気合と根性ではない、合理的な営業とマーケティングの仕組みづくりを支えるサンブリッジ梶川拓也さんの語る仕事論

インタビュー          
       
       
     

取締役 兼・組織責任者(CHO)梶川 拓也

1997年株式会社リクルート入社。同年ソニー株式会社入社、デジタル音楽市場開拓を担当。 2003年株式会社チップワンストップ入社。東証マザーズ上場を経て取締役就任。法人向けマーケティングとサービス&システム開発を担当。 2010年世界最大の寄付型クラウドファンディング、英国JustGivingの日本展開、JustGiving Japan(現JapanGiving)事務局長に就任。NPO/NGOの後方支援を通じて日本一の寄付流通額を達成。 2017年株式会社サンブリッジ入社。人と組織の課題解決を担当。2018年3月より現職。広島県広島市出身、大阪大学経済学部卒。

株式会社サンブリッジ

サンブリッジはSalesforce社を初めて日本に紹介した会社であり、Salesforce社にとっての最古のコンサルティングパートナーです。10年以上前からクラウドビジネスに取り組んでおり、Salesforceの導入・開発に対する豊富な技術知識を保有しております。 またマーケティングオートメーション分野のリーダーであるPardotと連携する自社製品の開発、及びSalesforce.com、CONCUR、Marketo等をはじめとする海外クラウドベンダーの日本におけるジョイントベンチャーの設立にも携わり、日本のSaaS系列を構築しております。

90年代の学生時代、2社のベンチャーに参画
当時の出会い・挑戦が今の仕事に繋がっている

 

高野:今回は、株式会社サンブリッジ 取締役 兼 人事・組織責任者(CHO)梶川拓也さんにお話を伺います。梶川さんは学生時代から本当に面白い経験をされていますよね。少し遡って頂き学生時代からお話し頂けますでしょうか?

 

梶川:私は、広島市出身で中高は広島大学附属に通いました。1992年に大阪大学の経済学部へ入学し、学生時代に2社のベンチャーに関わっています。


1社目のベンチャーと2社目のベンチャーの間は、TACで公認会計士の勉強をしていました。1年半勉強して、合格確率は高いはずだったのですが本試験で不合格となりました。これは、公認会計士の仕事にご縁がないと解釈し、資格勉強を撤退。しかし、今思えば私の性格上、会計士にならなくて本当によかったです。不向きでした……。


高野:確かにそれは……私も納得します(笑)

 

梶川:2社目はスタート時期にお世話になっていました。その後、大手が買収したこともあり、インターネット関連の起業家・経営者と多くの接点が生まれました。

 

高野:1社目はバブル時代のいわゆる学生企業、2社目はインターネット黎明期のネットベンチャーと幅が広いですね。

 

梶川:当時の仲間からは、今でも沢山の刺激を受けており、負けないぞ!という気持ちと感謝の気持ちでいっぱいですね。

 

高野:ちなみに梶川さんの世代で学生時代にベンチャーで働く選択はレアだったのではないでしょうか?どんな理由からベンチャーで働くことを検討されたのですか?

 

梶川:私が大学に入学した時、大阪大学ではオウム真理教が凄まじい布教活動をしていました。この状況を目にした時、この大学は怖い大学で、ここにいちゃダメだと外部に目を向けました。

 

新卒でリクルート、そしてグローバルな仕事を求めてSonyヘ転身

 

高野:梶川さんは新卒でリクルートに入社されていますね。なぜ、ファーストキャリアでリクルートを選ばれたのですか?

 

梶川:リクルートに入社した理由はシンプルです。周りの優秀な方がみんなリクルートに入っていたのでリクルートを選びました。リクルート1択でしたね。そもそも、リクルートしか内定を出してくれなかったですし(笑)

内定者時代から、リクルートの学生アルバイトとして働いていました。バイト先は「メディアデザインセンター」という研究機関で、当時はリクルートに入社してからも、最先端のネット関連の仕事に関与できると思っていました。

しかし、私の新卒入社後の配属先はFAXの一斉送信サービス、FNXの部署だったのです。現在FNXは、リクルートから分社化して、株式会社ネクスウェイとなっていますね。

 

高野:FNX出身のIT企業の社長は多いですよね。

 

梶川:はい。個性豊かな先輩方が多かったですね。

結局、アルバイト半年、社員半年の1年でリクルートを辞めてしまいました。今思うと若気の至りで、教育担当の先輩からは当然怒られ、会社にはご迷惑をおかけしました。

 

高野:リクルートはトータルで1年だけだったのですね。

 

