インタビュー

元マッキンゼー、キャディ加藤勇志郎氏の挑戦と最強組織の作り方

キャディ代表取締役 加藤勇志郎

東京大学卒業後、2014年に外資系コンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーへ入社。2016年に同社マネージャーに昇進。日本・中国・アメリカ・オランダなど、グローバルな領域で製造業メーカーを多方面から支援するプロジェクトをリード。特に、重工業、大型輸送機器、建設機械、医療機器、消費財を始めとする大手メーカーに対して購買・調達改革をサポートした。他、IoT/Industry4.0領域を立ち上げ時から牽引。製造業分野の持つポテンシャルに惹かれ、2017年11月にキャディ株式会社を創業。

キャディ株式会社

独自開発の原価計算アルゴリズムに則った自動見積もりシステムによって、品質・納期・価格が最も適合する会社とのマッチングを可能にする製造業の受発注プラットフォーム「CADDi」を展開しています。「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」をミッションに、2017年11月に創業。サービスの利用社数は3,000社を超え、全国の提携加工会社数は約100社に。2018年12月に総額10.2億のシリーズA資金調達を実施。2019年夏には板金加工と同程度の市場規模を持つ金属及び樹脂の切削加工品にも対応予定。2021年にアジアNo.1の加工品取扱量にあたる売上300億を誇るサービスを目指します。

音楽漬けで偏差値が38だった高校時代。東大受験を経て得たこと

高野:今回はキャディ株式会社 代表取締役 加藤勇志郎さんにお話をお伺いします。東京大学卒業後、マッキンゼー・アンド・カンパニー(以下マッキンゼー)に入社された一見キラキラキャリアに見える加藤さんがどんな想いで起業されたのか、その真意をお伺いすることを本当に楽しみにしていました。

加藤:この度は貴重な機会をありがとうございます。少しでもこの記事を通して、キャディや私自身について皆さんに知っていただけましたら幸いです。

高野:まずは過去のご経歴からお伺いさせてください。

加藤:少しさかのぼってお話しさせていただきます。中高時代は、レーベルに所属してテレビに出演したり、CDを出すほど音楽に熱中していました。当時は大学進学も考えていませんでしたが、普段は何も言わない母親に大学への進学だけはと説得され、大学受験をすることにしました。

音楽ばかりしていたので、高校3年次の全国偏差値は38で、歴史のテストは2点くらいでした(笑)。小学生の時は全国模試で上位の結果を出していたのですが….。そんな過去の遺産に頼ることもできず、受験勉強を開始してからは1日18時間以上勉強しました。

進学先は家庭の事情もあり、国公立しか選択肢になかったので東京大学を目指しました。東京大学の合格の水準を確認した上で半年計画を作成し、その計画に則り、勉強をしました。この受験勉強で得た、「ゴールから逆算し計画を立て実行する胆力」は、今も活きているかも知れません。

高野:実はビリギャルより凄いのですね!

加藤:努力が身を結び、なんとか現役で合格することができました。一方、勉強のしすぎで頭がおかしくなり、当初は続けようと思っていた音楽に対する熱意を失ったタイミングでもありました。

高野:加藤さんほどの頭脳をお持ちでも、勉強で頭がおかしくなるとは….。本当に血の滲むような努力をされたのですね。

加藤:大学に入学後は体育会のアイスホッケー部に入り、家庭教師のアルバイトを始めたり、極めて普通の大学生生活をスタートしました。

そんな時、アルバイトの面接でその会社の社長に、君面白いから家庭教師じゃなくて一緒に新規事業やらない?と言われたのがビジネスを創る側に携わることになったきっかけです。

エンジニアとして働いたこともありましたし、医療関連の事業を起こしたこともありました。ビジネスの世界は奥が深く熱中していきました。しかし学生ながらに色々なことに挑戦していく中で、より大きな視点を持てる仕事をしたいという欲求が大きくなっていきました。

マッキンゼーで製造業の課題を発見

高野:新卒でマッキンゼーへ入社されています。なぜ、マッキンゼーを選ばれたのでしょうか?

