こんにちは、ベンチャー・スタートアップへの転職のサポートをしているキープレイヤーズの高野です。
Road to CXO企画として、今回は、プレイドの執行役員CFOを務めている、武藤健太郎さんに取材しました。
武藤さんは、金融系、特にM&Aに関わるキャリアを歩みながらも、複数社のスタートアップ企業での勤務経験をお持ちです。
現在、執行役員CFOを務めるプレイドは、2020年12月17日に上場しました。
今回は、そんな武藤さんのキャリアと、IPOの際のリアルなお話をお伺いしました!
プレイドの概要については、こちらの記事で解説しておりますので、併せてご覧くださいませ。
プレイド転職のための採用・求人情報、代表の倉橋健太さんについてまとめました
執行役員CFO 武藤健太郎さんの経歴
東京大学工学部卒業。東京大学卒業後は、コーネル大学ジョンソンスクールオブマネジメントを修了。
新卒では、新生銀行に入社。金融派生商品の開発や資産運用業務を経て、ドイツ証券投資銀行部門にて約14年間勤務。M&Aアドバイザリ業務・資本調達業務に従事。
その後、グローバルM&Aアドバイザリー会社のBDAパートナーズ、ヘルスケアテック・スタートアップのFiNC Technologies、みずほ証券投資銀行本部、スタンダード・チャータード銀行東京支店でのM&Aチームの立ち上げを経験。
現在は、プレイドCFOとして財務・経営企画などを管掌。
株式会社プレイド
「データによって人の価値を最大化する」というミッションを掲げており、KARTEという顧客体験プラットフォームを提供する企業。
武藤さんがプレイドに入社するまでのキャリア
高野:今日は今大変注目のベンチャー、プレイドのCFO武藤さんにご質問をさせていただいて学ばせていただこうという素晴らしい企画です🙂。どうぞよろしくお願いします!それでは簡単に自己紹介いただけますでしょうか。
武藤:はい。では遡ってお話ししますと、26年前私は工学部で理系だったんです。落ちこぼれ理系だでした。(高野補足:謙遜されていると思います)
数学の世界ではこの人たちには勝てないなと。そこで文系就職も含めて考えることとしました。銀行は色々な企業と接するし、数字も扱える。志望動機も弱いまま銀行に入りました。日本長期信用銀行。(今は新生銀行)。
預金を受け入れない法人に特化した銀行。当時は興銀、長銀、日債銀がありました。(高野補足:長信銀3行と呼ばれ就職超人気、難関)そこで金融商品開発部に配属されました。
入社して数ヶ月で不良債権ランキングにおける長銀の位置を新聞でみて愕然としました。このようなものは就活の時は見てませんでした。
そこから金融危機がやってきて、地銀が潰れ、長銀も公的管理になりました。そして、押し出されるような形で外資のドイツ証券にいきました。
高野:当時の出身者はどんな会社に転職したのですか?
武藤:外資金融やコンサルファームなどにいった方が多かったですね。自分はアセマネで運用の仕事をやりました。投資銀行本部で株式の発行などによる資金調達支援やM&Aアドバイザリなど行いました。
2005年から留学も途中でさせてもらいました(コーネル大学)15年9ヶ月ほど勤務。そこからBDAに移りました。
高野:ドイツ証券といえば、GREE、メルペイの青柳さんがスタートアップにはやく転職して成功していましたよね?
武藤:そうですね。他には天野さんがベンチャーキャピタルのSTRIVEにおりFiNC出資しているのでFiNCに転職の際には色々と聞いてみたりもしました。この頃ですよね。高野さんとお会いしたのは。スタートアップに興味があるということで。
高野:2015年といえば、ちょうどそのあたりから外資金融の方が以前よりスタートアップに興味を持つ方が出始めたころだと思います。最近では規模の大きな上場をしている会社の多くは外銀の方がCFOをしているようになってきましたよね。
武藤:FiNCでは溝口さんや小泉さんらと働き、良い経験はできました。その後金融の世界に戻りました。
みずほ証券ではファンドのIPOを4件お手伝いしたり、その後、スタンダードチャータード銀行でM&Aチームを作ったりもしました。
そんな時にプレイドの倉橋と出会いジョインしました。
プレイドIPOにまつわるエピソード
高野:武藤さんのnoteを拝見しますと順調に上場したのかなと思っていたのですが、実際には相当なご苦労があったのではないでしょうか?
