スタートアップ転職で年収は下がる?【2026年版】年収ダウンの実態と中長期リターンを徹底解説

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「スタートアップに転職したいが、年収が下がるのが心配」──このご相談を受けるたびに、私は「まず数字の実態を正確に理解しましょう」とお伝えしています。

スタートアップへの転職で年収が下がるかどうか、答えは「場合による」です。必ず下がるわけでも、必ず上がるわけでもない。しかし、正しい知識を持てば「自分の場合はどうなるか」をかなり正確に予測できます。本記事では、25年以上のヘッドハンティング経験から見えた年収の実態を、データと事例とともにお伝えします。

この記事でわかること
  • スタートアップ転職で年収が下がる人・下がらない人の違い
  • 職種・フェーズ別の年収相場
  • ストックオプションの現実(過剰な期待を持たないために)
  • 年収ダウンを許容すべきケースとすべきでないケース
  • 年収交渉の具体的なポイント

目次

スタートアップ転職で年収はどうなる? データで見る実態

「約4割が年収アップ」という現実

プロトスターが行った「スタートアップ転職経験者100人への調査」によると、スタートアップに転職して年収が上がった人が約39%、下がった人が約22%、横ばいが残り約39%という結果でした。

つまり「スタートアップ転職=年収ダウン」というイメージは必ずしも正確ではありません。むしろ多くの人が転職時点では年収を維持か増加させています。

上場企業との年収比較

日本経済新聞の調査(2021年度)によると、スタートアップ企業の平均年収は前年比約7%増の650万円で、上場企業の平均年収605万円を上回っています。特にシリーズC以降、Pre-IPO段階の企業では、幹部クラスへの報酬が大企業に匹敵するケースも増えています。

なぜ「年収が下がる」イメージがあるのか

このイメージが生まれる原因は主に3つあります。

  • シード期のスタートアップの話が広まりやすい(成長後の話は目立ちにくい)
  • 大企業の「見えないメリット」(退職金・福利厚生・安定性)との比較
  • ストックオプションを年収に含めない比較での議論

実際に「下がる」ケースが多いのはシード〜アーリーステージの転職で、シリーズB以降では必ずしも下がりません。

フェーズ・職種別の年収相場

企業フェーズ 一般社員(3〜7年目) マネージャー〜VP CxO・経営幹部
シード(〜10名) 300〜450万円 400〜600万円 500〜800万円+SO
アーリー(〜30名) 380〜500万円 500〜750万円 700〜1,000万円+SO
シリーズA〜B(〜100名) 450〜650万円 650〜900万円 900〜1,300万円+SO
シリーズC〜Pre-IPO 500〜750万円 750〜1,100万円 1,000〜1,500万円+SO

シードからアーリーのステージでは、大企業からの転職で年収が下がるケースが多いですが、シリーズA以降では同等〜それ以上の水準になることが多いです。

職種別の傾向

  • エンジニア:需要が高いため、ほぼ下がらない。大企業比で上がるケースも多い
  • 営業・事業開発:固定給が下がる代わりに成果報酬が増えるケースが多い
  • マーケティング:シード〜アーリーでは下がりやすい。シリーズA以降は横ばい
  • 管理・HR・法務:シニアレベルでなければ下がりやすい領域
  • データ・AI:市場価値が高く、下がらないケースがほとんど

ストックオプション(SO)の現実──過剰な期待は禁物

スタートアップ転職で「SOがあるから年収ダウンでもいい」という考え方をする方がいますが、SOの現実はもっとシビアです。

SOの付与割合の実態

一般社員レベルの場合、SOの付与割合は通常0.05〜0.3%程度です。仮に上場時の企業価値が100億円(比較的小さいIPO)だとしても、0.1%のSOは1,000万円。ただし上場後すぐに権利行使できるわけではなく、ベスティングスケジュール(権利確定のスケジュール)があります。

SOが「億り人」にならない理由

  1. 上場できないスタートアップが多い(日本ではスタートアップの上場率は5〜10%以下)
  2. 退職するとSOを失う制度が多い(退職行使型でないケース)
  3. 付与されるタイミングが遅い(入社後の評価次第で付与されるケース)
  4. 上場しても株価が期待通り上がらないケースもある

