「安価な手数料」と書いてあったので下げにいくのかと思ったら違いました|メドレーの決算の読み方【2026年最新】

「安価な手数料」の意味を読み違えました
執筆者:高野秀敏
株式会社キープレイヤーズ/代表取締役
東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。東北大学特任教授(客員)、12,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。80社以上の投資、9社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。178社上場支援実績あり。顧問、アドバイザー、社外役員30社以上、キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。「ベンチャーの作法」ダイヤモンド社5万部を超えるベストセラー

こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職支援を約25年続けているキープレイヤーズの高野秀敏です。

最初に開示します。私はメドレーの創業期から取締役を務め、上場後に退任しました。いまも株式を持ち続けていて、応援している立場です。あわせてMEDLEY Open Innovation Partnerとしても関わっています。

利害関係がある会社について書くので、先にお伝えしておきます。そのうえで、この記事は公開されている決算資料に書かれていることだけを書きます。数字はすべて原本で確認しました。内部の情報は一切使っていません。

目次

5社目にして、逆を向いた一文に見えた

人材業界の決算を5社目まで読んだところで、こういう一文を見つけました。

「本領域においては長期的に安価な手数料でのビジネスモデルの実現を目指しております」

ここまでの4社は、全員が値段を上げる方向でした。

会社 直近の動き
フォースタートアップス 1件あたり単価が386万円→416万円
ビジョナル(ビズリーチ) ヘッドハンター向けの成功報酬料率を改定
リクルート(Indeed) AI機能を上位プランに束ねて単価を上げる
JACリクルートメント 高年収帯へのシフトと平均成約単価の向上

だから私は、5社目にしてはじめて逆を向いた会社が出た、と書きかけました。

そこで手が止まりました。

同じ資料の別のページに、逆のことが書いてあった

投資家向けハイライトの2番目に、こうありました。

「顧客事業所数とARPUの最大化による高成長の継続」

ARPUというのは1顧客あたりの売上のことです。それを最大化すると明記されている。しかも実際の数字も一貫して上がっていました。

指標 推移
ARPU(1顧客あたり四半期売上) 39.1千円 → 40.1 → 41.2 → 42.3 → 43.6 → 44.3 → 45.3 → 46.2千円
顧客事業所数 継続的に増加し45.7万件

会社概要にもこう書かれています。「事業者との接点を活かし、利用率の向上に加えて提供プロダクトを増やすことでARPUの拡大を図っております」。採用管理システム「ジョブメドレーATS」についても、年内は無料キャンペーンだが2027年以降はARPU向上に貢献するとしています。

下げにいく会社ではありませんでした。

では、あの一文は何だったのか

前後を読み直しました。文脈はこうです。

同社はリクルートメディカルキャリア社の全事業を10億円で取得する契約を結び、2026年8月3日に効力が発生する予定です。医師と薬剤師の領域でシェアを広げるための買収で、その説明のなかにこの一文が入っていました。

論点 実際に書かれていること
対象範囲 ヘッド領域(医師・薬剤師・病院)のみ。全社の話ではない
時期 「長期的に」。時期は示されていない
確度 「目指しております」。実施済みではなく目標
現状 下げたという事実は開示されていない
足元の収支 PMIコストが先行。FY26影響は売上約+5億円、EBITDA約-3億円

私は1文だけを見て、逆の結論を出しかけていました。

決算資料は、1文を切り取ると反対のことが言えてしまいます。同じ資料の別のページに、その一文を打ち消す事実が書いてあることがある。自戒として書いておきます。

それでも、この一文には意味がある

では意味がないのかというと、そうは思いませんでした。

5社が同じ方向に進んでいるなかで、この一文を書いた会社が1社だけあった。それ自体が事実です。しかも上場企業が投資家向けの資料に書いています。書けば、いずれ問われます。

そして、書ける理由もありました。

指標 2026年12月期 第1四半期
顧客事業所数 45.7万件
対象となる事業所全体 115.5万件
顧客化率 約4割
従事者会員数 319万人(前年同期比+22%)

1件あたりを安くする話は、この規模があってはじめて成り立ちます。少ない件数を高く売っている会社には、そもそも書けない一文です。

ひとつ補足しておくと、このARPUは人材プラットフォームと医療プラットフォームを合算した全社の指標です。この2つは顧客も提供価値も異なる別事業なので、ARPUの上昇がそのまま「1つの事業所に複数のサービスを売れている」ことを意味するわけではありません。

