角で、赤い紙袋に入れた無料のモデムを配っていた時代です。インターネットがこれからさらに便利になり、高速大容量化しようとしている頃ですね。

自分自身もこんな風にチャレンジしてみたいと思って、初めて起業しようと考えました。そこから少しずつパラレルキャリア化していきました。

弁護士ドットコム創業。元榮太一郎さんのパラレルキャリアの始まり

高野:起業したのは、何年後のことだったのでしょうか?

元榮:それから2年弱後の2005年の1月に起業しました。弁護士ドットコムという、法律について困ってる人と弁護士をインターネットで繋ぐ、食べログの弁護士版のようなサービスで創業しました。

弁護士ドットコム一本でやっていこうと考えていたので、この時もまだ複業するつもりはなかったですね。しかし、1年間頑張ったんですが、やっぱりネットメディアはすぐには成長・収益化しませんでした。自分自身が起業のために貯めたり、借りたりしたお金、総額500万円が1年間で溶けてしまいました。これはやばいぞ、と。

しかし、弁護士ドットコムは当時から、ユーザーさんからの評価が非常に高くて、「素晴らしい弁護士さんと出会えました、ありがとうございます。」というような、メッセージがわざわざサイトに寄せられるようになっていたんです。そのため、社会的意義やユーザー価値はあるなと、確信できていました。

そのとき「そうだ、自分は弁護士だ!」と思い立ち、弁護士業でしっかりと弁護士として役に立って報酬をいただき、その軍資金を弁護士ドットコムの運営資金に充てるようになりました。

なんとかこの「弁護士ドットコム」の灯を消さないように頑張ろうと、弁護士ドットコムと法律事務所の両方に本気で取り組むというスタイルが始まりました。これが元榮太一郎の複業の始まりです。

高野:この話、私も聞いたことがありませんでした・・・。

元榮:そうですね、あまり話す機会もなかったのですが、この本はいい機会だなと思い、その辺りも赤裸々に書いています。

高野:これから起業や複業を考えている方は、やはり必読ですね。

幼い頃からの目標「国会議員」にゼロベースでのチャレンジ

高野:そうは言っても、そこから上場させるというのも至難の業です。上場したくて準備しても、多くは上場できない中でやりきったら、もう新しい事やらない方も多いじゃないですか。

しかも同じ先生と言えど、弁護士の世界と政治の世界は全然違うじゃないですか。どうしてやろうと考えたのでしょうか?

元榮:上場すると、自分の人生を改めて考えますよね。私の場合はそのときに「次は政治家もキャリアにしよう」と思えました。

実は、最も人生のもっとも古い目標は、「政治家になりたい」というものだったんです。社会をよりよく変革する役割として真先に思い浮かぶのは政治家です。一度きりの人生。世界をよりよく変えるインパクトを起こしたいと考えて生きてきました。

起業家という存在も社会を変えたいというような思いだからこそ、辛い時期も踏ん張れたわけですが、政治家も社会を変えたいという思いは根底では一緒です。ただ、アプローチや向き合う問題が違います。

そこで、今だったら昔の漠然とした目標だった政治家、国会議員という立場から、社会を良くするための活動に挑戦する権利くらいはいただけるんじゃないか、と思って、踏み出しました。

とはいえ、地盤・看板・鞄(3バン)まるで無い私でした。その時に私の人生訓の1つとしている「何か迷った時は、やった後悔よりもやらない後悔の方が大きい、だからやりたいと思ったらやる」という言葉が浮かんできました。今回もやらずに後悔するくらいなら、やって後悔しようと。そうして、国政の道を志すようになりましたね。

高野:政界には、お父さまが政治の世界にいて、それを小さい頃から見ていて…。というケースが多そうじゃないですか。そうではなく、ベンチャーを企業するかのように割とゼロベースからトライされたんですね。

元榮:わりと、どころか、完全なゼロベースですね。

いざ活動を始めるときも一つの起業だと思って、今取材の場でもサポートしてくれている会長室兼広報室の後藤というメンバーも、これは三度目の企業だ!さぁ楽しむんだ!と、言って声を掛け、メンバーに参加してくれました。まさに、ベンチャー企業の創業メンバーを集める時のように、「血湧き肉躍る体験を共にできるって、こんなに楽しい事ないよな」と、一人ずつ仲間を集めました。

なので、私にとっては本当に三度目の起業のような気持ちでやりましたね。しかし、何回やっても起業というのは大変ですね(笑)。

高野:元榮さんにとっても、毎回チャレンジというわけですね。

目標に到達するための手段にはこだわらない。自分にできることをやりきる

高野:あと、これは一般論として気になっていたのですが、弁護士の先生って先生って呼ばれるくらいなので、あまり頭を下げない仕事じゃないですか。会社の社長も確かにそういう場面もありますけど、選挙に比べると少ないですよね。その中で、選挙に出るとなると、投票してくださいと頭を下げるばかりじゃないですか。そういった点はあんまり気にならなかったですか?

