【多くの資格は転職に関係ない?】本当に有利になる資格を転職エージェントがご紹介

転職          
       
       
     

「転職で有利になる資格を教えてください。」とよく言われます。2020年3月現在、日経平均が大きく値崩れするなど、日本では不景気の予感がしていますが、不景気になると「手に職つけたいから資格をとろう!」という方が増えます。仕事を失いたくない、という気持ちが強くなるからでしょうか。

ですが、これは冒頭ではっきり申し上げると、転職で有利になる魔法の資格は非常に少ないです。無いよりはいいだろう、ということで取得される方も少なくないですが、取得のために使った時間も考えると、取らない方がよかった、なんてこともあります。

「資格」という魅力はすごいものです。「資格産業」という言葉もあるくらい、ビジネスになります。「資格」が欲しいというのが人間の欲求なのかもしれません。考えてみれば学歴の一つの資格なわけですし。学ぶことは素晴らしいことです。一方で企業が資格を求めているのか?経営者や人事は資格のある人が欲しいのか聞いてみることはかなり大事です。

今回は、これから資格の取得を検討している方に向けて転職が有利になる資格を紹介した上で、採用企業の資格に対する考え方をお伝えできればと思います。

 

転職で有利になる資格とは?

管理事務系の職種以外は業務に活きることが多く、有利になりやすい

転職で有利になると言うことができる資格は、2つだけです。

・法律に関わる資格(司法試験や司法書士など)
・経理、財務に関わる資格(公認会計士や税理士など)

なお、それぞれ法務部、経理財務部に転職する場合に限ります。専門的な知識をもって企業に属する方が少ないので、企業に転職する際に有利になると言えます。実際にご相談いただいた方に、取得するなら上記の資格がいいとセミナーなんかでお話しすると、多くの人が「自分には難しいよ」というような反応をされます。

その他の資格については関係ない、資格なしと大きく変わらない

その他の資格で、転職で有利に働く資格はほぼないと言えるのではないかと思います。宅地建物取引士、証券アナリストなど業界特有のものは、有利に働くこともありますが、業務に繋がらない資格を持っていても企業は採用したいと思わないですよね。

また、考えていただきたいのですが、誰でも取れるような資格を持っていても価値がないのは、言ってしまうと当たり前ですよね。資格を取ることで転職を有利に進めるというのは、それだけ難しいことなんだと覚えておいていただきたいです。

法律に関わる資格(司法試験、司法書士など)の概要

■司法試験

3つのポイント

  • 法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)になるための最難関の国家試験
  • 企業内弁護士なども含め、活躍のフィールドが広い
  • 弁護士の平均年収は約829万円(doda『平均年収ランキング2018』より)

司法試験は裁判官や検察官、弁護士として活動するために必要な能力を備えているかを確かめるための国家試験です。基本的には、法科大学院課程の修了者に受験資格がありますが、司法試験予備試験の合格者も受験することが可能です。

難易度 ★★★★★
学習期間 約6,000時間(※)
合格率 約25%(直近3年間のおおよその平均)
試験概要 短答式と論文式
試験日 年1回(5月) ※5年で5回の受験制限あり。
受験費用 28,000円

(※)学習時間は、CPA会計学院『資格難易度ランキング!勉強時間&合格率から考察する!』から引用しています(以下、同様)。

 

■司法試験予備試験

ポイント

  • 司法試験の受験資格を得るための国家試験
    法科大学院課程を修了しなくても司法試験を受けられるように

司法試験予備試験は、法科大学院課程を修了していない人が司法試験受験資格を得るための国家試験です。近年、受験者数が増えているそうです。

難易度 ★★★★★
学習期間 約6,000時間
合格率 約4%(H23~28年度のおおよその平均)
試験概要 短答式、論文式、口述の3段階
試験日 短答式(5月) 論文式(7月) 口述(10月)
受験費用 17,500円

 

■司法書士

3つのポイント

  • 受験資格なしの国家資格
  • 高齢化社会ということもあり、「相続」「成年後見」「供託」などにも活躍の場が広がっている
  • 試験内容が実務に近いこともあり、就職・独立がスムーズ
  • 企業法務に務めた場合の平均年収は約599万円(doda『平均年収ランキング2018』より)

不動産登記・商業登記といった「登記業務」や「成年後見」「簡裁訴訟代理」などの業務に関わる「身近な法律家」とも呼ばれる司法書士になるための資格です。

難易度 ★★★★★
学習期間 約3,000時間
合格率 約3%(直近3年間のおおよその平均)
試験概要 筆記試験(択一式・記述式)と口述試験の2段階
試験日 筆記試験(7月) 口述試験(10月)
受験費用 8,000円

 

 

経理、財務に関わる資格(公認会計士や税理士など)の概要

■公認会計士

3つのポイント

  • 会計資格の最高峰とも言える国家資格
  • 公認会計士は弁護士・医師と並び、三大国家資格と言われている
  • 就職先としては監査法人が多いが、近年はベンチャー企業をはじめとした多くの企業から引き合いがある
  • 弁護士の平均年収は約649万円(doda『平均年収ランキング2018』より)

「財務諸表監査」業務は会計士の独占業務です。上場企業や上場を希望する企業の決算書をチェックし、保証する役割があります。合格者は、監査法人をはじめとして、財務系コンサルティングや事業会社のCFO(最高財務責任者)などで活躍される方が多いです。

