スタートアップ用語で「エンジェルラウンド」について質問を受けることがあります。今回はエンジェルラウンド関連について、少しまとめてみました!
目次
エンジェルラウンドとは〜言葉の起源と現在の意味をおさらい〜
アイディアしかないまたはそれに近い、メンバーも顧客もほぼいない(少ない)段階での、スタートアップ企業への投資のことを指します。
エンジェル投資という言葉の起源
ベンチャー投資においてエンジェルという用語はイギリスが起源とされています。イギリスで劇団が演劇事業を創業するタイミングで、有志で資金供給した富裕層を表す言葉として生まれました。
正式に使用され始めたのは、1978年のことです。ニューハンプシャー大学のベンチャーリサーチセンター創設者、「ウィリアム・ウェッテル」が、創業して間もないスタートアップ企業に投資する個人を指す言葉として、「エンジェル」という表現を使ったことが始まりと言われています。
現在のエンジェル投資家という言葉の意味・イメージ
現在の言葉のイメージとしては、挑戦をしたい起業家たちに対して出資を行い、資金不足を解消してくれる投資家と捉えていただければと存じます。金融機関などから借り入れができない時期に、資金を提供してくれる天使のようなイメージから、「エンジェル」という言葉が引き続き使われています。
また、出資なので返済は不要です。起業経験がある人やExitに成功した個人がエンジェルになる場合が多く、投資金額は、日本では数百万円~数千万円規模になるケースが多いです。自身の経験を元に、起業家が次のステージに進むためのアドバイスも行うケースが多くありますが、そのスタイルは様々です。
そのため一概に「エンジェル投資家」と言っても千差万別なので、積極的に投資家にアプローチしてみるのがよいでしょう。
日本の有名なエンジェル投資家
日本の有名なエンジェル投資家を挙げてみます。
エンジェル投資家は「儲けるため」に投資する場合もありますし、元起業家が多いことから「スタートアップを応援したい」という理由で投資するなど、理由は様々です。
島田亨氏
USEN-NEXT HOLDINGS取締役副社長
投資先、ビズリーチ、シナモン、ビースタイル、ディライテッドなど多数
家入 一真氏
株式会社CAMPFIRE 代表取締役
BASE株式会社 共同創業取締役
NOW株式会社 代表取締役
川田 尚吾氏
株式会社ディー・エヌ・エーを共同創業
ディー・エヌ・エー非常勤取締役就任後、エンジェル投資家として活動開始
孫 泰蔵氏
インディゴ(現・アジアングルーヴ株式会社)設立
MOVIDA JAPAN株式会社設立
Mistletoe株式会社設立
孫正義氏の実弟
中川 綾太郎氏
大学在学中にウェブメディアアトコレを設立
株式会社ペロリ創業
Tokyo Founders Fund
現在はスタートアップスタジオ的に様々なことをやっていらっしゃいますね
山田 進太郎氏
ウノウ設立
ウノウ全株式を米国Zyngaの譲渡
メルカリ設立
クラウドワークスなど、数多くスタートアップに対するエンジェルとしても知られています
大変恐縮ながら自分もまぜていただき(笑)高野秀敏
クラウドワークス、識学、メドレーなど
エンジェル投資家と株式比率
会社の経営権は特殊な株式を発行していない限りは出資比率で決まっています。
例えば、経営者と投資家の出資比率がそれぞれ80%と20%の場合、会社法上は会社の80%は経営者のもので20%が投資家のものになります。
外部の出資比率が50%を超えた場合には、取締役を解任できる権利が生じるので、最悪の場合、経営者立場を失ってしまうというリスクが出てきてしまいます。
スタートアップ企業が投資を受ける場合、ほとんどの投資家は「投資契約書の締結」を求められます。このとき株式を渡しすぎてしまい、経営権を出資者に取られてしまうことや、自由に経営出来ない状態に陥ることがあるので、エンジェル投資を受ける際、スタートアップ企業は出資比率をよく考えて出資を受ける必要があります。
さて、ここまでがエンジェルラウンドの概要になります。
ラウンド・・という言葉が示すように、他の段階もありますので、紹介しておきます!
投資ラウンド
投資ラウンドとは「投資家が企業に対して投資をする段階」を指す言葉です。企業にとっては資金調達の段階、投資家にとっては投資先のステージのことです。ここではステージ事の特徴を解説していきます。
プレシードラウンド
スタートアップ企業にアイディアしかない段階で投資することを指します。前述した「エンジェルラウンド」と同義、金額規模は数百万円~数千万円の場合が多い。
シードラウンド
エンジェルラウンドの次の段階でスタートアップ企業に投資することをシードラウンドと呼びます。スタートアップ企業が最低限のチームメンバーを揃え、事業のプロトタイプの企画や構築、またはα版・β版がローンチしたし、ようやく形になってきた段階への投資(調達)となります。
このタイミングは、VC(ベンチャーキャピタル)やエンジェル投資家から調達することが多く、日本では数百万円~数千万円規模であることが多いです。
シリーズA
スタートアップ企業がプロダクトを完成し、お金をかけてどんどん顧客を増やしていく段階での投資(調達)を指します。
資金調達をするごとに、シリーズA、シリーズB、シリーズCアルファベットが進んで行きます。日本の投資金額は数億~数十億になることが多いです。
株式上場まで行かずに調達を繰り返しアルファベットがC、Dと進んでいくケースもありシリーズBで上場となるケースもあります。
主な資金調達方法について
最後にスタートアップ企業の資金調達方法についてまとめていきます!
デットファイナンス
借入による資金調達のことです。借入先は金融機関であることがほとんどです。
メリット・・・経営権に関係なく資金調達ができる
デメリット・・・返済が必要、利子も発生する
エクイティファイナンス
株式発行による資金調達のことです。
前述のエンジェル投資家からの出資もこれに該当します。この他には※ベンチャーキャピタル=VCからの出資が多いです。
メリット・・・調達資金の返済が不要、成長に直結する経営支援を受けられる場合がある
デメリット・・・経営に口出しされる、株式比率によっては経営権を奪われる
※ベンチャーキャピタルとは、ベンチャー企業に投資し、その企業が株式公開するなどしたのち株式などを売却し、キャピタルゲイン(株式等の当初の投資額と公開後の売却額との差額)を獲得すること目的とした集団のことを指します。
クラウドファンディング
デット、エクイティに次ぐ、第三の資金調達手段として注目されているのが、クラウドファンディングです。株式投資型、融資型、購入型、寄付型などがいくつかの種類がありますが、一般的に「クラウドファンディング」と言った場合には購入型クラウドファンディングのことを指します。
購入型の場合、起業家がクラウドファンディングサイトでページを立ち上げ、そこで出資者から資金を募り、出資者に対して出した額に応じてリターン(物品等)を送る仕組みです。
出資者を広く募るため、資金調達と同時にテストマーケティング、PRにもなるという特徴があり、BtoCのサービスやプロダクトを提供する場合におすすめの資金調達方法と言えます。
いかがでしたでしょうか?
少しでもスタートアップの資金調達の知識習得の一助になれば幸いです。自分自身もエンジェル投資家としての活動をしております。
ベンチャー、スタートアップ投資をする基準~高野秀敏のエンジェル投資回顧録