こんにちは、キープレイヤーズの高野秀敏です。この記事では「IR(インベスター・リレーションズ/投資家対応)への転職」を考えている方に向けて、私が約25年ベンチャー・スタートアップの人材市場を見てきた実感を交えながら、IR職のリアルな仕事内容・年収相場・必要スキル・未経験からのなり方・キャリアパスまでを一気通貫で解説します。
IRは「上場企業の投資家対応窓口」と思われがちですが、私の実感としては、この5年でIRは”経営そのものを動かす戦略職”に変わりました。東証プライム市場改革、英文開示義務化、有価証券報告書のサステナビリティ開示、アクティビスト対策、IPO急増、非財務情報のTCFD・IFRSサステナビリティ基準対応──こうしたテーマが一気に押し寄せた結果、CFO直下の「もう1人のCFO候補」としてIRを採用する企業が急増しています。
IR転職の要点まとめ【2026年版】
| 項目 | IR転職のポイント |
|---|---|
| 年収レンジ | 未経験・アシスタント 420-580万/正社員IR 550-800万/IRマネージャー 800-1,200万/IR部長 1,200-1,800万/CFO兼IR 1,800-3,500万+SO |
| 必須スキル | 財務諸表を読み込める会計知識/PPT・Excelでの投資家向け資料作成/説明力・プレゼンテーション力/情報開示のルール理解 |
| 差別化スキル | 英語(ビジネスレベル以上)/IFRS/US GAAP/ESG統合報告/IPO準備実務(Iの部・目論見書)/DCF/コンプス等バリュエーション実務 |
| 差別化資格 | CIRP(IRプランナー)/USCPA/公認会計士/MBA/証券アナリスト/財務報告実務検定 |
| 未経験参入 | 経理財務・経営企画・広報・証券会社アナリスト・監査法人など、隣接領域からの越境が現実的。純粋な未経験からの直接参入は少ない |
| キャリアパス | IR担当→IRマネージャー→IR部長→CFO室長/CFO/代表兼CFO/IR代行会社シニアコンサル/IRテック起業 |
| 相性の良い転職先 | IPO準備企業/上場スタートアップ/中堅上場企業(IR強化フェーズ)/ESG統合報告推進企業/IRエージェンシー/IR SaaS企業 |
そもそもIRとは何をする仕事か
IR(Investor Relations/インベスター・リレーションズ)は、企業と投資家・株主・アナリスト等の資本市場関係者との双方向のコミュニケーションを設計・実行する仕事です。私が候補者の方に説明するときは、「IRは会社の”経営情報を売る営業”であり、”投資家の声を経営に届ける通訳者”でもある」と伝えます。
IRの主な業務内容
- 決算関連業務:四半期決算短信・決算説明資料の作成、決算説明会の企画運営、質疑応答の準備
- 投資家対応:機関投資家・アナリスト・個人投資家との1on1ミーティング、電話会議、工場見学ツアー、経営陣同行のロードショー
- 開示資料の作成・監修:有価証券報告書、統合報告書、コーポレートガバナンス報告書、適時開示、TCFD/ESG開示
- 株主総会運営:招集通知、想定問答集、当日運営、質疑応答対応
- 投資家の声を経営にフィードバック:市場の懸念・期待を経営会議に上程、中期経営計画・株主還元方針への反映
- ウェブサイト・SNS・投資家向けメール:IRサイト運営、IRツール(IR TV、ログミーFinance等)活用、IR動画
- アクティビスト対応・敵対的買収対策:物言う株主への対応方針の設計、有事の危機管理広報とのすり合わせ
- ESG・サステナビリティ開示:TCFD/IFRS S1・S2/ISSB基準/CDP/MSCI/FTSE等ESG評価対応
「広報」「経理」「経営企画」との違い
IRは広報・PR、経理・財務、経営企画と業務が重なる場面がありますが、コアな守備範囲は異なります。
| 職種 | コア領域 | 読み手・関係者 |
|---|---|---|
| IR | 資本市場向けの情報発信、株価・時価総額に効くコミュニケーション | 機関投資家、アナリスト、株主、証券会社 |
| 広報・PR | メディア・世論への発信、ブランド・危機管理 | マスコミ、SNS、消費者 |
| 経理・財務 | 数字を作る側、資金調達・会計処理・開示原案作成 | 監査法人、税務当局、銀行 |