加藤:高校時代の音楽活動にも共通していると言えるかもしれませんが、僕は自分が生み出した価値によって人に喜んでもらいたい、という気持ちを強く持っていると思います。音楽をやっていた当時はそれが目の前の30人、100人という規模でしたが、次第に「より世の中にインパクトをもたらせるような大きな社会課題を見い出したい」と考えるようになりました。まずは世界中の幅広い産業における経営課題に関わることができると思い、マッキンゼーを選んだのです。解決すべき課題を探すための手段として、「幅広い産業×経営目線×グローバル」という意味で、選択肢はマッキンゼー一択でした。

高野:マッキンゼー一択と、私も言ってみたかったです….。

加藤:マッキンゼーは3年で辞めてもう一度事業を起こすことを決めていました。単に辞める期間を定めていたのではなく、僕が決めていたのは「3年でインパクトを出して、辞めても誰もが称賛してくれる人になる」ということです。

なんとなく3年経ったから辞めるのと、そういう姿勢で3年を過ごすと誓うのとでは、全然意味が違うと考えたためです。

高野:素晴らしい姿勢です。

加藤:マッキンゼー時代は、幅広い産業に関与させて頂きました。その中で最も深く向き合ったのが製造業界でした。製造業は日本らしさを感じますし、根深い課題があることに気が付きました。特に最後の2年間は、製造業の課題とトコトン向き合いました。

製造業は180兆円規模の総生産額を誇る、社会性の大きい日本の基幹産業です。。
3年半のうち半分以上は、日本、中国、ヨーロッパ、アメリカなどの世界中のクライアントの工場に常駐して、現場の方々と汗を流す日々で非常に泥臭い毎日を過ごしていました。その中で彼らが抱える構造上の問題への課題意識が大きくなっていき、この領域で起業しようと決めました。

高野:3年でインパクトを出すことに焦りはあったのでしょうか?

加藤:「やばいあと少しで3年だ…」と思ったこともありましたが、目標があったので大きな焦りはありませんでした。実際に製造業のお客様と仕事をして、これだけ大きな市場で、且つテクノロジーが浸透していない領域は、可能性に溢れていると思いましたし、またテクノロジーの恩恵を受けることで多くの人にプラスに作用するという確信がありました。

高野:テクノロジーでの解決に関して、加藤さんお一人では中々できないこともあると思いますが、どのような手法を取られたのでしょうか?

加藤:弊社の最高技術責任者の小橋は経歴もさることながら、僕は彼の技術力の高さ、人間力の高さに惚れ込んでいました。彼とは大学時代にシリコンバレーで知り合ったのですが、小橋はすでにエンジニアとしての経験が豊富にあって抜群に優秀だったので、会った瞬間に「一緒にやるなら彼だな」と直感で決めていました(笑)

一緒に起業しよう!と求婚した訳でもなく、当時はメッセンジャーで定期的にビジネスの話をしていました。その後、事実婚のように一緒に事業を初め、事業アイデアを私が持ち寄っては小橋が技術検証をするというサイクルを繰り返しながら、寝技のように巻き込んでいきました。

高野:このエンジニア採用が難しいご時世に、優秀な最高技術責任を見つけて巻き込んでしまう加藤さん、やはりコンサルタントの時代から経営者としての頭角が現れていたのですね。

加藤:僕は小橋に、優秀な技術を持つといわれる国内の町工場のリアルを伝えていました。具体的には、日本の町工場全体の75%が赤字経営で、平均で見ると約半分の売り上げを特定の1社に依存している状況です、実際、過去30年で町工場の半分は消滅しています。この問題を、僕たちならテクノロジーによって変えていくことができます。

自分がどうにかして解決したい課題が目の前にある。だから、僕はこの産業課題を解決するための手段として起業を選びました。これが、キャディの始まりです。

モノづくり産業のポテンシャルを解放する世界的インフラを目指す

高野:改めまして、キャディさんのビジネスモデルを教えてください。

加藤:図面をアップロードするとわずか7秒で見積価格を表示、各種板金部品を即座に発注できるサービス「CADDi」を提供しています。具体的にはまず、顧客は造りたい部品の3D CADデータをアップロードして、材質や個数、納期などを入力します。そうするだけでシステムが図面を解析して、約7秒で見積金額を表示します。後は「発注」ボタンを押すと、自動で品質・価格・納期において最適な加工会社とマッチングを行い部品を製作、それをCADDiの方で検品・梱包して納品します。価格も納期も、当初に表示した通りに遂行されるのです。

