bitFlyer創業者 加納 裕三氏に聞く仮想通貨、ブロックチェーン業界の未来とキャリア

インタビュー          
       
       
     

こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職のサポートをしているキープレイヤーズの高野です。

実は私が仮想通貨に強く興味を持ったのは加納さんのおかげなんです。2016年1月に梅木さんの勉強会が渋谷でありました。「今さら聞けない?ブロックチェーン講座」というものです。今考えてみると今さらどころかあのタイミングは相当な黎明期だったんだなと感じます。

スタートアップ界隈にいれば仮想通貨やブロックチェーンは聞いたことはある。でもよくわからないな?というものでした。率直にいうと当時は怪しい人が儲け話を持ってきたりみたいなこともありました。仮想通貨自体は可能性が高いと思いましたが、黎明期は色々な人が集まってくるものです。

そんな中、東大、ゴールドマンサックスというキャリアの加納さんがbitFlyerというブロックチェーンのスタートアップを立ち上げているというのはとても興味深かったのです。実際に話を聞けるというのでセミナーに喜んで参加しました。渋谷でした。

これで「仮想通貨やってみよう」という気持ちになりました。特段投資セミナーというようなものでもなく勉強会だったので特に営業や勧誘されることもなかったので、一層真っ当な話だと感じました。

bitFlyer、ブロックチェーンの軌跡

加納:(思い出すように)あの頃に買っていた人は先行者でしたから持ち続けていたら資産になりましたよね。私の周りの友人たちでもそういう人は沢山います。

高野:加納さんといえばこの業界の生き字引的な方ですよね。業界の歴史を作り、歴史と共に歩んできた方。今日は仮想通貨、ブロックチェーンについて色々と学ばせていただきたいと思います。よろしくお願いします!

高野:いま仮想通貨・ブロックチェーン業界は再び盛り上がっていると思いますが、この歴史や現状について教えてください。

加納:私はbitFlyerを2014年1月に創業して、かれこれ8年くらいやってきました。2008年10月にサトシ・ナカモトの論文「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」が公開され、2009年1月にビットコインが誕生しました。

私は、2010年にビットコインに出会いましたが、当初何年かは自分も信じていたわけではなかったんです。

しかし、徐々に本物だと感じ始めていた2013年にドルを管理しているアメリカ連邦準備制度理事会のバーナンキ議長が、ビットコインなどの仮想通貨の価値を認める発言をしたその瞬間に「あ、ビットコインに命が入ったな」って思ったんです。

自分は信念が強いタイプ。仮想通貨についてはある種の確信があり、自分自身がマインドセットされた状態になりました。

そして2014年1月に、ゴールドマンサックスにおけるエンジニア時代の上司であった小宮山と共にbitFlyerを創業しました。しかし、最初の3年間は鳴かず飛ばず、2015年はなんと1日2000円の売上。

資金調達も苦労しました。一度目はできましたが、シリーズBはうまくいかず。トイレで毎日吐いていました。月次のバーンを計算すると会社の余命はあと3ヶ月。当時は非常に苦しかったです。

高野:なるほど。加納さんでもそのようなハードシングスがあったのですね。日本は当時、仮想通貨ではかなり先端を走っていたと思うのですが、その後はその成長スピードが落ち着いたように感じます。どうしてでしょうか。

加納:日本では2018年に仮想通貨が流出する事件が相次ぎ、業界の信頼が揺らいだんですよね(なお、bitFlyerでは過去に流出したことはありません)。

そこで当然のことながら、顧客保護のためのガバナンスが求められるようになったんです。その結果、会社として守りを固めるために人と時間を費やすことになり、事業スピードを一定程度落とさざるを得なくなりました。

一方、海外の仮想通貨取引所では、規制当局のルールを遵守せずに経営して事業を拡大しているところもあり、不公平な事業環境になってしまっています。そうした背景もあり、日本が世界をリードすることが簡単ではなくなったところはあります。

ただ、もちろん自分はまだまだ諦めてはいないですよ。

仮想通貨・ブロックチェーンの未来

高野:最近はNFTが話題ですよね?海外でも日本でもNFTがすごいと。自分もそういう情報は持っているもののうまく着手できていなかったりします。NFTはどう見ていますか?

加納:NFTには何の価値もないという人がいます。有名な人が描いた絵やフェラーリだから高級なんだと。ただよく考えてみてください。

価値には機能的な価値とブランド的な価値があります。ブランド物や絵画にせよ。機能的な価値は10%くらい。残りはブランド的な価値。人とは承認欲求がある。これを所有しているということを自慢したいという欲求がある。それは人間の基本的な欲求。

実はブランド物を持とうという人とNFTを持とうという人は全然違うように見えて、実は似ているところがあるんですよ。

仮想通貨も、なんだか怪しいというように言われているところからきちんとガバナンスを強化して取り扱っていこうという社会情勢に変わった。これは不可逆なものと考えています。

高野:この業界(仮想通貨・ブロックチェーン)の未来はどうなっていくのでしょうか?