元榮:テレビ番組に出演していた、とある弁護士の言葉で、人に頭を下げるのが嫌だから弁護士になったと聞いたことがあります。私は特に意識していませんでしたが、弁護士業界は確かにそういう一面もあったかもしれません。

私自身、そんなに好き好んで頭を下げるわけでも、趣味でももちろんありません。ただ、非常に有難い人生を送らせていただいているな、と思っていますし、やっぱり社会に何か恩返ししていかなきゃいけないんじゃないか、という気持ちがあります。

そう考えたときに、ビジネスで一番社会の枠組みを変えられるのは起業家ですが、そもそもそういう制度や仕組み、国の在り方・方向性を決めていく役割を担うのは、政治家です。ビジネスだけでなく、政治を通しても恩返しをしていきたいというのが政治家を志したのが政治家人生の始まりです。その目的を達成するために、街角に立って頭を下げるとかの一つひとつの手段は気にならないですね。

高野:なるほど。ありがとうございます。
日本では他に誰もいないどころか、日本初のような方なので、どんな心持ちなのか、聞かせていただきました。

 

複業する際に生まれる葛藤とどう向き合うべきか

「石の上にも三年」VS「思い立ったが吉日

高野:キャリアに関連して、良く若手の方からいつも聞かれる質問で、著作の中でも意見を述べられていたので、お伺いしたいことがあります。

「石の上にも三年」という考えにも基づいて、元榮さん自身はアンダーソン毛利を3年間勤めてから独立するキャリアだったと思います。一方で、「思い立ったが吉日」で、すぐに独立した方がいいという意見もあります。この辺りはどのようにお考えでしょうか?

元榮:どうしてもやりたいことがあるのなら、今すぐ行動に移した方がいいとは思います。

ただ、基本的には昔の人は良く言ったもので、3年くらいしないと物事は見えてこないよということも分かる部分があるんですよね。会社勤めの場合も、3年くらい居ることによって、会社の良いところも課題も含めて色んなことが見えてくることが多いです。そこは指数関数的に、3年ぐらい経って一気に理解度が高まるのだと思います。

最初の数か月・1年で色んな事があるかもしれないですが、特に新しい始めたときは大体のことが大変じゃないですか。大変だから挫けそうになるんだけど、3年間歯を食いしばって、見える景色までは我慢してもらいたい、というのは真実の一つかなと思いますね。

高野:そうですね。色々な捉え方もある中で、3年やる”時間”というよりは、ちゃんとその中で結果を出す”密度”が大切だよという話もありますし。投げ出さずにやった方が良いということも、もちろんあると思いますしね。

私は思考停止するのが良くないと思っていて、3年いなきゃいけないし、なんかよく分かんないけど3年いなきゃいけない、と思考停止するのはもったいないんじゃないかな、と。

元榮:それは違いますね。3年いればいいことがあるのではなくて、3年の活かし方は間違いなく大事なので。

どうしてもやりたいことがあるという前向きな理由の人は、もう今すぐにでも挑戦したらいいと思いますね。ただ、後ろ向きな状態で、なんか辛いな大変だな、と思う人は、やはりもっともっとこの環境を知ろうと、何年か一生懸命目を逸らさずにとにかく頑張ってみた方がいい。

とにかくいるじゃなくて、やっぱりそこで与えられた仕事を一所懸命頑張ってみることで、最初の頃には見えなかったものが見つけられるかもしれない、ということを考えると、「石の上にも三年」という話があるのだと思います。

「本業一本」VS「複業」

高野:では、やりたいことが見つかったので、複業やってみよう!といきたいところですが、実は私は多くの方には複業をあまり推奨していません。
「複業すべきか本業一本で行くべきか」という議論は、今も続いていますので、ぜひその点について掘り下げていきたいです!