製造業は、180兆円規模の国内総生産額を誇る、日本の基幹産業です。皆さんには日常的なタッチポイントがなく、イメージしていただくことが難しいかもしれませんが、その内の120兆円程度が、この部品調達にかかるコストによって占められています。これほど大きな比率を占めているにも関わらず、調達分野では100年以上大きなイノベーションが起きてきませんでした。

「CADDi」は創業わずか1年強で、累計3000社に利用していただけるサービスに成長しました。
製造業全体の約3分の1を占める多品種少量生産業界(大型輸送機器、産業機械、医療機器業界など)の部品調達においては、不安定な受発注、発注や見積にかかる手間、調達コストや生産側の赤字比率の高さなど、発注側・受注側双方に様々な社会課題がありました。

これらを解決すれば、日本国内にとどまらず、世界中のメーカー、加工会社双方がより付加価値の高い仕事に注力できる。そしてモノづくり産業全体が持つポテンシャルを最大化できると考えました。そのため、キャディは、特注品の発注者と全国の加工会社を自動見積のテクロノジーを用いてつなげるサービス「CADDi」を、世界に先駆けて開発しているのです。

高野:日本の製造業の根本を変えるようなサービスになっているのですね。

加藤:我々の強みは高度なテクノロジー、製造業の調達の専門知識、リアルなサプライチェーンを作る人材の3つをそろえているところです。そして、何よりも町工場をはじめとした現場の声を大切にしています。今でも僕は、お客様であるメーカーや町工場にできるだけ足を運ぶようにしています。

高野:キャディさんの今後を教えてください。

加藤:まず、直近の3年で受発注というコアなニーズに注力して、その分野でアジアナンバーワンの流通額である300億円の規模を目指しています。

そのうえで、グローバルにも展開することで、「モノづくり産業のポテンシャルの解放」を海外にも大きく広げることができます。製造業のサプライチェーンをより強固かつスムーズにするインフラを作るために、すでに20くらいやりたいことがありますね。

その内の1つとして、将来的には町工場のファイナンス面の支援も行います。町工場のキャッシュフローは非常に悪く、資材調達から入金まで長いと半年かかります。3億円の売上を得るのには1億円の資材購入が必要となることもあるため、運転資金に困っている会社が多い。同時にまた、設備投資が難しいのが現状です。

具体的には、銀行や地銀から融資を受けて機械を導入しますが、融資側も、75%が赤字の事業に1億を融資して、本当に機械を導入して大丈夫か疑問に思いますよね。巨額の投資で機械を導入することのメリットすら、判断材料がなく、決断するのが難しいのです。

キャディは、今後この機械を入れたらこのコストがどれだけ下がる、など詳細にスコアリングすることで、町工場のファイナンス面の支援を行っていく予定です。

起業をして気が付いた組織の大切さ

高野:加藤さんはコンサルタントから起業家と一貫して製造業の課題と向き合っていると思います。実際にご自身で起業されてからどんな変化がありましたか?

加藤:一番の変化は、急速に拡大する組織を持ったことです。経営者として営業・エンジニア・CSなど、多部門に渡る組織を束ねる立場になりました。これはこれまでにない経験です。

事業の成長と組織の成長は、同じくらいの重みと難しさです。ミッションを伝えて、自分の考えていることを1つ1つ紡ぎながら、組織として皆の力で進んで行く必要があります。

お互いの理解を進めようと組織のメンバーの多様性を知った時、一人ひとりのタイプの違いや、何に対して恐れ、興奮するのかもここまで違うのかと気づきの連続でした。今でも試行錯誤の毎日です。

高野:加藤さんでもやはり組織の問題にはご苦労があるのですね。

加藤:僕のエニアグラム診断(9つのタイプ別に個人の性格を診断するシステム)の結果は1 3 5の
「改革する人」「達成する人」「調べる人」の3つが極めて高く、他が極めて低いです(笑)

