この記事の要点:CFO(最高財務責任者)とは、経理のように「数字を締める人」ではなく「数字で経営を動かす人」。経理部長との違いは、資金調達・投資家対応・IPO準備・M&Aなど”攻めの財務”に責任を持つこと。近年の上場スタートアップCFOには投資銀行出身者が多く、年収目安は現金900万〜4,000万円+ストックオプション。
はっきり言います。「数字を締められる人」は、CFOにはなれません。CFOとは「数字で経営を動かす人」だからです。キープレイヤーズ代表の高野秀敏です。27年間・延べ1万2000人以上のキャリア面談と、4000人以上の経営者との採用相談の中で、「優秀な経理部長」で終わる人と「CFO」に駆け上がる人の決定的な差を、何百回と見てきました。
結論:経理部長で終わる人と、CFOになる人の3つの差
| 比べる軸 | 経理部長 | CFO |
|---|---|---|
| ①力の方向 | 締める力。決算・税務・記帳を正確に回す | 攻める力。資金調達・投資家対応・事業判断に踏み込む |
| ②数字の扱い | 正確さ。過去を正確に記録する | 意思決定への翻訳。数字を経営の言葉に変える |
| ③立ち位置 | 守り。管理部門の責任者 | 経営者の相棒。社長と対等に事業を語る |
| 時間軸 | 過去を正確に記録する仕事 | 未来の意思決定に数字で責任を持つ仕事 |
経理は「過去を正確に記録する仕事」、CFOは「未来の意思決定に数字で責任を持つ仕事」。この一線を越えられるかが、すべてです。
CFO(最高財務責任者)とは:経理部長と何が違うのか
CFO(Chief Financial Officer/最高財務責任者)とは、財務戦略の最高責任者です。経理部長が「決算・税務・記帳」を担うのに対し、CFOは資金調達、投資家・銀行との交渉、予実管理を通じた事業判断、IPO準備、M&Aまで会社の「お金の未来」全体を設計します。
スタートアップCFOに求められる3つの力
| 求められる力 | 具体的には |
|---|---|
| 資金を作る力 | エクイティ・デットの調達、投資家との対話 |
| 数字を経営言語に翻訳する力 | KPIと財務を結びつけ、意思決定を変える |
| 不確実性に耐える力 | 予測が外れる前提で、打ち手を出し直す |
近年活躍するスタートアップCFOの共通点【実例】
近年、上場スタートアップのCFOには投資銀行・PE出身者が目立ちます。公開情報で確認できる実例を挙げます。
| お名前 | 会社・役職 | 出身 | その後 |
|---|---|---|---|
| 江田清香氏 | メルカリ 取締役 兼 執行役 SVP of Corporate 兼 CFO | ゴールドマン・サックス | 2021年に執行役員CFOとして参画 |
| 橋本宗之氏 | Sansan 取締役/執行役員/CFO | 外資系証券で東京・ニューヨーク約9年、その後日本政策投資銀行グループでPE投資 | 2017年Sansanへ |
| 金坂直哉氏 | マネーフォワード | ゴールドマン・サックス | CFOとして上場を財務面から牽引し、現在は取締役執行役員/マネーフォワード ホーム社長 |
| 永見世央氏 | ラクスル | — | CFOとして上場を牽引し、現在は代表取締役社長CEO |
共通するのは、会計知識ではなく資金調達・M&A・投資家対話で会社を実際に動かした経験です。そして表の右端を見てください。CFOはゴールではありません。数字で経営を動かした人が、そのまま経営を任される。これが今のスタートアップの現実です。
共通するのは、会計知識ではなく資金調達・M&A・投資家対話で会社を実際に動かした経験です。
そして、もう一つ見逃せない事実があります。CFOはゴールではありません。金坂氏はグループ会社の社長へ、永見氏は同社のCEOへ。CFOは「財務の上がりポジション」ではなく、経営者への最短ルートの一つになりつつあります。数字で経営を動かした人が、そのまま経営を任される。これが今のスタートアップの現実です。
金坂氏へのインタビューはこちらの記事で詳しく紹介しています。より詳しい上場ベンチャーCFOのキャリア分析はマザーズ上場ベンチャー企業のCFOキャリア分析もあわせてご覧ください。(役職は各社公式ページ・有価証券報告書にもとづき2026年7月時点)
