こんにちは、ベンチャー・スタートアップ・CxO転職の支援をしているキープレイヤーズの高野秀敏です。27年、経営者・CxO・幹部人材の転職を1,000人以上、面接前後で伴走してきました。
外資系IT企業やメガベンチャーからスタートアップへの転職相談で、この5年ほど必ず出てくる論点がRSU(Restricted Stock Unit/譲渡制限付株式ユニット)です。「あと8ヶ月で1,200万円分のRSUがVestするので、それまで動けません」「転職したら未確定分が全部消えるんですよね?」「去年Vestした分、確定申告していないんですが大丈夫ですか?」——この3つは本当によく聞きます。
RSUは年収の一部でありながら、給与明細にきちんと載らないことがあり、税金の扱いもストックオプション(SO)と違い、転職のタイミングを縛ります。この記事では、RSUの仕組み、SO・譲渡制限付株式(RS)との違い、Vest時と売却時の税金、確定申告の要否とペナルティ、そして転職で未確定分を手放すときの判断基準と交渉の仕方まで、2026年時点の制度で整理します。
年収全体の考え方は年収・手取りガイド、SOそのものの解説はストックオプション(SO)完全ガイド、外資系からの転職事情は外資系からベンチャー・スタートアップ転職の実態と成功戦略もあわせてご覧ください。
- RSUとは何か——付与・ベスティング・Vest・売却の4段階と、よくあるスケジュール(4年・1年クリフ)
- RSU・SO(税制適格/非適格)・譲渡制限付株式(RS)・ESPPの比較表
- 誰がもらっているのか——外資系だけでなく日本企業にも広がっている(従業員向け株式報酬の導入31%+検討24%)
- Vest時は給与所得で最大55%、売却時は譲渡所得20.315%——計算例と納税資金の問題
- 確定申告が必要なケース・不要なケース、税務署が把握する仕組み、無申告加算税5〜20%と延滞税
- 転職とRSU——未確定分は失効する。手放してよい場合、待つべき場合、転職先に補填を求める交渉
- オファーレターでRSUについて確認すべき8項目
- メリット・デメリット、向いている人・向いていない人、年代別の考え方、失敗パターン7つ、FAQ 10問
今回の相談
相談者(34歳・外資系SaaS企業のエンタープライズ営業・年収1,400万+RSU):高野さん、シリーズBのスタートアップからVP of Salesのオファーをもらいました。年収は1,200万でSO付きです。ただ、今の会社のRSUが来年3月に約900万円分Vestする予定で、今辞めると全部消えます。半年待ってから転職すべきでしょうか。
高野の回答:まず「900万円分のRSUを捨てる」のではなく「900万円分の未確定報酬を、転職先との交渉材料にする」と考え直してください。オファーを出す側は、あなたが失う金額を把握したうえで、サインオンボーナスやSOの上乗せで一部を補填できることがあります。そのうえで、①補填される額、②半年待つ間にポジションが埋まるリスク、③半年後の自分の市場価値、を天秤にかける。「待つ」も「今動く」も正解になりえますが、何も交渉せずに捨てるのだけは避けましょう。この記事の後半で交渉の順番を書いています。
RSU(譲渡制限付株式ユニット)とは——4段階で理解する
RSUは、「一定期間在籍したら、会社の株式を無償で交付する」という約束(ユニット)です。付与された時点では株式そのものではなく、あくまで「将来株をもらえる権利」。だから議決権も配当もありません(配当相当額を現金で受け取れる設計はあります)。
| 段階 | 何が起きるか | 税金 |
|---|---|---|
| ①付与(Grant) | 「○年かけて□株(または□ドル相当)を渡す」と会社が約束する。入社時、昇進時、年次で追加付与(リフレッシュ) | 課税なし |
| ②ベスティング期間(Vesting) | 在籍を条件に、スケジュールに沿って少しずつ権利が確定していく。退職すると未確定分は失効 | 課税なし |
| ③権利確定(Vest) | 確定した分の株式が証券口座に入る。この時点で自分の資産になる | 給与所得として課税(Vest日の時価×株数) |
| ④売却(Sale) | 好きなタイミングで売る。売らずに保有し続けてもよい | 譲渡所得として課税(売却額−Vest日の時価) |
