ホワイトプラスの代表井下孝之氏と取締役斎藤亮介氏が語る、本当のDXとは

インタビュー          
       
       
     

こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職のサポートをしているキープレイヤーズの高野です。

今回は、2020年3月31日に大型の資金調達をされたホワイトプラスさんに取材をさせていただきました。ホワイトプラスさんは、「Lenet(リネット)」というネット宅配クリーニングサービスを提供している企業です。もしかしたら、サービスをご存知の方も多くいらっしゃるかもしれませんね。着実に成長している注目の企業です。

今回は代表取締役社長の井下孝之さんと取締役の斎藤亮介さんに、ホワイトプラス創業の経緯や事業内容、今後の展望について、お伺いしてきました!

スタートアップに関わる方、興味のある方は必見の内容となっておりますので、ぜひご覧ください!

※今回の取材は、対面ではなくZoomで行いました。

目次

代表取締役社長/井下 孝之氏の経歴

2005年神戸大学の工学部を卒業後、同大学院の自然科学研究科に進学。2006年7月大学院を中退し、「3年で起業」という想いをもってベンチャー企業に入社した。2009年7月勉強会で知り合った2人と株式会社ホワイトプラスを設立。創業以来、代表取締役社長として同社を経営している。

取締役 生産開発部長/斎藤 亮介氏の経歴

慶應義塾大学の経済学部在学中にオプトにて法人営業を経験した後に、ベンチャー企業の立上げに参画。2007年同大学を卒業後、ネット系ベンチャー企業に入社し、WEBマーケティング、大手金融機関のWEBコンサルティングに従事する。2009年7月に株式会社ホワイトプラスを共同創業。現在は取締役とリネットの生産開発部長を兼務している。

株式会社ホワイトプラス

「新しい日常をつくる」をビジョンにテクノロジー×生活領域(リアル)で事業を展開する企業。ネット宅配クリーニングサービス「Lenet(リネット)」やハウスクリーニングのマッチングプラットフォーム「kirehapi(キレハピ)」を提供している。

ホワイトプラス創業の経緯とクリーニング市場を選定した背景

起業を考えていた井下さんと斎藤さん森谷さんが出会い創業

高野:本日はよろしくお願いします!
まずは、創業に至るまでの経緯を教えてください。

井下:起業を考え始めたのは、大学院在学中でした。大学院に進学した2006年頃は、サイバーエージェントさんのようなIT企業が世の中に注目され始めていた頃でしたね。

当時は、漠然とした考えで学部時代から専攻していた電子工学科のある大学院に進みました。ただ、電子工学をやることに特別な思いがあったわけではなかったので、勉強に熱が入らず、怠惰な学生生活になってしまっていたんです。

しかし、IT企業の躍進を耳にする中でそれほど遠くない年代の人も活躍していることを知り、明確な目的なく学生生活を続けている自分に危機感を感じはじめていました。

また、幼少の頃から「生きているからには何かを残したい。限られた人生で何かを生み出してみたい。」という思いを持っていたので、自分への危機感をより強く感じていました。

そんな折に参加したP&Gの新卒採用の1dayインターンという形の選考で「顧客の不満を元に価値を定義し新しい物を生み出す」考え方に触れたことで、ビジネスで新しい物を生み出すということに強い興味を持ちました。

結局、私は大学院を中退して、エム・エム・エス(SMS)という医療・介護・シニア領域で事業を展開するベンチャー企業に就職しました。私が起業を決めたのもこのときで、「3年で起業する」と決め、3年後の2009年に取締役の斎藤と森谷と3人で起業した、というのが創業の経緯です。

斎藤:私は学生時代から、Web広告の代理店で働いたり、IT企業立ち上げに携わったりして、大学卒業後はITベンチャー企業でWEBコンサルティング事業に従事していました。

そんなときに学生時代に出会った森谷と共に開催していた勉強会で井下と出会い、意気投合してホワイトプラスの創業に至ったという流れです。

実は、会社を設立するときはクリーニング業をやるとは決まっていなくて、「世界に誇れる会社でイノベーションを起こしたい」という考えだけがある状態でした。

いちユーザーとして不便さを感じた経験がベースに

斎藤:創業まで半年ほどの準備期間を設けたのですが、150以上の事業アイディアを出して、その中で最初に取り組もうと決意したのが、現在のクリーニング業でした。

高野:「起業したいけど、アイディアが思いつかない」という人もよくいらっしゃるのですが、ホワイトプラスの場合はどのようにアイディアを出していったのでしょうか?

