こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職のサポートをしているキープレイヤーズの高野です。
将来起業したいと考えている方から、「どこかの企業で働いてから起業したいが、どこで働いたらよいか?」と質問されます。
結論から言うと、どこの会社で働いても起業はできますし、企業での就業経験がないまま起業し、上場された社長も多いです。
私が創業時からエンジェル投資をさせていただき、社外取締役をつとめさせていただいているメドレーの社長である瀧口さんは、17歳で起業しています。なお瀧口さんは3回目の起業で上場。
会社員としての経験がないが上場社長になったすごい方が過去5年に13人と多くいらっしゃいます。
今回は、社長のキャリアという観点から、各企業が上場したときの社長(この記事では「上場時社長」と表記)の経歴を見ていこうと思います。
調査概要
本調査は、2018年1月~2022年4月末日までに、東証マザーズ市場、または東証グロース市場に上場(上場承認状態のものも含む)した310社を調査したものです。上場時の社長(代表取締役社長)のキャリアに焦点を当てまとめました。
なお、上場時社長のキャリアに関するデータは、日本取引所グループのHP にアップロードされている資料から取得しています。
記事・グラフ内で記載している会社名は、”株式会社”や”合同会社”などを省略している場合があります。また、グループ会社をまとめる際にも正式名称と異なる場合があります。
なお、本調査のデータは独自調べで、データの正確さを保証するものではありません。
上場時社長のファーストキャリア
図1:上場時社長のファーストキャリア(2名以上が在籍)
図1は、上場時社長のファーストキャリアを示したグラフであり、「職歴なしで上場時の社長」となった社長は13人います。
例えば、2020年の4月に上場承認されたことで記憶に新しいANYCOLOR株式会社の田角陸社長は、学生起業から上場(承認)に成功しています。学生起業のまま上場している方は13人と多くいらっしゃいます。
では、就業経験のある上場時社長のファーストキャリアをみてみます。1位は8名のアクセンチュア(アーサー・アンダーセン時代入社組も含む)です。採用人数も多いこともありますが、コンサルティング業界の中でも圧倒的な起業家排出実績があります。
次いでリクルート(全てのリクルートグループ企業含む)が7人、さらに日本電気(NEC)が4人となっています。20代の方にとってはNECがランキング入りしているのは多少意外に思われるかもしれません。
ランキング上位企業の出身社長を具体的に見ていきます。
例えば、アクセンチュアでファーストキャリアを歩まれた上場時社長には、株式会社ギフティ 太田睦社長、Kudan株式会社 大野智弘さんなどがいらっしゃいます。(*Kudan株式会社の現社長は項大雨社長)
リクルート出身の社長は、株式会社Kaizen Platform 須藤憲司社長、株式会社エクサウィザーズ 石山洸社長などがいらっしゃいます。2018年以降に上場した企業に限定していますが、2017年以前にもリクルート出身社長は数多くいらっしゃいます。
日本電気(NEC)出身の社長には、個人向け金融コンサルティングサービスを運営するブロードマインド株式会社 伊藤清社長などがいらっしゃいます。
上位3社に続く「3名」の上場時社長を排出している企業は以下です。
・ゴールドマン・サックス証券(端羽英子社長:株式会社ビザスク など)
・コスモスイニシア(村上浩輝社長:株式会社ツクルバ など)
・ジャフコグループ(穐田誉輝さん:株式会社くふうカンパニー など)
・三菱UFJ銀行(福原正大社長:Institution for a Global Society株式会社 など)
・住友商事(黒澤弘社長:ペットゴー株式会社など)
・博報堂(佐々木大輔社長:freee株式会社 など)
・日本IBM(伊藤豊社長:スローガン株式会社 など)
・日本オラクル(井上裕基社長:株式会社Waqoo など)
・日本電信電話(NTT)(白石崇社長:株式会社ライトアップ など)
外資系投資銀行の最大手であるゴールドマン・サックスや、日本の大手商社の住友商事や、外資IT大手のIBMやオラクル、また広告大手の博報堂など様々な企業からランキングしています。
正確なデータはとっていませんが新卒の採用人数だけに限ると、NTTの採用人数が最も多く、ゴールドマン・サックスの採用人数が最も少ないので、入社割合に対する起業家の比率はゴールドマン・サックスが高いといえるかもしれません。