難易度 ★★★★★
学習期間 約3,000時間 
合格率 短答式試験約20%、論文式試験約35%(直近3年間のおおよその平均)
試験概要 短答式(年2回)と論文式(年1回)の2段階
試験日 短答式(12月・5月)/論文式(8月)
受験費用 19,500円

 

■税理士

ポイント

  • 企業の経営をサポートする、会計・税務のスペシャリスト
  • 11科目から最大5科目を選び、一度に受験することが可能
  • 一度合格科目は一生涯を通じて有効、社会人になってからコツコツ取得する方も多い
  • 税理士の平均年収は約603万円(doda『平均年収ランキング2018』より)

税理士は、税務相談や税務書類の作成、申告の代理を行います。また、業務の代行だけでなく、企業経営の発展に資するアドバイスをすることも税理士の大切な業務です。

難易度 ★★★★★
学習期間 約2,500時間
合格率 約15%(直近3年間のおおよその平均)
試験概要 記述式
試験日 年1回(8月上~中旬の連続する平日3日間)
受験費用 1科目受験 4,000円     以降、1科目追加ごとに1,500円

 

■日商簿記2級・1級

ポイント

  • 2級を中心に、ビジネスの現場で活かせる内容に試験がリニューアルされたため、勉強する価値が高まった
  • 経営分析も可能な1級は取得者が少なく、差別化を図ることが可能
  • 経理の平均年収は約491万円(doda『平均年収ランキング2018』より)
難易度 ★★★
学習時間 2級:約250時間、1級:約800時間 
合格率 2級:約15%、1級:約10%(直近3年間のおおよその平均)
試験概要 記述式
試験日 年3回(6月・11月・2月)※1級のみ2月なし
受験費用 2級:4630円、1級:7,710円

 

IT系の資格は役に立たないのか?

現行のIT系の資格でIT企業が求める技術水準を知れるものはない

ITの領域は未だに成長産業として注目されていて、エンジニアになりたいという人も増えていますよね。

ただ、ITの領域においては、「資格」が役に立つということは少ないです。今用意されている資格は、IT企業で使われている開発技術からは少しかけ離れてしまっているからです。

プログラミング言語を学ぶだけではエンジニアにはなれない

同様に、プログラミング塾でプログラミング言語を学ぶことについても、注意が必要です。コーディングができるようになったからといって、Webエンジニアになれるわけではありません。あくまで「未経験」での採用となり、未経験のエンジニアを採用してくれる企業は少ないです。

ただ、エンジニアという職種の中でも、採用してもらいやすいエンジニア領域があります。これは、個々人の適性などにもよって変わるので、エンジニアになりたい、IT系で手に職つけたいという方は、直接ご相談いただければと思います。

資格を取得するなら20代〜30代前半にかけて

資格取得に必要な勉強時間などを踏まえると、法律・財務経理関連の資格を取るのであれば、20代や学生のうちに取得するのがよいですね。30代・40代になるとライフスタイルも変化して、資格を取ることに満足に時間が使えない場合も多いです。

また、出産を控えた女性も資格を取得したいという方が多いですが、出産すると子育てでそれどころでなくなるので、強いて言うなら比較的学習時間が少なく済む簿記2級がいいかもしれませんね。経理で復職したり、転職したりする機会ができます。

資格取得よりも適職を選ぶことが転職では大事

資格はないよりもあったほうがいい、という嘘に騙されない

2種類の資格を紹介しましたが、いずれにしても難易度が高いことは間違いないです。資格取得するよりも適職に就き、企業で勉強しながら専門性を高める方がいいのでは?と私は思ってしまいます。

資格はないよりもあったほうがいい、という言葉も時折耳にします。私は、それくらいの気持ちで取るのであれば、資格を取る時間がもったいないと思います。

未経験者歓迎の求人もありますし、未経験から働く中で結果を残し、キャリアアップしていく方もたくさんいます。そのため、資格を持つことではなく、自分はどんな仕事に向いているかを理解することがより大切だと思います。

最後に

全くの余談ですが、とある社長が資格の学校を買収しました。資格を取得した人たちを今度人材紹介したいんだけどうまくいかないから相談にのって欲しいとのことでした。

自分が中に入ってヒアリングしたところ、資格をとった後に、卒業させないで他の資格を取らせると言います。なんでと聞いたら、卒業すると儲からないじゃないですかと。なるほど・・・と。そしてその資格を評価してくれる企業は特にあまりないと言いますか、あってもいいけどくらいのものでした。

冒頭で紹介したように、「資格ビジネス」なるものが存在するので、本当にそれが自分に必要かは自分で判断したほうがいいですね。

ただ、自分1人では、何に向いているのかわからないことが多いかと思います。人材市場全体で理解のある転職エージェントにご相談いただけるとよいかと思います。

結果の出ない環境で働き続けるよりも、結果の出せる環境を選ぶことで、最終的に学習意欲も増してくるはずです。適職を見つけるためのキャリアカウンセリングは常に行なっておりますので、いつでもお問い合わせくださいませ。

執筆者:高野 秀敏

東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。11,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。55社以上の投資、5社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。149社上場支援実績あり。55社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を国内・シリコンバレー・バングラデシュで実行。キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。
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