元榮:私は、今回のような本を書いていますが、結論どっちでもいいと思うんですよね。自分自身が、こうやりたいなという方向で考えてもらうことが大切だと思います。

ただ、今までは副業はダメです、社内規定にも就業規則にも副業禁止と書かれていたので、どちらかを選べるような社会の雰囲気ではありませんでした。今は社会が変わり選べるようになったので、一つの考え方として提起したいという想いで執筆しました。

なので、本業一筋も良いと思います。しかしながら、何らか自分の今まで得たそういうスキルを活かして、他の所でもチャレンジしてみる、例えば起業してみるとか、ルールに則った上で、そういう働き方をしてみるのもいいんじゃないかなと思いますね。

なので、改めて結論を言うと、自分がやりたいかどうかっていうことを直感的にもう一回訊ねてみる。その答えが一番確度の高い選択肢になるんじゃないかなと思いますね。

高野:なるほど。
社長さんとお話していると、こういう話もあります。社長からすると、です。メンバーが「副業やりたいです」と言っていても「でもお前は今のウチの仕事もなんかちょっとできてないんじゃないか?…」というケースもあるじゃないですか。
私も同様に思うケースが多いのですが、元榮さんはどうお考えですか?

元榮:それは会社経営者の立場だから言うわけじゃないですけど、まだ早いと思いますよね。

中途半端な人が現実逃避的に副業やりたいということも、人によってはありますよね。この場合、副業したところで別の壁に当たることが多いので、やって初めて分かることもあるかもしれませんが、基本的にはおすすめしないです。

しっかりと今一つの仕事の役割を果たし、確固たる評価を受けている方が、更に裾野を広げるための応用編として取り組むのがおすすめだと私は思いますね。

高野:では、そのポイントは似た考えですね。
私も、本業で何かコアなスキルを磨いて、それが今の会社でも評価されているから、友達のスタートアップやベンチャーから手伝ってほしいという話が来るものだと思っています。そういう流れなら良いのかなと思いますけど、自分が磨いてる武器が無い状態で横道に逸れて、いつまでも強みが伸びないのは避けた方がよく、これは重要なポイントかな?と思っています。

会社にバレたらまずそうだけど、本当に副業していいの?

高野:では、そうしたポイントをクリアして、複業をやりたい!となったとします。

私も転職のお仕事をさせていただいていると、「副業が会社で禁止されてるんですけど、どうしたらいいですか?」「次の会社は副業OKか確認して下さい。」と、良く質問いただきます。そもそも、副業ってしてもいいんですよね?

元榮:副業は、本業に支障がない限りにおいては認められるということになっています。これはあくまで「原則」であり、若干例外もあります。そのため、社内規定や就業規則で副業を禁止します、と書いてあるのでそれを根拠に「副業はダメですよ」と会社が言うケースが今までは一般的でした。

ただ、過去の裁判例でも、そんなのおかしいよと争った従業員が勝訴を勝ち取ったケースもあります。そのような中で裁判所が示した一つのルールを簡単に言うと、「今、本業の仕事に支障がない範囲であれば、副業はOKですよ」ということになります。

そういった意味では、「本業をしっかり全うするんだったら、副業は大丈夫です」というのが、一つの結論として出ていますね。

高野:そうですよね。
会社をやっている経営者の立場からすると、自分の会社に集中して欲しいところから、ウチは副業禁止してます、という時代背景があったっていうことなんですよね。

元榮:そうですね。副業があると、本業が疎かになって期待しているパフォーマンスを発揮してもらえないんじゃないか、という心配は、正直経営者である私自身もまだ残っています。

ただ、人事評価や目標管理制度の中で、しっかりと目標を達成しているかどうかを見ていく評価システム・制度さえ確立していれば、本業を疎かにしているかしていないか、というのは分かります。そういう企業規模・体制になって来た弁護士ドットコムや法律事務所オーセンスにおいては、そこまで心配ではなくなってはいます。

そういう意味では、きちんとパフォーマンスを評価する仕組みを作ることは、従業員と会社双方のためになりますよね。ただ、心配といえば心配ですよね。

高野:政府としても副業は推奨しているような感じなんですか?

元榮:そうですね。副業・兼業っていうのをしっかり後押ししていこうと、働き方改革の一環として政府が後押しをしているところです。

やはり未曽有の人手不足の中、本当に危機的な人手不足に陥っている会社に副業・兼業としてサポートするだけで、その会社が廃業しなくて済むということもあります。そうした形で一人ひとりの人間のリソースを、人手不足の解消にも繋がる形で社会に活かしてもらいたいですよね。そういうメッセージが、今回の働き方改革でのいわゆる副業解禁、そして支援ということに繋がっているのだと思います。

高野:より本業で生産性高く結果を出してもらいつつ、早く帰っている分、プラスアルファできる方はやっていこうという事ですよね。

間違った捉え方をしてしまうと、こっちも中途半端、あっちも中途半端となってしまいますからね。

元榮:どっちつかずになってしまうのは、気を付けてもらいたいと思いますね。

可処分時間の効率性・生産性の最大化のために、睡眠も重要視

高野:他に、複業をやっていく上で、元榮さんから見たポイントや気をつけていることはありますか?

