中山 博登
1983年、京都府生まれ。株式会社ワークポート、イシン株式会社を経て2009年11月に株式会社アシロを設立、代表取締役就任 。
株式会社アシロ
検索エンジン上で過度な露出を目指すのではなく、独自のコンテンツを地道に開発し続ける事でユーザに対しては有益な情報提供を、クライアントに対してはより優れた広告効果をもたらすメディアを展開していきます。弁護士メディア事業を中心にメディア事業を展開。
目次
サッカーの道を諦め、ビジネスの道を極める
高野:今回は株式会社アシロの中山 博登さんにお話をお伺いします。まずは、中山さんのご経歴をお伺いします。
中山:The体育会系で、学生時代はサッカーばかりしていました。しかし、高校時代に自分の限界に気づき熱を失ってしまい、高校3年生になる頃には、思春期の高校生らしい理由で親に迷惑ばかりかけていましたね(笑)
高野:中山さんのように体育会系出身で、ビジネスでご活躍されている経営者は多いですよね。
中山:高校の卒業と同時に、ビジネスの道で戦う決意をしました。父親の影響で進む道を決めたんだと思います。
父親は団塊世代の商売人で、24時間仕事をしていました。そのため、参観日も来ない、サッカーの応援も来ない、運動会も来こない、週末は接待ゴルフなので遊んでもらえない、そんな幼少期を過ごしました。
高野:私の父親と少し似ている気がします。
中山:固定電話の時代だったため、父親は、家にいても固定電話に向かって仕事の話をしていました。こんな環境で育ったので、自然と「商売が出来ない奴は認められない」と思うようになりました。
そのため、高校の卒業と同時に「スーツを着て仕事をするような人に早くなりたい」と気持ちが切り替わっていました。
高野:素晴らしいです!
中山:大学時代は、「仕事で活躍できるようになるには何が必要か」という観点からいろいろなアルバイトを経験しました。インターンなどはまだない時代でした。営業系のアルバイトをして営業成績を残したら辞めて次のバイト、というサイクルで働いていました。大きな声では言えないこともしました(笑)
高野:こっそり次回教えてください!
最高級にストレスフルな環境が自分の求めている場所だった
中山:就職活動では、まずリクルートを受けに行きました。就職活動を始めると、いろいろな方に「リクルートに向いている」と言われ、たまたま雑誌では「リクルートがすごい」みたいな特集記事を見つけていたからです。
ただ、リクルートという組織が僕には大きすぎるように見えてしまい、リクルート本体ではなく、リクルートの卒業生が経営している会社を調べて、ほぼ全て受けに行きました。
高野:その行動力がすごいですね。当時から起業家になる兆しがありましたね。
中山:その結果、自分の伸び代を考えるとより小さな組織がいいと考えるようになったのです。そして、新卒の採用説明会の参加者が数名だけだった株式会社ワークポートに入りました。人数だけではない、たくさんの魅力もありました。
高野:そうだったのですね!
中山:ただ飽きっぽさから、3か月で辞めたくなりました。今となってはお恥ずかしいことでしたが、若気の至りです。
今の私ならクビにしますが、ワークポートの田村社長は優しい方でした。僕が「やりたいことができない」と田村社長に訴えると、新卒採用の媒体の企画開発を社長が事業部として用意してくださり直々に任せて頂きました。当時は、CMSを使って採用ページを作ることが流行の一つで、その商品企画から販売をしました。
高野:自ら仕事のチャンスを掴みに行ったのですね。
中山:その後、現在の株式会社イシンへ転職し、メディアの営業をしています。
イシンでは永遠に仕事をしていました。誰かに指示をされた訳ではありません。その当時いたメンバー全員が自らを追い込んで永遠と仕事をしていました。みんな死にそうになのになぜか楽しく働いているのです(笑)
でも、そんな環境が当時の僕が求めたものでした。特に不満に思ったことは何もありませんでした。
高野:2008年前後であれば、そういった働き方を選択する人も多かったかもしれないですね。
中山:「ついに見つけた。俺の求めてたもう、なんか最高級にストレスフルな環境だ!」と思ったのです。営業・採用・web・企画なんでもやりました。
高野:体育会系の魂ですね!