斎藤:王道かもしれませんが、自分たちが生活するなかで不便だと感じた経験のあるものを挙げていきました。

自分が一人のユーザーとして不便と不満を感じた経験があり、“利用者の立場に立った顧客視点”からスタート・改善していけることが何より重要なことだと思います。

例えば、クリーニングの場合だと、会社勤務の方が業務を終えて帰る19:00頃にはすでに閉まっているお店も多いです。また、休日にまとめてたくさんの洋服を持って行っても、受付に列ができていて待たないといけないこともありますよね。

コンビニは24時間開いているのに、クリーニングは平日の仕事の時間に行くか、休日まとめて行くかしかできないのはなぜだろう、と思ったんです。

井下:クリーニングについては、自分自身が困っていることでもあったので、この問題であれば情熱を持って取り組めるし、ネット宅配クリーニングの需要はきっとあるはずだと考えました。

事業選定の基準は市場規模、タイミング、ビジネスモデルの3つ

高野:なるほど、他にも困った経験のある、あるいは改善の余地があると感じた領域もあると思うのですが、その中でなぜクリーニングを選んだのでしょうか?基本的には、スタートアップが手を出しづらいと考える領域なのではないかな、と思いまして。

斎藤:クリーニングを選んだのは、

  • 市場規模の大きさ
  • タイミング
  • ストック型のビジネスモデル

の3つが大きな理由です。

まず、規模が小さい市場だと、どんなに努力してもビジネスが大きくならないと考えていました。ただ、市場規模が大きくて成長している領域は、必ずと言っていいほど企業の新規参入が多くて、競争が厳しいですよね。

クリーニング業界は2000年前後の約8000億円をピークに減少傾向にあって、他の領域と比較して新規参入が少なかったんです。それでも、現在約4000億円弱の規模があります。

さらに、ユニフォームやリネンなどのBtoB領域を含めて見てみると、その市場規模は1兆円に上ります。最低1兆円の市場規模があることを条件の一つにしていたので、参入を決めました。

高野:なるほど、タイミングとストック型のビジネスモデルという点はいかがでしょうか?

斎藤:創業したのが2009年ですが、前年にiPhoneが登場し、すでに多くの家庭にPCが普及している頃でした。まさに、いつでも快適にネットに繋ぐことができるようになりつつある、というタイミングでした。

当時、クリーニング業界は全くネット化されていなかったので、参入するならネット環境が普及している今だと考えました。

ビジネスモデルについては、クリーニングはリピート利用を前提として、お客様が増えれば増えるほど、売上が積み上がり安定的に収益を得ることができる、ストック型に近いと思っています。

ストック型ビジネスが立ち上がれば、その収益を他の事業に投資して、新たなサービスを展開できるので、最初にストック型のビジネスを立ち上げたいという考えがありました。

高野:そういうことですね。ユーザー視点に立ちすぎて上手くいかない、というケースもよく耳にしますが、市場規模やビジネスモデルの話を聞いて腑に落ちました。

ネット宅配クリーニング事業が形になるまで

クリーニング工場に協力依頼をして回るも全敗

高野:でも、かなりアナログな産業だったと思うので、立ち上げは大変そうですね。

井下:立ち上げの際、創業者の3人ともクリーニング業については全くの素人だったので、一から調べて実行していきましたが、すぐに大変さに気が付きました(笑)。

Web上でお客様から受け付けても、自分たちでクリーニングすることはできないので、まずはクリーニング工程を請け負ってくださるクリーニング工場を探しました。

大田区で会社を登記したこともあり、大田区のクリーニング工場すべてにアプローチしたのですが、全工場に断られるというスタートでした…。「クレーム産業とも言われるクリーニング業で、ネットで受け付けてうまくいくわけがない」というのがほとんどの工場が示した反応でした。

