こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職支援を約25年続けているキープレイヤーズの高野秀敏です。
「やりがいはあるけれど給料が安い」「給料は良いけれど、毎朝この仕事に意味を感じられない」——転職相談で最も多い悩みのひとつが、この「やりがい」と「給料(年収)」のどちらを優先すべきかという問いです。私はこれまで約2万人のキャリア相談に乗ってきましたが、この問いに「正解はひとつ」と答えたことは一度もありません。なぜなら、人によって正解が違うからです。
ただし、「後悔しない決め方」には明確な型があります。本記事では、やりがいと給料をめぐる誤解をほぐし、自分にとっての優先順位を言語化する方法、そして「どちらか」ではなく「どちらも」を実現するキャリア戦略までを、私の現場経験から体系的にまとめます。
- 「やりがい」と「給料」をめぐるよくある誤解
- 給料を優先する/やりがいを優先するメリット・デメリット
- 後悔しない優先順位の決め方(年収の「下限」発想)
- やりがい優先が向いている人・給料優先が向いている人
- 優先順位を決める5ステップ
- 20代・30代・40代・50代で変わる重心の置き方
- 「やりがい搾取」に陥る失敗パターンと見分け方
- やりがいと給料を両立させるキャリア戦略
そもそも「やりがい」と「給料」は対立しない
まず大前提をお伝えします。「やりがい」と「給料」は本来トレードオフの関係ではありません。世の中には、やりがいも給料も高い仕事をしている人が大勢います。私が支援してきたベンチャー・スタートアップの世界では、事業を伸ばした結果として高い報酬を得て、なおかつ「この仕事が好きだ」と言い切る人が珍しくない。
ではなぜ多くの人が「どちらか」で悩むのか。それは今いる環境、もしくは目の前の選択肢の中だけで考えているからです。「今の会社でやりがいを取れば給料は上がらない」「転職先Aは給料が高いがやりがいは不明」——選択肢が2〜3個しかないと、必ずトレードオフに見えます。視野を広げれば、両立する選択肢は必ず存在します。ベンチャー転職の完全ガイドで全体像を掴むと、「両立できる会社」がイメージしやすくなります。
「やりがい」「給料」優先のメリット・デメリット
とはいえ、目の前の意思決定では「今回はどちらに重心を置くか」を決めなければならない場面があります。それぞれの選択のメリット・デメリットを整理しましょう。
| 優先軸 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 給料(年収)を優先 | 生活の安定/選択肢が増える/自己投資や貯蓄が進む/家族を説得しやすい | 仕事への意欲が続かないと長続きしない/高年収に生活水準が固定され身動きが取りづらくなる |
| やりがいを優先 | 主体的に働ける/スキルと経験が伸びる/結果的に市場価値・年収が上がりやすい | 生活が苦しいと長続きしない/「やりがい搾取」に利用されるリスク/家族の理解を得にくい |
私の実感として、20代〜30代前半は「やりがい(=成長)」を優先した人のほうが、結果的に5年後の年収も高くなっているケースが多い。なぜなら、夢中で働ける環境では実力が伸び、それが市場価値に直結するからです。逆に、目先の年収だけで会社を選び、意欲を持てないまま数年を過ごした人は、スキルが伸びず次の転職で苦労します。
後悔しない優先順位の決め方——「年収の下限」から考える
では具体的にどう決めるか。私が必ずお伝えするのは「年収には下限(ボーダーライン)を設定し、その上でやりがいを最大化する」という考え方です。
給料には、生活を成り立たせるための「下限」があります。この下限を割る選択肢は、やりがいがどれだけ高くても候補から外す。逆に、下限さえクリアしていれば、そこから先は「年収+50万円」より「夢中になれる仕事」を選んだほうが、長期的には幸福度も年収も上がりやすい。これは行動経済学でも示されている考え方で、年収が一定水準を超えると、収入の増加が幸福度に与える影響は逓減していきます。
- 毎月の固定費(家賃・ローン・教育費・保険)を書き出す
- そこに最低限の貯蓄・自己投資額を足す
- その合計を「これを割ったら生活が回らない」金額=下限とする
- 転職先の手取りがこの下限を上回るかで足切りする
手取りの計算が曖昧なまま「額面◯◯万円ならOK」と判断すると、入社後に「思ったより手元に残らない」と後悔します。額面と手取りの違い、社会保険料や税金の影響については年収・手取りガイドで詳しく解説しているので、下限設定の前に必ず確認してください。
やりがい優先が向いている人・給料優先が向いている人
| やりがいを優先すべき人 | 給料を優先すべき人 |
|---|---|
| 20代〜30代前半で伸びしろを取りに行きたい | 住宅ローン・教育費など固定費が大きい |
| 生活の下限はクリアできる見込みがある | 現在の年収が生活の下限を割っている |
| 挑戦したいテーマ・事業領域が明確 | 数年以内に大きな支出(出産・進学等)が確実 |
| 独身またはパートナーの理解がある | まず生活基盤を固めてから挑戦したい |
どちらが優れているという話ではありません。ライフステージと固定費の大きさで、最適解は変わります。家族がいる方は、自分一人の理想だけで決めると後で揉めます。配偶者・家族への相談の進め方も、転職の成否を分ける重要な要素です。
優先順位を決める5ステップ
- 年収の下限を数字で確定する——固定費+最低貯蓄から逆算し、「これを割ったらNG」のラインを明確にする。