父親との会話、そして、家庭を持ち起業を決意
中山:3年ほど働いた頃、お盆に父親と会って、仕事の話をしました。
「お前は給料なんぼだ。どんな仕事をしとるんや」と単刀直入に聞かれました。僕は「こんな仕事していて、まだ25歳だけど年収は500万円ぐらい貰っている」と話しました。
そしたら、父親は「なんだ週に6から7日も働いてそんなものか。どんだけ要領が悪いんやと笑われました。俺なんか、年に数回しか仕事をしていないが、数千万は稼いでる」と言われたのです。
加えて、「人に使われ過ぎるのも良くないぞ。ぼちぼちにしときや」とも言わました。
高野:「お前なにしとんや。どんだけ要領悪いんや」は衝撃的ですね。
中山:僕も、そろそろかなとは思っていましたが、いよいよ、ゴーサインが出たと思いましたね。
高野:そろそろ起業した方が良いというサインですね。
中山:そうです。「あんまり人に使われ過ぎるなよ」はゴーサインなんです。そのため、お盆明けには退職したいと会社に伝えました。
仕事とは別に家庭を持ったタイミングでもありました。このお盆の話の1年前に結婚して、翌年4月に子供を授かっています。家でも忙しい、会社でもストレス満点(笑)。流石にどちらかを切らないと俺は耐えられないと思った時期でもありましたね。
高野:なるほど。
中山:お盆明けに会社に話をして、来年の3月まではいて欲しいと言われました。クライアントや仁義もあるのでここまでは残ることを決めました。しかし、10月ごろに来月にはやっぱり辞めていいよって言われたんです。何の準備もしてないまま、会社を辞めることになりました(笑)
会社を作った瞬間に債務超過、猛勉強して事業を軌道に乗せるまでの道のり
高野:何も準備をしていない中、会社を辞めて実際にはどうされたんですか?
中山:登記をする時に、事業内容を何と登記するのか考えることがスタートでしたね(笑)。とりあえずいっぱい事業内容を書いてスタートしました。当時、個人の貯金が無くて、もう会社を作った瞬間に司法書士の先生に支払う登記費用がなく債務超過でした。
高野:それは大変でしたね。
中山:年末までに登記費用を払わないといけなかったので、とりあえず先輩にお声掛けさせて頂きました。
「とりあえずいつか役に立つのでいくらかください」みたいな事を言っていると、実際に助けてくださる先輩がいらっしゃって、なんとか登記費用を支払うことができました。営業でもなんでもないですよね(笑)
高野:面白すぎます。
中山:スタートは、これまで仕事で得たノウハウを活用し、2つの事業で2年半くらい食べて行きました。
1つ目に成果報酬型の営業のお手伝いです。2つ目にコスト削減のコンサルティングです。当時は、リーマンショック直後でコスト削減のコンサルティングのニーズが高かったのです。
高野:時代に特化したビジネスですね!
中山:そしてこの頃、仕事をお手伝いしてくれたインターンの大学生が、僕1人の会社に就職することを決めてくれたのです。この子を食わすには、健全に会社を経営したいと考えました。そして、ネット系のメディア媒体の代理店をスタートしたのです。
具体的にはイトクロさんの「お助け相続ナビ」を扱わせていただきました。
高野:有名なメディアですよね!