ただ、クリーニング工場を回ってみたことで、応援してくれる会社もみつかりました。大変だと言っているのにあきらめない姿を気にいってくださったのか、ある大田区の工場が「自社では扱えないけど、あそこに相談してみたらどうか」と目白にあった工場をご紹介してくださったのです。

晴れて工場が見つかり、ネット宅配クリーニング事業を立ち上げようとしたときに、また壁にぶつかりました。通常、店舗で対面で行っている「お客様確認」「登録」「服の確認と検品」「お支払い」というプロセスをつくろうとした時です。

一般的な店舗型のクリーニングだと、受付の時点で「このシミはとれるけど、このシミはとれない」という説明がされますよね。あのやり取りがないと、お客様は「なぜシミが落ちないのか」がわかりません。対面でもきめ細やかな対応が必要なくらいですから、ネットでお客様の手元に商品がない状態で店舗と同じような検品・確認をするのは至難の業でした。

このとき、クリーニング工場を回っているときに教えていただいた、「クリーニングはネットだけでは上手くいくわけがない」という厳しい言葉の意味を改めて実感しました。

産業を変革する際は、現在に至るまでの産業の流れや、今の状態になっている理由を理解し、その上で理想の状態に近づけるために何ができるかを考えて実行することが大切だと思っていますが、これが言うは易しで実現するのがどれだけ大変なことか、身をもって知ることができました。

高野:外からだと改善できると思っていることでも、実際に内部に入ってみると想像以上に壁があるということは転職するときにも発生しますね。

自ら店舗を持ちオペレーションを体験、後のシステム化の礎に

高野:ホワイトプラスさんはそのギャップをどのようにして乗り越えたのでしょうか?

井下:まずは自分たちも店舗を持つことにしました。ただ、来客受付をする店舗ではなく、ネットで受け付けたクリーニング品を送ってもらうための店舗です。

まず、店舗で検品・お客様確認をし、クリーニングで「タグ付け」と言われる服の入念なチェックと工場への申し送りの記載作業をしてから、クリーニング工場に発送します。そして、工場でクリーニングが完了したものが店舗に返送され、それをお客様に発送するという作業をその店舗でひたすら繰り返しました。

今でこそプロセスも整いシステム化も進んでいますが、最初は想像以上に大変で、全部ゼロベースで考えながら作業していたら、1日に5件対応するだけでヘトヘトになります。

毎日、送られてきたお客様からの依頼品を検品して、タグ付けしてプロセスを整理しつつシステム化を推進し、発送してお客様のお問い合わせにも対応して…毎日が試行錯誤の連続のような状況だったので、なかなか利益が出るような状況ではありませんでした。

しかし、開始当初からリピーターのお客様がいてくださったので、これならいずれストックビジネスとして利益を出すことができると信じて続けることができました。

高野:ストック型のビジネスは顧客が一定数を超えるまでは苦しい時間が長いですが、お客様がリピートしてくれていることが分かると、獲得できれば大丈夫だと踏み込むことができますよね。

井下:はい。リピーターのお客様が増えていく中で、このサービスが世の中に求められていることを確信できたので、リピーターのお客様に本当に助けられました。

そして少しずつシステム化を進める中でクリーニングの繁忙期の訪れもあり、半年後に単月の黒字を達成することができました。

高野:一時的に赤字が拡大しても、そこで得たクリーニングのオペレーションに関する知見をシステム化していくことが飛躍のポイントだったわけですね。

斎藤:そうですね。きちんと価値提供できれば、リピートしてくださるお客様は着実に増えていくという手応えは当初からありました。検品していたときのエピソードなのですが、「なかなかお店に行けないのでとても助かっています。頑張ってください。」と書かれた手紙とキャンディーが同封されていたこともありました。

自分たちが目を付けた課題を解決することはできていて、あとはこれをいかに安定的に提供するかだ、と思っていました。

高野:お客様からも感謝のメッセージが届いていたのですね。

井下:一方で、お客様にご迷惑をおかけすることもありました。手探りで作り上げていく中で、想定外のトラブルや人手不足が露呈してしまうような場面もありましたね…。

ただ、期待して使ってくださっているお客様を裏切りたくないので、お客様が不便を感じることだけは避けたい一心から、やれることは何でもやるぞという想いでやっていました。