| 経営企画 | 中期経営計画・予実管理・M&A、経営会議の議題設計 | 経営陣、事業部長 |
実態として、スタートアップや中堅上場企業では「経理財務+IR」「経営企画+IR」を兼務するケースが多く、大手上場企業ではIR単独の部門(10-30名規模)が設けられているケースが多いです。
IR職の6類型と年収レンジ【2026年版】
実務でよく分かれる代表的な6類型を、企業タイプ別の年収レンジと合わせて整理しました。私が普段、候補者と企業のマッチングをするときに使っている実感値です。
| 類型 | 特徴 | 年収レンジ |
|---|---|---|
| ①IPO準備IR型 | N-2期〜上場直前でIR体制ゼロから構築。目論見書・成長可能性資料・IPOロードショー | 700-1,200万+SO |
| ②上場企業IR担当型 | 時価総額500-3,000億円クラスの中堅上場企業のIR実務担当 | 550-900万 |
| ③IRマネージャー・IR部長型 | プライム市場・時価総額3,000億円以上の大手上場企業。10名前後のIR部門統括 | 1,000-1,800万 |
| ④ESG-IR・統合報告書型 | ESG統合報告・TCFD・IFRSサステナビリティ基準対応の専門 | 800-1,300万 |
| ⑤IRエージェンシー・IRコンサル型 | IR支援会社(例:みらいワークスIR、GPro、シンフォニアイシス、ログミー、IR TV等)で複数社を担当 | 500-1,400万 |
| ⑥IRテック(IR SaaS)型 | IR業務効率化SaaS/統合報告書DX/ESG開示クラウド企業でIR業務知見を活かす | 600-1,300万+SO |
企業タイプ別の年収相場
| 企業タイプ | IR担当年収 | IRマネージャー年収 |
|---|---|---|
| IPO準備スタートアップ | 700-1,000万+SO | 1,000-1,500万+SO |
| グロース市場上場企業 | 500-750万 | 800-1,200万 |
| スタンダード市場上場企業 | 500-800万 | 900-1,300万 |
| プライム市場上場企業(中堅) | 600-900万 | 1,000-1,600万 |
| プライム市場大手(時価総額1兆円以上) | 800-1,200万 | 1,500-2,500万 |
| 外資系企業日本法人IR | 900-1,400万 | 1,800-3,000万+RSU |
| フリーランスIR代行(月単価) | 80-180万/月 | — |
約25年この業界にいる実感として、「英語+会計+IPO準備経験」の3点セットを持つIR人材は求人1件に対して候補者0.3以下という需給ギャップで、年収レンジが1段跳ねます。逆に、IR業務を「決算短信のPPT作成係」で止めてしまうと、年収600-700万で頭打ちになりやすい。ここが分岐点です。
年収の全体感については年収・手取りガイドとベンチャー企業の年収相場もあわせてご覧ください。
2026年のIR転職市場のリアル
① 東証プライム英文開示義務化でバイリンガルIRが1年待ちの奪い合い
2025年4月から東証プライム市場の上場企業に対し、決算短信・適時開示・招集通知等の英文開示が段階的に義務化されました。英語で決算説明会を回せる、海外機関投資家と1on1で議論できるバイリンガルIRは、大手企業でも1年近く採用が決まらないケースがあります。年収レンジは1,200-2,500万で、外資投資銀行や外資運用会社のセルサイド・バイサイドアナリストからの越境が主戦場です。
② IPO準備企業の急増で「IR立ち上げ人材」が慢性的に不足
2025年のIPO社数は約80社(前年並み)ですが、その裏で「IPO準備を始めたけどIR体制がゼロ」という企業が数百社単位で存在します。N-2期〜N-1期でIRを立ち上げられる人材(成長可能性資料・目論見書ドラフト・機関投資家向け説明会の設計)は、年収700-1,200万+SOで奪い合いになっています。CTO転職ガイドやCFO転職ガイドと並び、IPO準備企業のコアポジションです。
③ ESG・サステナビリティ開示義務化で「非財務IR」が新たな職種に
2023年から段階導入された有価証券報告書のサステナビリティ情報開示(内閣府令改正)と、2026年以降本格適用予定のIFRSサステナビリティ基準(S1・S2)により、統合報告書・ESG開示の実務担当者ニーズが急拡大しています。この事業の代表例が、今回この記事のもとになったシェルパ・アンド・カンパニーです。
