こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職支援を約25年続けているキープレイヤーズの高野です。
「大手の経理から、もっと裁量のあるベンチャーで挑戦してみたい」──近年、こうした相談が本当に増えました。私の実感として、経理職のベンチャー転職相談はこの3年で約2倍になっており、特に上場準備(IPO準備)人材としての引き合いは年収・ポジションともに過去最高水準にあります。
ただ、率直にお話しすると、ベンチャー経理は「華やか」「成長機会が多い」というイメージほど甘くはありません。実際に転職した方の3〜4割は、入社後1〜2年で「思っていた仕事と違った」と悩まれます。本記事では、ベンチャー経理職の仕事内容・年収・成功と失敗のリアルを、私の支援実例ベースで率直にお伝えします。
- ベンチャー経理職の仕事内容と大手経理との違い
- 年代別・フェーズ別の年収相場(2026年最新データ)
- ベンチャー経理に向いている人・向いていない人
- 転職の流れと内定を取るためのステップ
- 失敗パターンと成功するためのコツ
- 40代・50代でも転職できるのか?年代別アドバイス
- FAQ:経理ベンチャー転職でよくある質問
2026年、ベンチャー経理の市場動向
日本のスタートアップ・ベンチャー投資環境は、2025年の調達額落ち込みから2026年に入って回復基調にあります。シリーズB〜Cの中後期スタートアップが増え、「IPO準備フェーズの経理マネージャー」「上場後3年以内の連結経理」といった求人が急増しています。
具体的な動向を整理すると次のとおりです。
- シード〜シリーズA:経理担当者ゼロまたは1名体制が多く、「初めての経理」を任せられる人材ニーズ
- シリーズB:監査法人対応・原価計算・予算統制を担う経理マネージャー候補のニーズが急増
- IPO準備期:開示業務(短信・有報)経験者は希少価値が高く、年収700〜900万円のオファーも珍しくない
- 上場後グロース期:連結決算・税効果会計・国際会計の経験者は、CFO候補として1,000万円超のオファー
ベンチャー転職全体の地図についてはベンチャー転職完全ガイドもあわせてご覧ください。年収相場の詳細は年収・手取りガイドをご参照ください。
ベンチャー経理の仕事内容──大手との5つの違い
大手企業の経理から転職してきた方が一番ギャップを感じるのが、業務範囲の広さと、業務フローの未整備さです。
| 観点 | 大手企業の経理 | ベンチャー企業の経理 |
|---|---|---|
| 業務範囲 | 仕訳のみ/税務のみなど分業 | 月次〜開示・人事労務まで一気通貫 |
| 業務フロー | 既に整備済み | 自分で構築する |
| 使用システム | SAP・OBIC等の大規模基幹 | freee・MFクラウド・Bill One等 |
| 権限・裁量 | 部長承認まで多段階 | CFOまたはCEO直結で即決 |
| スピード感 | 月次10営業日で締め | 月次5営業日締めも珍しくない |
業務範囲が圧倒的に広い
シリーズA〜Bのベンチャー経理は、仕訳・売掛買掛管理・月次決算・年次決算・税務申告・監査対応・予算策定・キャッシュフロー予測・労務・契約管理まで、1人ないし2〜3人で担当することが珍しくありません。「経理職募集」と書かれていても、実態は「経営管理部全部」というケースが多いのです。
私の知人で大手電機メーカーの経理7年目から、シリーズBのSaaS企業に経理マネージャーで転職した方がいます。最初の3ヶ月は「契約書の管理ってどうやるんだっけ?」「経費精算規程って自分で作るの?」と戸惑っていましたが、半年後には経理・労務・総務まで一気通貫で見られる人材になり、IPO準備のキーマンに成長しました。
業務フローを自分で構築する必要がある
