こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職のサポートをしているキープレイヤーズの高野です。
スタートアップに転職しても最近は年収アップするパターンもありますよという記事が出ていましたね。
ただし、高給の大手からシードやアーリーのスタートアップ転職をする際は、年収などの待遇は基本的にはダウンするものと思ってください。嘘をつくのも嫌ですし、スタートアップ転職を煽りたくないので正直に今回書こうと思います。転職して「こんなはずじゃなかった」「聞いていたのと全然違う」と言われたくないんですよね。こういうことを書くと「高野さん、本当のこと書かないでよw」と言われることがあります。しかし、やはり正直に良い点も、課題点もお伝えした上でスタートアップ、ベンチャー界隈に挑戦してもらいたいと思っています。キープレイヤーズも16年もやりました。経験に基づいてお話ししたいと思います。
待遇が悪くなってでもスタートアップで得るものを求めている方に転職してほしいと思っています。この記事ではリアルな事情を紹介しますので、スタートアップへの転職を考えている方の参考になればと思います。
高野さんの記事は、参考によく使わせて頂きます
— つぼた喜業家@事業継承と創業者の終末期の看とりも出来るエンジェル投資家 (@KosukeTsubota) May 9, 2020
【スタートアップ/ベンチャー転職の失敗】目先の年収にこだわりすぎた例 https://t.co/zRJIn1u62J @さんから
参考になったという声もいただき、大変励みになっております!
目次
スタートアップ/ベンチャーの転職時の年収相場が上がっている理由
最近の日経新聞のニュースで、スタートアップの平均年収が720万円を超えているのを見て、高いなと思った方もいるかもしれません。平均年収の増加につながっているのは、資金調達の環境が整ってきたことが、投資家目線では大きいです。資金調達額も増えてきているなかで、人材に投資する経営者が増えてきました。
安い給料で長時間働くという形態ではもはや人が採用できず、優秀な人に、高い給料で働きやすい環境できてもらいたいという会社さんが増えてきています。結果として、年収相場もあがってきています。また、YappliのCFOである角田耕一さんもtwitterでおっしゃっていましたが、スタートアップは新卒ではなく中途がボリュームゾーンなので、社会人1~2年目の平均年収を下げる要因が少ないことも平均年収が高く見える理由でもあります。
プレイドさんの平均年収はなんと887万円(ヤフーファイナンス調べ)。これはスタートアップ、ベンチャー経営者界隈ではかなり話題。この給与を出してビジネスが回るのか。当然年収を出せば採用できるわけですが、そのためには利益率の高いビジネスをする必要があります。これが案外できないものなんですよね。
ただし、720万円が平均というのはちょっと高すぎる
私は転職エージェントとしてスタートアップへの転職を相当数支援してきました。スタートアップの投資支援をしているので、転職した方の情報というのは相当知っていますが、平均が720万円というのは少し高すぎる気がします。調査を否定するわけではないのですが、役職クラスの平均を取ったのではないかと思いました。事実、マザーズ上場企業の平均年収のデータは公開されていますが、平均400万円台から500万円台が多いと思います。
当然、幹部クラスだと1000万円やそれ以上を出しているのは事実ですが、実績のある方や、外資系で第一線で活躍してきた方などがそれに該当します。近年上場されたカオナビさんでも平均600万円の年収と出ていて自分の感覚ですと高いと思ったくらいでした。カオナビさんは平均年齢も34歳超だったので、少し高めになっているかもしれません。
スタートアップ/ベンチャーに転職したら年収が下がる、低い?
さて、年収について考えてみます。一般論としては大手企業の方が利益率が高い、利益自体の総額も大きいです。そのため大手ほど給与が高い傾向にあります。また外資系や投資銀行、戦略コンサル、M&A仲介などのように相場が高いところが存在しています。そういった会社に比べて、シードやアーリーの会社は転職したら年収が下がることが多いです。多くは下がると思います。私自身、あまりスタートアップを煽りたくないのでここは正直に書きました。ミドル、レイターの超大型調達の会社は給与が現状維持のすていであるということも多いです。もちろん給与とは現職、前職に影響を受けますので「今いくらの給与なのか」は関係してきます。以前に投稿でスマートHRさんが前職の給与がいくらかは考慮に入れないという投稿をしていました。これはすごい画期的なことで多くの会社はあまりこういうことをしていません。
少しここから体験談を書きますね。自分も振り返りますと新卒で入った会社は未上場のベンチャーで、給与は22.5万円でした。当時は今と時代も違うので夜遅くまで働き、土日も出社していました。その時に圧倒的に仕事の経験を積んだので20代での成長っぷりはすごかったようです。このようですというのは、同期に久しぶりに会うと「学生時代と全然違うね。なんかすごい成長してるな。悔しい」と言われました。スタートアップ、ベンチャーの年収は低いことが多いです。
ただしそれは経営者になると思えば、CxOになると思えば経験した方が良いと思います。起業したら交通費さえ自腹ですので。また営業するにしても採用するにしても広報するにしても「なにその会社知らない」とはっきり言われるくらいの高い壁があってこそ成長します。なので、自分は給与は全然気になりませんでした。また結果論ですが株も持たせてもらいましたし、1年目、2年目からリーダーやマネジメント的なこともさせてもらいました。「成長」することを強く望んでいた自分には良かったです。
スタートアップ転職して成功するパターン、失敗するパターン
スタートアップに転職して成功するのは、目先の年収を気にせず、目の前の仕事に打ち込んでいる人です。例えば総合商社から転職しようとすると基本的には年収ダウンですし、長期的に見ても、総合商社のほうが、ベンチャーよりも待遇面はいいですね。それでも、起業したいからスタートアップで修行したい、スタートアップのビジョンややりたいことに共感して入ってその後のキャリアで成功している方も多いです。