元榮:気を付けていることは、やはり時間管理とかですね。

高野:大変ですよね。基本365日モードでしょうから。

元榮:365日モードでやっていますね。
複業やってる分だけ、仕事の絶対量が増える可能性もあります。ただ、1日は有限ですから、その分、時間の生産性を高めることは常に気にしていますね。

高野:もう元榮さんの働き方は、中国で996(AM9時~PM9時×週6日)と言われるまで働くどころではないですよね。

元榮:ただ、時間をコントロール・調整しながら、睡眠時間もしっかり確保しています。もうFitbitで確認していますけど、大体7時間は寝ますよ。

睡眠は大事だと思いますね。ジェフ・ベゾス氏が去年辺りに8時間睡眠をカミングアウトしましたよね。そして、寝不足で経営をすることは酔っぱらって経営することと同義だと。
『ハフィントン・ポスト』の創設者アリアナ・ハフィントン氏も8時間とカミングアウトしました。

ショートスリーパーが礼賛されるような傾向もありますが、私は自分の素直な心と会話したときに、7~8時間寝てる自分の方がイケてると思うんですよ。そうずっと思っていたのでベゾス氏のカミングアウトを聞いて、私もちゃんと7時間睡眠だと伝えています。

高野:睡眠も大事だと。みなさん、7時間寝ましょう。

元榮:7時間睡眠の人が一番長寿だという研究結果もあると聞いています。6時間や8時間睡眠の人より7時間睡眠の人が平均的に長寿になるという結果ですね。

生産性を高めるためにも、そういうエビデンスは集めまくっています。そうして、早起きにもなったので、私は大体11時台に寝ていますね。

11時に寝て6時・7時に起きるのと、12時に寝て7時・8時に起きるのとで全然体調は違って、11時台に寝るのが私の体調には抜群に良いです。同じ睡眠時間でもいつ寝るかが大事だったりするので、自分に合った時間を見つけたいですよね。

高野:コンディションをやっぱり整えるってことも、できる人間になるためには大事だと言うことですよね。

元榮:複業社会というのは1分1秒が大切なので、可処分時間(自分が起きてる時間)の密度を高めるためにも、睡眠の質を高めないといけないですよね。

高野:複業で成功するためには体調管理もとても大事ですね。ビジネスマンのTipsにもなるような話なのではないでしょうか。

 

元榮太一郎さんが目指す、今後の自身と社会の在り方

国会議員もパラレルワークを実現するためにツールを最大限に活用

高野:ちなみに、パラレルワークをやると、優先順位の付け方が難しくなり、どっちつかずになってしまうリスクもありますよね。元榮さんはどのように優先順位をつけているのでしょうか?

元榮:私の場合は、国会議員というのは国民からの付託を受けて、税金で報酬をいただいてるということもありますので、まず最優先です。これは変えられませんよね。

一方で、弁護士ドットコム・法律事務所オーセンスについても、適切な権限移譲をするなどして、自分自身の時間的な拘束をスリム化するようにしています。最近はそれこそSlackやテレビ会議で、経営者自身がテレワークできるような時代になっています。遠隔でいくらでも決裁できますので、ずっと現場に張り付く必要はないですよね。

高野:ちなみに、政治家の先生や弁護士の先生でもSlackなど使っている方もいらっしゃるのでしょうか?

元榮:いらっしゃいますよ。最近驚いたのは、参議院自民党幹事長の世耕弘成元経済産業大臣ですね。

私が参議院自民党で副幹事長を拝命しており、世耕先生は上司にあたるので、この本の発売前日に、「本出しましたので、ご報告します。」と手渡しさせていただいたんです。

そしたら、「おぉ、複業か!」と。実は、「私も近畿大学の理事長に復帰したよ」と。大臣・副大臣・政務官のように政務に入ると、兼業が禁止になるんですね。そのため、世耕先生も近畿大学の理事長を降りていたのですが、今回大臣を退任して国会議員として参議院自民党に戻り、複業ができるようになったので、また復帰したそうです。