物流のトラブルで発送が間に合わなかったときは、クリーニングが完了したものを待ち合わせ場所まで自分で運んでいってお渡ししたこともあります。

高野:お客様には絶対に不便をさせないように、という想いはずっと持ち続けていたのですね。

井下:はい。そうした経験もしながら、最終的には「検品・発送センターをクリーニング工場に統合」することになりました。3年以上かかってようやく自分たちが当初思い描いていた形にたどり着くことができました。

この頃には、当初難航していたクリーニング工場の開拓も、工場の方から引き合いをいただけるまでになっていました。一方で「黒字化に満足せず、もっと多くの人に使ってもらえるサービスにしないといけない」と感じていました。

そこで、資金調達をして事業を加速させることにしました。

最初の資金調達で会員プラン改編とシステム化、納期の短縮に成功

高野:それまでは自己資本で運営されていたのでしょうか?

井下:それまでは自己資本でした。2013年6月にベンチャーキャピタルのJAFCOさんから3億円を出資していただいたのが、最初の大きな資金調達です。

高野:このときに調達した資金はどのように使っていったのでしょうか?

井下:新しいシステムの構築に投資しました。それまでは、お預かりしてからお届けするまでに5日間いただいていたのですが、最短2日でお届けできるようなシステムを工場様と一緒に構築しました。

それに伴い、通常会員以外に月額390円(税抜)で登録できる「プレミアム会員」を設けて、よりお得に使っていただけるオプションと納期を導入しました。あとは、さらなるお客様の獲得のために広告宣伝費に投資しました。

また、クリーニング業は回収できるまでに時間がかかるので、並行して単価が高く利益を作りやすい事業を立ち上げていました。布団をクリーニングする「ふとんリネット」、靴を丸洗いする「くつリネット」、クリーニング付きの保管サービス「リネット PREMIUM CLOAK」など、衣類のクリーニング以外にもサービスを展開しています。

高野:システム投資をして、ビジネスモデルもいわゆるサブスクリプション型にして、Jカーブが大きく跳ねるまでは新規事業で利益を上げることにしたんですね。

Lenetのシステム化の過程にみる、本当のDX

Lenetはクリーニングの注文からお届けまでをネットで完結できるサービス

高野:改めてになるのですが、貴社のサービスについて説明していただいてもよろしいでしょうか?

井下:はい。これまで店舗に行かないといけない、それも出しに行く時と受け取りの際に2度行かなくてはいけないというクリーニング店をオンライン化し、アプリやWebから”自宅にいたままクリーニング”が出せる「Lenet」が弊社のメインサービスです。

店舗と同じような感覚でワイシャツ1枚から出すことができ、該当エリアであれば最短で翌日には仕上がったものが届きます。早朝・深夜の集配のほか、基本サービスに毛玉取りをつけるなど、高品質なケアサービスを行うことで利便性を高めています。

クリーニング業界のDXは一筋縄に行かない

高野:宅配クリーニングサービス、競合も増えていますよね?

井下:そうですね。ネット型の宅配クリーニングへの参入するパターンは、大きく分けて2つあります。
①IT企業が参入し、店舗を元々運営しているところと組む
②既存のクリーニング会社がネットで受け付けを開始する

1つ目のパターンで多いのは、店舗での受け渡し・受け取りを、宅配を店舗にアドオンして代替する方法です。店舗に行く必要がないので、一見すると便利そうです。

この場合、通常のオペレーションにお客様からの依頼品の受け取り・返送というプロセスが加わる形になるので、お客様にお戻しするまでにより時間がかかります。利便性が上がっているようで上がっていない、加えてコスト構造は単純に店舗に宅配送料がアドオンになっているので収益化も難しい。

我々がLenetを始めた後に、海外でもクリーニングのスタートアップ が出てきましたが、多くがこの形でした。今あるものにITの力でコネクトする、というと一見良さそうに見えますが、実は上手くいかないパターンです。

そもそもコストと構造が成立しない上に、リアルなオペレーションの理解と実践、そしてゼロベースであるべきモデルを構築していくという手間を避け、都合のいいところだけやろうとするのでは上手くいかないのだと思います。