武藤:上場が何度か延期になりました。上場が延期になるとチームだけでなく、会社全体にもストレスになります。
実際、延期が複数回ありました。もともと入社当時はあと8ヶ月で上場で短いなと思っていました。ただ最初延期になったときは、0から形を作った方が良いとも思いました。ただ複数回も延期するとは思っていませんでしたが。
noteにはハードシングスのように書きましたが自分自身はそれを楽しんでいましたよ。金融とベンチャーの違いで言えば、結局金融は自分次第。
金融はどれだけディールをできるか、全て自分でやるという意識。それに対してスタートアップは自分でやるし、みんなでやる。カルチャーや組織の考え方が異なっていると感じました。
高野:IPOして会社は変わりましたか?
武藤:上場は会社全体のプロジェクトでした。みんなで予実がきちんとあうようにしていく。IPOを目指すためにはもちろん大事な基本的なことです。
高野:上場を目指していくと予実をきちんと管理していくことが求められますよね。
高野:最近は共同主幹事の会社が多くなってきたと感じますが、この点はいかがでしょうか?特に大きめの上場の場合について。
武藤:一時期に比べると証券会社の人たちにも共同主幹事は受け入れてもらいやすくなったと思います。
高野:主幹事や監査法人は転職時に決まっていましたか?
武藤:決まっていました。あずさ監査法人にやっていただきました。すでに証券会社は、審査に入っていました。
高野:共同主幹事にするとコストは高くなるのでしょうか?
武藤:コストはほとんど変わらないですよ。一方で証券会社さんの手数料は複数社で分けるので変わることになります。
ただ、共同主幹事の間で競争してくださいという意識だとうまくいかないかもしれません。理想は共同主幹事の証券会社さん、発行体で同じ方向に向かって協調できることです。
高野:今回の上場はチャレンジしたところもありましたよね?(武藤さんのnote参照)
武藤:法的にダメなものはもちろん言うまでもなくダメですが、必要に応じて新しい取り組みを挑戦していくことも大事です。
グローバルオファリングでの内外比率は、当初海外60%、国内40%の比率にしていました。しかし最後78%に海外比率を増やしました。たしかfreeeさんは当初の内外比率から15%を海外に移したはずです。
Freeeさんの事例までは、慣習として内外比率は10%しか移せないと言われていたんですね。freeeさんがその慣習を突破されたのかなと思っています。発行体がやりたいことがあれば、慣習にとらわれすぎることなく、証券会社さんに相談してみることは大切だとおもいます。
武藤さんへのQ&Aコーナー
ご質問:
投資銀行のスキルはスタートアップでいきますか?苦労する点などいかがでしょうか。
武藤:スキルは役に立つけれども20%くらいでしょうか。FiNCに入った時に溝口さんにさまざまな指摘を受けて、いろいろと学びがありました。
たとえば、言葉が刺々しいので、もっと言葉に気を使った方が良いと言われたことを今でも覚えています。コミュニケーションのやり方ひとつとっても、外資金融と、スタートアップで違いがあるなと。結果としてFiNCはやめましたがそういったギャップを知ることができました。
投資銀行出身者はM&A支援の際に、事業計画を作るのを手伝ったりします。そのような経験から自分自身は、事業計画作るのは得意だと思っていました。整ったロジックで綺麗な計画はエクセルで作れるのです。
しかし、どんなに綺麗なモデルを作っても、それが適切な事業計画とは限りません。例えば、どんなに綺麗にKPIを分解しても過去のデータがないものがあります。となるとそのKPI数字は仮置きするしかないのです。
そうやって売上50%成長する計画をつくっても、実際にやってみると予実が合わないということはよくおこります。モデルを綺麗に作れるスキルや事業計画をロジカルに作るスキルがあっても、実際に生きた計画になるかどうかはまた違う話です。
その意味では今回のIPOで色々な失敗を経験させてもらえたと思っています。
質問
投資銀行の優秀な方を迎えいたいという会社が増えてきていますが、どうやったら採用できますか?年収面が高いと思うのでどうしたら転職してもらえますか?