SOを「年収の補完」として考えるのはリスキーです。「SOはボーナス要素として期待するが、SO抜きで納得できる年収かどうか」を判断基準にすることをお勧めします。

年収ダウンを「許容すべきケース」と「すべきでないケース」

許容すべきケース

  • 今の年収が「大企業の年功序列ブースト」で高めになっており、スキル・実績での市場価値が低い場合
  • 転職先のフェーズ(シリーズA〜B)で1〜2年内に昇給・昇格が見込める根拠がある場合
  • 転職先のミッション・事業への強い共感があり、多少の年収ダウンはQOL向上で補える場合
  • SOの条件が本当に良く、上場可能性が高い企業の場合
  • 20代であり、中長期のキャリア構築で十分に取り戻せると判断できる場合

許容すべきでないケース

  • 住宅ローン・子育て費用など固定支出が高く、生活が成り立たなくなる場合
  • 「とにかくベンチャーに入りたい」という焦りから、年収の根拠を精査せずに決める場合
  • シードフェーズで資金調達の見通しが不明確な企業の場合
  • 35歳以上で大幅な年収ダウン(20%以上)になるケース

年収に関する失敗パターンについてはスタートアップ転職における年収の失敗例も参考にしてください。

中長期的なリターンの考え方

スタートアップ転職を「短期の年収」だけで評価するのは間違いです。3〜5年のスパンで考えると、以下の要素が加わります。

キャリア資産の蓄積

  • 大企業で10年かかる経験をスタートアップで2〜3年で積める
  • 「0→1の事業立上げ経験」「マネジメント経験」はキャリア市場での価値が高い
  • 次の転職・起業・副業への扉が大きく開く

昇給スピードの違い

大企業の平均昇給率は年2〜3%ですが、スタートアップでは年間10〜30%のアップも珍しくありません。仮に転職時に年収が100万円ダウンしても、3年間で取り戻せるケースが多いです。

転職時 1年後 3年後 5年後
大企業(年+3%) 700万円 721万円 765万円 812万円
スタートアップ(年+15%) 600万円 690万円 912万円 1,205万円

これはあくまでシミュレーションです。スタートアップの昇給が保証されているわけではありませんが、高成長企業でのキャリアアップと昇給の可能性を示しています。年収・報酬パッケージの詳しい考え方もご参照ください。

年収交渉のポイント

交渉のタイミング

年収交渉は内定後が基本です。最終面接で自ら「年収はいくらですか?」と聞くのは避けましょう。オファー提示後に「ありがとうございます。1点確認ですが、現在の年収が〇〇万円ですので、少し調整いただくことは可能でしょうか」というスタンスが最も効果的です。

スタートアップの年収交渉で使えるポイント

  • 現在の年収を根拠にする:「現状維持または微増を希望」は通りやすい
  • 入社後の成果コミットを前提にする:「半年で〇〇を達成したら見直してほしい」という形で合意を取る
  • SOの条件も同時に確認する:年収と合わせたトータルの報酬パッケージで交渉する
  • 福利厚生・リモートワーク等も金銭換算する:在宅勤務が月20日あれば、交通費・ランチ代の節約で実質年収は上がる

スタートアップ転職と年収 よくある質問(FAQ)

Q. シード期のスタートアップはやはり年収が低いですか?
A. 低い場合が多いです。ただし創業者の実績・調達金額・事業の確からしさを総合的に見ることが重要です。シード期でも優秀な創業チームがいる場合は、年収面で意外と交渉できることもあります。
Q. SOは信じていいですか?
A. 「あったら嬉しいボーナス」として捉えることをお勧めします。IPOできるスタートアップは少なく、できたとしても株価が期待通りに上がるとは限りません。SOを前提に年収ダウンを受け入れるのは慎重に判断してください。
Q. 転職前に年収の目安を知る方法はありますか?
A. 転職エージェントへの相談が最も正確です。エージェントは企業の過去の採用事例から年収帯を把握しています。また、ベンチャー転職エージェントに複数登録して相場感を得ることをお勧めします。
Q. 年収が下がった場合、何年でもとに戻りますか?
A. スタートアップで実績を出せれば、2〜3年で転職前の水準に戻るケースが多いです。ただし企業のフェーズ・自分のポジション・事業の成長率によって大きく変わります。
Q. 家族(配偶者・子供)がいる状態でのスタートアップ転職は無謀ですか?
A. 無謀ではありません。ただし配偶者の収入状況・貯蓄・固定費を踏まえた上で判断する必要があります。最低でも6ヶ月分の生活費を手元に確保した状態での転職をお勧めします。

年収ダウンを最小化するための実践テクニック

テクニック1:複数の企業に同時期に選考を進める

複数社に同時に選考を進めることで、年収交渉の強力な武器になります。「他社からも内定をいただいています」という事実は、提示年収を上げる最も強い交渉カードです。ただし、嘘をついて「他社からオファーが出ている」と言うのは絶対にNG。必ず事実ベースで交渉しましょう。

