バーンレートなど、企業の経営や投資に関する用語で、なんとなく理解はしているつもりだけれど、正しく使えているのか不安だという声を時折耳にします。
私自身、理解できているか不安だったり、わからないことがあったりした場合は、すぐに調べるようにしていますが、それでも言葉はどんどんアップデートされていくので、大変ですよね。
追記しますね。この記事が今不景気になってきてよく読まれているようです。不景気になればコスト意識が高くなるのは当然のことですよね。私のところにも「コストを下げたいのですが何か良い方法はないですか?」という相談がよくいただくようになりました。今はコスト削減コンサルが伸びてますね。
これからは不定期ではありますが、そうした言葉について解説していければと思います。今回は、バーンレートについてです。ぜひご覧くださいませ。
目次
バーンレートとは
バーンレートとは、会社を経営するにあたって1ヶ月あたりに消費するコストのことです。
「資金燃焼率」または「現金燃焼率(キャッシュバーンレート)」とも呼ばれます。
◇burn 【他動詞】に火をつける(解説的語義)…を燃やす,焼く
◇rate 【数値】(全体の中で)占める割合
燃やされる「割合」が指すものは、ずばり「お金」です。
スタートアップ会社の資金は、経営コストによって燃えていく=減少していくのです。
バーンレートという言葉は、ことスタートアップ業界では「資金がなくなるまでの猶予期間」という意味合いで使用されるケースも多いので注意が必要です。次に紹介するネットバーンレートで銀行残高を割ることで、資金がなくなるまで期間が分かります。
企業の駆け出し時期は、売上よりもコストの方がどうしても多くなってしまいます。このバーンレートを把握することで、資金があと何ヶ月もつのか、いつ底を尽きてしまうのかを把握することが出来ます。
バーンレートの定義〜ネットバーンレートとグロスバーンレート〜
バーンレートという言葉は、実は二種類の意味があります。キャッシュフローを考える際に認識の齟齬が生じないよう、ネットなのか?グロスなのか?区別できるように定義しておきましょう。
グロスバーンレートは「総コスト」
◇Gross … 〈金額・数量が〉総計[総体]の(⇔net)
GDP(国内総生産:gross domestic product)という単語にも含まれる、grossと同じ意味です。
グロスバーンレート、つまり、「総コスト」。
単純にコストの合計額を指します。
ネットバーンレートは「実質コスト」
反対語に
◇Net … 正味の,純…,(⇔gross);正価の
純資産の英訳(純資産:net worth)のnetです。
純資産は、総資産から負債を引いた後の数値ですから、計算後「実質の」数値です。これと同じく、
ネットバーンレート、つまり、「実質コスト」。
グロスバーンレートから収入を引いた後の額を指します。
主に使われるのはネットバーンレート
バーンレートという言葉が使われる時、基本的にはネットバーンレートを指すことが多いようです。
使用する意図として主に、企業の資金余力がどのくらいかを見積もるものであるためです。
バーンレートの計算方法
バーンレートは「総コスト÷期間」
バーンレートは1か月あたりの平均コストですので、
今までにかかったコスト ÷ 期間(ヶ月)で算出することが出来ます。
グロスバーンレートの場合、月にかかった「総コスト」を考えます。
1か月分のコスト合計
ネットバーンレートの場合、収入を加味して「実質コスト」を出します。
1か月分のコスト合計ー1か月分の収入
具体的な算出例
様々な角度からバーンレートの算出例を見てみましょう。
①1か月間でコスト100万円を消費しました。売上は20万円ありました。
⇒バーンレートは100万円-20万円=80万円です。
(グロスバーンレートは100万円、ネットバーンレートは80万円です。)
②1000万円の資金からスタートし、6か月が経過しました。現在の残金は400万円です。
⇒1か月あたりの消費額は、600万円÷6か月=100万円 となります。
つまり、「バーンレートは100万円」です(この場合はネットバーンレートを指します)。
③バーンレートは100万円です。
⇒一年間に必要な資金は 100万円×12ヶ月=1200万円 です。
バーンレートの数字が大きいほど、資金の残量に気を付けなければなりません。
バーンレートの使用例
ランウェイの算出
バーンレートを使ってランウェイ(Runway)を出すことが出来ます。ランウェイとは、滑走路、つまり会社に残された「時間」のことです。これを把握していることで、資金繰り改善の目安が共有できます。
ランウェイ = 残りの資金 ÷ バーンレート
例えば、残り資金が400万円、バーンレートが100万円の会社のランウェイは、
400万円÷100万円=4か月
この会社は4ヶ月で資金が底をつきます。そのため資金調達をするか、経営戦略を見直さなければなりません。
このように、ランウェイを把握することで、経営の立て直しを図る必要性を実感することが出来るのです。残された期間中に、コスト削減、収益アップ、新たな資金調達、など様々な対策を打つ必要があります。
アラートの設定
バーンレートを指標にした、アラート(危機)を設定することも戦略の一つと言えるでしょう。
残り資金が少ないにも関わらず、バーンレートが高い。これではよくありません。しかし、バーンレートが高いからと言って必ずしも悪いわけではありません。
スタートアップ企業だからこそ、バーンレートが高くてもスピーディーな行動を取るべき時期もあります。
バーンレートの数値に慎重になりすぎず、且つ、いつでも資金繰りの改善の目安を立てられる状態であることが大切です。
キャッシュフロー状況を判断する、投資の指標
バーンレートはベンチャーキャピタル(以下VC)の投資の判断材料になります。VCが企業への出資を検討する際、企業のキャッシュフローや計画性、成長性などを見て判断しています。バーンレートを利用した経営方針の提示は、資金調達にも重要な役割を果たすのです。
バーンレートで気をつけるべきこと(家賃、役員賞与)
会社にかかるコストとしてシードベンチャーの場合は、家賃が一つ大きいです。ものすごく高級なオフィスにしてしまうと、コスト意識低いな、、、と感じてしまいます。また社長の給与。自分が知っているD社は社長が800万、別のD社も800万。最近上場したSaaS企業は700万でした。
もちろんもっと社長が役員賞与をとって構わないのですが、上場時ですらこのくらいという事実もあります。渋谷が高くなり、五反田も坪単価2万円などでも難しくなり、どこも上がっていますので人気の駅でなくてもシードベンチャーでは構わないと思いますし、シェアオフィスでも当初は問題ないと思います。
机や椅子も貰えるものはもらった方がいいですし、そのようなコストに対する姿勢が会社の姿勢になります。会社が成長していけばもちろん必要に応じてレベルアップしていけばよく、最初から華美にするのはメリットがないですし、投資もしにくくなりますね。
まとめ
現金残高が減るスピード感を掴んでいるかどうかは、スタートアップ企業の経営にとって非常に重要な点です。バーンレートの数値を見ながら資金調達の策を講じ、経営戦略を立てているかをチェックしましょう。そしてあと何回、事業戦略を見直すことが出来るか、つまり、チャンスはあと何回あるのかをしっかり把握しておきましょう。
また、バーンレートを活用した会社経営を模擬体験できるシュミレーション型ボードゲームが発売されていますので、実際に試してみてはいかがでしょうか。