よくあるベスティングスケジュール
- 入社日起算・4年・1年クリフ:入社1年後に25%、以降は四半期または月ごとに残りが均等に確定。米系テック企業の標準形。1年未満で辞めるとゼロ
- 年次リフレッシュ:毎年の評価で追加付与され、それぞれが4年で確定していく。結果として「常に未確定分がある」状態になり、辞めにくくなる(ゴールデン・ハンドカフス)
- 上場日起算型:上場から1年後に50%、2年後に残り50%。非上場時に付与されたRSUで使われる
- ダブルトリガー:「在籍期間」と「上場やM&Aなどの流動性イベント」の両方を満たして初めて確定。非上場企業のRSUで、Vestしたのに売れず税金だけ発生する事態を避けるための設計
RSU・SO・譲渡制限付株式(RS)・ESPPの違い
ここを混同したまま転職の話をする人が多いので、表にします。
| 項目 | RSU | 税制適格SO | 税制非適格SO | 譲渡制限付株式(RS) | ESPP |
|---|---|---|---|---|---|
| もらうもの | 将来株式を交付する約束 | 決まった価格で株を買う権利 | 同左 | 最初から株式(譲渡制限付き) | 給与天引きで自社株を割引購入する権利 |
| 自己資金 | 不要 | 行使価格が必要 | 行使価格が必要 | 不要(報酬債権と相殺) | 購入代金(割引あり) |
| 株価が下がったら | 価値は減るがゼロにはならない | 行使価格を下回ると価値ゼロ | 同左 | 価値は減るがゼロにはならない | 割引分が緩衝になる |
| 課税タイミング | Vest時(給与所得)+売却時(譲渡所得) | 売却時のみ(譲渡所得20.315%) | 行使時(給与所得)+売却時(譲渡所得) | 譲渡制限解除時(給与所得)+売却時 | 購入時の割引分(給与所得)+売却時 |
| 主に使う会社 | 外資系上場企業、メガベンチャー、上場後のスタートアップ | 未上場スタートアップ | 役員・外部協力者向け | 日本の上場企業の役員報酬(導入率37%・492社で最多) | 外資系上場企業 |
| 退職時 | 未確定分は失効 | 未行使分は失効が多い(設計次第) | 同左 | 無償取得条項で没収されることが多い | 購入済み分は自分のもの |
役員報酬の導入率は三井住友信託銀行「役員報酬サーベイ(2025年度版)」(回答1,319社)の数値です。ポイントはRSUは「株価が下がっても価値がゼロにならない」代わりに「Vest時に売っていなくても税金が来る」こと。SOは「行使価格を上回らないと価値がない」代わりに、税制適格なら売却時まで課税されない。この違いが、外資系からスタートアップに移るときの報酬設計の違いそのものです。税制適格SOの権利行使限度額(設立5年未満は年2,400万円、5年以上20年未満の未上場等は年3,600万円)など、SO側の細かい話はストックオプションで後悔する人の特徴にまとめています。
誰がRSUをもらっているのか——外資系だけではない
RSUといえばGoogle、Amazon、Microsoft、Salesforceなど米系テック企業のイメージが強いですが、日本企業にも広がっています。
- メルカリ:2018年12月、日本企業として初めてRSUの導入を発表し、海外拠点を含む大半の社員に付与。2025年1月にも米国子会社の従業員95名に87,360株を発行するなど、継続して運用しています
- 上場企業の従業員向け株式報酬:三井住友信託銀行の2025年度調査では、従業員向けに長期インセンティブ報酬を導入している企業は31%(409社)、検討中が24%(319社)で、合計55%。前年の48%から7ポイント増えました。スキームは通常型SOが29%、株式交付信託が26%、譲渡制限付株式が25%
- 上場後のスタートアップ:未上場時はSOで報酬を設計し、上場後にRSUや譲渡制限付株式へ切り替える会社が増えています。SOは上場後だと行使価格が高くなり、インセンティブとして弱くなるためです
つまり「RSUは外資系の話」ではなくなりました。メガベンチャーや上場ベンチャーからスタートアップに転職する人も、同じ論点に直面します。上場ベンチャーの役員がどれくらい株式を持っているかは上場ベンチャーCxO・役員の株式保有比率で22社140名のデータを分析しています。