代表の杉本淳さんは元マッキンゼー・アンド・カンパニーで、2019年9月に同社を創業。ESG情報開示支援クラウド『SmartESG』を提供しており、東証プライム上場企業を中心に導入企業70社超(時価総額累計200兆円超)、国内ESG情報開示支援サービスにおけるプライム市場導入シェアNo.1を獲得しています。2023年3月のシリーズB調達では11億円(累計約17億円)を、2026年4月にはシリーズB ファイナルクローズで東京海上日動火災保険からの出資を受け、事業を急拡大中です。IR部門とサステナビリティ部門を統合しESG-IRとして再編する動きは、上場大手だけでなくグロース市場中堅にまで波及しています。
④ アクティビスト対策・買収防衛関連のニーズ
2024〜2025年にかけて、モノ言う株主(アクティビスト)の日本市場での活動が急拡大しました。アクティビストからのレターに対応できる、株主提案に反論できる、TOB局面で買収防衛策の設計に関わるIRは、外資系投資銀行のM&Aバンカー並みの単価で採用されるケースも出ています。弁護士転職ガイドにあるインハウスローヤーとの協働も密になっています。
⑤ IR SaaS・IRテックの台頭
IR業務の効率化SaaS(統合報告書DX、投資家DB、株主判別、株主総会運営DX等)を提供するIRテック企業が2022年以降急増しています。この領域ではIR実務経験者がプロダクトマネージャー/プロダクトマーケター/カスタマーサクセスとして採用されるケースがあり、プロダクトマネージャーやPMM(プロダクトマーケティングマネージャー)と同水準の年収レンジ(800-1,400万+SO)で移籍する動きがあります。
IRに向いている人/向いていない人
向いている人
- 数字の意味を「ストーリー」に翻訳するのが得意
- 経営者・機関投資家・アナリストといった「頭のいい人」との対話が好き
- マクロ経済/業界動向/競合分析を継続的にキャッチアップできる
- 短期の株価変動に振り回されず、中長期の会社の姿を語れる
- 秘密情報を扱う覚悟がある(インサイダー・M&A・業績修正情報など)
- 英語での議論が苦にならない(もしくは訓練する意志がある)
向いていない人
- 「数字だけ」「言葉だけ」のどちらかしか扱えない
- 批判的な質問やアクティビストの物言いに感情的に反応してしまう
- 会計や財務諸表を根本的に嫌う
- 締切と品質の同時両立が苦手(決算期は本当に忙しい)
- 秘密情報・未公表情報を第三者に漏らしてしまうリスクがある
未経験からIRになる3ルート
ルート①:証券会社アナリスト・運用会社アナリストからの越境
最も一般的なルートです。セルサイド/バイサイド双方でカバー業界の分析経験を積んだアナリストが、事業会社のIRに越境するケース。「投資家側の視点」を持ち込めるIRは、質疑応答の想定問答・機関投資家対応の設計で圧倒的に強い。年収レンジは移籍先の企業規模により700-1,500万+SOが相場です。
ルート②:経理財務・経営企画からの越境
事業会社の経理財務(決算・開示実務)や経営企画(中期経営計画・予実管理)からIRに越境するルート。数字の背景を最も深く理解している人材として、機関投資家への説明力を鍛えれば1〜2年でシニアIRとして活躍できます。この場合、英語での投資家対応をどこかで訓練しておくことが年収上昇の分岐点です。詳しい流れは経理・財務転職完全ガイドもあわせて参考にしてください。
ルート③:広報・PR/経営コンサルからの越境
広報・PRで危機管理広報や統合報告書に関わってきた人、あるいは戦略コンサル出身者が事業会社のIR部長として招聘されるケースが増えています。「経営の言語で語れる」「対外説明の設計が得意」なコンサル出身者は、CFO室のヘッド候補としてIRを経由するキャリアパスがあります。
IRの12ヶ月ロードマップ(未経験・キャッチアップ用)
| 時期 | やるべきこと |
|---|---|
| 1-2ヶ月目 | 日商簿記2級レベルの会計知識を復習/有価証券報告書を3社分読破/東証改訂CGコードを通読 |
| 3-4ヶ月目 | CIRP(IRプランナー)認定講座受講/自社関連業界の主要企業の決算短信・IR資料を10社分分析 |