2つ目の既存のクリーニング会社がネットで受付を開始するパターンで多いのは、「10点XX円」「詰め放題XX円」とパッケージ販売する方法です。

これは、ネットで予約したらその時間に引き取りに来てもらえるというサービスではなく、ECのシステムを利用してクリーニング点数の枠がついたバッグを販売する形態です。お客様は依頼品を自分で発送する必要があるうえに、パック料金のためYシャツ1枚では出せません。納期もたいていは1週間程度かかります。

これは既存のクリーニング会社には、自社内にIT人材やエンジニアがいないので、外部の既存システムを利用せざるをえず、結果として衣替え時期のお得パックとしてバッグをECで販売する形になってしまうのです。

ビジネスサイドからみても、衣替え時期の商品となるのでお客様の利用頻度が年に1,2回になってしまう上に、パック制で安売り競争になりがちで収益性もよくありません。

Lenetではリアルオペレーションも組み直すことでDXに成功

井下:私たちは、どちらのパターンでもなく、自ら店舗を持って既存のオペレーションを理解した上で、ネットで店舗以上のサービスを提供するために、ネット化に適したオペレーションに組み直し、その上でシステム化を行い、クリーニング店をオンライン化することに成功しています。

この「リアルなオペレーションをネットに適した形に組み直す」ことが、今思えばDX(デジタルトランスフォーメーション)の肝だったと思います。

高野:なるほど。

斎藤:実は、店舗型のクリーニングだとクリーニング代にかかるコストのうち5割近い割合が店舗家賃や人件費で占められています。ネットのオペレーションに組み替えるとこれを抑えることができ、追加でかかるのは輸送費のみとなり、浮いたコストをサービスの品質向上や価格の引き下げに充てることができます。

提携させていただいている検品・クリーニングする工場も、堅実な利益が確保できるようになり、喜んでいただいています。お手頃な料金でありながら、高い付加価値、そして提携パートナーにも利益をもたらせる仕組みを作ることができたのが成長に繋がったと思っています。

井下:また、私たちは高品質、便利なのに加えて、ネット完結だからこそ「常に先回りのサービスをする」ことを目指しています。シミがあれば無料でとりますし、毛玉も無料でとります。これもリアルなオペレーションの組み直しから生まれました。店舗を持たないため、本来店舗で対話しながら確認できることが確認できないため、先回りしてお客様に価値を提案し、提供する必要があるのです。

先回りというと簡単なようですが、これもリアルな実態を知らないと実は上手くいきません。

例えば、シミというのはついてからの状態によってはシミではなく生地そのものが変色してしまうため、落とせないものがあります。ネットでは、店舗のようにこれがどんなシミかということをお客様と事前確認することができないので、お客様にはどういうシミが落ちてどういうシミが落ちないかが分かりません。先回りしてシミ抜きをしても、取れたときは問題ないのですが、取れなかったときは「なんでこのシミがとれていないんだ!」という話になります。

そこで必要なのが仕組みのコミュニケーションです。通常、店舗では検品時につけるタグに「チェック」だけ記載すれば問題ありません。しかしLenetでは「”事前”チェック」という記載をしました。そして、シミを抜いたらシミ抜きのタグをつけ、シミが抜けなかった場合は「事前にシミを把握してシミ抜きをしましたが、抜けませんでした」と伝えています。

事前と事後の両方をつたえることで対面じゃなくても情報が伝わるようになるんですね。こういった細かなところでもオペレーションを組み替えていくことで初めてお客様に満足していただけるサービスが提供できると考えています。

既存のオペレーションを理解した上で、全体のプロセスをネット化に最適な形になるように組み直しをしながら、オペレーションの細かやかなところまで目を配りつつ、デジタルにつなげていくというのが本当のDX(デジタルトランスフォーメーション)だと思っています。今あるものをデジタルにつなげるだけでは本当の意味でDXと言わないのではないかと思います。

高野:不動産業界なども 似たことが言えるかもしれません。テックベンチャーが参入しても上手くいかないことが多いのですが、不動産の商流とITの両方を理解した2代目社長がRETech(不動産テック)に取り組むと成功する、みたいなことがあるんですよね。