マッキンゼーは3の「達成する人」がたくさんいる組織なので、高い目標を掲げると勝手にモチベーションが上がり、成長していく人が集まっていました。みんな同じようなモチベーション、同じ言語で話せるのでコンテクストの高い議論が可能です。これはマッキンゼーの強みであるのかもしれません。でも、コンサルタントばかりが揃っていては組織も事業会社も成り立ちません。

高野:適材適所ですね。

加藤:具体的な組織の成長に関しては、2017年11月に3人でスタートし、その後、正社員は半年まで3人、アルバイト含めても5人ほどでした。それが、今や社員は28名になり、内定者やアルバイトの方を含めると50名近くの規模まで成長しました。

高野:順調に組織も拡大していますね。

加藤:組織面と比べると事業面の苦労は少なかったです。マッキンゼー時代から現場に足を運ぶことを大切にしていたので、自分の持つ課題感と現実の違和感が少なかったのです。改めて現場にいた経験が強いと思います。

高野:現場しか答えを持っていないことは私も大切にしています。

加藤:それこそ、設立当初は認知度は皆無でしたので、僕自身が飛び込み営業やテレアポをし、ひたすら工場を回る日もありました。しかし、確固たる課題感を掴んでいたので、お客様の心もつかみ、自然と大手メーカーさんの案件を含めてを任せていただくことができたのだと思います。

 

キャディさんはこんな方を求めています

高野:最後に採用に関して教えてください。加藤さんはどんな方と一緒に働きたいですか?

加藤:これまでお話しした通り、僕たちが向き合っている製造業は課題が山積みです。こんな課題と直面したときに良い意味で楽しいと思い、ワクワクした気持ちで仕事ができるかどうかを重視しています。

加えて、バリューに対するフィット感はかなり意識しています。ミッションは、「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」、として社会課題に向き合うことを大切にしています。バリューは「もっと大胆に」「卓越しよう」「至誠を貫く」「一丸で成す」です。

現在はスキルセットやこれまでのご経験に関係なく、全方位的に全ポジションを採用しています。そのため、これまで誠実に仕事と向き合ってこられ、且つこれらに対するフィットがある方に、ぜひキャディでご活躍いただきたいですね。最後に一言、僕が大切にしている「現場に行くこと」を恐れない人と働きたいですね。

高野:素敵なお話をありがとうございました。引き続き応援させてください!

キープレイヤーズ高野のコメント

キャディさんは、ベンチャー、スタートアップ界隈で話題でして、とても評価が高い企業です。

「モノづくり産業のポテンシャルを解放する」というミッションがシンプルでわかりやすく、市場規模も大きいです。加えて、経営メンバーが優秀です。投資家サイドからの加藤さんのご評判もとても良いです。自分自身がエンジェル投資をよくしている関係で、VCの人たちともほぼ繋がっているというのもありまして、色々な良いご評判を伺っています。

加藤さんとは、実は学生時代にあったことがありまして、今何かとビジネス書?や恋愛本?で有名なスダックスこと須田仁之さんのご紹介でした。忘れもしない新宿のベローチェでした。その時から、なんと聡明で成熟した若者なんだと感動した記憶があります。そのまま成長されていて素晴らしいなと思います。エンジェル投資家で有名な有安さんも応援されていて、今後ますます期待のスタートアップです。転職先としてとても良いチャンスがあると思います。

また、ミッションがクリアで事業モデルが堅実な事実に加えて、社員の皆さまは非常に働きやすい環境であると口を揃えてお話しされております。実際に私がご紹介させていただいた方も、現在やり甲斐を持ってお仕事されていると伺っております!

余談ですが、インタビュー記事内にあるエニアグラム。まだ、やったことがない方、人や組織運営のヒントを探されている方は参考になりますので、是非やってみてください。サイバーエージェントの社員さんもやっていて有名ですよね。ちなみに私はタイプ2でした。

引き続き、素敵な企業さまをご紹介させていただきます。

高野 秀敏

1999年に株式会社インテリジェンスへ入社。2005年に株式会社キープレイヤーズを設立。3000名以上の経営者の相談と、10000名以上の個人のキャリアカウンセリングを行う。また、55社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を国内・シリコンバレー・バングラデシュで実行。キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。転職・採用、投資のご相談は Facebook Messenger、もしくはLINEからご連絡くださいませ。
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