| 5-6ヶ月目 | DCF・EV/EBITDA・PBR・PER等のバリュエーション実務/自社時価総額の妥当性を自分で試算 |
| 7-8ヶ月目 | 統合報告書/サステナビリティレポート/CDP/TCFDの基礎/IFRS S1・S2の概要理解 |
| 9-10ヶ月目 | 実際の決算説明会に投資家として出席/IR関連セミナー・カンファレンスに参加/ネットワーク構築 |
| 11-12ヶ月目 | ビジネス英語での投資家プレゼン練習/英文開示ドラフトを作成/IPO準備企業のIR実務経験を狙う |
IRのキャリアパス
| 年次 | ポジション | やっておくべきこと |
|---|---|---|
| 1-3年目 | IR担当(アシスタント〜メンバー) | CIRP取得、決算短信・説明資料作成、投資家対応の同席、株主総会運営補助 |
| 3-5年目 | IRシニアメンバー/IRリード | 機関投資家1on1の主担当、想定問答集作成、IPO準備企業ならIの部・目論見書実務 |
| 5-8年目 | IRマネージャー | IR戦略策定、部下1-5名マネジメント、経営陣同行のロードショー主導、統合報告書責任者 |
| 8-12年目 | IR部長/IR室長 | 10名前後の部門統括、経営会議への上程、アクティビスト対策、M&A案件のIR対応 |
| 12年目〜 | CFO室長/副CFO/CFO兼IR | 資本政策・M&A・IR統括、経営執行への直接関与、代表取締役CFOやCEOへの道も |
CFOルートに乗るキャリアパスは、CxO全体像を扱ったCXO転職ガイド、CFO専門のCFO転職ガイドにもまとめています。
IRに必要なスキル一覧
ハードスキル(技術的スキル)
- 会計・財務諸表の読解:P/L・B/S・C/F・注記の意味/重要指標(EPS、EBITDA、ROE、ROIC、FCF)の解釈
- 開示ルール:会社法/金融商品取引法/東証適時開示ルール/改訂CGコード/有価証券報告書ガイドライン
- バリュエーション:DCF/類似会社比較(コンプス)/類似取引(トランザクション)/SOTP/マルチプル分析
- 統合報告書・ESG開示:IIRC統合報告フレームワーク/TCFD/IFRS S1/S2/SASB/CDP/MSCI・FTSE・Sustainalytics
- Excel/PPT:投資家向け資料作成(決算説明資料、成長可能性資料、統合報告書ドラフト)
- 英語:ビジネス英語(決算説明会・1on1・英文開示レビュー)/可能ならCFA・USCPA相当
- IRツール:IR TV、ログミーFinance、統合報告書DX SaaS、株主判別サービス(QUICK、IR JAPAN、みらいワークスIR等)
ソフトスキル
- ストーリーテリング:数字を「経営のストーリー」として物語る力
- プレゼンテーション:機関投資家100人向けの決算説明会をこなす力
- ステークホルダー調整:経営陣・事業部門・監査法人・弁護士・広報の調整
- 危機管理:業績下方修正、粉飾疑惑、アクティビスト対応時の冷静な対応
- 秘密保持:未公表情報の管理、インサイダー情報の取り扱い
IR職の失敗パターン5選(私がよく見る)
失敗①:決算短信のPPT作成係で終わってしまう
IRの入口としては決算資料作成から入るのが自然ですが、3年経ってもPPTしか触れないIRは市場価値が伸びません。機関投資家対応、経営陣の想定問答準備、統合報告書の企画といった「上流業務」に手を伸ばすことが必要です。
失敗②:英語対応を先送りする
2025年以降、英文開示義務化とグローバル運用会社の日本株比率上昇で、英語対応ができないIRの市場価値は年々下がります。「英語は苦手だから日本語だけで」と決めた瞬間、CFOルートが閉じます。
失敗③:投資家の声を経営に届けない
IRの本質は「投資家の声を経営に翻訳する」ことです。「機関投資家からこう聞かれて困った」で終わらせず、経営会議に上程して中計・株主還元・情報開示の改定につなげることが差別化ポイントです。
失敗④:ESG・サステナビリティを他部署の仕事だと思う
「ESGはサステナビリティ部門の仕事、IRは財務IRだけ」と切り分けてしまうIRは、統合報告書・IFRSサステナビリティ基準対応の波に置いていかれます。2026年のIRは、財務IR+非財務IRを一体で扱えることが前提です。
失敗⑤:秘密情報の扱いを甘く見る