- やりがいの正体を言語化する——「やりがい」は曖昧な言葉です。あなたにとってのやりがいは、成長実感か、社会的意義か、裁量か、人間関係か、評価か。要素に分解する。
- 現職を採点する——今の会社で、給料とやりがいの各要素を10点満点で採点。不満の正体が給料なのかやりがいなのかを切り分ける。
- 選択肢を3つ以上に増やす——2択だと必ずトレードオフに見えます。エージェントや知人経由で「下限クリア×やりがいも高い」選択肢を探す。
- 5年後の自分から逆算する——「5年後にどんなスキル・年収・働き方でありたいか」から、今回の転職がその通過点になっているかを確認する。
年代別——やりがいと給料の重心の置き方
20代:やりがい(成長)に大きく寄せてよい
下限さえクリアできるなら、年収より「誰と・何を・どれだけ任せてもらえるか」を優先すべき時期です。20代で得た裁量と修羅場経験は、30代以降の年収を大きく押し上げます。20代のベンチャー転職では、この時期の挑戦の意味を具体例で解説しています。
30代:両立を本気で狙う
スキルが固まり、市場価値が最も伸びる時期。「やりがいか給料か」ではなく「両方取れる会社」を探す難易度が最も下がるタイミングです。30代のベンチャー転職ガイドも参考にしてください。
40代:給料の下限を上げつつ、意義で選ぶ
固定費がピークになりやすく、年収の下限が上がります。一方で「残りのキャリアで何を成すか」という意義(やりがい)も切実になる年代。下限を守りつつ、心から納得できるテーマを選ぶ。
50代:報酬より「貢献実感」と「居場所」
多くの方が、この年代では年収の最大化より「自分の経験が活きる」「必要とされる」やりがいに重心が移ります。役員・顧問・幹部としての貢献に対する報酬の考え方は役員年収のガイドも参考になります。年代ごとの戦略は年齢別転職ガイドに網羅しています。
失敗パターン——「やりがい搾取」に注意
やりがいを優先する人が陥りがちなのが、いわゆる「やりがい搾取」です。「夢」「成長」「社会貢献」といった言葉を多用して、低い報酬や過重労働を正当化する会社は実在します。私も「ビジョンは素晴らしいが、待遇と労働環境が見合っていない」企業を数多く見てきました。
- 給与や評価の質問をすると「お金の話ばかりするの?」と不快感を示す
- 「夢」「家族のような会社」を強調するが、具体的な労働条件が曖昧
- 残業代・固定残業時間・評価制度の説明を避ける
- 離職率が高い/在籍年数の短い社員ばかり
これらを見抜くには、入社前に企業を多面的に見極める力が必要です。優良企業と危険な会社の判断ポイントはベンチャー企業の選び方・見極め方に15項目でまとめています。また、年収だけで判断して後悔する典型例はベンチャー転職の失敗・後悔ガイドも併読してください。
やりがいと給料を両立させるキャリア戦略
最終的に目指すべきは「どちらか」ではなく「両立」です。そのための現実的な戦略を3つ挙げます。
- 成長産業を選ぶ——伸びている市場では、事業の成長が報酬とやりがいの両方を引き上げます。逆風の業界でいくら頑張っても、両立は難しい。
- ストックオプション等の中長期インセンティブを評価に入れる——ベンチャーでは、今の年収が下限ギリギリでも、SOによって数年後に大きなリターンを得られる可能性があります。仕組みと注意点はストックオプション完全ガイドで確認を。
- 市場価値が上がる経験を取りに行く——「この経験は他社でも評価される」という仕事を選べば、やりがいを取りながら次の年収交渉のカードも増えます。年収を上げる交渉術はベンチャー転職の年収交渉術を参考に。
よくある質問(FAQ)
Q1. やりがいはあるけど給料が安い。今すぐ転職すべき?
まず年収が生活の下限を割っているかを確認してください。下限を割っているなら早めに動くべきです。下限はクリアしているがやりがいに比べて低すぎると感じるなら、社内での昇給交渉と転職を並行して検討しましょう。
Q2. 給料を優先したら、仕事がつまらなくなりました。
よくあるパターンです。給料の下限を大きく超えた水準では、年収+αよりやりがいの方が満足度に効きます。次の転職では「給料は維持しつつ、より意義を感じられる事業」を軸に探すとよいでしょう。
Q3. やりがいって、入社前にどう見極めればいい?
「誰と働くか」「どんな課題を任されるか」「成長の手応えがあるか」を面接や面談で具体的に確認することです。求人票の言葉ではなく、現場社員との会話で判断してください。面接での質問のしかたはベンチャー転職の面接対策が役立ちます。
Q4. 年収が下がってでもやりがいを取るのはアリ?
下限を割らないならアリです。ただし「なぜ下がっても良いのか」を自分と家族に説明できることが条件。年収が下がる転職の考え方はベンチャー転職で年収が下がる?のガイドを参考にしてください。
Q5. 結局、どちらを優先すべき?
「生活の下限は給料で守り、その上はやりがいで選ぶ」が私の結論です。下限さえ守れば、夢中になれる仕事を選んだほうが、長期的には年収も幸福度も上がりやすい。
まとめ——「下限は給料、その上はやりがい」
やりがいと給料は、本来トレードオフではありません。生活の下限を給料で守り、その上では夢中になれるやりがいを優先する。これが、私が25年の現場で見てきた「後悔しない人」に共通する考え方です。そして最終的には、成長産業で市場価値の上がる経験を積み、両立を実現していく。これがキャリアの王道です。
キープレイヤーズでは、ベンチャー・スタートアップへの転職を検討される方の「やりがいも給料も諦めない」キャリア設計を支援しています。今の優先順位が定まらない、両立できる会社を知りたいという方は、ぜひ一度ご相談ください。あなたの状況に合わせて、下限を守りながらやりがいを最大化できる選択肢をご提案します。