井下:似ているかもしれませんね(笑)。

リアルな商習慣を理解した上でどこをIT化するか、という考えが大切だと思います。私たちの場合は理解はもちろん、自分たちでリアルなオペレーションを実践し、細かなところにまで目を配りながらオペレーションを組み替えることでDXが成功したと思っています。

おかげさまでLenetの登録会員数は2019年5月に35万人を超えて、現在も順調に伸びています。

ホワイトプラスの今後の方向性、求める人材

総額15億円の調達資金は主にエンジニア採用と認知率の向上に投下

高野:2020年3月27日は新たに総額15億円の資金調達を発表されましたね。これらの資金を使って、どのような方向に進んでいきたいとお考えでしょうか?

井下:今回、資金調達を実施したのは、事業の成長をもっと加速させるためです。

Lenetはサービス開始のときから10年にわたり使い続けてくださってるお客様がいます。10年変わらず愛されるサービスなのに、Lenetの認知率はオンライン上でのリサーチでも5.7%しかありませんでした。

これがどれぐらいの数値かというと、例えばスタートアップで我々と近しいリアル×IT領域でサービス提供しているラクスルさんだと60%以上あります。ラクスルさんはTVCMに大きく投資をして成長しました。比べてみると、Lenetの認知率の5.7%はのびしろだらけです。

また、プロダクトももっともっと磨けるだけののびしろがあります。例えばアプリでいうと、Androidのアプリがまだありません。iOSのアプリも、衣類のクリーニングには対応しているけれど、布団や靴、保管などのサービスには対応してません。今までは利益を確保しながら安定した成長を重視して、開発スピードを上げきれていなかったのですが、プロダクト開発にも積極投資を行いスピードを上げていきます。

Lenetの認知率とプロダクトの完成度をあげて、もっと多くの方に喜んでいただき、「Lenetで生活が変わった、良くなった」と言っていただきたいですね。

高野:さらにその先で見据えている展開もあるのでしょうか?

井下:ゆくゆくは、海外展開をしたいと考えています。ネットサービスの多くはアメリカや中国など海外から輸入されていますが、日本はクリーニング品質が高いので、日本のクリーニングサービスは日本発で世界に広められるポテンシャルがあると思っています。そしていずれはスターバックスやレッドブルのように、Lenetも世界で愛されるサービスにしたいです。

また、ホワイトプラスのビジネスの軸は「テクノロジー×生活領域(リアル)」です。生活領域の中で、クリーニングは定期的にお客さまにご利用いただけるサービスです。この定期的にご利用いただける会員基盤を生かして、日常をアップデートできるようなサービスをお客様に提案していきたいと考えています。

現在、「kirehapi(キレハピ)」というプロによるハウスクリーニングを比較から予約までできるサービスをネット上で提供しています。ハウスクリーニングはエアコンやレンジフードなど、普段、自分では簡単に掃除できないところをプロが掃除してくれるサービスなのですが、これまではプロの事業者を探そうとネットで検索しても、出てくる情報があまり整理されておらず、価格以外の情報で比較することが難しい状態でした。

でも、ハウスクリーニングって自宅に人を入れ、キレイにしてもらうサービスなので、接客の質や作業品質がすごく大事なんです。それが品質や価格などのトータルバランスで選べないのは不便だな、と思ったんです。

そこで立ち上げたのが「kirehapi」です。

このように、現在は衣類・布団・靴のクリーニング・保管、ハウスクリーニングという領域で展開していますが、「まだ手が付けられていない日常生活の課題を、テクノロジーで解決すること」が私たちの事業です。今後もクリーニングに限らず、さまざまな生活サービスを展開していきたいと考えています。

より生活に寄り添い、日常使いしていただくためのアプリ開発

高野:なるほど、そのような中で、ホワイトプラスとしては現在どのような人を採用強化しているのでしょうか?