未来は明るいですよ。キラーアプリが今はNFT。今後はもっと可能性があります。行政システム、サプライチェーン、ブロックチェーンID、パブリックチェーン・プライベートチェーン、非中央集権など。新しい未来を創っていくことができる業界です。

事業を行うためにライセンス登録が必要な仮想通貨取引所のようなところには、ベンチャーは参入しにくいと思います。一方で、ブロックチェーンを使った非規制領域については今後もますます発展して伸びていくでしょう。

仮想通貨・ブロックチェーン業界で働く魅力

高野:仮想通貨・ブロックチェーン業界に今のタイミングで転職するメリットは?

非常に未来がある業界です。仮想通貨の取引口座数は現在約500万口座。日本の人口に対してたったの4%くらい。つまりまだまだ可能性があって2000万口座くらいまでのポテンシャルがあると思っています。

日々技術の発展があり、あたらしいニュースが報道されます。そして仮想通貨・ブロックチェーンは国内だけではなく、グローバルで競争をしているのが面白いんです。日本発のイノベーションが起こせる。かつては携帯ゲームがそうだった。

仮想通貨については米中など海外の方から「日本はなんでこんなに盛り上がっているのか」とよく聞かれました。

bitFlyerが目指す世界観

高野:国内トップであるbitFlyerが目指している世界観とはどんなものでしょうか?

加納:bitFlyerはアメリかとヨーロッパにグローバル展開をしているので、そこはブレずにやっていきます。拠点はサンフンシシコ、ルクセンブルクにあります。グローバルでかつテクノロジードリブン。bitFlyer以外の多くの取引所は、システムを外注パッケージにしていると思います。bitFlyerは自社技術開発して内製している点が強みだと思います。

今後は、規模も拡大しましたし、コンプライアンス面もあり比較的堅実な方が入社してくるでしょうが、一方で挑戦できる、柔軟性のある人も欲しいんです。事業を積極的に作りにいく。

しかしコンプライアンスはしっかりと守る。その上でテックベンチャーのスピリッツは失わずにワイワイガヤガヤやっていきたい。新しい技術で、もっともっと社会をより良いものにしていきたいと考えています。直近は、募集は全方位的にしていますが、高野さんにあえていえば、人事、デジタルマーケティング、システム開発の責任者クラスが特に欲しいですね。

bitFlyerが採用したい人物像

高野:bitFlyerグループが採用したい人材のイメージ像は?

加納:ビットコイン、ブロックチェーンが好きな人に入って欲しいですね。扱っているプロダクトが好きな人が入って欲しい。私は金融好きだった。デリバティブ大好き。好きだからやるものだと思うんです。私は創業者、オーナーだからビジョンにこだわりが強いんです。

高野:本日はありがとうございました!

bitFlyerの採用ページはこちらなので、興味のある方はぜひエントリーしてみてください!

取材あとがき

加納さんから仮想通貨、ブロックチェーンについての歴史、現在、そして未来についてお伺いしました。大変ワクワクするものでした。私自身仮想通貨を買ったり、マイニングをするということもやってきました。

もちろんすごく下がったこともありますし、マイニングでは赤字になったこともあります。先日同窓会にいったら「今から仮想通貨、ブロックチェーン興味あるんだけど遅いよね?」と聞かれました。

この手の話は実は頻繁に聞かれます。「何買えばいいの?」など。自分はプロではありませんし、預言者ではないのでそこはわかりません。ただわからないから面白いのかなと。

話は変わりますが、私が好きな本がこちらです。
『サピエンス全史』 ユヴァル・ノア・ハラリ著

なぜホモサピエンスが繁栄したのか?ネアンデルタールの方が頭がよく体も大きかった。多くの種が当時いたそうです。しかしホモサピエンスが生き残った。では何が違うのか?

ホモサピエンスだけがフィクション(虚構)を信じられた。噂を信じられた。自分の目で見てないことも信じることができた。他の種族は見えるもの、体験したものしか理解できないし、信じられなかった。この違いが勝敗を分けた。

例えば南から敵が襲ってくる。200人くらいいる。こんな話を誰かがした。ホモサピエンスはそれを共有して自分で見たものでなくても備えることができた。人類は宗教、会社(理念)というフィクションをこれまで信じてきた。

一方で近年はそれが薄れている。ブロックチェーンというのは一つの概念であり、フィクション。仮想通貨もフィクション。

ホモサピエンスである我々人類が信じたビットコインをはじめとする仮想通貨全体の価値は、Googleのような時価総額になった。今後数倍になりゴールドより高くなる可能性もある。

ゴールドはどこでも使えないがビットコインは実用されるようになる。少なくとも何かのトークンは。

次々天才たちが生まれている。イーサリアムのヴィタリックは19歳だった。特に10代が活躍しているのがブロックチェーン。日本人も天才少女がおり、子供将棋名人だった女性が17歳でCTOになった。世界はどんどん進化している。

ブロックチェーンや仮想通貨は現在の貨幣と同じ。まさにフィクション。ただこのフィクションを信じて仮想通貨を持っている人たちが、伝播し続ければ世界は便利になる。

このようにワクワクした未来を信じて、評論家ではなく実行したい。変革していきたい。そんな方が仮想通貨、ブロックチェーン業界では求められていると思います。

キープレイヤーズでは、ベンチャー・スタートアップへの転職のサポートを実施しています。

執筆者:高野 秀敏

東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。11,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。55社以上の投資、5社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。149社上場支援実績あり。55社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を国内・シリコンバレー・バングラデシュで実行。キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。
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