RSUの税金——Vest時は給与所得、売却時は譲渡所得
ここが一番事故が多いところです。順番に整理します。
①Vest時:給与所得として総合課税(最大55%)
Vestした瞬間、「Vest日の株価×株数」が給与として課税されます。ドル建てならVest日のTTM(電信売買相場仲値)で円換算。給与所得なので他の給与と合算され、所得税(最大45%)+住民税(10%)の累進課税です。
Vest時の給与所得 = 200ドル×100株×150円 = 300万円
この300万円は年収1,000万円の上に乗るので、適用される税率は所得税33%+住民税10%の帯(課税所得900万円超1,800万円以下)。ざっくり約129万円の税負担が、株を1株も売っていなくても発生します。
だから多くの外資系企業は、Vest時に一部の株を自動で売却して納税資金に充てる「sell-to-cover」を採用しています。100株Vestして口座に入るのが60株前後、というのはこの仕組みです。
②源泉徴収されるかどうかで、確定申告の要否が変わる
- 日本法人が給与として処理している場合:Vest分が給与明細に「RSU」「株式報酬」などの名目で載り、源泉徴収・年末調整される。この場合、Vest分については確定申告不要(売却益は別)
- 外国親会社から直接付与され、日本法人を通らない場合:源泉徴収されない。自分で確定申告しないと無申告になる。外資系ではこちらのケースが多い
③売却時:譲渡所得として申告分離課税(20.315%)
売却額からVest日の時価(取得費)を引いた差額に、所得税15.315%+住民税5%=20.315%。海外の証券口座は「一般口座」扱いになるので、特定口座のように証券会社が計算・納税してくれません。自分で取得費を計算して確定申告が必要です。Vest後に株価が下がって売れば譲渡損失で、他の上場株式の譲渡益と損益通算できます。
④為替差益と配当
Vest日から売却日までの為替変動による差益は、原則として雑所得です。配当は配当所得(米国株なら現地で10%源泉されるので、外国税額控除の対象)。
| タイミング | 所得区分 | 税率 | 計算のもと |
|---|---|---|---|
| Vest時 | 給与所得(総合課税) | 5〜45%+住民税10% | Vest日の株価×株数×TTM |
| 売却時 | 譲渡所得(申告分離) | 20.315% | 売却額−Vest日の時価 |
| 為替差益 | 雑所得(総合課税) | 5〜45%+住民税10% | 円換算額の差 |
| 配当 | 配当所得 | 20.315%(外国税額控除あり) | 配当額 |
確定申告——必要なケース、期限、税務署が把握する仕組み、ペナルティ
確定申告が必要なケース
- 外国親会社から直接付与され、Vest分が日本の給与で源泉徴収されていない
- Vest済みの株式を売却して利益が出た(海外口座=一般口座)
- 給与収入が2,000万円を超える(RSUを含めて超える人は多い)
- 年の途中で転職・退職し、年末調整が完了していない
- 複数の国でVestが発生している(海外赴任前後)
なお、年末調整されなかった給与(RSUのVest分)と給与・退職所得以外の所得の合計が20万円以下なら所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は別途必要です。ここを「20万以下だから何もしなくていい」と誤解している人が多いです。
期限と必要書類
申告期間は翌年2月16日〜3月15日、納税期限も3月15日(振替納税なら4月中旬)。必要なのは源泉徴収票、証券会社の取引明細(Vest日・株数・株価、売却日・売却額)、各日のTTMの記録、米国源泉税があればその明細(外国税額控除用)です。
税務署はどうやって把握しているのか
「海外口座だからバレない」は通用しません。外国親会社が日本の役員・従業員に株式などの経済的利益を供与した場合、日本法人は「外国親会社等が国内の役員等に供与等をした経済的利益に関する調書」を翌年3月31日までに税務署へ提出する義務があります。加えて、100万円超の国外送金等調書、CRS(共通報告基準)による海外口座情報の自動交換で、Vest・売却・送金の流れは把握されています。実際、RSU・ESPPの申告漏れを指摘される税務調査は近年増えています。