井下:特に採用強化しているのは、エンジニアですね。リードエンジニア、VPoEも探しています。実はまだまだ開発ののびしろだらけなのです。先ほどお話ししたとおり、まだAndroidアプリさえありません。正確にいうとブラウザベースのものを運用している状態なのですが、それも数年前の仕様でiOSアプリでできることがAndroidではできない。

元々ブラウザをメインに進めていたのですが、iOS端末では既にアプリ利用者の方が多くなっています。Android端末利用者の方も、本来であればブラウザではなくアプリでもっと良い体験を提供できるはずですので、アプリ化を進めたいと考えています。

高野:日常使いされるなら、アプリの方がいいイメージはありますね。

井下:はい、Lenetをはじめとして、今後ホワイトプラスで展開していくサービスは日常的に使うものにしていきたいので、アプリは合っていると思っています。これから注力していきます。

複雑な仕組みをリアルの変革も含めて設計開発できるバックエンド

井下:エンジニアの方にとって、ホワイトプラスで働く魅力としては、日常のユーザー体験を変える設計・開発ができることだと思います。

生活の中で日常的に使える、日常を変えられるサービスを作り、ユーザー体験をより良くすることが私たちの事業の前提です。そして、私達はそのために「どうあるべきか」から考える組織です。

Lenetがオペレーションを組み直してネット化したことからも分かっていただけるのではないかと思います。現在のオペレーションに合わせて、無理な要件定義をして開発を進めるのではなく、「お客様視点でどうあるべきか」から考えて設計・開発を進めます。

複雑なオペレーションやシステムのノウハウ、カスタマーサクセスに至るまで全体設計していただく必要があるので、開発の難易度としては決して低くはありません。だからこそ、自分がつくったと価値を感じられる開発だと思います。

バックエンドではSIer出身の方が多数活躍していて、バックエンドエンジニアにとっては、「SIer出身者がスタートアップにいくならホワイトプラス」と言える環境なのではないでしょうか。

高野:そのコピーいいですね!他にも魅力はありますか?

井下:私たちはクリーニングを利用する消費者の方、つまりユーザー向けのBtoCだけでなく、クリーニング工場向けのシステムも作っています。裏側の仕組みを整えながら、自分が作ったものが世の中の人たちに広く使ってもらえる、というtoBとtoC両方の実感が得られるのも、ホワイトプラスの開発の特徴ではないかと思います。

全体設計から自分の代表作としてサービスを開発できるフロントエンド

井下:こうした環境があり、バックエンドのシステム開発を堅実に進めてきたのですが、フロントエンドがその分手薄でした。フロントエンドは、まだまだ全体を設計できる段階にあると思うので、「自分の代表作を作りたい」といった気概のあるフロントエンジニアの方にぜひ参画していただきたいです。

高野:リアルの問題を、そのオペレーションから変えて、ネットで最適なサービスを提供できるというのは、エンジニアの方にとって非常に魅力的な環境のように思います。

井下:そう思っていただけると嬉しいです。

日常生活の中に馴染んでいく、真にインパクトあるウェブサービスでDXを実現していきたい方は、ぜひお話できればと思っております。新しい日常をつくることに意義を感じて開発できる方と一緒にイノベーションを起こせることを楽しみにしています!

高野:本日はありがとうございました!

取材あとがき

井下さん、斎藤さん、改めてありがとうございました。DX(デジタルトランスフォーメーション)が話題になっていますが、リアルのビジネスを単純にネットで置き換えるだけでは上手くいかないということがよく分かりました。

なかでも、クリーニング業はプロセスを置き換えるのが難しい領域だったのではないかと思いますが、このようにしてテクノロジーでより便利になっていくことは非常にワクワクしますね。

生活領域でさらにサービスを強化・拡充していってくれると期待しています!ホワイトプラスさんへの転職もキープレイヤーズでは支援しておりますので、興味のある方はぜひお問い合わせください!

ホワイトプラス資金調達について(2020年3月27日更新)

2020年3月27日、総額約15億円の大型の資金調達をされました。

調達方法は「第三者割当増資」と「融資」の2つです。
新しくグロービス・キャピタル・パートナーズ株式会社とラクスル株式会社が、また以前から株主のYJキャピタル株式会社画増資する形で、第三者割当増資を行っています。

融資ではみずほ銀行から調達しています。今回調達した資金は、主にエンジニア採用やマーケティング投資、サービス拡充に充てる予定とのことです。今後のさらなる成長を応援しております!