すでに起業家として多くの成功をおさめられている穐田さんは、新卒ではベンチャーキャピタルとしては著名なジャフコに入社されています。
上場時社長の全所属企業
次に、上場時社長が、過去に在籍した経験のある全企業に注目したグラフが図2です(出身社長が2名以上の会社のみ掲載)。新卒、中途を含めた全ての企業を掲載しています。
図2:上場時社長が在籍していた企業(2名以上が在籍)
図2を見ると、上場時社長がファーストキャリアで在籍した企業と同様に、アクセンチュアやリクルートが出身企業として多くなっています。アクセンチュア11名や、リクルート8名となっています。両社は中途採用においてもたくさんの優秀な若手の方を採用している企業としても有名です。
また、日本オラクル、マッキンゼー、サイバーエージェント、日本IBMなどの企業が上位にランクインしています。
例えば、サイバー出身起業家としては、日本最大級のクラウドファンディングサービス「Makuake(マクアケ)」である株式会社マクアケの中山亮太郎社長は子会社としてMakuakeを立ち上げられました。
サイバーエージェント自体も歴史がまだ20年ちょっとと浅い会社ですが、多くの起業家を排出しています。上場していなくても急成長ベンチャーを立ち上げている社長は数多くサイバーエージェント出身者にはいらっしゃいます。
さらに、図2から、キャリアの中で個人事業主を経験したことのある社長も複数いることが分かります。詳しくはわかりませんが、昨今流行りのスモールビジネスこと「スモビジ」がスケールしたことから、法人化して、創業した会社も多くあると思います。
上場時社長のファーストキャリア(グループ会社を統合)
ここまで、上場時の社長のキャリアを企業ごとに見てきました。
ここからは、グループ会社や親会社を統合したデータを用いてそれぞれのグラフを作成し、社長のキャリアをさらに深ぼっていきます。
図3は、就業経験のある上場時社長のファーストキャリアを、グループ会社ごとに統合したグラフです。例えば、野村グループなどは野村證券や野村総合研究所や野村不動産といった全ての野村系列の会社を統合させています。
図3:グループ会社などを統合した、上場時社長のファーストキャリア
図3を見ると、アクセンチュア、リクルートグループに加え、NTTグループや三菱UFJグループなどの企業出身の上場時社長が多くなっていると分かります。
例えば、NTTグループ出身の社長として、新卒でNTTドコモのIRを担当していた、株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイドの瓜生憲社長がいらっしゃいます。
そして、官公庁出身者も4名おり、公務員から起業家に転身されて、成功されている方が一定数いることがわかります。
上場時社長の所属企業(グループ会社を統合)
図4は、上場時の社長が在籍経験のある企業を、グループ会社ごとに統合したグラフです。
図4:グループ会社などを統合した、上場時社長が在籍していた企業
図4を見ると、これまで上位にランクインしていなかった、ソニーグループ、楽天グループ、野村グループなどの企業が上位にランクインしていると分かります。
例えば、平良真人社長(THECOO株式会社)はソニー株式会社のご出身です。
また、ビズリーチなどを運営されている南壮一郎社長(ビジョナル株式会社)は株式会社楽天野球団で、佐藤成信さん(株式会社パワーソリューションズ)は株式会社野村総合研究所での就業経験をお持ちです。(株式会社パワーソリューションズの現社長は高橋忠郎社長)
まとめ
今回の記事では、上場を経験した企業の社長がどのような企業で就業し、起業または社長に就任されたかをまとめました。
日本電気(NEC)や日本電信電話(NTT)のように、日本の大企業から、ゴールドマン・サックスやマッキンゼーといった投資銀行やコンサルティング業界、また官公庁出身者の起業家と幅広い業界から起業に成功していることがわかります。
上場=起業の成功と必ずしも言うわけではありませんが、キャリア選びの参考にしていただければ幸いです。
何より、学生起業や就職せずに起業して成功している方が多くいるという点が何よりも若い方にとってプラスになるデータではないでしょうか。
若いと経験不足から成功できないのではないかと不安に思う方もいるかもしれませんが、そんなことはありません。
キープレイヤーズでは、ベンチャー・スタートアップへの転職のサポートを実施しています。