武藤:
年収は人によって色々な考え方がありますよね。投資銀行の人だけではないかもしれませんが自分にとってやりにくいなと思うのは、ものすごく細かすぎることまで指示されることです。
いわゆる「箸の上げ下げ」まで指示されると投資銀行での働き方とのギャップを感じます。ある程度の自由度が大事だと思います。ゴールを遠目に置いて、ゴールをどう達成するかは自分で考えながらやってくれと任せてもらえる方が好きです。
また投資銀行時代に経験していなかったことはチームマネジメントでした。スタートアップでは自分で考えながら、経験を積みながら学んでいけることがよかったです。
ただ、スタートアップのCEOからしたら怖いかもしれません。投資銀行の人が何か勝手なことやらないかな?とか怖さがあることもあるでしょう。そこを信頼して任せきれるのかどうかが大切ですよね。
プレイドは自分でIssueを探して取り組んでいくのが尊重されていて、自分でやるべきことを探していきましょうというカルチャーです。
それが自分にはあっていたと思います。
高野:ありがとうございます。それでは、この取材を聞いていただいている方に、質問をいただいてみましょうか。
ご質問:転職ではどこを選ぶべきか?
武藤:プロダクトが好きとか、攻めているマーケットが好きとか思えるところが良いと思います。加えて、自分が入ることで活躍できるアングルがあるのか。
FiNCであればヘルスケアというマーケットが魅力でした。日本は高齢化社会であり成長するマーケットだと思います。
プレイドの場合はプロダクト。今のウェブサイトは裏側でこんなことが起きているんだ、サイトって進化しているんだ、と倉橋話を聞いて驚きました。将来、海外展開できるポテンシャルもあるかもと感じました。そうすると海外での買収などの可能性もあるなと感じました。
ポテンシャルが大きければ大きいほど投資銀行の人たちは打ち手が打てるのであっていると思います。
ご質問:FiNCをやめてベンチャーはもういいかなと思わなかったですか?一度金融に戻るとベンチャーに戻りにくい気もするのですが。
武藤:FiNCも仕事としては面白かった。小泉さんがCFO、経営企画の執行役員をしていた。法人事業を持たせてもらった。最終的に辞めることとはなったが、ベンチャーの面白さ、大変さは双方理解できた。
家族のこともあり一度金融に戻ったが、こちらの世界の方がより面白いと感じた。
ご質問:ご自身の軸はありますか?
武藤:“やらぬ後悔よりやる後悔”
FiNCは退職はしたものの後悔はしてません。学ぶことも多くありました。もちろんその当時は自分も大変なことも多くありました。合わなかったなというところもありました。
ただ、どんな環境でも常に面白いと思えることがありますし、そこで経験を積ませてもらえることもあります。
取材あとがき
武藤さんのお話から大変優秀な方で多くの修羅場も乗り越えてこられたと感じました。
一方で一貫して明るくお話をされいていてご本人が元気ハツラツ。やはりできるCxOの方は頭が良いだけではなく、元気もあるしポジティブな思考をお持ちだと強く感じました。
ありがとうございました!
CxOとしてのキャリア・転職に興味のある方は、ぜひお気軽にご相談ください!
また、プレイドに興味をお持ちいただいた方は、ぜひこちらの記事を併せてご覧ください!
プレイド転職のための採用・求人情報、代表の倉橋健太さんについてまとめました