ベンチャーでは「業務フローが整備されていない」「マニュアルがない」のが普通です。前任者の引き継ぎ書がない、または引き継ぎ自体がないことも。「与えられた業務をこなす人」ではなく、「業務フローを設計・構築できる人」が活躍します。
クラウド会計・SaaSツールを使いこなす
SAPやOracleなど大規模基幹システムから、freee・マネーフォワード・Bill One・楽楽精算といったクラウドSaaSへの慣れが必要です。逆に言えば、これらを業務に組み込んで業務効率化できる人は重宝されます。
意思決定スピードが速い
ベンチャーでは「これは私の権限ではないので持ち帰ります」という姿勢は通用しません。自分の責任範囲で即断する力が求められます。
IPO準備の最前線に立てる
上場準備期の経理は、監査法人対応、開示書類作成、内部統制構築など、大手では一部部署しか経験できない仕事を一気通貫で担当できます。私が支援した方のうち、IPO準備フェーズで経理マネージャーを務めた方は、その後の市場価値が大きく跳ね上がるケースが多いです。
ベンチャー経理の年収相場【2026年最新】
2026年5月時点の主要転職プラットフォームのデータと、当社が支援した実例をもとに整理します。
| フェーズ/役職 | 年収レンジ | SO・賞与 | 求められる経験 |
|---|---|---|---|
| シード期 経理担当 | 400〜550万円 | SO発行のチャンスあり | 仕訳・月次決算3年以上 |
| シリーズA 経理リーダー | 500〜700万円 | SO 0.1〜0.3% | 月次・年次決算・税務 |
| シリーズB 経理マネージャー | 650〜900万円 | SO 0.05〜0.2% | 監査対応・予算統制 |
| IPO準備期 経理部長 | 800〜1,200万円 | SO 0.1〜0.5% | 開示・内部統制・IPO実務 |
| 上場後 連結経理マネージャー | 900〜1,300万円 | RSU等 | 連結・税効果・開示 |
| CFO候補 | 1,200〜2,000万円 | SO 0.5〜2.0% | 資金調達・経営参画経験 |
注意したいのは、シード期は基本給が大手より下がるケースが多いこと。ただしSO(ストックオプション)の発行や、IPO到達時の経済的リターンが大きいので、トータルでの判断が重要です。SOの考え方はストックオプション解説記事もご覧ください。
ベンチャー経理に向いている人・向いていない人
向いている人
- 自走できる人:マニュアルがなくても自分で調べて進められる
- 「未整備=チャンス」と捉える人:仕組みを作る面白さを感じる
- 事業に興味がある人:数字の裏側にあるビジネスを理解したい
- 変化を楽しめる人:会社のフェーズで仕事内容が変わることを楽しめる
- 巻き取り力がある人:「私の仕事じゃない」と言わない
向いていない人
- 業務範囲を明確にしたい人
- マニュアルがないと動けない人
- 定時帰宅・福利厚生重視の方
- 「経理だけやりたい」と考えている方
- 意思決定の速さに耐えられない方
大手の安定環境でじっくり経理スキルを深めたい方は、無理にベンチャーに行く必要はありません。私もご相談者には正直にそうお伝えしています。
転職活動の流れ──内定を取るための7ステップ
- 自己分析:これまでの経理経験を「仕訳」「月次決算」「年次決算」「税務」「監査対応」「予算」「開示」のどこまで経験したか棚卸し
- ターゲット選定:「シード〜A」「B〜C」「IPO直前」「上場後」のどのフェーズを狙うか決める
- レジュメ作成:数字(処理金額・人数・期間・改善効果)を具体的に
- エージェント登録:ベンチャー特化エージェント1〜2社+総合大手1社の併用がおすすめ
- カジュアル面談:CFOや経理マネージャーと最低2〜3社
- 選考対策:会計知識(収益認識基準、税効果、IFRS等)の質問対策
- オファー面談:年収・SO・期待役割をすり合わせ
