大企業で優秀な若手ほど退職してしまう理由

コラム          
       
       
     

「優秀な若手が辞めてしまう」
最近こういった話をよく耳にします。私の周囲でも実際に起きています。経営者にとっても、従業員にとっても、企業にとっても、喜ばしくはない状況です。なぜこの状況が起きてしまうのか、考察してみました。

仕事の面白い/面白くないには成長実感が影響している?

答えの一つに、成長実感の有無があるのではないかと考えています。入社1年目は全てのことが新しいです。社会のルール、ビジネスのルール、社内のルール、人間関係など。学生時代に自分でビジネスをしていた人にとっても、新たな刺激が多く、苦しくも楽しい期間でしょう。正にスポンジのように様々なことを吸収し、自分がいろいろなことをできるようになることが一番実感できる期間だとも思います。

これが早い人では2年目の後半に、もちろん職場環境や異動の有無にもよりますが、異動が無かった人でも5年目までには、「なんか仕事が面白くない」と感じるタイミングが訪れるようです。そしてその話を伺っていくと、仕事で結果が出せている人ほど、以前よりも成長実感を得られなくなっているという人が多くいらっしゃいます。

成果を出せている人ほど成長実感が得られなくなる理由

“仕事が面白かった時”の特徴として、やっているときはむしろ苦しかったのに、振り返ってみると、自分ができることが飛躍的に増えたり、大きな成果が出せるようになっていたりした、ということは心当たりがあるのではないかと思います。そして、一度その業務で大きな成果が上げられると、“コツ”を掴み、同じような業務において、以前よりも労することなく成果が出せるようになる。

これは筋力トレーニングの構造と似ていますね。ベンチプレスで80kgを上げようとトレーニングをしている際は、なかなか持ち上がらず、苦しい時間が続きます。しかし、一度持ち上げられてしまえば、その後再度持ち上げるために、以前ほどの労力はかからなくなる。※もちろんトレーニングを継続している前提ではあります。

この時期においては、自己肯定感も得られ、評価もついてくることから一定の満足感が得られています。一方で、この時間が長引くことによって、段々と「なんか仕事が面白くない」と感じ、「このままでいいのだろうか」という焦燥感に駆られる時期がやってきます。そして、その直感の通り、そういう働き方をしているときは成長スピードが鈍化していることもキャリアを振り返った際に多くあります。

成長し続けるための環境とは?

では、どのような環境に身を置けば、成長し続けられるのでしょうか。ジョフ・コルヴァンの著作「究極の鍛錬」によると、“鍛錬”によって人はその能力を成長させることが可能であることが研究結果として発表されています。
そして、成長するために必要な環境を、自己のスキルとの対比で3つのZoneに分類しています。それが下記の3つです。
 ・PanicZone
 ・LearningZone
 ・ComfortZone

それぞれのZoneを図解すると下記のようになります。

成長し続けるためには、このLearningZoneの仕事のシェアが高い状態を維持することが重要です。よくスタートアップは成長が早いと言われていますが、その要因の一つとして、サービスやプロダクトの成長とともに仕事内容が次々と変化し、やるべきことがどんどん変わっていくため、LearningZoneの仕事が次々と社内に生まれる環境にあることが挙げられます。

一方で、大企業では、新たな業務よりも既存の業務のシェアの方が圧倒的に高いです。そのため、どうしても同じ業務を担当する期間が長くなる可能性が高くなります。するとComfortZoneの仕事が増え続け、LearningZoneの仕事が減り続けてしまう構造にあると言えますね。加えて、年次とともに自分も成長し、できることが増えていくため、組織内で新たな仕事が生まれ続けない限り、社内にはComfortZoneの仕事が増え続け、LearningZoneの仕事は減り続けることになります。

成長する環境を作るために意識すべきこと

そのような環境の中でも成長をし続けるために、何を意識すべきなのか。まず、それを考えるために、今の自分の仕事を100とした時に、3つのZoneの仕事のシェアを考えてみるのがいいと思います。

7割以上がLearningZoneの仕事だと考えるなら、あなたの環境は非常に恵まれていると認識できますね。とにかく目の前のことを一生懸命やり、ぜひ能力を伸ばしていってください。

一方で、ComfortZoneの仕事が7割を超えているならば、時間の使い方を改めて考える必要があります。もしあなたが、あと数年でビジネスから離れることを考えているのなら、そのままでも大きな問題はないと思います。ただ、今後20年、30年とビジネスの世界で戦っていくのだとしたら、世の中の変化よりも早いスピードで自分を変化させていくためにも、ぜひ新たなチャレンジをしてほしいですね。

LearningZoneの仕事は作り出せる

転職や起業なども1つの手段としてありますが、そこまでリスクを取らなくてもいくらでも方法はあります。副業という形で今までと違う仕事をするだけでも多くの学びがあるし、もし副業が禁止されているならば、ボランティアという形で手伝えばいいです。

今後、労働力の確保が難しくなっていく日本において、無償で手伝いたいという人を無碍にすることは、合理的には考えられないと思います。もし、それも難しいということであれば、社内での異動希望を出すでもいいですし、それも難しいなら社内の別の部署の人に声をかけて、手伝わせてもらえばいいです。社内で手伝う人をいらないというほど、余力のある部署はほとんどないのではないかと思いますし、それがきっかけでその部署に異動することだってあるかもしれません。

反対に、もし経営者や管理職の方がこちらを読んでいただいていたら、あなたのそばにいる優秀な人材ほど、上記のような行動を起こす可能性があります。新たな仕事を作り続けなければ、成長を求めて離れて行ってしまうリスクが高いことも考えて事業を成長させて欲しいですね。

どの立場であれ、こういう状況に直面し、状況を打開したいと思っていらっしゃれば、
力になれることもあるかもしれないので、私まで連絡をください。

執筆者:高野 秀敏

東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。11,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。55社以上の投資、5社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。149社上場支援実績あり。55社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を国内・シリコンバレー・バングラデシュで実行。キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。
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