中山:当時のイトクロさんとしては、「成果報酬型で売る分には、うちはリスクないし構わんよ」というスタンスでした。僕たちは、破竹の勢いで売りまくりました。ここが会社として波に乗ってきた頃です。
しかし、このメディアは売却されることになりました。今思えば上場準備などで選択と集中といった事情がおありだったと思うのですが、当時はまったく笑えませんでした。青天の霹靂です(笑)
売却先に、「引き続き代理店をやらせてください」とお願いに行きましたが、「今後、代理店は要りません。3月までにお客さんをすべて返してください」と断られてしまいました。それが11月くらいの話です。
創業当時もそうですが、アシロはだいたい年末に事件が起こるのです(笑)
高野:年の瀬はそわそわなのですね。
中山:本当に困り果てました。買われた会社はどちらかというと相続税を扱いたかったのに対して、我々のクライアントには弁護士が多かったのです。
買い手に確認しながら我々で相続領域でも弁護に特化したメディアを作り、営業責任者とお客さんを回って、相続税ではなく遺産分割協議などの相談が必要なら、新たにうちのサイトに掲載しませんかという形で販売しました。
クライアントに弁護士が多かったので当然なのですがほとんどのお客さんが新たに用意したサイトも利用したいとおしゃってくださいました。これが自社メディアの誕生の背景です。
高野:自社メディアを立ち上げてからは、どのようにマネタイズして行ったのですか?
中山:弁護士向けの広告は、弁護士法というのがあり成果報酬(アフィリエイト)が駄目なんです。駅の看板のようにどれだけの人に見られようが値段は変わらない純広告でなくてはいけないので、広告枠さえ買っていただければ成果がでなくても売上は立つんです。
高野:弁護士法などが、広告にも関与してくるのですね。
中山:ただ、当然に駅の看板とは違いますので相談がこなければクライアントはやめてしまいます。でも、作ったばかりのメディアにユーザーなんているはずないので、ユーザーはほぼゼロです。
でも、信じてくださったお客様には絶対に満足していただきたいという思いは誰よりも強かったので、我々がとった手段は10万円をお客さんから頂いて、リスティング広告に10万円かけるという戦術でした。要するに10万円で仕入れて10万円で売る作戦です(笑)
だから、1円も儲からなかったです。でも、お客さんに満足してもらっていれば必ずなんとかできるという確信はありました。
高野:経営者としては利益を出すためにどう考えられたのですか?
中山:広告費を下げてなんとか利益を出そうとしました。いろんな会社にマーケティングの外注をしましたが、本当にヒドイ業界でみんなウソばっかりでした(泣)。なんならGoogleからペナルティをうけるような事をやっておきながら連絡が取れなくなるよう会社もたくさんありました。
でも怒るとかではなく、冷静にこの業界なら勝てるかもとも思いましたね。お客さんの方向を向いている会社がこれだけ少ないなら、徹底的にお客さんの方向を俺は向いてやる。そうすればたぶん勝てると。
その後、他人に任せるのをやめて猛勉強しました。簡単ではなかったですし、すぐに結果で出ませんでしたが本当に徐々にユーザーさんが増えていったんです。それに伴いお客さんも定着し、順調に利益が出るようになりました。
高野:この意思決定と、猛勉強されたストックが今の企業成長の根幹になっているのですね!
コアになる部分を内製化することが成功のポイント
高野:現在は、「事件特化型ポータルサイト」と「総合型ポータルサイト」の2軸にて、法律問題に困ったユーザーと、それを助けることが出来る専門家をマッチングするメディアを展開されていますね。
士業に関わるメディアという位置で、事業を展開されていますが、今後の展開を伺えますか。
中山:今後は、100億円、200億円と言わずもっともっと大きな会社にしていきたいです。そのために今とは違う事業領域にリソースを投下していく必要があると思います。手を緩めることなく新規事業に投資を続けたいとます。
高野:これまでたくさんのご苦労があったと思いますが、企業経営が軌道に乗ったポイントはどこにありましたか?