梶川:その後、Sonyに転職しました。大学時代に知り合ったSony社員から「音楽配信事業を立ち上げるから一緒にやろう」とお声がけ頂きました。これが1997年の話でiPod・iTunesすら存在していない時代です。ちょうど、スティーブ・ジョブズが復帰した頃ですね。当時SonyはAppleやMicrosoftと連携していました。

Sonyで音楽配信事業を立ち上げて、ネットワークウォークマン等のプロダクトを世界中で売ったことは貴重な経験です。日本で立ち上げ、アメリカ・ヨーロッパ・アジアと世界を舞台に仕事をすることが出来ました。

 

高野:梶川さんは本当に何でもこなしてしまいますね。

 

梶川:Sonyという10万人以上の社員が働くグローバルな環境で、世界を舞台に勝負できたことは、本当に楽しい仕事でした。

世界中に展開することこそできましたが、使い勝手とビジネスモデルの悪さ、社内政治など色々とあり、結果、皆さんご存知の通り、ビジネスとしては上手くいきませんでした。経営の難しさを垣間見ることとなりました。

Sonyで働けたことは、私のキャリアの財産です。ビジネスが世界に広がる可能性を感じ、Sonyには世界で仕事をする楽しさがあり、外貨を稼ぐ面白みも教えて頂きました。「外貨を稼ぐ」というテーマは、今のサンブリッジの仕事にも繋がっています。

 

高野:グローバルな仕事はSonyで働いたからこそ出来たことですね。

 

梶川:これは、当時のリクルートでは出来ない仕事でしたね。今でこそリクルートはグローバル企業になっていますが、私が入社した当時は完全にドメスティックでした。

Sonyからその後のWarner Musicと合わせて、トータル約6年間、音楽ビジネスに向き合いました。音楽配信市場の拡大に少しは貢献出来たかもしれませんね。

 

 

大企業の経営の失敗を垣間見て結果、自らが経営者になると決めた

高野:Sonyでは経営の難しさを痛感されたとお話されていましたよね?

 

梶川:はい、Sonyで経営の難しさを痛感し、それなら自分で経営者になるしかないと決意しました。

そんな時、経営を学ぶ修羅場のような環境があると、大学時代に経験した1社目の学生ベンチャーの先輩からお誘い頂いたのが、半導体商社のチップワンストップでした。チップワンストップは、マザーズ上場を果たし、取締役として経営目線の仕事、意思決定を経験できました。

 

高野:梶川さんこれは明確な成功体験ですね!

 

梶川:末席の取締役としてある責任範囲で貢献は出来たと思います。大学1年生の頃のご縁が、こういった仕事に繋がったり、周りのご縁が豊富であることは、私が恵まれていることのひとつですね。

特段明確な人生の目標がある訳ではないですが、何かと仕事のご縁は頂けるようで、有り難いです。とはいえ、ご縁がある人や友達との仕事は、それはもう、色々とありますよね……。

 

高野:そうですね。ちょっと赤裸々には書けないですね(笑)

 

梶川流「仕事の得意に気がつく理論」

高野:以前お話し頂いた、梶川流「仕事の得意に気がつく理論」はキャリアを考える上で皆さんに知って頂きたい理論だと思っています。

 

梶川:私自身、様々な仕事を経験していますが、仕事選びは難しいと痛感しています。とはいえ、何らかのフレームワークはあるのでは?と思っており、私のオリジナルでお恥ずかしいのですが、「仕事の得意に気がつく理論」をご紹介させて頂きます。


高野:この章は、梶川さんの講義形式でお願いいたします!


「得意↔不得意×好き↔嫌い」のマトリックス

 

梶川:「得意↔不得意×好き↔嫌い」のマトリックスを用いてお話させて頂きます。

 

「嫌い×不得意」:この仕事はそもそも誰もやりません。

「好き×得意」:この仕事は誰もがやりたい仕事です。プロ野球選手・プロのミュージシャン等が該当します。しかし、高校から大学と普通に勉強し、社会人になる方は、「好き×得意」に未だ気がついていないです。気がついている人は幼いうちから既にやっていますからね。

「好き×不得意」:この仕事に大半のビジネスパーソンはハマってしまいます。好きを言い訳に不得意な仕事を続けてしまうのです。まさに「好きで不得意は蜜の味」です。100の努力で1の成果しか出ないのに、気合と根性が好きな日本人の美的感覚にマッチしており、すぐに撤退すべき領域にも関わらず、撤退できない負のループにハマってしまいます。

 