IRは業績修正、M&A、資本政策の未公表情報に日常的に触れる立場です。不用意なSNS投稿、家族への何気ない発言、社内の会話ですら情報漏洩リスクがあります。金融庁・証券取引等監視委員会案件になれば個人・会社ともに致命傷です。
年代別のIR転職アドバイス
20代のIR転職
20代なら20代のベンチャー転職完全ガイドも参考に。第二新卒〜28歳前後であれば、経理財務/経営企画の実務3年+簿記2級+CIRPを取れば、IPO準備企業のIR担当ポジション(年収500-750万+SO)に十分挑戦できます。この世代のポイントは「上場企業の決算・開示実務」を早く体験すること。中堅上場企業のIRアシスタントで開示実務を回した経験は、5年後の年収を大きく変えます。
30代のIR転職
35歳の転職を控えた30代前半は、IRキャリアの「取りに行く経験」を最終決定するタイミングです。①英語での投資家対応、②IPO準備または上場企業の開示実務、③統合報告書・ESG開示のいずれか2つを掛け合わせられれば、年収は900-1,400万+SOレンジで動きます。証券会社アナリストや監査法人からの越境はこの世代が主戦場です。
40代のIR転職
40代のベンチャー・スタートアップ転職ガイドも参考に。40代のIR転職では、「IR部長→CFO室長→CFO」というCFOルート、あるいは「IR部長→独立IRアドバイザー/IR代行会社シニアパートナー」という独立ルートが現実的です。年収1,500-3,000万+SOレンジ。この世代のポイントは、10社以上の投資家との個別ネットワークと、業績修正・M&A・アクティビスト対応の危機管理経験を「実績」として言語化できるかです。
50代のIR転職
50代のIR転職は、上場大手のIR部長経験者が中堅上場企業のIR顧問/CFO顧問/社外取締役として招聘されるケースが中心です。年収1,000-2,500万+常勤役員相当報酬。「経営者と資本市場をつなぐ翻訳者」としての実績が、この世代の最大の差別化要因です。
IPO準備企業でのIR実務の流れ
IR転職を考える上で、IPO準備企業のリアルを知っておくと選び方が変わります。ざっくり以下のようなタイムラインで進みます。
| 時期 | やること |
|---|---|
| N-3期〜N-2期 | 監査法人選定、主幹事証券決定、成長可能性資料の初期ドラフト、IR体制構築の企画 |
| N-2期 | Iの部・IIの部ドラフト着手、内部統制・J-SOX、開示実務トレーニング、想定Q&A作成 |
| N-1期 | 目論見書ドラフト、機関投資家プレIPOヒアリング、成長可能性資料ブラッシュアップ、監査対応 |
| N期(申請期) | 上場申請、証券取引所ヒアリング、目論見書最終化、ロードショー準備 |
| 上場直前〜直後 | ロードショー、決算説明会デビュー、株主総会準備、上場後の初四半期決算対応 |
| 上場後1年目 | IR体制の恒常化、機関投資家1on1の定期化、統合報告書・サステナビリティ開示の設計 |
IPO準備企業でIRを立ち上げると、「Iの部を書ける」「目論見書のドラフトが読める」「主幹事証券とやりとりできる」という希少経験が身につきます。この経験は次のキャリアで一気に年収レンジを跳ね上げる強力な武器になります。
IR転職のよくある質問(FAQ)
Q1. IRは未経験でも本当に転職できますか?
A. 純粋な未経験(経理・財務・経営企画・広報・アナリスト経験ゼロ)は難しいのが実情です。ただし、経理財務や経営企画で3年以上の実務経験があれば、IPO準備企業のIRアシスタントポジションから入るのは十分可能。年収レンジは500-700万+SOが目安です。
Q2. CIRP(IRプランナー)資格は取るべきですか?
A. 未経験からIRを目指すなら間違いなく取得価値ありです。日本IRプランナーズ協会が運営する日本初のIR資格で、体系的にIR実務を学べます。実務経験者にとっては必須ではありませんが、名刺で示せる肩書きとしては有用です。TOEICはビジネスレベル(800以上)を目指してください。
Q3. IRの年収は本当に伸びますか?
A. 「英語+IPO準備+ESG統合報告」の掛け合わせができれば、30代で年収1,200-1,500万+SO、40代でCFO室長として1,800-3,000万+SOは現実的です。逆に、決算資料作成係で止まると600-800万で頭打ちになりやすいです。
Q4. IR代行会社(IRエージェンシー)に入るのは正解ですか?