参照:総額約15億円の資金調達を実施

出資したラクスル永見世央さんのコメント

以下、取締役CFO/永見世央さんの投資にあたってのコメントです。

既存産業の構造をテクノロジーの力で変え、顧客やサプライヤーに高い利便性や付加価値を提供していくという観点で、リネットさんと当社はとても似ています。表面上のDXという言葉だけではなく、ビジネスモデル上の類似点もあるため、提供できるアドバイスや付加価値もあるのではないかとの想いで出資させていただきました。

リネットさんが今後ミッション・ビジョンを実現していく過程を株主・パートナーとして応援していきたいと考えています。

ホワイトプラスさんのご評判について

取材して記事を出させていただいてから、ホワイトプラスさんのご評判はどうなのですか?と聞かれました。スタートアップでいうと派手でイケイケな会社さんもありますが、着実に積み上げていく企業のスタンスを感じます。

会社の評判(エン・ジャパン)でも、ポジティブな意見が多く見られました。

2020年2月には、2020年版「働きがいのある会社」ランキングでベストカンパニーに選出されていたり、2020年3月には ホワイト企業アワードを働きがい部門で受賞していたり、働きがいのある環境があると言えそうです。

リネットは利用している方の声を聞いても、非常に評判がいいですよね。仕事に忙しい人も、主婦業で忙しい人も利用しているようです。マーケティング投資も今後積極的に行っていくということなので、コロナウイルスの外出自粛ムードも後押しして、一気に伸びるかもしれませんね。

競合と言いますか真似してきた会社も沢山あったそうですが、表面だけ真似ても事業とはうまくいかないものでしてこのジャンルでは突き抜けされていると思います。社会性もあり良いですよね。

ホワイトプラスさんのミッション、バリュー

(ホワイトプラス採用ページより)

ミッション「新しい日常をつくる」

コーポレイトサイトではより詳細に書かれていますが、「テクノロジー×リアル」の領域で、”生活に領域に特化した”サービスを提供していくことが書かれています。

宅配クリーニングという領域から始まっていますが、これをどう展開していくのか、注目ですね。

バリュー「のびしろで戦う」「心遣いで仲間を笑顔にする」「気づいたらすぐ行動」

スタートアップ、ベンチャー企業では、競争的な文言が並ぶこともありますが、ホワイトプラスのバリューは「思いやり」に満ちているような感じがしますね。

この後触れますが、ホワイトプラスは職場環境、働きがいという点でも高い評価を受けています。

ホワイトプラスさんの採用/求人について

現在、以下の職種を積極的に採用されています。

・ソフトウェアエンジニア リード(フロントエンド)
・ソフトウェアエンジニア(フロントエンド)
・ソフトウェアエンジニア(バックエンド)
・iosエンジニア

調達資金の主な用途には、エンジニアの採用とありましたので、エンジニアの方はぜひ積極的に挑戦してみてほしいですね!

成長中の企業ですので、フェーズに合わせて採用を強化する職種が変わっていきます。気になる方は、随時チェックしてみてください!

Wantedlyやホワイトプラス人事高見さんのツイッターも必見

ホワイトプラスはWantedlyを上手く活用されている企業の一つですね。会社の様子を知りたい方は、人事の高見唯樹さんが用意してくれたまとめ記事も要チェックです。

高見さんは私自身フォローさせていただいているのですが、よく人事や高見さんについて調べている方も多くいらしたのでリンクを貼っておきますね。

髙見唯樹@ホワプラ人事

The latest Tweets from 髙見唯樹@ホワプラ人事 (@yuiki18takami). テクノロジー×ライフスタイルのホワイトプラス(@WHITEPLUS_inc)で採用や研修、組織開発|人生一度きり。生きた証を残す|月曜を迎えるのがワクワクするような働きがいのある組織作りを|ホワプラについては #ホワプラSTYLE をご覧ください|バレーボール・マンガ・ミスチル・ポテサラ・トマト・レモンサワーがすき。. 五反田/自己紹介👉

キープレイヤーズでは、ベンチャー・スタートアップへの転職のサポートを実施しています。

執筆者:高野 秀敏

東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。11,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。55社以上の投資、5社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。149社上場支援実績あり。55社以上の社外役員・アドバイザー・エンジェル投資を国内・シリコンバレー・バングラデシュで実行。キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。
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