テクニック2:「転職時年収」より「昇給条件」を明確にする

転職時の年収が低くても、「入社後6ヶ月で〇〇の成果を達成したら年収を△△にする」という合意を書面で取ることができれば、長期的な損は少ない。特にシリーズA前後のスタートアップでは、口頭での約束だけでなく、労働条件通知書や雇用契約書に盛り込んでもらうことが重要です。

テクニック3:福利厚生・副業・リモートを年収換算する

スタートアップの多くはリモートワーク・フレックスタイムを採用しています。フルリモートで通勤費・ランチ代が月3〜5万円節約できれば、年収換算で36〜60万円のプラスです。副業OKの場合も、サイドビジネスの収入を合算して考えることができます。

テクニック4:給与レンジを事前にリサーチする

転職エージェントに聞けば、その企業の過去の採用での年収帯を教えてもらえることが多いです。「この企業は〇〇〜△△万円が相場」と知った上で交渉するのと、全く知らない状態では結果が大きく変わります。

スタートアップ転職後の年収アップ事例

事例①:大手メーカー(580万円)→ SaaS企業(540万円→3年後820万円)

転職時は40万円ダウンでしたが、シリーズBのSaaS企業でマーケティング責任者として実績を出し、3年後には820万円に。転職時点での年収差は3年で完全に回収し、その後も上昇中。SOも保有しており、IPO準備が進行中です。

事例②:総合商社(720万円)→ フィンテック(650万円→2年後900万円)

転職時70万円ダウンでしたが、フィンテックの国内事業立上げを成功させ、2年後に事業責任者として900万円にアップ。その後さらにVPoS(VP of Sales)に昇格し、現在は1,100万円を超えています。

事例③:外資系コンサル(900万円)→ スタートアップCOO(900万円維持)

シリーズBの段階で「COO候補」として入社。年収は維持しながら株式比率0.5%を交渉し、2年後のシリーズCラウンドで未上場株の価値が大幅に上昇。転職後も年収を維持しながらキャピタルゲインを狙えるケースです。

スタートアップの「見えない報酬」を正しく評価する

年収(給与)以外にも、スタートアップで働くことの「報酬」はたくさんあります。これらを金銭換算するのは難しいですが、キャリアの観点では非常に重要です。

1. 「肩書き」の市場価値

「シリーズB・100名規模のスタートアップでマーケティング責任者」という肩書きは、次の転職市場で非常に高く評価されます。大企業で「担当者」として20年働くより、スタートアップで「VP of Marketing」として3年働いた経験の方が、市場価値は圧倒的に高いことが多い。

2. 意思決定経験と事業オーナーシップ

スタートアップでは「自分が決めた施策が会社の売上に直接影響する」経験を積めます。この「事業オーナーシップ」は、大企業ではほぼ得られない経験で、起業・独立・次のキャリアへの大きな資産になります。

3. 人的ネットワーク

スタートアップのコミュニティは意外と狭く、同業他社・投資家・起業家とのネットワークが自然と築かれます。このネットワークは将来の転職・起業・ビジネスパートナー探しで大きな価値を発揮します。

まとめ──年収は「今」だけで判断しない

スタートアップ転職における年収の問題は、「今の年収と比べてどうか」ではなく、「3〜5年後の自分のキャリアと年収がどう変わるか」で考えることが本質です。

転職後に年収が多少下がっても、成長する事業で実績を出し、マネジメント経験を積んで昇給すれば、大企業に残り続けるより圧倒的に高い年収を実現できる可能性があります。

一方、「SOで稼ぐ」「うまくいかなければ大企業に戻ればいい」という発想は危険です。スタートアップ転職は覚悟を持って取り組む選択であり、その覚悟があれば年収の問題は必ず乗り越えられます。

ベンチャー転職全般についてはベンチャー転職完全ガイドを、転職後の失敗パターンについてはベンチャー転職失敗・後悔ガイドをあわせてご覧ください。

キープレイヤーズへのご相談
「自分の場合、スタートアップに転職して年収はどうなるか?」──この問いへの答えは個人の市場価値と企業フェーズによって変わります。代表の高野が直接、あなたの状況を踏まえたアドバイスをいたします。お気軽にご相談ください。

執筆者:高野 秀敏

東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。11,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。55社以上の投資、5社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。149社上場支援実績あり。55社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を国内・シリコンバレー・バングラデシュで実行。キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。
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