梶川版:「得意↔不得意×好き↔嫌い」のマトリックス


「好き×不得意」を私に当てはめてみると、以下の3つです。この3つは私の大好きな領域のため私には向きません。

①音楽
②Consumer(一般消費者)向けビジネス
③博打の才能

①音楽:3歳からバイオリンを習っていたこともあり、音楽は大好きです。しかし、ビジネスとして音楽と向き合うことは、悲しいかな向いていませんでした。

②Consumer(一般消費者)向けビジネス:私の気持ちとしては、一般消費者向けに、どーーーんと売れる仕事をしたいのですが、得意なことはロジカルかつ合理的な領域なので、これまた残念ながらBusiness(法人)向けしか向きません。

③博打の才能:博打の才能ある人、本当に羨ましいですが、私には博打の才能よりは、努力の才能の方があるようです。

結論、私は①BtoB領域・②ロジカルな世界・③努力の積み上げ型で勝負する領域が向いているようです。今、私がいるサンブリッジは、自分の得意に近い領域ですね。

20代くらいの若い時にやるべきは、「嫌い×得意」な仕事です。苦手意識や食わず嫌いだけど、実は得意な仕事を人は持って生まれます。得意であれば、1の努力で100の成果が出ます。しかし、この領域は自分では気が付きにくく、他人(顧客や上司)に気が付かせてもらうほうがいでしょう。

得手不得手はやってみないとわかりません。ポイントは継続的努力ではなく、撤退基準を事前に決めることです。例えば、1年やって駄目な仕事は辞める等です。不得意は得意に変わりづらく、変える努力は仕事のROIに似合いません。

個人も組織も成長続けられる環境が大切です。「自分がいい人材であるか?」「いい会社で働けるか?」と考えるのは幻想に過ぎません。そんな解などないと思っています。

Aさんにとっては「xが最高でyが最悪」、Bさんにとっては「xが最悪でyが最高」かもしれません。環境が変わるだけで人は輝き始めるのです。原因は、多くの人が「好き×不得意」を仕事にしてしまうためです。自分も2回失敗しているのでわかります。

本マトリックスの二軸は主語の違いがあります。「好き↔嫌い」の主語は「私」。「得意↔不得意」の主語は「他人から見て貴方は」です。仕事の成果は顧客を中心とした他人が決めるものです。

他人のフィードバックを得ながら、自分の得意に気がつく旅が職業人生です。早くて30代後半、通常40代以降に気がついてくると思います。「好き×不得意」は仕事ではなく、趣味にすれば良いのです。

「好きを仕事にしよう!」よりは、「得意なことを見つけてみよう!」と考えてみてください。案外不思議な得意が見つかるものです。

「好きで不得意は蜜の味」これは若いうちに気がついておきたいです。人間は感情の動物のため、自分と周りのバイアスについつい流されるのです。

 

 

サンブリッジは合理的な営業・マーケティングの仕組みづくりを支える


高野:ここからはHPを読んでも中々わからないサンブリッジさんについて、詳しく教えてください。


梶川:わかりづらくてすみません……。サンブリッジは自社プロダクト+マーケティング・オートメーション(MA)、SFA、CRMを繋げた、合理的な営業・マーケティングの仕組みづくりを提供している会社です。

収益源は2つ、1つ目はSalesforceを中心とした受託開発ビジネス。2つ目はSalesforce関連の自社プロダクトの開発及び販売です。


高野:これはSalesforceからコンサルの依頼が来るのですか?それとも自社でもSalesforceを利用したい顧客開拓も担っているのですか?


梶川:両者です。

例えば、「HRテック最新ソリューション10」という展示会があったとします。そこにキープレイヤーズさんが出展したとしてみましょう。幕張メッセに来た1,000人と名刺交換をしたとします。その1,000人は将来お客さんになる可能性のある見込み客になります。

我々はこの名刺を、将来の顧客コンタクト情報(リード)、と位置づけます。将来の顧客になるかどうか見極めるには、自社プロダクトの名刺管理サービスSmartViscaで名刺情報をデジタル化して、MAを活用します。MAは、顧客になるかどうか振るいにかけることができる訳です。


Aさんは24h以内にアクセスした。Bさんは月平均12.4回のところ22.5回アクセスした。Cさんはホワイトペーパーをダウンロードした等Webを中心とした行動は自動的にトラッキング出来ますよね。

このような行動トラッキングと重み付け(スコアリング)により、1番から1,000番まで顧客になりやすい順番を確率的に得ること出来ます。それならば上位の見込み客からアタックする方がいいですよね。