申告漏れのペナルティ
| 状況 | 無申告加算税 |
|---|---|
| 税務調査の連絡前に自主的に期限後申告 | 5% |
| 調査の事前通知後〜調査前 | 10%(50万円超の部分は15%) |
| 調査で指摘された後 | 15%(50万円超の部分は20%) |
| 仮装・隠蔽があった場合(重加算税) | 40% |
これに延滞税が加わります。2026年(令和8年)の延滞税は納期限から2ヶ月以内が年2.8%、2ヶ月超が年9.1%。過去の申告漏れに気づいたら、調査の連絡が来る前に自主的に申告するのが唯一の被害最小化策です。金額が大きい場合は、外資系社員の申告に慣れた税理士に依頼したほうが結果的に安く済みます。
転職とRSU——未確定分は失効する。どう考えるか
ここからが、私の本業の話です。RSUの最大の特徴は「退職した瞬間、未確定分がすべて消える」こと。年次リフレッシュで付与を受け続けている人は、常に数百万〜数千万円分の未確定RSUを抱えている状態になります。これが転職を難しくします。
私が見てきた3つのパターン
- Vest直後に動いて、失効を最小化した人:外資系IT企業のマネージャー(38歳)。次のVestまで2ヶ月だったので、内定先に入社日を2ヶ月遅らせてもらい、Vest翌週に退職。失効は約200万円分で済みました。内定先も「その程度なら待つ」と即答でした
- 未確定1,500万円分を捨てて、SOで取り返した人:米系SaaSのエンタープライズ営業(35歳)。シリーズBのスタートアップにVP of Salesとして転職。失効分の一部をサインオンボーナス300万円で補填してもらい、残りは行使価格の低い税制適格SOで設計。3年後の上場でSOの含み益はRSUの失効分を大きく上回りました。ただし、これは上場したから言える結果論です
- Vest待ちで2年動けず、ポジションを逃した人:メガベンチャーの事業責任者(41歳)。「あと1年でまとまった額がVestする」を2回繰り返し、その間に声をかけていたスタートアップのCOOポジションは別の人で埋まりました。RSUは満額もらえましたが、本人は「キャリアの2年を売った」と言っています
判断の順番——「捨てる」前にやること
- 失効額を正確に出す:未確定RSUの株数×現在株価×為替。次のVest日と金額も時系列で書き出す
- Vest日と退職日の関係を確認する:多くの会社は「Vest日に在籍していること」が条件。退職届の提出日ではなく最終在籍日で判断されるので、有給消化期間中にVest日を迎えられるかを就業規則とRSU規程で確認する
- 転職先に失効額を開示し、補填を交渉する:サインオンボーナス(転職とボーナス(賞与)完全ガイドで交渉の仕方を解説)、SOの株数上乗せ、初年度の年収上乗せ、の3つが主な手段。全額補填は稀ですが、3〜5割は珍しくありません
- 入社日を調整する:次のVestが3ヶ月以内なら、入社日を後ろにずらす交渉は通りやすい。半年以上なら難しい
- 「待つコスト」を金額にする:待っている間に埋まるポジション、年齢による市場価値の変化、今の会社での評価の停滞。これらは失効額と同じ天秤に乗せるべきコストです
スタートアップへの転職で年収が一時的に下がる話はスタートアップ転職で年収は下がる?で扱っていますが、RSUを含めた「総報酬」で比較しないと判断を間違えます。逆に言えば、RSUを含めた現年収を正しく提示することが、年収交渉の出発点です。交渉の型はベンチャー転職の年収交渉術完全ガイドを参照してください。
オファーレターでRSUについて確認すべき8項目
転職先がRSUを出す会社(外資系、メガベンチャー、上場ベンチャー)の場合、オファーレターで次を確認してください。「RSUあり」の一言で喜んで入社し、後で条件を知って後悔する人が本当に多いです。
- 付与の単位:株数で固定か、金額(例:4年で20万ドル相当)で固定か。金額固定なら付与日の株価で株数が決まる
- ベスティングスケジュール:クリフの有無と期間、確定の頻度(年次/四半期/月次)
- リフレッシュの有無と基準:毎年の追加付与があるか、評価との連動