中山:会社を伸ばすために何が重要かを見極め、重要なことは内製化することに変えた事だと思います。我々の場合、ユーザーを増やす部分をコンサルや代理店頼みにすると、PDCAサイクルが回らず、成長スピードは鈍化してしまいますし、成長させること自体がむずかしいかなと思います。
高野:非常に大切なポイントですね。
アシロさんはこんな方を求めています
高野:ここからは、採用ターゲットについて教えてください。
中山:そもそも、企業経営で一番大事にしているのは、「我々と関わった人を一番幸せにする」というスタンスです。
よく社内で言っていることがあります。
「これが出来上がれば、圧倒的なイノベーションが訪れるといったプロダクトを僕らは作っていないし、作ることも出来ない。でも、僕らが目の前の関わってくれた人を幸せにすれば、その人達もまた人を幸せにして幸せの輪が広がってくみたいな感覚を大事にしよう。だから、徹底して目の前の関わった人を幸せにしよう。そんな仕事をしよう。」
高野:目の前の関わった人を幸せにする。地に足がついた素晴らしい考え方ですね。
中山:こんなスタンスで仕事をするメンバーが集まっているので、採用は超重要事項です。とにかく良い人を採用したいです。スキルはいくらでも後からついてきます。僕もそうでした。
僕は採用面接で「あなたは、良い人ですか?」と聞きます。「良い人だと思います」と言わない方は、あまり採用しません。
高野:その心は?
中山:どれだけすごいスキルを持っていても、良い人じゃなかったら一緒に働きたくないじゃないですか。そういう人が来るとやっぱりなんらかのひずみが出来たりするものです。
だから僕は究極に言うとあまり職務経歴書とか見ていません。もちろん、管理部門の人や現場の人は職務経歴書やスキルは見ますが、社長の僕はこのスタンスでいいと思います。良い人ならやれば出来ると思います。
あとは、そういう事よりも一番重要なのはやる気なので、やる気と元気があればなんとかなると思っています。
高野:良い人ならご活躍できる環境が用意されているということですね!
中山:私たちもSEOやマーケティングを猛勉強しました。猛勉強など何らかのことに踏ん張れるかどうかが重要です。責任感が強いか。人物像はよく見ています。
高野:ちなみに、中山さんはハードワーカーなイメージですが、社内の働き方とかはどのようですか?
中山:予想に反していると思いますが、ホワイトと胸を張って言えます!
土日祝日は休みで、出社が出来なくなってます。始業が10時、終業が19時なんですが。20時半にはオフィスに誰もいません。残業を1日1時間ぐらいする人が一番長く働いていますね。
僕は、「残業して仕事の成果が出るのは当たり前だ」と言っています。そのため、残業せずに成果を出すのが重要だと言ってます。コストがその分浮くので、利益が出やすくなるのは当たり前ですよね。
社員旅行も、創業のタイミングから毎年2回、開催しています。海外にも行っています。また、リスクを取ってベンチャーに飛び込んできてくれたのですから、結果を出したメンバーにはベンチャーらしいリターンを用意して還元しています。
高野:素晴らしいですね!貴重なお話しをありがとうございました!
キープレイヤーズ高野のコメント
人材業界で成長を遂げているワークポートさんやベンチャー通信で有名なイシンさん出身という中山さん。ベンチャー界隈ではあまり経営者の会に顔を出さない隠れキャラクター的な位置付けですが、会社の成長は目を見張るものがあります。
そして、アシロさんはホワイト企業であることも特徴です。特化型のメディアをやりつつ、横展開できるという事業が強みです。この仕事をしていてよく思いますが、プレスリリースなどを滅多に出さないあまり目立っていない会社の中に隠れた優良ベンチャーがあります。
最近のベンチャーは社員数もそう多くなく、生産性も高い会社が昔と違い増えてきました。アシロさんも生産性の高いベンチャーです。実直な社風もインタビュー記事から伺えるかと思います。ご興味持っていただけた方には、オススメの企業です!
<取材・執筆・撮影>高野秀敏・田崎莉奈