エージェント選びの判断基準は転職エージェント選び方ガイドもご参照ください。
失敗パターンと回避策
失敗1:フェーズ選択を間違える
「シード期は経験できる」と思って入ったら、実態は雑用ばかりだった、というケース。シード期は「会社をゼロから作る面白さ」と「整っていない大変さ」が表裏一体です。
失敗2:CFO・経理マネージャーとの相性を見抜けない
面接時のカジュアル感に騙されず、業務スタンス・意思決定の速さ・委任の度合いを必ず確認しましょう。
失敗3:SOの価値を過大評価
「SO 0.5%」と言われて飛びついた結果、IPOに到達せず紙くずになるケース。SOは保険程度に考え、基本給で生活できる水準を確保するのが鉄則です。失敗・後悔のリアルはベンチャー転職失敗・後悔ガイドに詳しくまとめています。
失敗4:家族の理解を得ずに入社
残業・休日対応の増加、年収の一時的なダウンなど、家族への影響は大手以上です。事前に必ず家族と話すことを強くお勧めします。
失敗5:エージェントの言いなり
エージェントは案件が決まるとフィーが入るため、悪意はなくとも「ちょっと無理かも」という案件を勧めてくることがあります。自分の判断軸を持ち、複数社の意見を聞くことが大切です。
年代別アドバイス
20代後半〜30代前半
市場価値が最も高い年代。シリーズA〜Bに飛び込み、5年でCFO候補ポジションを目指せます。私の支援実績で30代前半でCFOになった方は十数名います。
30代後半〜40代
大手で経理マネージャー・課長クラスを経験した方は、シリーズB〜IPO準備フェーズの経理部長候補として価値が非常に高いです。年収もキープしやすい年代です。
40代後半〜50代
「40代・50代でもベンチャー経理に行けますか?」という質問は本当に多いですが、結論として行けます。特にIPO実務(短信・有報・内部統制)の経験者は引く手あまた。年収700〜1,000万円のオファーも珍しくありません。年代別転職ガイドに詳細をまとめています。
FAQ:ベンチャー経理転職でよくある質問
Q1. 簿記2級でもベンチャー経理に転職できますか?
A. シード〜シリーズAなら可能です。シリーズB以降は簿記1級または日商建設業経理士1級、税理士科目合格レベルが望ましいです。USCPAや公認会計士は大きな武器になります。
Q2. 監査法人出身じゃないとIPO準備期は厳しいですか?
A. 監査法人出身者は確かに有利ですが、事業会社の経理マネージャーから上場準備に飛び込んだ方も多数います。重要なのは「決算・開示の実務を最後までやり切る覚悟」です。
Q3. ベンチャー経理は残業が多いですか?
A. 月次決算月(毎月5〜10営業日)と年度末は忙しいです。月平均20〜40時間程度が一般的。IPO準備期は60〜80時間に達することもあります。
Q4. リモートワークはできますか?
A. 多くのベンチャーで週2〜3日のリモートが可能です。ただし、紙書類・印鑑業務が残っているフェーズもあるため、入社前確認が必須です。
Q5. 未経験からベンチャー経理は難しい?
A. 経理未経験はかなり厳しいです。仕訳〜月次決算の経験3年以上が事実上の必須要件と考えてください。
まとめ──ベンチャー経理は「裁量」と「責任」のセット
ベンチャー経理は、大手の経理職と比べて業務範囲・裁量・スピード感がまったく違う仕事です。「権限委譲されている環境で力を試したい」「経営に近い経理がやりたい」と考える方には、これ以上ない選択肢でしょう。
一方で、業務未整備・人手不足・SOの不確実性といったリスクも確実にあります。「自分は何を得たいのか」「何を許容できるのか」を整理した上で挑戦されることを強くお勧めします。
キープレイヤーズでは、シード〜上場後まで幅広いベンチャー経理ポジションを支援しています。「自分にはどのフェーズが合うか」「年収交渉はどう進めるか」など、ぜひお気軽にご相談ください。