フェーズで変わるCFO要件
| フェーズ | タイプ | やること |
|---|---|---|
| アーリー期 | 立ち上げ型 | 管理体制をゼロから作り、資金調達を主導する |
| ミドル期 | 体制構築型 | 組織と管理を仕組み化し、IPOを見据える |
| IPO前後 | 上場実務型 | 上場審査・IR・ガバナンスを担う |
【2026年の最新動向】東証グロースの基準厳格化でCFOの価値が上がっている
今、スタートアップの財務に大きな構造変化が起きています。東証はグロース市場の上場維持基準を上場5年経過後に時価総額100億円以上に引き上げました(従来は10年後に40億円以上)。
インパクトは深刻です。グロース市場の約600社のうち、時価総額100億円以上は約3割だけ。残り約7割は基準未達のリスクを抱えています(2025年3月末時点)。
これはとりあえず上場が通用しなくなったことを意味します。上場がゴールではなく、上場後に時価総額を伸ばすストーリーと実行が問われる。だから上場実務を回せるだけのCFOでは足りず、投資家に成長ストーリーを語り、事業の数字を作れるCFOの希少性が一気に高まっています。
実際、2025年のスタートアップIPOは過去10年で最低の31社に留まり、出口もIPOからM&Aへシフトし始めています。M&Aを設計できるCFOへの需要も増えています。
(東証発表・各種報道にもとづき2026年7月時点)
自分は狙えるのか、今何を経験すべきか。ここは一人で考えても答えが出にくい部分です。市場でどう見られているかを知るだけでも、次の一手が変わります。キャリアの壁打ちもお気軽にどうぞ。
CFOの年収相場(目安)
| フェーズ | 現金年収の目安 | 株式報酬 |
|---|---|---|
| シード〜シリーズA | 900万〜1,600万円 | +SO |
| シリーズB〜C | 1,300万〜2,500万円 | +SO |
| IPO前後・上場企業CFO | 2,000万〜4,000万円 | +SO/RS |
当社の支援実績にもとづく目安です。SOは行使条件次第で価値がゼロにもなるため条件確認は必須です。
CFOになるには:よくあるキャリアパス
王道は(1)監査法人・銀行・証券・PE/VCで財務の土台を作る、(2)事業会社の経営企画・財務で「事業と数字」を接続する、(3)スタートアップに財務責任者として参画しフェーズ拡大とともにCFOになる、の3つ。最短は(3)です。
| ルート | どこで経験を積むか | 特徴 |
|---|---|---|
| (1) 財務の土台を作る | 監査法人・銀行・証券・PE/VC | 王道。専門性が身につく |
| (2) 事業と数字を接続する | 事業会社の経営企画・財務 | 数字を事業の言葉にする力がつく |
| (3) スタートアップに財務責任者として入る | フェーズ拡大とともにCFOになる | 最短はこれです |
よくある質問(FAQ)
経理・財務経験だけでCFOになれますか?
経理の正確さは土台ですが、それだけでは足りません。資金調達や事業判断への関与経験が問われます。
未経験からスタートアップCFOは可能ですか?
CFO未経験は普通です。アーリー〜ミドルで財務責任者として入り、フェーズと共に役割を広げる入り方が現実的です。
CFO転職で年収は上がりますか?
フェーズ次第です。IPOが見えるフェーズや上場企業CFOでは大手を超えることもあります。
まとめ:CFOは「肩書き」ではなく「経営への当事者性」で決まる
経理部長とCFOを分けるのはスキルの量ではありません。数字を”締める側”から、数字で”経営を動かす側”へ回れるか。その当事者性です。もし今、正確な数字を作りながら「経営に入れていない」ともどかしさを感じているなら、それはCFOに向いているサインかもしれません。
キープレイヤーズはスタートアップのCFO・財務責任者の転職支援と、企業側のCFO採用支援の両方を手がけています。「自分はCFOを狙えるのか」を壁打ちしたい方はお気軽にご相談ください。