そのときに「コミュニケーションツールがあるから、リモートで経営ができるんだよ。」と仰っていて。タブレットを出して、「これでブイキューブでテレビ会議して、Slackで決裁すれば、コミュニケーションも決裁も円滑にできるから、複業できるよね。僕もよく分かるよ。」と、賛同してくださいました。さすが世耕先生だな、と思いましたが、このような形で、Slackを使っている国会議員は増えてきていますね。

高野:デジタル化してきてるんですね。
今、弁護士ドットコムで進めているクラウドサインも契約のデジタル化ですね。

元榮:電子契約、クラウドサインもこれからの時代には必要なことだと思いますね。圧倒的な人手不足ですから、一人ひとりの生産性を高めないと、この国は成長させていくことはできないです。

高野:そうですよね。人は突然には増えないですからね。

元榮:そうですよ。突然人は増えないし、外国人労働者というお話もありますが、それも突然には増やせないと思います。一人当たりの仕事の総量を増やすためにも、外国人労働者の受け入れ体制を整えるためにも、一人ひとりの生産性を高めること、デジタル化は不可欠だと思います。Slackもクラウドサインも最高の使い勝手で、非常に便利ですから。

高野:便利なものはどんどん使った方がいいですよね。

元榮:令和の時代の新しい働き方として、時間と場所に捕われない働き方は個人に注目されています。更には、世の中人材不足ですから、一人に二役三役担ってもらえるような環境を作っていくことは、社会に全体にとっても大きな利益があることだと思っています。


元榮太一郎さんが複業で命を燃やし続ける理由

高野:あと、これは私がどうしても聞きたかった質問シリーズのひとつです。
弁護士としても上手くいって、起業した会社は上場して、今参議院議員じゃないですか。途中で満足してもおかしくないのに、なぜ常に頑張れるのでしょうか?

元榮:目標によっては満足する方もいらっしゃると思いますが、私は危機感がありますね。「現状維持は衰退の始まり」だな、と。そういう感覚があります。

あとは、有難い人生を送らせていただいてるので、この一度きりの人生の命を活かし切りたいという使命感のようなものがあります。私自身の半生がもしかしたら足を踏み外したり、道を踏み外したりしてもおかしくないような、特に司法試験を受ける頃までの思春期は不安定で、親も気が休まらないような人生を送ってきたわけですから。

それにも関わらず、踏み外すこともなく一つ一つの挑戦がなんとか幸運にも恵まれ、乗り越えられてると考えると、もう自分だけのことを考えて生きてはならないと思いますよね。

そういった意味では、挑戦し続ける、努力し続けるということは、自分にとっては使命ですね。それをどこでどうやるかというのは、軌道修正があってもいいと思いますが。私の中では、常に最後の最後まで走り抜くと。

とはいえ、出家される方ほどストイックな生活を送ってるわけではないので、今日このあとも仲間と美味しい焼き肉を食べに行きますし、当然お酒も飲みます(笑)。
楽しみながら、ただやっぱり常に忘れないで、世のため人のため自分のために、しっかり命を使っていくということは大事にしています。

高野:使命感が元榮さんを動かしているのですね。
微力ながら、引き続き応援していきます。本日はありがとうございました!

取材あとがき

今回は、元榮さんのキャリアや複業についての考え方、成功するためのポイントについてお伺いしました。

約20年ほどお付き合いさせていただいておりますが、「こんなにありがたい人生を歩ませてもらっている」という言葉を何度も繰り返しお話されているのが、とても印象的でした。元榮さんがストイックに努力した結果が現在のご活躍の大きな要因だと思いますが、周囲への感謝を忘れない姿勢に感銘を受けるばかりでした。

ゼロベースでの弁護士、起業家、政治家人生とのことでしたが、自ら目標に向けて道を切り開いていく様子は誰もが参考にできると思います。

現在、複業含め今後のキャリアを考えている方は、今の仕事で確固たる評価を獲得できているのか、今やりたいことは今の仕事の先で見える景色を捨ててでもやりたいことか、一度自分の素直な心に問いかけていただけるとよいのかもしれません。

高野 秀敏

1999年に株式会社インテリジェンスへ入社。2005年に株式会社キープレイヤーズを設立。3000名以上の経営者の相談と、10000名以上の個人のキャリアカウンセリングを行う。また、55社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を国内・シリコンバレー・バングラデシュで実行。キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。転職・採用、投資のご相談は Facebook Messenger、もしくはLINEからご連絡くださいませ。
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