医療・介護にも「300通」が来ている

もうひとつ数字を拾いました。ジョブメドレーのスカウト送信通数が前年同期比26%増で、従事者会員数の伸び22%増を上回っています。会員が増える以上のペースでスカウトが送られている、ということです。

以前、ホワイトカラーの市場で「登録翌日に300通のスカウトが届く」という話を書きました。実際に登録した知人から聞いた話です。同じことが、医療と介護でも起き始めているように見えます。

届く数が増えれば、1通あたりの重みは下がります。この領域でも、いずれ返信率の話が出てきます。送信数を増やす方向の投資は、早めに考え直したほうがいいと思います。採用手段の組み立て方はスタートアップ採用ガイドにまとめています。

1,581事業所を自分で調べて思ったこと

いま埼玉県南東部で介護事業を検討していて、12市区町村・1,581事業所のリストを厚生労働省のオープンデータから自分で作りました。

115.5万事業所という数字を、最初は「大きいな」としか思いませんでした。でも自分の住んでいる地域だけで1,581件あると知ったあとでは、意味が違って見えます。

この密度の市場で、1件あたりを安くすると書いた会社がある。実現するかどうかは、これからの数字を見ていくしかありません。四半期ごとに追いかけます。

あわせて読みたい:メドレー代表 瀧口浩平さんのnote

最後にひとつ、おすすめを書いておきます。メドレー代表の瀧口浩平さんが、ご自身のnoteで決算の解説を書かれています。決算説明会で話された内容や、個別のミーティングで語られるようなことまで、経営者本人の言葉で書かれています。

私はこれを読むたびに、決算資料の数字の裏側にあるものが少し見える気がしています。長期で投資する方にも、入社を検討している方にも、そして同じ人材業界で仕事をしている私のような人間にも、本当に参考になります。ぜひ読んでみてください。

瀧口浩平さんのnote

6社を横断した全体像

人材業界6社の決算をまとめた記事はこちらです。

AIで効率は上がったのに、採用コストは下がりませんでした|人材業界6社の決算を読んで分かったこと

ベンチャー・スタートアップ全般の転職はベンチャー転職 完全ガイド、年収の考え方は年収・手取りガイドをご覧ください。

出典

株式会社メドレー 2026年12月期 第1四半期決算説明資料(2026年5月13日)。フォースタートアップス株式会社 2026年3月期通期決算説明資料。ビジョナル株式会社 FY2026/7第3四半期決算説明資料。株式会社リクルートホールディングス 2027年3月期第1四半期決算説明資料。株式会社ジェイエイシーリクルートメント 2025年12月期通期決算戦略説明会資料。

よくある質問(FAQ)

メドレーは人材紹介の手数料を下げるのですか?

医師・薬剤師領域について「長期的に安価な手数料でのビジネスモデルの実現を目指しております」と決算資料に記載しています。ただし対象は同領域に限られ、時期も水準も示されていません。現時点で下げたという事実は開示されておらず、全社としては顧客事業所数とARPUの最大化を掲げています。

ARPUとは何ですか?

1顧客あたりの売上のことです。メドレーの開示では四半期売上高を人材プラットフォームと医療プラットフォームの顧客数の合計で割って算出しています。両方を使っている事業者は1アカウントとして数えられます。

メドレーのARPUは上がっていますか?

上がっています。39.1千円から46.2千円まで一貫して上昇しており、投資家向けハイライトにも「顧客事業所数とARPUの最大化による高成長の継続」と明記されています。

ジョブメドレーの規模はどれくらいですか?

顧客事業所数は45.7万件です。対象となる事業所全体が115.5万件なので、およそ4割と契約している計算になります。従事者の会員数は319万人です。

医療・介護でもスカウトは増えていますか?

増えています。ジョブメドレーのスカウト送信通数が前年同期比26%増で、従事者会員数の伸び22%増を上回っています。

決算資料はどう読めばいいですか?

1文だけを取り出さないことです。同じ資料の別のページに、その一文を打ち消す事実が書かれていることがあります。本記事では実際に、私自身が1文を切り取って逆の結論を出しかけました。数字は必ず原本で複数箇所を照合してください。

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この記事を書いた人

東北大→インテリジェンス出身、キープレイヤーズ代表。東北大学特任教授(客員)、12,000人以上のキャリア面談、4,000人以上の経営者と採用相談にのる。80社以上の投資、9社上場経験あり、2社役員で上場、クラウドワークス、メドレー。178社上場支援実績あり。顧問、アドバイザー、社外役員30社以上、キャリアや起業、スタートアップ関連の講演回数100回以上。「ベンチャーの作法」ダイヤモンド社5万部を超えるベストセラー

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