みな、目先の給与よりも将来の成功、やりたいことをとって行動しています。給料のことは忘れるくらい没頭できるような人でないと高年収の企業からベンチャーへ行くのはおすすめしません。一方でオファー金額が現職より高く、ついついうっかり転職したという方も多いです。年収を上げてオファーされることは悪いことではもちろんないのですが、シードやアーリーのスタートアップでそれを続けたら会社はいつまでたっても赤字になります。これはユニットエコノミクスを計算したらすぐにわかることです。よく話を聞いてみると決して上場できないような事業を裏でやっているなんて会社もあります。
またストックオプションもある程度基準というものがあります。よほど実力がない限り最初から付与されるというわけではありません。にもかかわらず「SO5%あげるよ」なんて気軽に言ってくるような社長は口だけである確率が高いので注意です。
スタートアップの年収事情
スタートアップの年収事情は最初に述べた通り、環境は良くなっています。資金調達の可能性が広がったことで、給与の支払いが遅れるとか、給与が払えなくなったというようなことは耳にすることはなくなりました。スタートアップ=ブラックで給料が払われないのではということは全くないです。私がお付き合いのあるスタートアップはたくさんありますが、給与が払われないとなるとその噂が一気に広まりますし、誰も入ってくれなくなります。
スタートアップでも、専門性を持っていて事業の中核を担っている人の場合は、社長や役員よりも給料をもらっているということも珍しくありません。獲得が難しい職種だと特にその傾向があります。ベンチャーの経営者も自分の給料を100万円上げることよりも、長期的に会社がどうやったら伸びていくかを気にしていますので、従業員のほうが仮に高くても気にしないくらいの経営者のほうが大きな成功をつかめると思っています。
エンジニアやマーケティングといった専門性を磨けば、交渉次第で年収はでます。私のようなスタートアップへの紹介を行っているところですと実際の事例も知っていますので、事例をまじえて具体的にいくらかというのをお話できます。
また、キープレイヤーズでは年収査定というのをやっておりますのでぜひご利用ください。
スタートアップ転職で年収1000万円は可能か?
スタートアップ転職で年収1000万円は特に問題なく可能になりました。どういうパターンかと言いますとミドル、レイターのスタートアップで大型調達をしている。そしてCxOレベルの方です。最初から取締役ということはなかなか難しいのですが取締役候補として採用、または責任者クラスとして採用というケースです。1000万と書きましたが、1500万以上というケースもあります。2000万円を超えるというケースはほとんどないと思っていただきたく。またファンドが買収したベンチャー(ベンチャーというのかわかりませんが)については、経営者やCxOについては2000万円以上というケースももちろんあります。売上や利益規模が違うので給与は出せますし、IPOや売却になったときに株式のリターンもあるように設計されています。自分自身このような「ファンド案件」にもご紹介しています。
スタートアップのストックオプションについて
スタートアップはストックオプションを配布している企業さんが多いですね。上場したときに株価がつきますが、その株を指定した価格で買える権利がストックオプションです。私はストックオプションの専門家ではありませんので、詳細はご自身で調べていただきたいのですが、会社が上場したときに、安く株を買えるので差額分が利益となります。
こうした制度を利用して、メルカリさんなんかは一般の従業員でも多くのお金を得た方もいます。ただ、みなさん私の知っている限りはストックオプションのために働いているわけではなく目の前のプロダクトをいかに伸ばすか、目の前の成長にいかにコミットするかを考えています。
上場したら社長はお金持ちになるとおっしゃっている方もいますが、社長の株は、それほど多く売り出すわけでもなく、社長が株をたくさん手放していたら投資家たちから不安に思われるので、資産にはなっても現金化を簡単にはできるわけではありません。むしろ私のような投資家のほうが、どちらかといえば現金化しやすい立場にあります。
上場によって社長は株式という資産はできますが、現金という意味でお金持ちにはならず、上場後も株価をあげるために一生懸命事業をしていることを忘れないでください。もちろん、対価としてストックオプションを受け取ることはいいことですし、自分の貢献が目に見える形でわかるのでいいことです。
ですが、ストックオプションでお金持ちになりたいからスタートアップに行くというのは少し違うので、こうした点を勘違いしないでください。
目立っていなくても儲かっている会社は存在
スタートアップはストックオプションを配布して、給料は低いままというのはあるのは事実です。しかし、目立っていなくても儲かっている会社というのはあります。
以前私が取材した株式会社ZIZAIさんは、外部の株主はほとんどおらず、自己資金だけで成長してどんどん新しい事業に投資をしています。スタートアップ=資金調達をして、大勝負というイメージが強いかもしれませんが、独自の資本でのばしている企業もあります。(更新情報: その後なんと子会社をDeNAさんに150億円で売却されました。これはとんでもなくすごいです)
外部の株主がいなければ従業員の給料にも口をはさまれませんし、上場時にストックオプションを配付するときもどんどん配っても、社長の判断で物事がすすんでいきます。
スタートアップ転職を考えている方へ
スタートアップ転職は、起業や成長する会社で力を試したいという人にはよい機会です。
また今までとがらっと環境をかえて勝負をしたいという方にはエキサイティングな環境であることは間違いありません。
キープレイヤーズでは、そうした新しいチャレンジをしたい方へのサポートをおしみなく行っておりますのでぜひキープレイヤーズ高野までご相談にきてください。
高野自ら、LINEやFacebookやtwitterで相談にのります。お時間がある方は渋谷等でお話いたしましょう。
ベンチャー企業の年収について赤裸々に説明している参考動画