A. 短期間で複数社の開示・投資家対応を体験できるという意味では有力な選択肢です。「事業会社IR未経験→IR代行会社→IR実務3年→事業会社IRマネージャー」というルートで年収を跳ね上げる方も多いです。ただし、担当社数が多いと1社ごとの深堀りが浅くなりがちで、IRの本質である「経営への翻訳」が学びにくい面もあります。
Q5. IRとCFOはどちらが年収高いですか?
A. 上場大手ではCFOの方が明確に高い(3,000-8,000万+SO/RSU)ですが、IR部長→CFO室長→CFO代行→CFO兼IRというルートを歩めば、IRからCFOに上がった時点でCFO水準に到達します。IRはCFOへの登竜門としても機能します。詳しくはCFO転職ガイドもあわせて。
Q6. スタートアップに転職する場合、IRのニーズはありますか?
A. IPO準備フェーズ(N-2期以降)に入ったスタートアップは、CFO直下でIR体制の構築を担う人材を採用します。年収レンジ700-1,200万+SO。CFO候補として入るケースも多く、スタートアップ転職で年収は下がる?にあるように、SOを含めた期待価値では上場企業のIR課長を上回るケースもあります。
Q7. アクティビスト対応の経験は今後どれくらい重要になりますか?
A. 2024〜2025年で日本市場のアクティビスト活動は顕著に増えました。「株主提案への反論資料作成」「TOB局面のIR対応」「委任状勧誘」を経験したIRは、CxO候補として引く手数多です。M&A対応と合わせて、次の10年で最も高く評価される経験値になります。
Q8. IRから独立・起業は現実的ですか?
A. 上場大手のIR部長経験者は、独立してIRアドバイザリー会社を立ち上げるか、IR代行会社のシニアパートナーとして参画するケースが増えています。年商5,000万〜3億の個人事業/小規模ブティックまで幅広く、案件によっては上場大手IR部長時代を上回る収入もあります。IRテック(統合報告書DX、ESG開示SaaS)での起業も選択肢です。
ベンチャー転職失敗を避けるためのIR転職チェックリスト
私が候補者の方に必ず伝えている、ベンチャー転職 失敗・後悔ガイドと紐付いたチェックリストです。
- IPO準備フェーズを装ってN-4期以前の企業に飛び込んでいないか(実質的な準備開始は最低N-2期)
- 「CFO候補」と言われつつ、実際は経理係でIR業務が触れない求人ではないか
- SOの行使条件(在籍期間、業績条件)はきちんと確認したか
- 監査法人・主幹事証券会社が決まっているか
- 取締役会・株主構成・資本政策の整理が進んでいるか(未整理だとIRどころではない)
まとめ:IRは「CFO候補」であり「経営の翻訳者」
25年この業界を見てきた私の実感として、IRは今、”上場企業の広報係”から”経営そのものを動かすCFO候補ポジション”に変わりました。プライム市場の英文開示義務化、IFRSサステナビリティ基準の適用、アクティビストの活発化、IPO準備企業の急増──こうしたテーマが同時に押し寄せ、IR人材の市場価値は年々上がっています。
特に、「英語+IPO準備+ESG統合報告」の掛け合わせができるIRは、CFOルートに乗る有力候補として、年収1,200-3,500万+SO/RSUで奪い合いになっています。20代・30代のうちにこの経験を意図的に取りに行くかどうかで、40代以降のキャリアが大きく分かれます。
ベンチャー転職全般の考え方はベンチャー転職 完全ガイド、失敗回避はベンチャー転職 失敗・後悔ガイド、CxO全体像はCXO転職ガイド、コンサル出身者からのIR越境はコンサルからの転職ガイドもあわせてご覧ください。エージェント選びに悩んでいる方は転職エージェントの選び方 完全ガイドを参照してください。
キープレイヤーズでは、上場企業・IPO準備企業のIR担当/IRマネージャー/IR部長/CFO候補ポジションを多数扱っています。「今の経験でIR職に転職できるか」「IPO準備企業のIRは自分に合うのか」「CFO候補としてどのフェーズの会社を選ぶべきか」など、キャリアの相談はこちらからお気軽にご相談ください。実際にキープレイヤーズを利用された方の感想はこちらにまとめています。