- 退職時の扱い:自己都合/会社都合/定年/死亡・障害で扱いが違うか。会社都合退職でも失効するケースがある
- M&Aや買収時の扱い:加速条項(アクセラレーション)があるか
- 源泉徴収の方法:日本法人経由で給与処理されるか、sell-to-coverか、自分で納税か
- 非上場の場合の流動性:Vestしても売れない株に税金がかかる設計になっていないか(ダブルトリガーか)
- 証券口座と手数料:海外証券会社の口座開設が必要か、売却・送金手数料は誰が負担するか
オファー面談全般の確認項目はベンチャー転職のオファー面談・条件交渉完全ガイドに15項目でまとめています。
RSUのメリット・デメリット
| 立場 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 従業員 | 自己資金不要/株価が下がっても価値がゼロにならない/上場企業ならVest後すぐ現金化できる/年収の上乗せとして計算しやすい | Vest時に売らなくても課税される/給与所得なので最大55%/未確定分は転職で失効し、キャリアの自由度を縛る/海外口座・為替・確定申告の手間 |
| 会社 | 現金流出なしで報酬を積める/リテンション効果が高い/SOと違い株価下落時も一定のインセンティブが残る | 株式報酬費用が利益を圧迫/既存株主の希薄化/非上場では税負担の問題で設計が難しい/管理・税務が複雑 |
RSUをもらう働き方が向いている人・向いていない人
向いている人
- 安定した大企業・外資系で、4〜5年単位でキャリアを積むつもりの人
- 株価が下がっても「ゼロにならない」安心感を重視する人
- 確定申告や海外口座の管理を面倒がらない人(または税理士に頼める人)
- 報酬を「現金+株式」で長期的に積み上げたい人
向いていない人(=SOやシンプルな現金報酬のほうが合う人)
- 2〜3年でスタートアップに移る、起業するなど、キャリアの流動性を保ちたい人
- 「上場したときの何十倍」を狙いたい人(RSUはSOほどのレバレッジは効かない)
- Vest時の納税資金を用意できない、または管理が苦手な人
- 非上場企業で「売れないのに税金だけ来る」設計を受け入れたくない人
年代別——RSUと転職の考え方
- 20代:RSUの額はまだ小さいことが多く、失効を恐れて動けない状態にならないのが一番大事。経験の獲得を優先し、失効分は次の会社で取り返せる金額感かどうかで判断する。年齢別の全体戦略は年齢別転職ガイドを参照
- 30代:リフレッシュが積み上がり、未確定分が数百万〜1,000万円を超える人が出てくる。ここで「待つコスト」を金額化する癖をつける。スタートアップの幹部ポジションが最も多い年代なので、交渉で補填を取る技術が効く
- 40代:未確定分が数千万円になる人も。この額は転職先で全額補填されることはまずないので、CxOポジションでCXO転職ガイドにあるような報酬パッケージ(SO・役員報酬・退任時の設計)で総額を組み直す発想が要る
- 50代:Vestを待ってから動く判断が合理的な場合が増える。ただし待つ間も市場との接点を切らないこと。役職定年や早期退職とRSUの扱い(会社都合で加速するか)を規程で確認する
RSUで失敗する7つのパターン
- Vest分を確定申告していない——「給与明細に載っていないから所得ではない」という誤解。調書で税務署は把握しています
- 取得費をゼロで申告して払いすぎる——売却時の取得費はVest日の時価。ゼロにすると譲渡所得が過大になります
- Vest日の1週間前に退職してしまう——退職日の設定ミスで数百万円が消える。最終在籍日とVest日を必ず並べて確認
- RSUを含めた年収を転職先に伝えていない——現年収を給与だけで伝えると、オファーも給与ベースで来ます
- 「RSUあり」の一言で入社し、4年・1年クリフを知らなかった——1年未満で辞めるとゼロ
- 非上場企業のRSUで、売れないのに税金だけ発生した——ダブルトリガーになっていない設計。オファー段階で確認する
- Vest待ちを繰り返して、キャリアの数年を失う——リフレッシュ型は永遠に「あと1年」が続きます。どこかで線を引く
RSUに関するよくある質問(FAQ)
Q1. RSUは年収に含めていいですか?