高野:ロジカルですね。


梶川:私たちは、気合いと根性という非合理的な営業よりは、数字の裏付けがある合理的な営業を自社でも展開していますし、お客様にもお薦めしています。

弊社の提案は、経営者には響きやすいですね。一方、顧客の事業理解や横断的な製品知識が必要となるため、簡単・単純ではない領域です。事業部を横断して経営者の視点で経営・事業課題を読み解く必要があります。


高野:ここがサンブリッジさんのジアタマがいい人採用に繋がっているのですね。


梶川:はい、おっしゃる通りです。

我々は、自社を「販売代理店」ではなく「購買代理店」と位置付けています。お客様の購買のお手伝いをして、ご評価頂きたいと思っております。

お客様が求めるソリューションは、あくまでも最先端がいいとは限りません。お客さまの最適な購買の組み合わせをご支援して、お客様の成功にどう貢献できるのかを追求しています。


高野:Salesforceの導入支援などをしている会社はライバル会社になるのですか?


梶川:そうですね。国内に約350社のSalesforce導入支援会社があります。

MA、SFA、CRM領域はロジック中心の仕事が多いですね。ロジック通りに動く仕事は、私にとっては相性がいいです。

 

サンブリッジの採用戦略

 

高野:ここからは先ほどのお話にも共通しますが、採用ターゲットに関して教えてください。まず、大前提として、ジアタマが良い方を採用されていますね。


梶川:加えて、「大谷翔平世代」と勝手に呼んでいますが、昭和の引力から解放されたnewタイプを大歓迎しています。昭和の引力から解放されたnewタイプとは、主に平成生まれ以降の若者が多いです。昭和の引力から解放されたnewタイプの方とお話すると、何か根本的な考え方の違いを感じますね。

私は昭和の人間ですが、newタイプがこれからの日本を変えて行くのだと、大いに期待しています。


高野:私は、昭和の引力から解放されたnewタイプ永遠の20歳です!


梶川:バレてますよ!(笑)

日本の営業とマーケティングは労働生産性に課題がある領域です。仕事の「あり方」から問い直し、「やり方」を変えれば「働き方」が変わり、労働生産性が改善、付加価値もあがります。ここが変われば、日本の事業や産業の世界におけるプレゼンスが上がると思っています。

弊社はビジョンとして「世の中の『仕事のあり方』を変える」を掲げて、自社も含めてあり方・やり方を変えることに貢献したいと思っています。

高野:営業とマーケティングの労働生産性が高くなることで仕事の効率がよくなり働き方改革にも繋がりそうですね。


梶川:またSalesforceに代表されるSoftware as a Service=SaaSは、より人間が、人間的な仕事に集中することを実現しているように感じます。

例えば開発の仕事でいえば、手間がかかる面倒なことは雲の向こうにお任せして、プロジェクトマネジメントや事業コンサル☓システム構築といった、顧客の課題解決にエンジニアが注力できます。このような対人間の仕事はAIに代わられることはないですよね。

人生100年時代で80歳まで働くと考えた時、弊社社員が、複数回学び直しを通じて、どうやって80歳まで現役で働いてもらえるかを考えることが、私の宿題のひとつですね。


高野:
ライフシフト。これからの社会を考えますと年齢不問で優れた方に働いていただく環境が大切ですね。素敵なお話をありがとうございました。

キープレイヤーズ高野のコメント

当社メディアをご覧いただいている方の中には、サンブリッジさんを投資会社(VC)としてご存知な方が比較的多くいらっしゃると思います。一方で事業会社とVCを分離した後、近況の変化についてあまり知られていないのではないでしょうか。


サンブリッジさんは、会社選びをする中でB2Bに興味があり、ジアタマに一定の自信をお持ちで成長企業に興味があるという方にとても向いていると思います。現在、サンブリッジさんは第二の創業とも言える転換期を迎えています。


創業者のアレン・マイナーさんがSalesforceをはじめとしたSaaSグローバル企業の素晴らしいサービスを次々と日本に持ってきています。それに加えて、リクルート出身のサンブリッジ社長の小野さんが、営業組織と新規事業を作り、梶川さんが人と組織の課題解決や海外事業の展開なども担っています。


このように、ホームページだけでは伝わりにくい魅力が多々ありますので、ご興味のある方はお気軽にご連絡ください。

 

<取材・執筆・撮影>高野秀敏・田崎莉奈

執筆者:高野 秀敏

東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。11,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。55社以上の投資、5社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。149社上場支援実績あり。55社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を国内・シリコンバレー・バングラデシュで実行。キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。
一覧に戻る