含めてください。転職先には「基本給○○万+賞与○○万+RSU(年間Vest見込み)○○万」と分解して伝えるのが正確です。ただしRSUは株価で変動するので、直近1年のVest実績額で伝えるのが一般的です。
Q2. Vestした株はすぐ売るべきですか?
税務上は、Vest日の時価が取得費になるので、Vest直後に売れば譲渡所得はほぼゼロです。保有し続けるのは「その会社の株を自分の資産で買う」のと同じ判断になります。給与も資産も同じ会社に集中するリスクは意識してください。
Q3. 退職したら、Vest済みの株はどうなりますか?
Vest済みの株は自分の資産なので、退職後も保有・売却できます。失効するのは未確定分だけです。ただし会社が用意した証券口座は退職後に個人口座へ移管が必要な場合があります。
Q4. 会社都合の退職でも未確定分は失効しますか?
規程次第です。会社都合・定年・死亡・障害で加速(即時Vest)する設計もあれば、理由を問わず失効する設計もあります。オファーレターかRSU規程(Plan Document)で必ず確認してください。
Q5. 日本のスタートアップでRSUをもらえることはありますか?
未上場スタートアップでは稀です。Vest時に売れない株に給与所得課税がかかるためで、日本では税制適格SOが主流です。上場後にRSUや譲渡制限付株式へ移行する会社は増えています。
Q6. RSUの確定申告を税理士に頼む相場は?
外資系社員のRSU・ESPP申告に慣れた事務所で、数万円〜十数万円が目安です。Vestが年4回、売却も複数回あるなら、自分で為替とTTMを追うより頼んだほうが確実です。
Q7. 過去3年分のVestを申告していませんでした。どうすればいいですか?
税務調査の連絡が来る前に、自主的に期限後申告をしてください。無申告加算税は5%で済みます。調査後は15〜20%、悪質と判断されれば40%です。放置するほど延滞税も積み上がります。
Q8. RSUとSO、転職先から選べると言われたらどちらがいいですか?
上場企業なら現金化しやすいRSU、未上場で上場を狙うなら税制適格SOが合理的です。SOの価値評価の仕方はストックオプション(SO)完全ガイドで解説しています。
Q9. 海外赴任中にVestした分はどうなりますか?
付与からVestまでの期間のうち、日本居住期間に対応する部分が日本で課税されるのが原則です(按分計算)。赴任先でも課税される場合は外国税額控除で二重課税を調整します。複数国が絡む場合は専門家に依頼したほうが安全です。
Q10. RSUの失効を理由に、転職先が入社日を待ってくれないときは?
待てない理由がポジションの緊急性なら、失効額を開示してサインオンボーナスかSOでの補填を求めるのが次の手です。それも難しいなら、その会社にとっての自分の優先度を測る材料になります。
まとめ——RSUは「捨てるもの」ではなく「交渉材料」
RSUは、もらっている間は年収を押し上げてくれる一方で、税金の扱いを間違えると追徴が来て、転職のタイミングを縛ります。ただ、27年この仕事をしてきて思うのは、RSUで一番損をするのは「失効を恐れて動けなかった人」だということです。失効額を正確に出し、転職先に開示し、補填を交渉し、それでも動く価値があるかを判断する。この順番さえ守れば、RSUはキャリアの足かせではなく、交渉の武器になります。
キープレイヤーズでは、外資系・メガベンチャーからスタートアップへの転職で、RSU・SOを含めた総報酬の比較と、サインオンボーナスやSOによる補填交渉まで一緒に設計しています。「未確定分が大きすぎて動けない」という方こそ、一度ご相談ください。

